私の思いと技術的覚え書き

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【再録】疑義事案との闘い(その2)

2021-10-20 | 賠償交渉事例の記録
【再録】疑義事案との闘い(その2)
初版2008-08-28
 モラルリスク事案との闘いについて、第2回目を記してみたい。

 新聞記事等で保険金詐欺で検挙なされた等を見る機会は結構あるが、それら記事から類推できることに、これら犯罪者達は繰り返し行った結果として検挙に至っていると云うことだと感じる。初犯で直ちに検挙と云う事案も中にはあるのかもしれないが、大多数は累犯を繰り返し、最後は検挙されると云うことであろうと思える。特に多人数が関わる組織的な保険金詐欺については、間違いなくその様なことが云えると断じられる。

 さて、これらモラルリスク事案を排除して行くために、保険会社の調査担当者として何が求められるかについて論じてみたい。

 まず求められるのは、公平・公正な調査を行い、正しく保険金を支払うための正義感が必要なことは間違いないだろう。そして、そのための確認動作や基礎知識として、いわゆる整合性に関わる諸知識があるのだろう。

 損保における技術アジャスターには損保協会で定めた「アジャスター規則」というのがある。これの最新版(2020年5月)の第1ページ第3条(アジャスターの種類と業務)の「(1)技術アジャスターは、保険事故に関し、損害車両の損害額、事故の原因および損傷部位と事故との技術的因果関係の調査確認ならびにそれらに付随する業務を行う。」と小難しく記されているが、修理費だけじゃないよ、損傷部位と事故との工学的因果関係も業務ですよと示されている。


 ここで、これは私の独断と偏見を前提としての誤解を恐れずに記せば、これら整合性に関わる諸知識はあくまでも疑念を生じた上の判断根拠としてのものであって、あくまでも端緒となるのはカンによるものだと云えるだろう。このカンだが、センスと云っても良いのかもしれない。

 私は過去24年に渡り、自動車保険の損害調査としてのリアルワールドに接してきた。そんな中、周辺の多くの仲間を眺めてきたが、数十年以上の業務活動においてモラルリスクの体験が皆無であるという者や、僅か数年の活動の中で早くも数件の同事案を体験している方という具合に大きなバラツキが生じている実態を認識してきた。この差は、整合性に関わる基本動作を愚直に行っているという面もあるのだろうが、それよりもセンスの問題が大きく関わっているものと感じているのだ。

※次回はモラルリスクの闘いにおける、驚くべき障壁のことについて記してみたい。


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