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 私の思いと技術的覚え書き

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車両火災で燃料タンクは爆発するか?

2021-07-03 | 車両修理関連
車両火災で燃料タンクは爆発するか?
 過日のこと、日頃懇意にしている板金屋さんの友人が、山中にクルマを乗り入れ焼身自殺を生じると云う事件を知りました。私には、まったくの他人ですが、その板金屋さんにとっては信頼おける友人として交際しており、その悲しみとか何故自殺したんだ、相談に乗れなかった惜しさというものが伝わり、私にも板金屋さんの悲しみを感じつつ、板金屋さんの心情に対する悲しみが伝播してくるのでした。

 さて、焼身自殺ですが、軽トラの運転席で死んでいたらしいですが、その軽トラをチラリと見ると、運転席内部は丸焼けですが、車体外装面は塗装が熱で焼けた程度ですが、概観ではタイヤが前後4輪とも丸焼けという程でもないですが、燃えております。そして、車体後部には燃料タンクが付いておりますが、内部に燃料は残っていない様ですが、タンクの外見に火炎を受けて錆だらけになっている訳です。ここで、件の板金屋さんから、「よく燃料タンクが爆発しなかった」との発言を受けるに至るのですが、板金屋さんはメカに疎く、また整備屋さんでも知識に疎い方の中には、爆発する可能性もあるだろうと思っている方もいるかもしれませんので、ここで若干講釈を記してみます。

 ガソリンは強い可燃性を持っていますが、火薬などと異なり、それ自体で燃焼することはできません。つまり、周辺の空気(酸素)がなければ燃えたり、まして爆発したりできない訳です。これは、燃焼物の燃焼範囲とか可燃限界といわれるもので、ガソリンだとすると空気の割合が1.4~7.6%の範囲であるとものの本には記してあります。つまり、ガソリンと空気の割合が少なすぎても多すぎても、燃えることは不可能なのです。

 このことを端的に示すのが、昨今のガソリンエンジンは燃料噴射で、燃圧300kPa程度の加圧された燃料をタンク内に設置された燃料ポンプで作り出しています。このガソリン加圧による圧送は、DCモーターに直結されたインペラを高速回転することで行います。このモーターはアーマチュアコイルにコンミュテーターという銅端子があり、そこにカーボン製ブラシが接触して回転中に電極を切り替えているわけで、回転中はかなりの火花が出ますが、決してガソリンに引火や爆発などは起こさないのです。

 一般の金属製ガソリンタンクですと、火炎にさらされると、燃料注入口付近のラバーホースがまず溶損し、そこから強烈に気化したしたガソリンが噴き出し、それから火炎が噴き出すと云うことになるでしょう。また、最近増えた樹脂タンクガソリンタンクですと、タンク基材はPP樹脂ですから200℃程度で溶損し、燃料が漏れ出すでしょう。そして、そこで空気と混じり火炎となる。車両火災の状態を観察していると、燃料タンク付近が火炎に包まれると、しばらくして火炎が一気に大きく膨れ上がる状態となりますが、ここが燃料タンクが溶損し、燃料が燃えだした状態であることが判ります。

 燃料タンクの爆発で一番危険となる局面は、燃料の漏れだとかタンクの変形を直そうと、燃料を抜き取り、そこで溶接火炎などの高温殿火炎を接近させた場合であろうと思います。つまり、幾ら燃料タンクの内部を抜き取っても、僅かな燃料の残りが気化した状態で、先に述べた火炎限界の範囲にあれば、一気に爆発する可能性があると云えます。ですから、この様な可燃物タンクの修理に際しては、水や場合によってはチッ素ガスなどの不燃物を十分に充填し、修理を行わねば危険であると云えます。

 なお、LPGやCNG、そして最近はFCVでの水素ガスの燃料タンクですが、高圧ガス容器法で一定年度毎(6年)の点検と交換期限(水素タンク15年)があることと、加圧されていて、爆発を起こす危険性があると云えます。ただし、FCVタンクは70MPaとか極めて高いガス充填圧ですので、そのままでは火炎にさらされるなど高温になるとさらに圧力は高まり危険です。そのため、電気のヒューズに該当するハンダなどを使用した溶栓弁」とよぶバルブから水素を逃がす装置が装着されている。


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