私の思いと技術的覚え書き

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クルマの安全性評価のこと(その3)

2007-10-14 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 前回までは、前面衝突および側面衝突というそのクルマに搭乗している人間の安全性を評価するテストでした。ここでは、もう一つのクルマの安全性評価として、対歩行者に対する加害性への評価テストのことを記してみます。
 日本(JNCAP)での評価項目としての名称は、「歩行者頭部保Photo護性能試験」と呼ばれるテストが行われ公表されています。また、欧州(EuroNCAP)でも「歩行者保護」(Pedestrian protection)という項目で評価がなされている様です。
 その評価テスト方ですが、日本と欧州では違いがある様です。ここでは、日本(JNCAP)の場合を、独立行政法人・自動車事故対策機構のHPより読み取ると(下記リンク参照 )、正直云って非常に判り難い説明が記載されています。その、概要としては、走行中のクルマが歩行者をはねた場合を前提として、クルマの速度を44km/hとして歩行者の頭部が速度35km/hでボンネットやフロントウインドガラスに衝突する前提としています。その上で、歩行者の頭部を模した頭部インパクタと呼ばれる半球状の物体(大人用4.5kg、子供用3.5kg)を射出機より対象車両の該当部位に打ち出し、そのHIC値(頭部障害値)で評価すると云うものです。なお、クルマの形状として一般的なセダンタイプ、SUVタイプ、1ボックスで分類し、それぞれクルマの対象部位と射出機での打ち出し角度を変えています。また、歩行者頭部がぶつかる対象部位を、15区画のエリアとし て分類し細Photo_2分化しています。実際の射出機による打ち出し試験は、対象エリア内で最も障害値が高いと推察される部位の1点もしくは2点までに限定し、対象エリア全体での障害値を推定するというもので、試験コストとの兼ね合いもあるのでしょうが、少々荒っぽいとも感じられる試験方法の様にも感じられます。なお、最終評価値は、レベル1(重大な頭部障を受ける可能性が40%以上)~レベル5(同じく可能性が10%以下)までの5段階の評価となっています。
 さて、以上の歩行者保護テストが新型車に与えつつある影響のことを記してみます。最近のクルマでは、フード(ボンネット)裏側の内骨の配置を見直して変形し易くした り、フードヒンジの上下方向への剛性を低くするヒンジアーム形状としたりしています。また、フロントフェンダーと取り付け相手部位との間に比較的柔らかい(沈み込み易い)ブラケット状の別部品を付加したりもしています。それと、フード自体とエンジンとの間隔が小さいと、フードの変形が阻害され障害値を大きくしてしまいますから、フード自体を高くするデザインが取り入れられている車両(下記参照)もあります。従って、昔の比較的高性能エンジン搭載車の一部であった、エンジンの一部との干渉を逃れるためのフードFrの膨らみ(パワーバルジ等と呼ばれる)を付加するボデーデザインは、現代のクルマでは採用できないものとなってしまったと思います。また、スポーティカー等では、空気抵抗やデザイン的な配慮からフードは低く保ちたい場合もあります。この様な場合の対策として、最近新発売のスカイラインクーペでは、歩行者との衝突をフロントバンパー部で検知して、フード後端部を持ち上げる装置(ポップアップエンジンフードと呼称)が採用されています。但し、ここまでのことをやると、歩行者ではなく比較的軽度な他物との衝突でも同装置が作動し、その修理費を無意味に上げ兼ねないという問題が生じないのかと心配になります。(速度20km/h以下では作動しない機構とのことです。)

BMWミニでの新・旧比較:ここでは、一見してフルモデルチェンジしたとは俄には見分けが付かない輸入車として、BMWミニの旧型と新型(2006年フルモデルチェンジ)を見比べてみます。新型では、従来型がヘッドランプがフードに装着されていたのを通常のボデー側への装着した等の変更と共に、フード自体の膨らみ方が従来より明らかに大きくなっていることに気が付きます。(なお、見分けは簡単で新型はヘッドランプ内にウインカーが装着)


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