私の思いと技術的覚え書き

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ランエボXの新機構のこと

2007-10-13 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 国内の自動車販売が低迷しているとのことです。(下記記事参照)本年度上半期(4~9月)の登録車(除軽自)としては、33年前の水準とか伝えられています。しかし、下半期に向けては、間もなく開催されるモーターショーの開催も睨み、この所の各メーカーのニューモデルのラッシュが続いていますから、ある程度は好転して来るものと思われます。

 そんな、ニューモデル中で、注目される一台としてランサーエボリューションX(以降ランエボと表記)が登場していますが、独断と偏見の寸評として記してみたいと思います。

 ランエボは、初代モデル(1992年)は、三菱自動車がWRCへの参戦を目指しホモロゲーションモデルとして、ノーマルのランサーをベースに高性能エンジンとフルタイム4WD機構を搭載し、当初2500台(その後更に追加生産2500台)したものでした。その後、三菱自動車は、自社でのリコール隠蔽問題の発覚等の問題もありWRC活動も休止しました。しかし、ランエボは独自のスポーツモデルとして市場で高評価を受けながら、エボリューション(進化の意)名の通り、進化を続け本年10月よりX(ローマ数字の10代目の意)が登場した訳です。

 さて、独断と偏見の本論として、この新型エボリューションXを評してみます。
 まず、エンジンですが、新型エンジン(4B11型)が搭載されていますが、当然他社にも採用されている最新のメカが一通り採用されていますが、特に見るべき新機構はありません。出力も自主規制値?の280馬力のままです。もっともメーカー側の説明としては、ピークパワーはそのままでも、よりフラットトルクを目指した等のコメントがある様ですが。
 4WD機構も細部には種々の進化がなされている様ですが、飛び抜けた進化といったものは感じられません。シャシというかボデーワークについても、エンジンフード、左右フロントフェンダー、ルーフにはアルミパネルが採用されているのも変わりない様です。なお、私見ですが、三菱自動車のボデーワークについては、各パネルの組み合わせ方等で事故修理の際の補修性への配慮が欠け、トヨタやニッサン車等に比べ修理性(リペアアラビリティ)が悪い傾向が従来から感じられていました。その辺りのことが改善されていれば良いのですが現時点では判りません。Evox
 ボデーデザインについては、個人の好みの問 題があると思います。しかし、私は新型ランエボのフロントマスクが、VW・アウディ系と同様のバンパー下面からフード先端までの大型センターグリルをモチーフとしていますが私の好み合いません。また、フロントナンバープレートの位置が左サイド面に装着される点も違和感を感じてしまいます。
 今回の新型ランエボでの注目のメカとしては、ツインクラッチSST(スポーツシフトトランスミッション)という、独特の6速ツーペダルATがあります。いわゆるトルコンを使用しない電子制御の機械式ATです。しかし、従来の同様システムが、通常のMTでのクラッチ操作をサーボアクチュエーターにより電制していしたのを、この新メカではツインクラッチの名称の通り2組のクラッチ機構(湿式多板式)と、MTギヤ部の奇数段(1.3.5)と偶数段(2、4,6)のそれぞれの2組を有し、これらを電制で切り替える機構です。メリットとしては、1速での加速から2速への変速を例に取ると、1速での加速中は、既に2速のギヤは変速済みで偶数段用のクラッチが切れ待機されています。そして、1速奇数段用クラッチ開放と2速偶数段用クラッチの継続が極めて短時間に行われるというものです。従来のMTを電制したものは、クラッチ開放、スロットルOFF、ギヤの切り替え、クラッチ継続、スロットルONとなり、結構タイムラグが大きいのが欠点でしたが、これが解消されるのが特徴となります。また、従来のAT同様に変速の際にはスロットルを戻さずに済みますので、加速中のターボラグの解消も出来ます。そして、従来のトルコンATの弱点であるダイレクト感の解消と燃費の悪化を防げる訳です。なお、同様システムは既にVW(DSGの呼称)やアウディ車(Sトロニックの呼称)で採用されています。
 興味の尽きないツインクラッチSSTですが、製品自体(ハードウェア)は独ゲトラグ社(GETRAG)製とのことです。また、このハードウエアを制御する電子制御のソフトウェア部分は、当然に三菱自動車製となります。なお、ツインクラッチ機構そのものは、米ボルグワーナー(BorgWarner)製で同社がパテントを保持している様です。また、ゲトラグ製のMTは過去の国産車でも高出力のMT車用として三菱GTO、スカイラインGTR、トヨタスープラ(80系)等に採用例があります。何れも潤滑油としてATF(オートマチックトランスミッションフルード)を使用する事で知られていますので、今回のものも同様と推察します。なお、同社製の製品は、オーバーホール用のパーツが供給されておらず、小さなトラブルでもアッセンブリ交換になってしまうという欠点がありましたが、今回もそうであるのかは明確ではありません。

追記
 ランエボXについては、上記独断と偏見で色々記しましたが、この性能とメカで350万円前後という価格設定(ツインクラッチSST付車は約25万円高)は、相対的には安価なものとも感じられます。(絶対値として350万円は高価ですが。)

<新車販売>33年ぶりの低水準 07年上半期(10月1日18時23分配信 毎日新聞) 日本自動車販売協会連合会が1日発表した07年度上半期(4~9月)の新車販売台数(軽自動車を除く)は、前年比8.8%減の158万8366台で、上半期としては74年以来33年ぶりの低水準だった。
 また、全国軽自動車協会連合会が同日発表したまとめによると、軽自動車も前年同期比6.8%減の89万6334台と、4年ぶりのマイナス。前年度の上半期に新型車発売が続いた反動とみられる。
 9月の新車販売台数(軽を除く)は、前年同月比9.5%減の32万8363台で、27カ月連続の減少。ただ、自動車各社が今年後半からSUV(スポーツタイプ多目的車)やミニバンの新型車を続々投入していることから、2000CC超の普通乗用車は同22.4%増の13万9681台と3カ月連続のプラスとなっており、国内市場に好転の兆しも出てきている。


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