思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

東京都最高峰・最低峰同日登頂

2010-02-28 12:00:30 | 登山

というのを、先週の23~24日にやってみた。しかも冬季に。

同行は、休日よりは平日のほうが都合の良いこともままあるフリーな立場で働いている、でもそのぶん僕と同様にちょいと貧しくていくらかの問題も抱えていたりもする野宿仲間2名(ともに男)で、実はこのおバカ? アホ? 企画は、07年の年末あたりから3人のあいだで挙がっていた約4年越しの宿願であった。でももちろん本人たちは超真剣に取り組んだ。
今回これがようやく実現できて、ついに男同士の約束を果たせて、まあとにかくここ1、2年抱えていた胸の支えがひとつ取れてすっきりした感じ。

ただ、実はこの計画は08年2月にも一度試みたもののそのときは雲取山の登頂は春一番の影響で断念したので、今回が2回目の試みだったりする。ホントはほかにも仲間内で同行者を募りたかったのだが、このふざけた? 計画の首謀者である3人の都合を最優先して、結局は僕も含むこの3人で平日に行ったわけさ。

で、上の写真は24日(水)9時台の東京都西部にある都内最高峰で一等三角点のある雲取山(2017.1m)の山頂なのだが、雲ひとつない絶好の、山頂でついのんびり寝転びたくなるくらいの陽気の登山日和で僕は通算8回目の登頂だー、とかいう感慨はほとんどなく、3か月前にも今回とは別の野宿仲間と登ったこともあまり気にすることもなく、さらにはここが今回の最終目的地ではなくてこのあと下山しながらもうひとつの山への登山の起点としてこの山頂を踏んだ、という経験は僕も過去にないので、新鮮な気分であった。

で、もうひとつの最低峰についてだが、これは人によって解釈というか選択肢が異なると思う。
大きくはふたつあって、ひとつが台東区浅草の待乳山聖天(まつちやましょうでん)という神社で、ここには標高は9.8mの三等三角点があって一応は一般的には山と認められてはいるものの小丘をさらに盛り上げた人工の山らしいということで、僕は2回訪れたことがあるが山と判断するには微妙な感じ。
そしてもうひとつが港区愛宕の愛宕山で、ここにも三等三角点があり、標高は25.7mとなっている。現在は登山道というか参道がいくつか付けられて階段やエレベーターまでもが付設されている人工っぷりの山だが元々は人為的に盛られたわけではない天然の山で、こちらも僕は数回訪れているが遠目から観てもこちらのほうがちゃんと山らしい外観ではある。
ということで、計画時に人工の山か自然の山かどちらにするかの2択で少し悩んだが、結局は三角点の標示がわかりやすいし、それに山って人類誕生以前からの造山運動による自然の賜物でしょう、と思い、さらに国土地理院発行の2万5000分の1地形図にも記載されてもいるということで後者、つまり愛宕山を目指し、登頂した。
あえてヒマラヤ登山風に言うとサミットデイ? となった24日のデジカメ撮影記録を見直すと、雲取山登頂が9時29分で愛宕山登頂が20時5分となっていて、この2点間の移動に正確には10時間36分かかった。とかいう参考記録はどうでもよいか。1日にこのふたつの頂に達した、しかも同じ装備と格好で継続して、という事実のみが当事者間の身体と心に刻み込まれていれば充分かと。まさに自己満足の世界。

そもそも登山とはそういう、レベルの高低に関係なく計画から実行を経て反省と考察に至るまですべて自分たちの力で計画して実行して判断してやり通して楽しみながらその責任もきちっと負うからこそ楽しめる完全に自分のための行為でそれによって周りに意図的に感動を与えるとか伝えるとかなんとかいう押し付けがましい巻き込み方が最近流行るのはおかしいししかも冒険者であるとか無酸素で単独で行ったとか殊更に主張してスポンサーに頼りきって自腹を切らずに行為におよびつつさらにはポータルサイトや雑誌などの各種媒体を利用しつつ余計に一大事にしながら突き進んでゆくのは果たして楽しいことなのだろうか? 第三者の思惑が過剰に介入していてホントに純粋にその行為を楽しめているのだろうか? とかいうことまで書き始めるとまた違ったネタになってしまうので、ここでやめておく。

ちなみになぜ今回は東京都内の山だったかというと、3人ともに最もわかりやすそうでやりやすくもあったから。ひとりは東京都民でもうひとりが千葉県民で僕が埼玉県民と住処はバラバラだったが、普段よく会う、そして仕事する場所というか生活の重点は大概は都内にあるので、やりやすいっちゃあやりやすい。
それに、人口1200万人超の結構な大都会トーキョーで、西部では冬季には写真のとおり積雪も見られる山が連なっていてツキノワグマやカモシカや猪も棲息していたりして、東部には海抜ゼロメートル地帯やお世辞にも超きれいとは言えないがたしかに東京湾という江戸前寿司のネタにも困らない海もあって、つまり標高差は2000m以上あって、何気に都会と自然の多様性がしっかり見られる、そして温暖湿潤気候(ケッペンの気候区分で言うところのCfa)による日本らしい四季もある、ヒトも含めた動物が暮らしてゆくうえではバランスが取れている良い土地であることは世界的に見ても珍しく、そこでより自分たちらしく遊ぶにはどうすればよいか? 果たして何ができるのか? を突き詰めるうえでも面白そうな舞台だと思ったから。そんな「遊び場」として視るうえでも興味深い土地が身近にあることは幸せなことだと常々思っているのだが、それに気付いていない人が結構多い現状がもったいない。
しかも僕の場合、ホントはさらに突っ込んで「人力」でふたつの山をつなげたかったが、「同日登頂」という縛りを考えると多少は公共交通に頼る必要があるのはまあ仕方ない。それは今後の課題としておこう。

以下に、その模様を写真で少し振り返ってみる。



23日(火)、まず雲取山登山のほうは東日原から(3か月前にも下山で利用した)大ダワ林道を登るつもりだったが登山道の崩落と凍結で通行止めという札が掛かっていて、少し戻って野陣尾根・富田新道から登るように変更した。
その序盤の日原林道、陽当たりの良いところは雪もすでに溶けているが、日陰にはまだ雪というか氷が残っていて、ツルツル滑る。場所によってはアイゼンを履いてもよかったかも。



その途中、山側の3mくらい上方でカモシカを発見。この山域は二ホンジカは(近年増えて)よく見かけるし山中でテント泊や野宿すると鳴き声もよく聞くが、カモシカを生で観たのは初めて。しばしお互いにどう動くかの様子見が続いたが、最後はカモシカのほうがさらに上方に逃げた。
が、その逃げ足と腹回りを見ると結構太っていて足取りは重く、肥満体の僕が言うのもなんだがそんな体型で野生動物と言えるのだろうか、とついツッコみたくなった。



当初は雲取山山頂の避難小屋で泊まるつもりだったが、登路の変更で行った富田新道の踏み跡がほとんど消えていて(でもツボ足ラッセルするほどの深い積雪ではなかった)、意外にルートファインディングと急登に苦しみ、冬用の赤テープに助けられた。結局、この日のうちに石尾根上の小雲取山(1937m)にすら上がれず、念のために携行していた1~2人用テントが不本意にも役立ってしまった。
夜は僕も含む2人がテントで、残る1人が寝袋と銀マットで外で野宿。でも気温はそんなに低くなく(20時頃でも3度だった)、野宿した仲間はイスカの厳冬期用の寝袋を使っていたため、寒さは気にならずにいびきをかいて安眠できた模様。



24日(水)、石尾根に上がり、そこから30分ほとで雲取山に登頂。上の写真とほぼ同じ位置だが、山頂の一等三角点を入れて撮ってみた。ホントに雲ひとつない快晴だったので左後方に富士山がくっきり見える。ほかの山々の眺めも最高。
同行者は山座同定に夢中なので、セルフタイマー。ここの無雪期の登頂経験はあっても冬季登頂は初めてだそうで。



雲取山から10時すぎに下山および愛宕山への登山開始。石尾根の開けた場所は雪はほとんど溶けていて水溜まりができている箇所も多く、さらにアイゼンを履きながら下っていると泥が付きまくって歩きにくくてすぐに外したいところだが、日陰の凍った箇所の通過も時折あって簡単には外せない。
結局、2時間ほどアイゼンをいつ外すかのタイミングに迷いながら、途中で山岳救助隊の訓練登山? らしきハイペースの一団に追い抜かれたりしながら下り続けた。



七ッ石山(1757.3m)へは登らず、その手前の分岐から南側の巻き道を下って鴨沢バス停を目指す。そこでも凍って滑りやすくなった箇所があり、まだ辛うじてアイゼンがあると助かる状態の道が予想外に続いて、今回の全行程のなかで最も緊張感のある箇所だった。
何気に、アイゼンを外した状態で歩いていてツルッと滑って写真左側の谷のほうに滑落して大惨事に、という可能性もなくはないからねえ。冬の奥多摩も意外に侮れない山域なのだな。山の事故って、こういう一見たいしたことはない箇所での気の緩みからもよく起こりやすいですし。



雲取山からの下山は完了し、鴨沢からの路線バスと、JR奥多摩駅からのJRと、都心に出て水道橋駅へ。ここから雪山へ行ける格好のまま都営地下鉄三田線に乗り換えて御成門駅へ行く途中。まあ水道橋駅の南側にはさかいやスポーツやICI石井スポーツの支店があってこちらへ行くには違和感のない格好だが、北側へ行ってしかも地下鉄にも乗るとなると、ちょっと浮いた気分。
学生時代はそんなことはまったく気に留めなかったが、そこそこ大人になった今になって平日夕方のラッシュ時に登山の格好で都心を出歩くのは少々恥ずかしい。そんな年頃になってきたのか。



愛宕山東側の、ここの名物? の急傾斜の階段を直登。しかもわざわざ雪山フル装備を背負って、ホントに(簡単にではあるが)雪山に行った直後にこういった急登が残っているのは年齢的にはだんだんキツくなってきたなあ。



で、すっかり暗くなってしまったが愛宕山の三角点に到達した僕。たぶん、この山に冬山用重登山靴を履いてピッケルやアイゼンまで持ち込んだアホなヤツはほとんどいないと思う。まあさすがにアイゼンは境内の石が傷むので使わなかったけど。
三角点の埋まっている石囲いの蓋も開けて、3人でしばらく三角点を愛でたり到達記念写真を撮り合ったり登頂前に買っておいた発泡酒で乾杯したりもした(境内でのそのくつろぎぶりは失礼かとも思ったが、たまの無礼講は勘弁してほしい)。そうして懸案というか目標だった同日登頂は無事に完結した。めでたしめでたし。


同行の仲間もやっとこの継続登山? を完遂できてご満悦のようで、演出役としては楽しめていただけたようでなにより。
それに、僕ひとりだったらこんなくだらない? ことを嬉々としてやらなかっただろうから、最高峰と最低峰というふたつの山を1日のうち(24時間以内)に有機的につなげる、という着眼点も含めて、ある意味新鮮な登山形態で良い経験となった。こんなおバカ企画をともにした(僕よりも歳上で実は結構いい歳した)ふたりに、こちらこそ感謝したい。

そして後日、というか登山からまだ4日しか経っていないが、今回の登山を機に都内以外の最低峰と最高峰の場所をインターネット上で調べるようになったのだが(最高峰はそこそこ気にしていたが、最低峰もより気になるようになった)、いろいろ調べてみるとそういう話に精通している標高・三角点マニアが結構いるものなのね。まあ僕もタモリ同様に読図が得意なほうなので、その気持ちはよくわかる。
今後は、人工の山では(昨秋に行った)日本最低峰と言われる大阪府大阪市の天保山(4.53m)以外のほかの道府県の最高峰・最低峰へも足を運ぶかもしれないので、追々調べてゆこうっと。


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