
2006年5月21日、山梨県甲州市(旧塩山市)の、雁坂トンネルの山梨県側入口。料金所も山梨県側にある。通行料金は、普通車710円、中型車860円、大型車1170円、特大車1980円、軽自動車等560円、原付70円。トンネルの通過時間は法定速度(時速40km)で約7分かかった。
今日、埼玉県と山梨県を通る国道140号の、県境を結ぶ雁坂トンネルに行った。
1998年4月23日に開通したここは自動車専用道路になっていて、人力移動が基本の僕にとっては大いなる課題であった。
雁坂トンネルは、埼玉県熊谷市と山梨県増穂町を結ぶ151.5kmの一般国道140号の一部で、埼玉県と山梨県境の東西に延びる通称“奥秩父”山脈の下を北から南に貫く全長約6.625kmの、一般国道のなかでは日本最長のトンネルである。
1998年に開通する以前はもちろん埼玉県側も山梨県側も当然行き止まりになっていて、いわゆる“開かずの国道”状態になっていた。とはいえ、実はそれぞれの国道終点から山へ登って雁坂峠を越えれば反対側に徒歩で行けるには行けるし(片道7~8時間かかるが)、昔の武蔵国と甲斐国の交易ではこの峠の往来が盛んだったようだが、一般的な移動には主にクルマが利用されている現代では、トンネル開通前はこの国道は(現代人の都合によって)「不便」という扱いになっていた。
まあここのように山で国道が分断されているところは長野県の国道152号や群馬県・新潟県の国道291号など、ほかの地域でも多々あるか。と言うより、人間よりも大昔からある山のあいだを、ここ1~2世紀で人間の都合によって道路を開削して整備して拡幅もして、さらには番号を入れて管理しているのだから、その山のあいだを貫通というか開通させずに人間の都合だけで「不便」だと言うのは、自然環境的にはおかしな言い分なんだけど。
このトンネルが8年前に開通したことによって、埼玉県西部・群馬県と山梨県東部・長野県との輸送や営業や観光の面でのクルマの利便性は格段に上がり、人やモノの流動も活発になった。これだけ記すと、ここは秩父多摩甲斐国立公園の管轄内でいくらかの環境破壊はあって自然環境的には少々問題な事業だったものの、クルマを利用する人間的にはいいことづくめであるように思われる向きもあるだろう。だが、僕にとっては開通以後も両手放しでは喜べない、あえて悪く言うと「中途半端」なトンネルである。
普段は僕が物凄く気になり、雁坂トンネルに関してもいくらかの賛否両論があった、ダムや高速道路の建設と同様の大規模公共事業による自然環境への影響云々については行政にもちろん違和感は多々あるが、ここではそれを百歩譲ってそんな違和感を唱えることは抑えることにして、ここではすでに建設されてしまって開通もしてしまったこのトンネルのもうひとつの違和感というか欠陥について記す。それは、このトンネルは歩行者・自転車・軽車両・小型特殊車両・危険物取扱車両が通行できないのだが、特に僕が好む徒歩と自転車のような人力の移動手段で通行できないことだ。
雁坂トンネルは基本的には歩行者と自転車のような比較的移動速度の遅い手段であっても難なく、人間なら(もちろん人間以外も)誰でも通行できるはずの一般国道140号の一部分であり、仮に建設費用回収や渋滞緩和のためにある区間を有料道路化するにしても、ふつうに考えればそれらの人力の移動手段だけが事業計画段階から締め出されるのはおかしい。
広島県と愛媛県の島々を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」のようにほかの有料道路でも歩行者と自転車が通行できるところは多々あり(自転車の通行料金はどこでも大概30~50円程度)、(動力専用の)高速道路にするのであればまあ仕方ないかな、とは思うが、そこまではせずにあくまで一般国道140号のままでいくのであれば、人力の移動はクルマほどの需要を見込めないからとか、通過するさいの安全性を考えると危険だ(左右にふらふらするとか)、何か事故が起こったらその責任を負わされたくない、といちいち理由を捻出したとしても、歩行者と自転車のような人力の移動手段が締め出されるというのは到底認められるものではない。
しかもここでは現在は原動機付自転車、略して原付も一応通行できるようになっていて(通行料金70円)、なぜ原付は通行できるのに現在は法律上はそれと同じ「軽車両」に分類されている自転車は通行できないのか、その違いが不明瞭で納得がいかない。歩行者と自転車を混同しているのだろうか? 原動力はともに人力であっても、自転車の場合は原付と性能も移動速度もそんなに大差はなく(まあ運転する人にもよるが)、なぜそこで線引きをするのだろうか?
まさか、ここでも自転車は歩行者と同じ扱いにして、自転車は歩道を走るものだ、とかいう勘違いをここでもしているんぢゃないだろうな。
特に、普段クルマを利用しない埼玉県在住の僕の家庭、つまり数十年来の埼玉県民としては、ものすごい不公平感がある。ウチらの血税を使って建設したのだから、人力の移動では通行できないというこんな不公平があるのはおかしい。何のための、誰のための公共事業だ? 「公共」という言葉には社会一般、という意味があるが、こんな差別状態が生まれているようでは“不公平事業”ならぬ“不公共事業”ではないのか? と僕はこのトンネルが開通する以前から常々疑問視していた。だからこのトンネルが8年前に開通したということはもちろん知ってはいたが、アホくさ、人力で通れなければ意味がないよな、とこのトンネルの存在とこの工事にかかわっていた国・埼玉県・山梨県の担当者や企業に腹を立てるのを通り越して呆れていて、これまで放ったらかしにしていた。
だが、交通問題に人一倍関心のある僕としてはそれでもこのトンネルの存在は頭の片隅から一時も離れることはなく、特に北海道の道路事情を調べに行った2、3年前からはやはり一度は行っておくべきかな、というやや前向きな気持ちになり、その頃から行く機会は狙っていた。
日常でも非日常でも移動は基本的に人力で、動力利用の乗り物を運転できないというかあえて運転しないようにこだわっている僕がこのトンネルの状況を確認しに行くにはどうしたらよいものか? 少しは妥協して原付の免許くらいは取得しようか(身分証明書にもなるし)、それともトンネル付近でヒッチハイクすればいいか、などといろいろと考えていた。
で、今回、クルマも運転免許もある友人が観光目的のドライブに連れて行ってくれることになり、そのついでに雁坂トンネルにも行ってくれることになった。
今回は山梨県側から埼玉県側に抜けた。山梨県側の入口近くにある、山梨県の有名な観光名所のひとつである西沢溪谷には登山などで数回訪れたことがあり、そこより少し南の乾徳山(標高2031m)にも登ったことはあって実は山梨県側の土地勘はそこそこあるのだが(移動はもちろんJR塩山駅を起終点とする路線バスかタクシー)、埼玉県側の旧大滝村(現秩父市)の麓のほうは、この国道よりも上方の奥秩父主脈は登山で数回歩いているが三峰神社より西はこれまで未踏状態だったので、今回はクルマで通過するだけになったが麓の様子を見ることができて新鮮な気分であった。
そして肝心のトンネルだが、山梨県側入口近くにある「道の駅みとみ」の展示によると幅員は7.5m(片側3.0m×2)あり、設計速度は40km/h、勾配は山梨県側が0.3%で埼玉県側が3.0%、計画交通量は2200台/日となっていた。ほぼ直線で、当然、非常用の待避所もいくつかある。しかも、これも非常用なのかもしれないが東西両側に申し訳程度だが一段段差のある歩道もあった。なんだ、ガードレールはなくても段差のあるここなら歩行者でも余裕で通行できるではないか、と気付く。自転車も降りて押して歩いて、クルマが通過するときだけ一時停止してやり過ごすようにすれば問題ないだろう。でも管理者側はそういう通行の仕方も責任云々を口に出して嫌がるんだろうなあ。こういうトンネルは全国各地に結構あるのに。
「人力移動では危ない」と危険性のみを指摘するのであれば、ここよりももっと悪条件の、簡単に言うと段差のある歩道が整備されていないようなやや老朽化した? 国道のトンネルも全国各地に多く、僕も道路の端は路側帯の白線しか引いていないようなトンネルを、クルマの流れが途切れたときを見計らって歩いたり自転車で走ったりしたことも多々ある(日本を人力で旅したことのある方であれば、トンネル通過の大変さはよくわかるはず)。しかもトンネル内はふつうの車道に比べると維持管理が難しく、車道外側の白線付近にゴミが落ちていても放ったらかしになっていることが多く、しかもトンネル内に冷気が漂っていたり水が染み込んでいるために路面が常に濡れていて、ふつうの車道以上に通行に気を遣うことになる。
それに比べると幅75cm程度ではあるけれども一応は歩道が付いている雁坂トンネルはそれよりは通行しやすく、僕がこれまでに通行してきたトンネルよりは危険度はかなり低いな、6km超という延長はたしかに長いが全国各地の1、2ケタ国道よりは交通量はかなり少ないからいくらかはラクだよな、と車窓からしっかり確認できた。
だから、直接訊いたことはないのだが、おそらく納得のいく論理もなくただただ危険だからと言い張るであろうこのトンネルの管理者の(推測しやすい)否定的な言い分は説得力に欠ける。
また、これほどの大規模なトンネルを開削するのであれば、歩行者も通行できるくらいのもう少し広めの幅を掘削しろよな、とも思った。東西両方に幅をあと30~40cm削るとなると(だから全体で60~80cmくらい)、余計に大変な作業になったのであろうことは想像できるが、歩道がもう少し広く取れていれば歩行者と自転車の通行以外の何かの役に立つだろうし(例えば、事故や火災などの非常時に一時的に二輪車で歩道を走って救援に向かうとか)、もし普段も人力でも通行できるとなると、トンネルの後々の評価も変わってくるだろう。少なくとも僕はこういうトンネルが人力でも難なく通行できるようであれば、毎年でも毎月でも賞賛するけどな。
また、ここを訪れてもうひとつ気になったのは、このトンネル前後というかここを通行する公共交通、つまり路線バスがまったく運行されていないことだ。まあそれなら個人的にタクシーを呼べは良いのでは? と思う人もいるのだろうが、道路を通行する人は全員が全員そんなにお金持ちではなく、高くつくタクシーは容易には利用できない。それにひとり旅のような小人数の移動では尚更である。交通量には雲泥の差はあるだろうが、人力移動以外にもクルマやオートバイや観光バスではない公共交通手段でしたい人もいるはずだ。こういう山間部ではそういう少数派の期待にも応える乗り物がきちんとあるべきだと僕個人的には常々思っているのだが、何か運行できないものか? 歩行者と自転車を締め出すのであれば、その代替策は練られて当然の場所のはずだ。現状ではそういう乗り物を運行させるのは財政的に難しいのかもしれないが、運行本数は少なくなろうとも需要はあるはずだ。特に休日は。
あと、僕個人的にひとつ考えたこととしては、例えば早朝のクルマの交通量の少ない時間帯限定で、歩行者と自転車が一時的に通行できる開放時間を設けてほしい、ということ。特に休日はいくらかは需要はあるはずだ。まあこれは日にちも月に3、4回程度に限定してもよいだろう。現状のまま、有無を言わさず歩行者と自転車を締め出したままにして、
「歩行者なんか山を登って(雁坂峠を越えて)いればいいんだよ」
などとケンカ腰というかお役所仕事的な堅物な対応の仕方のままでいると、僕のように道路行政に即ツッコミを入れたがる人からは悪く見られ続けて、現在の主な収入源であるクルマの通行料徴収にも風評被害という感じで悪影響が及ぶだろう。
しかも、おそらく現在のこのトンネルを利用する車両の主な移動経路は埼玉県・群馬県から山梨県・長野県かその逆なのだろうが、現在東京都八王子市西部で建設中の圏央道のあきる野IC以南が開通して中央自動車道と関越自動車道がつながることによって、カーブや坂の多い山道を嫌う、もしくは業務上の理由などで移動速度にこだわるドライバーが雁坂トンネルから高速道路に移行すると、雁坂トンネルの利用はかなり減少するかもしれない。
また、雁坂トンネルに関する情報で最近目に付いたところでは、雑誌『BE‐PAL』でシェルパ斉藤が短期連載している「20年目の自転車ニッポン縦断」で、彼が2005年7月8日に自転車で、雁坂トンネルが歩行者と自転車は通行禁止であることは知らずに埼玉県側から山梨県側にトンネルを抜けようとしたが、通行できないことを数km手前で確認し、結局はトンネル直前の店で自転車ごとヒッチハイクしてトンネルを抜けた、という記述があった。
このトンネルの工事にかかわりの深い地元の埼玉県民(特に西部)と山梨県民(特に東部)にはだいたい知られていることだとは思うが(主要な道路地図にもすでに記載されているし)、たしかに、この事例のように関東地方以外の地域から初めて訪れる人や、交通問題にあまり関心のない人にとっては、一般国道なのにもかかわらず歩行者と自転車が通行できない区間もあることは、あまり知られていないことかもしれない。
この記事中にもあった、たまに訪れる自転車利用の旅人がトンネルの手前まで来て立ち往生してしまう、というようなことはもっと積極的に広報していかなければ今後も頻発するだろう。こういう道迷いというか判断の遅さからくる、トンネル手前で通行できないことを知った精神的打撃とそこまでの登坂の過程がいっぺんに無駄になるという断腸の思いとが相まって疲れた身体でUターンの下りに入ることによって事故を引き起こさないためにも、いっそのこと、規制緩和して少しは歩行者も自転車も通行できるようにしたらどうだろう? そういう移動手段をお役所仕事的に無下に追い払うよりは、そういう移動をする人たちが後年に思い出探しにここをクルマで再訪するかもしれない、という期待感も含めて一時的にでも開放すれば、雁坂トンネルの評価はグッと高まるはずだ。
おそらく、トンネルを管理している人というのは普段の移動はクルマに頼りっきりでマジメに徒歩や自転車で移動したことがない人たちばかりだろうから、人力移動者の気持ちがわからないんだろうなあ。こういう人たちからすると、
「歩行者と自転車が通行できないことは数km手前から標識で警告しているのだから、ふつうはわかるだろう」
と思っているのだろうが、特に自転車で登坂する場合は、平地を走るとき以上に全身に、特に足に力を込めてペダルを漕いでいくため、常に前方を見ているとは限らない。踏ん張って歯を食いしばって力強く漕ぐために顔が下に向くことも多々あり、その瞬間に標識を見逃す可能性はある。それに、道路面のゴミや路肩の路上駐車車両などの障害物を除けるために目線が一時的に道路面まで下がることもある。
さらに、右後方から迫り来るクルマの通過を意識するために横や後方に目線が行くこともあり、事故なく走りきるためにはそんなふうにあえて前方以外に意識を向ける必要がある場面も多々あるのだ。クルマにしか乗らない人には人力で移動するときのそういう繊細な感覚はわからないのだろうけど。そうして終いにはお役所仕事の常套句である、「規則ですから」の一点張りで仏頂面で事務的に機械的に、「あなたのここまでの道のりの苦労なんて知ったことではないですから」と冷たくあしらわれるのがオチなのだろうなあ。
まあ以上のようなことを、友人の運転するクルマの助手席(安全運転)であれこれ思ったのであった。トンネル開通から8年間放っておいたが、道路交通をより深く考えるうえでは訪れるのが少し遅かったかもしれない。次はいつになるかはわからないが、自転車でトンネル手前まで行き、このトンネル周辺の自然環境や道路の経年変化などをさらに細かく探っていくつもり。
本項のような言い分は、普段の生活でクルマを多用している人からすると、
「何をくだらないこといちいち気にしているんだ? トンネルのなかを歩いたり自転車で通行したりできるわけないでしょ?」
というツッコミも来そうだが、果たしてそうだろうか?
高速道路ならまだしも、繰り返すがこの国道140号は一般道路で、本来は人力も動力も関係なくどんな移動手段であっても通行できるはずの道路だ。たしかに現代の日本の交通はクルマのような動力に頼る率が高いことはわかっているが、ここに限らずそうやって過半数のクルマに乗る者の論理だけで道路行政が進められて、人力移動者ばかりが不利益を被る風潮はおかしくないか? 絶対数で比較すると少数派かもしれないが、僕の家庭のようにあえてクルマに乗らない人もいて、ほかにも健康・安全面などの理由によってクルマを利用することのない、もしくはできない人もいるはずで、こういう人たちに何の相談や承諾もなしに好き勝手に自動車専用に近い仕様のトンネルや道路を造るという、どちらかと言うと脱クルマ派の僕にとっての“悪行”を平然と行なう神経がよくわからん。これは最近の国政で言うところの米軍再編のグアムへの移転費用負担や社会保険庁の管理体制や建築基準の審査の甘さなどの問題云々と同等の、簡単に見過ごすことのできないただでさえ不透明な行政の大いなる怠慢である、とこのトンネルを今回実際に見て改めて思った。
まあ雁坂トンネルはすでに開通してしまっているので、今更言ってもねえ、という諦め感もあるが、トンネルに限らず今後、全国各地の一般道路でこのようなアホな道路行政が再び行なわれないようにこれを悪い事例として糧にして、今後も全国各地で何か問題を発見次第随時疑問視しまくって、もし僕の今後の旅に、そして多くの国民にとって不利益な交通問題があればそれを食い止めていけるようにできるだけ協力していきたいと思う。あえて動力を利用しない人力移動を好む人だって国や自治体に納税はしているのだ。つまり、道路はクルマだけのものではないのだよ。
今日、埼玉県と山梨県を通る国道140号の、県境を結ぶ雁坂トンネルに行った。
1998年4月23日に開通したここは自動車専用道路になっていて、人力移動が基本の僕にとっては大いなる課題であった。
雁坂トンネルは、埼玉県熊谷市と山梨県増穂町を結ぶ151.5kmの一般国道140号の一部で、埼玉県と山梨県境の東西に延びる通称“奥秩父”山脈の下を北から南に貫く全長約6.625kmの、一般国道のなかでは日本最長のトンネルである。
1998年に開通する以前はもちろん埼玉県側も山梨県側も当然行き止まりになっていて、いわゆる“開かずの国道”状態になっていた。とはいえ、実はそれぞれの国道終点から山へ登って雁坂峠を越えれば反対側に徒歩で行けるには行けるし(片道7~8時間かかるが)、昔の武蔵国と甲斐国の交易ではこの峠の往来が盛んだったようだが、一般的な移動には主にクルマが利用されている現代では、トンネル開通前はこの国道は(現代人の都合によって)「不便」という扱いになっていた。
まあここのように山で国道が分断されているところは長野県の国道152号や群馬県・新潟県の国道291号など、ほかの地域でも多々あるか。と言うより、人間よりも大昔からある山のあいだを、ここ1~2世紀で人間の都合によって道路を開削して整備して拡幅もして、さらには番号を入れて管理しているのだから、その山のあいだを貫通というか開通させずに人間の都合だけで「不便」だと言うのは、自然環境的にはおかしな言い分なんだけど。
このトンネルが8年前に開通したことによって、埼玉県西部・群馬県と山梨県東部・長野県との輸送や営業や観光の面でのクルマの利便性は格段に上がり、人やモノの流動も活発になった。これだけ記すと、ここは秩父多摩甲斐国立公園の管轄内でいくらかの環境破壊はあって自然環境的には少々問題な事業だったものの、クルマを利用する人間的にはいいことづくめであるように思われる向きもあるだろう。だが、僕にとっては開通以後も両手放しでは喜べない、あえて悪く言うと「中途半端」なトンネルである。
普段は僕が物凄く気になり、雁坂トンネルに関してもいくらかの賛否両論があった、ダムや高速道路の建設と同様の大規模公共事業による自然環境への影響云々については行政にもちろん違和感は多々あるが、ここではそれを百歩譲ってそんな違和感を唱えることは抑えることにして、ここではすでに建設されてしまって開通もしてしまったこのトンネルのもうひとつの違和感というか欠陥について記す。それは、このトンネルは歩行者・自転車・軽車両・小型特殊車両・危険物取扱車両が通行できないのだが、特に僕が好む徒歩と自転車のような人力の移動手段で通行できないことだ。
雁坂トンネルは基本的には歩行者と自転車のような比較的移動速度の遅い手段であっても難なく、人間なら(もちろん人間以外も)誰でも通行できるはずの一般国道140号の一部分であり、仮に建設費用回収や渋滞緩和のためにある区間を有料道路化するにしても、ふつうに考えればそれらの人力の移動手段だけが事業計画段階から締め出されるのはおかしい。
広島県と愛媛県の島々を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」のようにほかの有料道路でも歩行者と自転車が通行できるところは多々あり(自転車の通行料金はどこでも大概30~50円程度)、(動力専用の)高速道路にするのであればまあ仕方ないかな、とは思うが、そこまではせずにあくまで一般国道140号のままでいくのであれば、人力の移動はクルマほどの需要を見込めないからとか、通過するさいの安全性を考えると危険だ(左右にふらふらするとか)、何か事故が起こったらその責任を負わされたくない、といちいち理由を捻出したとしても、歩行者と自転車のような人力の移動手段が締め出されるというのは到底認められるものではない。
しかもここでは現在は原動機付自転車、略して原付も一応通行できるようになっていて(通行料金70円)、なぜ原付は通行できるのに現在は法律上はそれと同じ「軽車両」に分類されている自転車は通行できないのか、その違いが不明瞭で納得がいかない。歩行者と自転車を混同しているのだろうか? 原動力はともに人力であっても、自転車の場合は原付と性能も移動速度もそんなに大差はなく(まあ運転する人にもよるが)、なぜそこで線引きをするのだろうか?
まさか、ここでも自転車は歩行者と同じ扱いにして、自転車は歩道を走るものだ、とかいう勘違いをここでもしているんぢゃないだろうな。
特に、普段クルマを利用しない埼玉県在住の僕の家庭、つまり数十年来の埼玉県民としては、ものすごい不公平感がある。ウチらの血税を使って建設したのだから、人力の移動では通行できないというこんな不公平があるのはおかしい。何のための、誰のための公共事業だ? 「公共」という言葉には社会一般、という意味があるが、こんな差別状態が生まれているようでは“不公平事業”ならぬ“不公共事業”ではないのか? と僕はこのトンネルが開通する以前から常々疑問視していた。だからこのトンネルが8年前に開通したということはもちろん知ってはいたが、アホくさ、人力で通れなければ意味がないよな、とこのトンネルの存在とこの工事にかかわっていた国・埼玉県・山梨県の担当者や企業に腹を立てるのを通り越して呆れていて、これまで放ったらかしにしていた。
だが、交通問題に人一倍関心のある僕としてはそれでもこのトンネルの存在は頭の片隅から一時も離れることはなく、特に北海道の道路事情を調べに行った2、3年前からはやはり一度は行っておくべきかな、というやや前向きな気持ちになり、その頃から行く機会は狙っていた。
日常でも非日常でも移動は基本的に人力で、動力利用の乗り物を運転できないというかあえて運転しないようにこだわっている僕がこのトンネルの状況を確認しに行くにはどうしたらよいものか? 少しは妥協して原付の免許くらいは取得しようか(身分証明書にもなるし)、それともトンネル付近でヒッチハイクすればいいか、などといろいろと考えていた。
で、今回、クルマも運転免許もある友人が観光目的のドライブに連れて行ってくれることになり、そのついでに雁坂トンネルにも行ってくれることになった。
今回は山梨県側から埼玉県側に抜けた。山梨県側の入口近くにある、山梨県の有名な観光名所のひとつである西沢溪谷には登山などで数回訪れたことがあり、そこより少し南の乾徳山(標高2031m)にも登ったことはあって実は山梨県側の土地勘はそこそこあるのだが(移動はもちろんJR塩山駅を起終点とする路線バスかタクシー)、埼玉県側の旧大滝村(現秩父市)の麓のほうは、この国道よりも上方の奥秩父主脈は登山で数回歩いているが三峰神社より西はこれまで未踏状態だったので、今回はクルマで通過するだけになったが麓の様子を見ることができて新鮮な気分であった。
そして肝心のトンネルだが、山梨県側入口近くにある「道の駅みとみ」の展示によると幅員は7.5m(片側3.0m×2)あり、設計速度は40km/h、勾配は山梨県側が0.3%で埼玉県側が3.0%、計画交通量は2200台/日となっていた。ほぼ直線で、当然、非常用の待避所もいくつかある。しかも、これも非常用なのかもしれないが東西両側に申し訳程度だが一段段差のある歩道もあった。なんだ、ガードレールはなくても段差のあるここなら歩行者でも余裕で通行できるではないか、と気付く。自転車も降りて押して歩いて、クルマが通過するときだけ一時停止してやり過ごすようにすれば問題ないだろう。でも管理者側はそういう通行の仕方も責任云々を口に出して嫌がるんだろうなあ。こういうトンネルは全国各地に結構あるのに。
「人力移動では危ない」と危険性のみを指摘するのであれば、ここよりももっと悪条件の、簡単に言うと段差のある歩道が整備されていないようなやや老朽化した? 国道のトンネルも全国各地に多く、僕も道路の端は路側帯の白線しか引いていないようなトンネルを、クルマの流れが途切れたときを見計らって歩いたり自転車で走ったりしたことも多々ある(日本を人力で旅したことのある方であれば、トンネル通過の大変さはよくわかるはず)。しかもトンネル内はふつうの車道に比べると維持管理が難しく、車道外側の白線付近にゴミが落ちていても放ったらかしになっていることが多く、しかもトンネル内に冷気が漂っていたり水が染み込んでいるために路面が常に濡れていて、ふつうの車道以上に通行に気を遣うことになる。
それに比べると幅75cm程度ではあるけれども一応は歩道が付いている雁坂トンネルはそれよりは通行しやすく、僕がこれまでに通行してきたトンネルよりは危険度はかなり低いな、6km超という延長はたしかに長いが全国各地の1、2ケタ国道よりは交通量はかなり少ないからいくらかはラクだよな、と車窓からしっかり確認できた。
だから、直接訊いたことはないのだが、おそらく納得のいく論理もなくただただ危険だからと言い張るであろうこのトンネルの管理者の(推測しやすい)否定的な言い分は説得力に欠ける。
また、これほどの大規模なトンネルを開削するのであれば、歩行者も通行できるくらいのもう少し広めの幅を掘削しろよな、とも思った。東西両方に幅をあと30~40cm削るとなると(だから全体で60~80cmくらい)、余計に大変な作業になったのであろうことは想像できるが、歩道がもう少し広く取れていれば歩行者と自転車の通行以外の何かの役に立つだろうし(例えば、事故や火災などの非常時に一時的に二輪車で歩道を走って救援に向かうとか)、もし普段も人力でも通行できるとなると、トンネルの後々の評価も変わってくるだろう。少なくとも僕はこういうトンネルが人力でも難なく通行できるようであれば、毎年でも毎月でも賞賛するけどな。
また、ここを訪れてもうひとつ気になったのは、このトンネル前後というかここを通行する公共交通、つまり路線バスがまったく運行されていないことだ。まあそれなら個人的にタクシーを呼べは良いのでは? と思う人もいるのだろうが、道路を通行する人は全員が全員そんなにお金持ちではなく、高くつくタクシーは容易には利用できない。それにひとり旅のような小人数の移動では尚更である。交通量には雲泥の差はあるだろうが、人力移動以外にもクルマやオートバイや観光バスではない公共交通手段でしたい人もいるはずだ。こういう山間部ではそういう少数派の期待にも応える乗り物がきちんとあるべきだと僕個人的には常々思っているのだが、何か運行できないものか? 歩行者と自転車を締め出すのであれば、その代替策は練られて当然の場所のはずだ。現状ではそういう乗り物を運行させるのは財政的に難しいのかもしれないが、運行本数は少なくなろうとも需要はあるはずだ。特に休日は。
あと、僕個人的にひとつ考えたこととしては、例えば早朝のクルマの交通量の少ない時間帯限定で、歩行者と自転車が一時的に通行できる開放時間を設けてほしい、ということ。特に休日はいくらかは需要はあるはずだ。まあこれは日にちも月に3、4回程度に限定してもよいだろう。現状のまま、有無を言わさず歩行者と自転車を締め出したままにして、
「歩行者なんか山を登って(雁坂峠を越えて)いればいいんだよ」
などとケンカ腰というかお役所仕事的な堅物な対応の仕方のままでいると、僕のように道路行政に即ツッコミを入れたがる人からは悪く見られ続けて、現在の主な収入源であるクルマの通行料徴収にも風評被害という感じで悪影響が及ぶだろう。
しかも、おそらく現在のこのトンネルを利用する車両の主な移動経路は埼玉県・群馬県から山梨県・長野県かその逆なのだろうが、現在東京都八王子市西部で建設中の圏央道のあきる野IC以南が開通して中央自動車道と関越自動車道がつながることによって、カーブや坂の多い山道を嫌う、もしくは業務上の理由などで移動速度にこだわるドライバーが雁坂トンネルから高速道路に移行すると、雁坂トンネルの利用はかなり減少するかもしれない。
また、雁坂トンネルに関する情報で最近目に付いたところでは、雑誌『BE‐PAL』でシェルパ斉藤が短期連載している「20年目の自転車ニッポン縦断」で、彼が2005年7月8日に自転車で、雁坂トンネルが歩行者と自転車は通行禁止であることは知らずに埼玉県側から山梨県側にトンネルを抜けようとしたが、通行できないことを数km手前で確認し、結局はトンネル直前の店で自転車ごとヒッチハイクしてトンネルを抜けた、という記述があった。
このトンネルの工事にかかわりの深い地元の埼玉県民(特に西部)と山梨県民(特に東部)にはだいたい知られていることだとは思うが(主要な道路地図にもすでに記載されているし)、たしかに、この事例のように関東地方以外の地域から初めて訪れる人や、交通問題にあまり関心のない人にとっては、一般国道なのにもかかわらず歩行者と自転車が通行できない区間もあることは、あまり知られていないことかもしれない。
この記事中にもあった、たまに訪れる自転車利用の旅人がトンネルの手前まで来て立ち往生してしまう、というようなことはもっと積極的に広報していかなければ今後も頻発するだろう。こういう道迷いというか判断の遅さからくる、トンネル手前で通行できないことを知った精神的打撃とそこまでの登坂の過程がいっぺんに無駄になるという断腸の思いとが相まって疲れた身体でUターンの下りに入ることによって事故を引き起こさないためにも、いっそのこと、規制緩和して少しは歩行者も自転車も通行できるようにしたらどうだろう? そういう移動手段をお役所仕事的に無下に追い払うよりは、そういう移動をする人たちが後年に思い出探しにここをクルマで再訪するかもしれない、という期待感も含めて一時的にでも開放すれば、雁坂トンネルの評価はグッと高まるはずだ。
おそらく、トンネルを管理している人というのは普段の移動はクルマに頼りっきりでマジメに徒歩や自転車で移動したことがない人たちばかりだろうから、人力移動者の気持ちがわからないんだろうなあ。こういう人たちからすると、
「歩行者と自転車が通行できないことは数km手前から標識で警告しているのだから、ふつうはわかるだろう」
と思っているのだろうが、特に自転車で登坂する場合は、平地を走るとき以上に全身に、特に足に力を込めてペダルを漕いでいくため、常に前方を見ているとは限らない。踏ん張って歯を食いしばって力強く漕ぐために顔が下に向くことも多々あり、その瞬間に標識を見逃す可能性はある。それに、道路面のゴミや路肩の路上駐車車両などの障害物を除けるために目線が一時的に道路面まで下がることもある。
さらに、右後方から迫り来るクルマの通過を意識するために横や後方に目線が行くこともあり、事故なく走りきるためにはそんなふうにあえて前方以外に意識を向ける必要がある場面も多々あるのだ。クルマにしか乗らない人には人力で移動するときのそういう繊細な感覚はわからないのだろうけど。そうして終いにはお役所仕事の常套句である、「規則ですから」の一点張りで仏頂面で事務的に機械的に、「あなたのここまでの道のりの苦労なんて知ったことではないですから」と冷たくあしらわれるのがオチなのだろうなあ。
まあ以上のようなことを、友人の運転するクルマの助手席(安全運転)であれこれ思ったのであった。トンネル開通から8年間放っておいたが、道路交通をより深く考えるうえでは訪れるのが少し遅かったかもしれない。次はいつになるかはわからないが、自転車でトンネル手前まで行き、このトンネル周辺の自然環境や道路の経年変化などをさらに細かく探っていくつもり。
本項のような言い分は、普段の生活でクルマを多用している人からすると、
「何をくだらないこといちいち気にしているんだ? トンネルのなかを歩いたり自転車で通行したりできるわけないでしょ?」
というツッコミも来そうだが、果たしてそうだろうか?
高速道路ならまだしも、繰り返すがこの国道140号は一般道路で、本来は人力も動力も関係なくどんな移動手段であっても通行できるはずの道路だ。たしかに現代の日本の交通はクルマのような動力に頼る率が高いことはわかっているが、ここに限らずそうやって過半数のクルマに乗る者の論理だけで道路行政が進められて、人力移動者ばかりが不利益を被る風潮はおかしくないか? 絶対数で比較すると少数派かもしれないが、僕の家庭のようにあえてクルマに乗らない人もいて、ほかにも健康・安全面などの理由によってクルマを利用することのない、もしくはできない人もいるはずで、こういう人たちに何の相談や承諾もなしに好き勝手に自動車専用に近い仕様のトンネルや道路を造るという、どちらかと言うと脱クルマ派の僕にとっての“悪行”を平然と行なう神経がよくわからん。これは最近の国政で言うところの米軍再編のグアムへの移転費用負担や社会保険庁の管理体制や建築基準の審査の甘さなどの問題云々と同等の、簡単に見過ごすことのできないただでさえ不透明な行政の大いなる怠慢である、とこのトンネルを今回実際に見て改めて思った。
まあ雁坂トンネルはすでに開通してしまっているので、今更言ってもねえ、という諦め感もあるが、トンネルに限らず今後、全国各地の一般道路でこのようなアホな道路行政が再び行なわれないようにこれを悪い事例として糧にして、今後も全国各地で何か問題を発見次第随時疑問視しまくって、もし僕の今後の旅に、そして多くの国民にとって不利益な交通問題があればそれを食い止めていけるようにできるだけ協力していきたいと思う。あえて動力を利用しない人力移動を好む人だって国や自治体に納税はしているのだ。つまり、道路はクルマだけのものではないのだよ。
環境問題への取り組みが建前ではないのであれば、今こそ自動車ありきの交通政策は見直すべきなのではないでしょうかね。
規則としてトンネル内の走行はあくまでも不可だとするのなら、峠を越える何らかの代替手段は不可欠なはずです。
山道では半日はかかりますから、あまりにも不公平ですね。
随分前に書いて忘れかけていたことにわざわざコメント、ありがとうございます。
この機会に改めて自分が書いたことを見直しても再び腹が立ち、その思いはまったく変わっていません。
そうですね、基本的にはこういった一般国道ではバイパスのような代替ルートが設定されていない、しかも始めから有料道路化というのは法的にもおかしなことなのですが、このトンネルは計画時から代替なしですね。まあここは山地だから道路を2本も3本も造れないことはわかりますが。
ただ、これを書いた以降に自転車通勤やマラソンのブーム到来で全国各地で「人力」の市民権が年々獲得されつつあって追い風が吹いていることは感じているので(まあその発生源は主に都市部で、その要因も原油価格高騰とか健康志向とかの人間の所業つまり「負」の要素を見直すことからですが)、それらがこのような道路を二度と設定しない、というか「人力」を締め出すような愚行が行なわれないことにつながれば幸いです。
雁坂トンネルはこのとき以降再訪は一度もできていないので、近々行きたいものです。もちろん「人力」でです。
しかも狭くて暗いトンネルを。
自転車のあの挙動不振な動き。。。
免許を持ってる人の自転車の乗り方と、免許を持って無い人の自転車の乗り方が違う事を知っていますか?
そう、免許を持って無い人の自転車が危険大なのです。
100%に近い人が交通ルールを知らないし、守らないからです。
原付は法定速度30キロですが、万が一の時はそれ以上の速度を出して回避する事もできる。
一方自転車は人力なので限界もありますよね。。。
スピードの違いです。
長くて狭いトンネル内を安全に自転車と車の往来を確保する。。。
100%無理ですね。
日本の有料で長いトンネル内の車道を自転車で通行出来る所は無いに等しいです。
道路公団や国土交通省に聞けば答えを教えてくれますよ。
貴重なご意見、ありがとうございます。おおむねkkさんのおっしゃるとおりですが、それを受けて違和感のあることを以下に。
>車やバイクの走る車道をスピードの遅い自転車が走る危なさをお分かりでしょうか?
都市部の1、2ケタ国道や幹線道路のような交通量の特に多い区間では時折歩道を使わせてもらうこともありますが、僕は基本的には車種を問わず車道通行で通していますよ。
「危なさ」というのは、単に「動力」の交通の車速のことか、もしくは自転車の通行を無視して整備してきた日本の道路構造、のどちらについて指摘しているのでしょうか。まあ「危険」の度合いに個人差はありますが、車道の左側を走れば否応なしにいくらかはわかりますね。トンネルなら尚更です。
例えば10年前に行った北海道の国道5号の稲穂トンネル(倶知安~余市間)は、自転車で通過中はトンネルの暗さ、路肩の路面状態(乾いているか濡れているか)や異物、後方からのクルマの接近による走行音の反響など、様々なことを同時に感じながら進んで生きた心地がしなかったのを、今でもよく憶えています。
>自転車のあの挙動不振な動き。。。
すべての自転車が挙動不審だとは思わないですし、「あの」が具体的にどの性別・年齢の運転者の自転車のことを指しているのかがよくわかりません。
まあおそらくは、車道の逆走、信号無視、無灯火、雨天時の傘を差しながら、携帯電話で通話しながら、などの道路交通法もしくは各地域の条例に違反する運転をしている、車種で言うと主にママチャリのことを示しているのだろうことは察します。
>免許を持ってる人の自転車の乗り方と、免許を持って無い人の自転車の乗り方が違う事を知っていますか?
いいえ、具体的に自転車を利用する方々に聞き取り調査を行なった経験はないので、その違いはわかりません。
ただ、例えば僕はクルマやオートバイの運転免許は取得せずにこれまで生きてきましたが、特に道路交通に興味関心のある方であれば、運転免許の有無にかかわらず、道路交通法遵守で走っていると思いますよ。少なくとも僕はそれを常に心がけています。
まあ残念ながらご指摘のとおり、それに興味関心がない大半の自転車乗りは、自転車を「車両」の一種ではなく歩行者と同じ感覚の交通と捉えて、と言うよりもその事実を知る機会もなく違法な運転だとも知らずにそれが横行していることはたしかですが。
車道通行が危険と感じて歩道に乗り上げてもも、今度は歩道上の歩行者を蹴散らすように爆走する自転車も多いですね(これも違法行為)。本ブログではそういった問題にも時折触れています。
>そう、免許を持って無い人の自転車が危険大なのです。
僕個人的には上記のように、そんな危険な運転をしているつもりはなく、むしろ過剰に速度を上げて自転車を追い越したり、クラクションを鳴らしたり幅寄せをしたりして自転車を威嚇するクルマのほうが危険だと思います。というかそのほうが完全に違法行為で、余計に危険を撒き散らしているようなものです。その場合罰せられるべきはクルマのほうです。
>万が一の時はそれ以上の速度を出して回避する事もできる。
「万が一」はおそらく、トンネル内での事故や火災のことでしょうが、そういった道路をふさぐような異常事態が発生した場合、その地点から現場を避けて進むにも引き返すにも、通行できる幅かなければただの鉄の塊に成り下がるクルマやオートバイは通行できなくても、自転車なら担いで通過できる、ということもあるかもしれません。
さらに爆発や異臭を伴うようなより危険な事態の場合は、どんな移動手段であってもどうしようもないですけどね。
それに、たしかに自転車を漕ぎ進めるうえでの体力的な限界はありますが、自転車でもロードバイクのように車種や運転者の技量によっては時速30km/h以上出せる人もいますよ。まあ高度成長期あたりかそれ以前に造られたやや古いトンネル内によくある上り坂ではその限りではないですが、近年掘削したトンネルはおおむねその内部の傾斜を緩めて、もしくは平坦になるように造られていますから、人によってはそのくらいの速度は出せるでしょう。
>日本の有料で長いトンネル内の車道を自転車で通行出来る所は無いに等しいです。
もちろん本項では高速道路のことに触れているわけではなく(自転車で自動車専用道路は通行できませんよね。そのくらいはわかります)、精確に調べてもいませんが、雁坂トンネルのように本来どんな移動手段でも通行できる道路であるべき一般国道なのにトンネルの区間のみが有料化されている、という事例は全国でも皆無に等しいのでは、と思います。かなり特殊な事例です。
(書いた本人も反省していますが)本項は長すぎて主旨が伝わりにくいかもしれませんが、簡単に要約すると本項ではその有料道路化よりはトンネル建設への運転免許保有者と未保有者との税負担の公平性について問題視しています。
>道路公団や国土交通省に聞けば答えを教えてくれますよ。
そうですね、機会を見付けて訊いてみます。でも訊かなくてもその答えは容易に想像できますけどね。そもそも道路計画に自転車の交通は想定されていなかった(もしくは整備コスト削減のためにあえてしなかった)、遅くて邪魔な自転車なんか歩道を走らせておけばいい、もし自転車を通したとして事故など問題が起こってしまうと面倒だから始めから締め出しておけ、など、あらゆる交通量の道路を自転車で本気で走ったことのない、交通の多様性(つまり「人力」の交通もあること)に目を向けようともしない、交通への発想が貧困な方々がそれに携わっている、という印象があります。
kkさんも僕と同様にこういった問題に関心をお持ちのようなので、もしその報告・考察や改善策の提示とその実行状況をインターネット上などで公にしている場がありましたら、ぜひ読んでみたいです。
今回いただいたコメントタイトルから察するに、もし「動力」の運転免許を保有されていてしかもその立場から自転車の運転技術について講釈している場もありましたら、その視点からの意見もぜひ知りたいです。
徒歩や自転車がダメなら、路線バスぐらい通して欲しいですよね。
通行量や物流が理由なら、その程度しか需要がないのにトンネルを掘るのもおかしい話って感じも?
なかなかいいブログですね。
また遊びにきます!
そうですね、「人力」の移動者のためにはトンネルを通過する路線バス便くらいはあるとよいのですが、現状ではそれよりも数段高価なタクシー頼みですかね。
あとは実例を直接聞いたことはないですが、徒歩の場合にトンネル区間のみヒッチハイクで切り抜ける、という手もあると思います。
全国各地の大規模ダムや高速道路と同様に、需要の有無よりも単に地元の有力者の面子の問題なのかな、と思うふしもありますが、そこは定かではないですね。あまり想像でものを言ってはいけないので、今後も突き詰めます。
では、今後もじゃんじゃん覗きに来てください。いつでもお待ちしております。
釜トンネルに比べると雁坂トンネルはとても安全だと思います。
別の問題、もし高速は無料になったら、甲府埼玉間どう通りますか?私は高速です。秩父の山路は嫌です。そうすれば雁坂トンネルの交通量はかなり減り、いつか無料になりますよ。あのゲートは無くなり。無管理な状態になります。歩行者と自転車は黙って通ります。一度自転車で通りたいです。
釜トンネルは数年前に一度、登山のさいに歩いて通過したことはありますよ。あそこなら冬季閉鎖の期間以外でも主に登山のついでに「人力」で通っている人は結構いるでしょう。
たしかに上高地へ向かって上り勾配で暗くて狭くて危険ですが、マイカー規制していますし、(観光バスやタクシーによって)いつもほぼ渋滞状態で通過車両の車速も比較的緩やかなので、僕としてはなんとか我慢できる範囲内です。
民主党のいち政策の高速道路無料化、はどうなるんでしょうねえ。
ただ雁坂トンネルは一般国道の有料区間なので、それとはまた別の話なのかもしれません(つまり無料化はあまり期待できないかも)。
でも、一般国道の有料道路無料化の事例は全国でよく聞くので(僕の地元では最近、国道254・463号に絡む富士見川越有料道路が無料化されました)、雁坂トンネルにもうっすら期待はしています。
高速道路というと、現在では中央道・八王子と関越道・鶴ヶ島を結ぶ圏央道も部分開通しましたし、そうなると国道140号の交通量にもかなりの変化が出てきていますかねえ。しかも休日のETC割引もありますし。
ああ、指摘を受けるとこの投稿を出した3年前とは道路状況が年々変化してきて、ますます気になります。
でもまあ、雁坂峠を現代にあえて昔の交易のように歩いて越えるのが最もオツではありますが、周辺の自然環境の変化という問題もあるものの一度トンネルを通してしまったのであれば、より多くの人が利用できる「道」であってほしいですね。
雁坂トンネル、山梨側も埼玉側もトンネル入口付近の景観がえらく変わって残念、という意見はたまに聞きます。僕も同感です。
それについては最近では、山岳専門誌『岳人』の山田哲哉氏の連載「奥秩父 山、谷、道、そして人」が特に詳しいので、図書館などでバックナンバーを探せるようであればぜひご一読ください。
正丸トンネルをご存知ということは、埼玉県かその近郊の方でしょうか。あそこも古くからあるので、まあ致し方ない状態ではありますね。
ロードバイクで意を決してシャーッと通過する自転車乗りはたまに見かけます。山梨県・国道20号の笹子トンネルも同様ですね。
ただ、雁坂トンネルのように近年の後発の道路は建設前に何かしら意見を出し合う場がもっとあってもよかったのですがねえ。
今後のトンネルに限らず道路整備全般で、もっと「人力」の移動者に陽が当たってほしいものです。そのためにもとりあえずは「人力」がケンカ腰にならない程度に「動力」との共存を継続的に主張していくしかないのかな、とは思います。
最近の自転車ブーム? が(乗り方、交通法規の面で)良い方向に作用することを期待もします。