思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

埼玉県川口市の保育園児死傷事故現場を見に行った

2006-09-30 15:00:42 | 交通・地理
昨日、2006年9月25日午前に埼玉県川口市戸塚2丁目の市道で発生した、小鳩保育園児の散歩の列にクルマが突っ込み、園児2名が死亡、3名が重体など死傷者を出した事故現場を、事故から4日経過したけれども見に行った(28日に重体の園児が1名亡くなり、死亡は3名になった)。道路交通問題に人一倍関心のある僕としては、やはりこういう現場は、しかも僕の地元である埼玉県内の現場は、自分の目でどうしても確認・検証しておかなければならんのだ。

現場はJR武蔵野線の東川口駅の南約1kmの地点で、駅から徒歩で行ける距離だったので、徒歩で15分ほどかけて現場に向かった。で、そこに着くと、僕が訪れたのがちょうど12時台の真っ昼間で、現場近くには飲食店もちらほらあるためか市道のクルマの交通量は結構多く、多いときでは1分間に6、7台の乗用車・軽乗用車が往来していた。13時以降はさすがに少し減ったが、それでも試しに現場付近で市道の10分間のクルマの通過台数を数回数えてみると、13~15台のクルマが往来していた。生活道路にしてはこの台数は多いよな。
この市道の40m西側に片側1車線で中央線も歩道もある道路(けやき通り)があるのだが、やはりそこを避けるための抜け道になっているようだ。この市道を通過する大半のクルマは地元の大宮ナンバーだったが、たまに春日部、野田、足立などの他所のナンバーのクルマも見かける。そういえば加害者のクルマも足立ナンバーだったよな。
しかもそれらの運転者の運転を見ると、このときは現場の献花台に花を持って手を合わせに来る近所の人たちに気遣って減速してはいたものの、この市道は普段から通り慣れている感があり、幅6m、一部報道では5.8mとも報じられている制限速度なしの生活道路にしては比較的広い道路では、対向車が見られない場合は(交差点の一時停止の標識や停止線があったとしても)たしかに直線道路で前方の見通しは良いから、少しは速度を上げたくなるかもしれない。
でも、加害者の運転していたクルマの事故当時の40~50km/hという速度は、そのときはいくら急ぎでコンビニエンスストアのトイレに行きたいからと言っても速すぎる、あり得ない速度である。ふつうはこういう、地元の歩行者や自転車も多い道路ではほかの通行がたまたま見当たらない場合でも徐行すべきだろう。脇道からの子どもか誰かが飛び出してくる可能性もあるし。
しかも、この市道は初見の加害者が、そんな生活道路で、その速度を出しながら、しかも助手席にあったカセットプレーヤーの操作をするという行動に出る神経もよくわからない。そもそもトイレに行きたいのであれば、そんな操作はできずに運転および前方の視界に集中するはずだが、なぜそこでそんなものを操作するというかできるのか。トイレに行きたかったという供述はウソなのか? とも疑ってしまう。
実はこの追突現場の80m北に、園児たちがその散歩中に目指した(いつも訪れている)戸塚下ヶ戸公園があり、そこに(あまり大きくない公園や工事現場にはよくある)仮設トイレっぽいトイレが1基あり、さらにそこから120m北にミニストップがあるのだが、加害者は市道への進入は初めてであっても店などの位置関係は知っていたのか否かは知らないが、彼がもしそれを知っていれば距離の予測や速度調整もいくらかできたはずなのに、それ以前に車内に普段から携帯型のトイレを備えていれば焦る必要はなかったのに、と残念に思う。

クルマは40~50km/hの速度では1秒で約10m、2秒で約25m、3秒で約40m進むそうだが、加害者にはほんの少しの脇見運転でもそのくらいの距離を進む、という感覚が備わっていなかったこと、そしてたまたまその先に園児の列があったという悪い偶然が重なったことはホントに残念でならない。しかも今回の事故は後方から突発的に来たクルマということで園児も引率者も寝込みを襲われるようなそんな暴走は一瞬では防ぎようがなく、その状況では運転者の良心に頼るしかないのだが、それを裏切られて多大な被害者が出たということは、普段から運転者の良識を疑い、彼ら彼女らの運転ぶりを牽制の意味も込めてよく注視している人力移動派の僕としてもホントに悔しい。もし前方から対向してくるクルマであればその動きが見えるのでいくらか対処法を考えられる余地もあるが、後方からではどうしようもなく、卑怯でもある。

そう考えると、加害者は法律上は懲役5年以下の業務上過失致死傷の疑いで27日にさいたま地検に送検されたが、中央線や制限速度の設定、それにタイヤ痕の有無にかかわらずそんな道路でそんなふざけた走り方をする、ということで懲役20年以下の危険運転致死傷罪に問うべきなのだが、飲酒運転や過剰な速度超過でないと法律上は後者では裁けない、というのは多くの人と同様に納得いかない。何のために重い罰を設けたのだ。もらい事故によって人が3人亡くなっているのに。
その加害者が今回の事故を起こす前に夜遊びをしていたとか、クルマで仮眠していた、という経緯があったのは事故原因としてはあまり関係ないようなのでそれはそれでよいのだが、地元の歩行者が結構いると予測しやすい生活道路を40~50km/hというそこでは尋常ではない速度で走る、しかも本来はそこでは前方を注視して徐行すべきところなのに、加害者のくだらない自己満足のために脇見をした、というだけで危険運転致死傷罪に問えると思う。いくつも意図的な事故原因(罪)が揃っているのに、なぜそれが適用できないのかね。
また、ほかの運転者も、携帯電話の着信、助手席や後部座席にチャイルドシートで固定した幼児の世話なども同様で、少しでも脇見をするかもしれないと予測できる状況で運転する場合は、そんな速度を出してはならん。すぐに一時停止できるようにしろよな。僕も最近の交差点でも携帯電話で通話しながら僕が渡っている最中の横断歩道に進入してくるクルマの運転者をいまだによく見かけるが、緊張感が足りなすぎなんだよなと憤り、思わずボディに蹴りを入れたくなることはよくある。そういう輩も30万円以下の罰金刑ではなくもっと厳罰にして、普段からもっと緊張感を植え付けるべきである。人力移動派の僕の視点から見ると飲酒運転以外にも危険な運転は多々あるのだが、警察関係者はそういう運転以外の物事に心奪われる感覚にいまだに疎いのが残念でならない。

今回の事故や最近全国的に多い飲酒運転事故の報道を見ると、さらには本ブログの2006年9月1日の投稿で取り上げた大型二輪車の歩道走行のようなアホな運転も見ると、現代の動力を扱う運転者はその馬力が自分の実力である、と勘違いし、調子に乗り、しかもそんな過信によって乗り物を扱わないときよりも気が大きくなって周囲への配慮に欠ける、という傾向は年々加速しているように思う。そんな道路交通に携わる人の全国共通の悪い傾向を食い止めたい! という切迫した思いもあって、拙著『沖縄人力紀行』(彩図社刊)を出版し、道路交通や動力利用にまつわるそういった問題にあえて多く触れ、クルマ社会化された現代だからこそ今一度時代に逆行した「人力」による移動の再考を、と主張しているのだが、「免許」という言葉の意味を身をもって理解しながら、それらの運転者の(クルマやオートバイを扱わない普段の生活からの)意識が変わっていかないと、僕の道路交通の理想への道のりは今後も果てしなく長いままだなあ。
今回の事故現場付近で取材を受けていたある人は、
「クルマを運転するとなると加害者にも被害者にも成り得る」
と言っていたが、当然ながら道路交通にかかわる、特に歩行者以外の、自転車以上の速度が出る乗り物を扱う人は僕も含めて全員、加害者にならないようにするための努力を怠ってはならない。クルマやオートバイの運転免許がない僕でも今回の事故現場を見て改めて反省しているのだから、それらを日々の生活のなかで扱う運転者は、たとえ車両後部に若葉マークや紅葉マークを貼っていようが、無違反が自慢のゴールド免許を所有していようが何だろうが、少なくとも僕の10倍以上は反省すべきである。道路は自分以外の人も通行する、という当たり前のことを、どんなときでも常に肝に銘じ、比較的狭い生活道路を適切な速度で走れるような人にこそ運転してもらいたいものだ。そんなふうに周りの空気が読めない今回の事故の加害者のような人間は、乗り物を扱う資格はない! と今回改めて思った。


なお、以下に現場写真を5点挙げておく。すべて2006年9月29日撮影。



① 今回の事故の加害者が進入してきた方向から、保育園児の列に追突した地点。写真手前が南、奥が北。保育園児の目線では現場はこんなふうに映ると思う。



② 上の写真の10mほど先の、クルマが衝突した電柱。その奥に献花台と亡くなった園児たちが好きだったキャラクター人形や菓子が供えられた棚が設置された。亡くなった園児の四十九日法要までは献花を受け付けているそうだ。



③ 追突地点のそばの十字路。北から南に向けて撮っている。12時台はこのように信号機のない市道を選んで通行するクルマが結構多い。



④ ①の写真を撮ったところからさらに10m南に下がったところ。このように対向するクルマがなんとかすれ違える道幅はある。が、道路の端に歩行者や自転車がいる場合はどちらかが譲らないと通行できない、という見た目は全国的によくある市道。



⑤ 追突地点から80m北の、事故当日に園児たちが目指していた戸塚下ヶ戸公園(写真左)そばの交差点。このような大型トラックが進入することもよくある。この周辺は市道が東西や南北に数本交差していて、クルマはここ1本しか通行できないというわけではないのだが、あらゆるクルマがあらゆる方向から流出入し、住宅地を通過していく。



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3 コメント

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これでも業務上過失致死傷罪? (わたる)
2006-10-08 11:22:30
僕が北海道に行っている先週にも、重体だったひとりの園児が亡くなり、この事故の死者は計4人になった。保育園出身の僕としても(認可外の小鳩保育園と違い、園内に庭がある認可型のところだったが。ただ、ここと同様に園外への散歩もよく行なっていた)、ホントに他人事とは思えない大惨事である。



刑事事件でふつうに考えると、4人もの死者が出たとなると無期懲役刑以上に問われてもおかしくないはずだが、それでもこの加害者は5年以下の懲役刑の業務上過失致死傷罪でしか裁けないのだろうか。この園児の親も新聞の取材に対してそれ以上の刑を、と答えていたが、「走る巨大な凶器」を扱う者の素行の悪さによる暴走はどう考えても刑事事件並みの扱いにすべきだと思うけどなあ。こういった事故を裁くほうも裁かれるほうも、動力によるクルマという乗り物への危機感と緊張感が足りなすぎるよ、と人力派の僕としては毎回憤る。

これでいいのか、さいたま地検。
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写真の転用許可について (加藤ショウ)
2015-09-11 10:29:46
はじめまして 加藤と申します。

お願いがありましてメールしました。

貴ブログ中川口市の園児死亡事故の現場写真について、お貸しいただくことは可能でしょうか。

「重大事故の歴史を探る」と題して都道府県別に連載しており、この中で活用したいと考えております。

転用する場合は、写真は加工せず、写真下にブログ名を明記し転用であることを本文と同一のフォントで記載します。

どうか何分のご垂示を賜りますようお願いします。
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承知しました (わたる)
2015-09-30 03:15:24
加藤さま、はじめまして。
今月後半は私用でいろいろあったりもして返事が大変遅くなり、すみませんでした。

それで、貴ブログは全部ではないですが一部を拝読し、上記のコメントの意図もわかりました。
ひとまず、この投稿のサイズを縮小した写真であればご自由にどうぞ。

実は、連絡を受けてオリジナルのサイズのものを探していたことも遅れていた一因ですが(9年前の投稿なものでどこへ仕舞ったかの記憶が……)、今後もし見つかれば、それもメールにてお渡ししようと思います。
あまり期待せずにお待ちいただけると幸いです。
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