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思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々

一般的には遊び(趣味)と見下されがちな「旅」も、人生のなかでやるべき「仕事」である、という気概で旅する旅人の主張と報告。

最近の仕事、『獲物山II』

2019-05-31 23:59:59 | 出版・言葉・校正

忘れていたわけではないが、最近の仕事らしい仕事について。
10日(金)に笠倉出版社から発売のムック、『獲物山II』の校正を担当しました。16年12月発売の『獲物山』の続編である、ということがとてもわかりやすい書名で。

個人的には前回よりも仕事としてやることは少なく、この作業に関して主役の服部文祥氏と会ったのも1日のみだったが、それでも前回同様に隔月刊誌『Fielder』に掲載された服部氏の約2年分の記事の細部で気になる点はそれなりにあり、それに加えて書き下ろしのページとの整合性もしっかり視なければならなかったので、報酬が発生するぶんの働きはしたと思う……。

絶賛かどうかはわからないけど発売中。ではよろしく。

「サバイバル登山家」の初の小説は……

2017-07-10 23:59:59 | 出版・言葉・校正

5月末のネタでも触れた、服部文祥氏の初の小説『息子と狩猟に』(新潮社)が先月末に発売されて、少なくとも1冊は買うつもりだったが、先週に献本をいただいて恐縮。仕事面で、という意味ではこれに関してはべつに何もしていないのに。
それで、まだ熟読はしていないが(『新潮』掲載時に読んだときの印象がいまだに強く残っているため)、聞いたところによると『新潮』の掲載分から一部の登場人物の設定を変更したそうなので、まあなるべく早めに読みましょうかね。

それで、5月に触れた『アーバンサバイバル入門』(DECO)とは別に、これの出版記念という名目の、今夜の東京都・神楽坂の「la kagu(ラカグ)」の2階で開催のトークイベント、というかかねて懇意の石川直樹博士との対談形式のものを聴きに行った。
このふたりは普段からたまに食事をともにするとかいう話はお互いにたまに書き物のネタにもしているので知っているが、今回のように有料の催しとしてのツーショットは、これまでにも地平線会議の場でもなかったような。だから公式? には意外に初めての組み合わせのような気が。
案の定、今作のネタバレが全開だったりとかで予想通りに面白かった。ふたりとも慣れた相手だからだと思うが、それぞれ一人称は終始「俺」で、僕は複数回見聞きしている他所のもう少しかしこまった場の催しでは「私」や「僕」が続くことが多いが、今回はおそらく、食事に行って気兼ねなく語らうときのようなノリで素というか本性が結構出ていたのが可笑しかった。

石川氏が『息子と狩猟に』を絶賛で、服部氏としてはこれを機に小説のほうも書き続けたいというようなことも言っていた。それはそれでよいのだが、本業の『岳人』編集のほうは大丈夫なのだろうか……。服部氏の最近の仕事関係の経路をいくつか知っている者としては、そういうものをいつ書いているのか? と他社の仕事との時間の遣り繰りをいつも疑問に思うのだが……。

そういえば今回、初めてラカグの催しへ行き(ラカグ自体は14年の開業後に、東京メトロ・神楽坂駅から同じく至近距離の「かもめブックス」へ行くついでに2回ほど覗きに行ったことはある)、この入場料は2000円だったが(手数料別)、その入場のための「PassMarket」による電子チケットも初体験だった。申し込みの手続きに少し手間がかかるが、一度買ってしまえば現地の提示ではすんなり通ることができて、最近はイベントにもIT化の波が、と遅まきながら実感した。



終了済みだから出してもよいと思うが、最近はコンサートの入場やLCCの搭乗予約などでもスマートフォンのようなものひとつで済む機会が増えているので、この流れはさらに加速するのかも。

ちなみに、対談後にサイン会もあったので服部・石川両氏の著書のサインももらったが、このために『息子と狩猟に』を1冊買い足したので、現状はこれも2冊所有している。でもその1冊は近々、友人に譲ることになるかも。



※11日(火)の追記
ついでに挙げると、内容的には小説とはほとんど関係ないかもしれないが、5月末のネタでも触れたNHKのドキュメンタリー番組は意外に放送時期が早く、今週末の15日(土)21時に放送ということになった。
NHKBSプレミアムの『大自然グルメ百名山 家族でサバイバルな旅』で、テレビカメラが入ることは稀な結構マニアックな山域で先月上旬に、14年放送の『地球アドベンチャー 冒険者たち 北極圏サバイバル ツンドラの湖へ』と同じ山田和也ディレクターが中心の撮影クルーと行動したそうで。放送が楽しみ。
番組制作の意図は「もっとNHKドキュメンタリー」「NHKPR」のほうがわかりやすいと思う。

『アーバンサバイバル入門』で4作連続

2017-05-31 23:59:59 | 出版・言葉・校正

今月末の固定ネタとして取っておいたのだが、1日(月)発売の服部文祥氏の新刊『アーバンサバイバル入門』(DECO)の校閲を担当した。
まあこれは本の体裁が14年11月発売の『サバイバル登山入門』(現在5刷)とほぼ同じで、つまり同じ系列の扱いの本ということで。

タイトルで触れた「4作連続」とは、服部氏の既刊本の文庫化や編著を除いてその都度の個人的な新作の出版で、14年11月の『サバイバル登山入門』(DECO、現在5刷)、15年6月発売の『ツンドラ・サバイバル』(みすず書房、現在4刷)、16年12月発売の『獲物山』(笠倉出版社、現在2刷)、に続いて今作も校閲(「校正」よりも確認すべきことが多い)担当として携わっているため、ということ。

こんなに仕事として続いていることについて最近は友人知人から、僕のほうから服部氏や版元に懇願して無理矢理にかかわっているのではないか? と勘違いされたり、「服部文祥専属校正者」などと揶揄されたりすることもあるが、一応は1作ごとに事前に報酬の提示とともに仕事として依頼があってその都度ほかの予定と勘案のすえ請けており、結果的にこれまでに足掛け4年もタイミングが合うことが続いたというだけのことで。そこは改めて強調しておきたい。
ただ、客観的に視るといずれの著作も登山および狩猟の業界のなかでもかなり異端というかマニアックで突出した(しすぎた?)内容ではないかと感じるが、それとともに本の制作の進行というか予定にも付いていけるフリーランスの同業者は少ないと思われるため、今作についても結果的には担当できるのは僕だけではないかという自負は多少あるにはある。

それで、今作の内容は書名に「アーバン」とあるように都市生活(服部氏の場合は神奈川県横浜市北部)においてなるべく自力でなんとかするという姿勢を1冊にまとめて見せて、これまでの著作の国内外の登山や狩猟を「動」の話と見立てると、今作はそんなに派手な行動はせずに私生活の範囲内で、自宅とその近辺の物事でほぼ完結するという言わば「静」の話ではないかという印象。まあ今作の服部家の衣・食・住の公開に関して一般的な別の言葉にざっくり言い換えると、登山で使い古した装備の「再使用(流用)」(「リサイクル」よりも「リユース」のほう)や衣服の「修繕」、食べるための動植物の「調達」と獲物の「解体」やその「調理」、09年に購入した傾斜地の「問題物件」の「リフォーム」やそれに付随する「DIY」、生活をより豊かにする? ための道具や物資の調達方法としての「廃品回収」、というようなことなのだが。
それぞれの項目で服部流の細かい流儀というかこだわりがあり、1冊のなかで細かく解説している。

だから僕としては今作は仕事として携わったといっても登山や狩猟の手法というよりも、素人でもなんとか手を出せそうなレベルの土木工事も含むリフォームやDIYに関する広範の知識が求められるため、具体的な調べ物などの作業内容としては(最近増えつつある)ジビエ料理や(都市生活の話ではあるが)田舎暮らしの話に触れていたような新鮮な感覚だった。

ということで、これまでの著作とは毛色が異なるため、今月初めに発売されてもどのくらい売れそうか(世間に受け容れられそうか)という予想は今作が最も難しい。発売後に東京都心の行きつけの書店に出かけると、ふつうに登山関連の棚に入っているが(まあ姉妹書の『サバイバル登山入門』の隣にあることが多いが)、ページをパラパラめくるとおおまかな内容の見た目は料理やリフォームやDIYの本の棚にあってもおかしくないので、今作は特に(僕の後学のためにも)いろいろな書店でこの本の扱いをより注視する必要があるかも、と思っている。

ちなみに、この本に僕が仕事として実際にゲラ(校正刷り)に触れて作業したのは今年の2月から3月の約1か月間なのだが、仕事の依頼自体は昨年7月からあり、その間に制作が滞っていたのは服部氏が本拠地の『岳人』の編集の仕事のほかに別の版元の連載など「書く」仕事にいろいろ手を出しすぎているからで(それに加えて、編集担当の大塚真氏も普段から野外系の雑誌記事やほかの単行本にもかかわっている影響もあるかも……)、僕としては最初に話があってから結構待たされた感はあるが、その間にも仕事に役立ちそうな調べ物をしたり、服部氏の他媒体露出の“監視”の範囲を拡げたり、という準備はしっかり続けていたのでヘンな言い方だがそんなには飽きなかった。そのため、今作に限っては昨年7月から今年3月まで9か月間も携わっていたような感覚で、校正者としてひとつの出版物にかかわった期間では過去最長だった。でも本の制作は出版までに全体的には2年ほどかかったらしいけど。

それで服部氏の出版後の動きについてだが、今月は下旬に東京23区内で出版記念イベントのようなものが相次ぎ、20日(土)に下北沢の「COW BOOKS」で単独のトーク、21日(日)に下北沢の「本屋B&B」で(なぜか今年上半期は出版ラッシュの)鈴木みきとの対談、22日(月)に東京駅前の丸善丸の内本店でサイン会(購入者対象)、25日(木)に神保町の書泉グランデで単独トーク、をこなしていた。らしい。
各サイトでイベント終了後は告知の概要をだいたい削除してしまうのでそれぞれ当日の状況がよくわからないのだが、ツイッターとフェイスブック以外で特に見つけやすいところでは、鈴木みき女史のブログの22日付の記事があるので、まあいずれもだいたいこんな感じなのだろうと想像する。
僕はいろいろあって今月分はいずれも行けなかったが、来月以降にも何かしらの催しはあるようなので、今後のものは行けたら行きたいものだ。実は服部氏とは今作の作業絡みでは会っていないので(最後に会ったのは昨年末の『獲物山』の仕事で)、僕の仕事に関することで不備というほどでもないが問い質したいことが複数あるにはあるもので。そのひとつは4月から本の宣伝のためにツイッターを始めたことだったりするのだが、まあそのへんは追々。

なお、服部氏は来月末に別件で話題となった『新潮』16年12月号で発表済みの『息子と狩猟に』の単行本化が控えているが、これに関しては版元の新潮社といえば校正・校閲業界では最も有名な校閲部があるため、僕は関与しない。なので、服部本に携わった記録? は「4作連続」で止まることになる。べつにその点は全然気にしていないけど。天下の新潮社校閲部の仕事をいち読者として客観的に眺めることにしますか……。

今作に関して今後の僕個人的なことは、(まだ完了していない)版元からの報酬を待ちながら販売の状況を書店に立ち寄ったさいに確認してイベントにタイミング良く行けるようであれば行く、ということで。それになんか年内に再びNHKのドキュメンタリー番組を放送するらしいが、今作と関連性のある内容なのかどうかはまだわからない。
今後も服部氏に関する仕事があるかどうかもわからないが、タイミングが合えばもちろん優先的に検討したい。でも最近は、もしほかの同業者や編集者が担当するとどのような仕上がりの本に変わるのか? ということもよく想像するので、とりあえず小説デビュー作? の『息子と狩猟に』を楽しみにする。まあ内容は15年発表の「K2」とともに知っているのだが、造本と組版ももちろん気になるもので。


※17年7月上旬の追記



本文で触れた6月の催しのなかで、25日(日)に神奈川県藤沢市の湘南蔦屋書店での、数年前から取材や狩猟行の同行などで懇意らしい食に関する著書が多いエッセイストの平松洋子女史との対談形式のものを聴きに行った。
普段、服部氏が(聴衆を掴むためのネタ見せも含めて)単独で語る催しとは違って、その流れは同じだが平松氏からの適宜ツッコミというか質問が入ることによって異なる視点から服部氏のこれまでの行動や思考が改めて整理されて、思ったよりも面白かった。
梅雨らしい雨模様だったこともあって聴衆は定員の3分の1だったが、むしろゆったり聴くことができて(交通費も含めて4000円以上の出費で出かけたが、それでも)有意義な場であった。

あと、先日、この本を2歳児のいる友人へ貸すさいにその子に軽く読み聞かせのようなものをやっていた様子を垣間見ると(元々その家庭は服部ファンなので、世間一般的には忌避感もありそうな獲物を解体するような描写にも理解がある)、ああなるほどそういう使い方もあるのか、と子のための教育書のような役割も担うことができそうだということはこの本を仕事として触れている最中には気付かなかったが、そのような役立て方もあることを改めて思い知った。

今年最後の仕事は、同業他誌ではできない内容の? 狩猟系ムック『獲物山』

2016-12-31 23:59:59 | 出版・言葉・校正

今月末および今年最後のネタは、たまには仕事面について。
今週の26日(月)に笠倉出版社から発売の、服部文祥氏が主役のムック『獲物山』の校正を担当しました。

僕は2年半前から読者をやっている隔月刊誌『Fielder』の別冊扱いのムックであるこれは、2年前から本誌の表紙や特集記事で頻出の服部氏のサバイバル登山の模様をまとめたもので、まあ既出の記事の流用部分が多いのだが今回の出版のための書き下ろしページもあり、それに流用のところも全面的に見直して修正しているので(正直、これまでの雑誌掲載分には誤植が結構ありました……)、自分で言うのもなんだが僕が主役と編集部の間に入ったことによってきちんと1冊の「本」に仕上がったと思う。

仕事の話は今月の上旬に主役からいきなり来て、中旬に僕の担当分は実働5日間だったが集中的にこなして、下旬にはもう出版、というなかなか迅速な流れであった。
服部氏の出版物の仕事は14年の『サバイバル登山入門』(DECO、現在5刷)と15年の『ツンドラ・サバイバル』(みすず書房、現在4刷)に続いて3年連続となったが、過去の2冊とは内容的にはほぼ同じでもう見慣れたものだが、仕事のやり方に関してはムックといってもほぼ雑誌のようなものなのでこれまでの2冊の単行本とは異なる感覚で取り組んでいた。
以前に別会社の仕事で、今秋に石原さとみ主演で話題のドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』第9話で悦子たちがファッション誌『Lassy』の校正を臨時で手伝ったような感じで月刊誌の一部分に携わったことは多少あるにはあるが、今回のようにムックを1冊まるごと担当するというのは初めてだったので、まあその責任感も含めて良い経験になった。

発売前に献本をいただき、確認すると印刷も製本も予想以上に良い仕上がりで(ただ、進行の都合もあって結果的に僕が見逃した誤植が3か所あり、内容に悪影響はなさそうな箇所ではあるがそこは反省したい……)、師走に急な話ではあったがほかの仕事がない時期にタイミング良くかかわることができた。先月は別の仕事で追い詰められていたので、もしそのときにこの仕事の話があったら断っていたところだが、ホントに今月で良かったよ。

そういえば、この仕事に取りかかるさいに『Fielder』編集長は、同業他誌では(狩猟や獲物系の表現は商業誌ではタブー視されがちで)できないことをあえて積極的にやりたい、という希望というか野望があることも聞き、まあそのへんの雰囲気は最近の本誌記事でも全面に押し出しているのでそちらを読めばわかるが、この良い意味で尖った? 姿勢も面白いなと感じていたので、今回の出版の手伝いができたことは幸いと思っている。

さて、そんな挑戦的な? このムック、実際にはどのくらい売れるのかねえ。一応、最近の出版の指標のひとつとしてわかりやすいamazon.co.jpのランキングhontoのランキングも連日チェックしているけれども。

来年も年明けから毎日、この売れ行きは行きつけの東京都内の書店も含めて注視したい。毎度のことだが、やはり自分がかかわった出版物の行方はもちろん気になりますわ。

引き続き、良い仕事ができるといいなあ。
ではまた来年。

自分の仕事に関する小説の映像化など

2016-11-25 23:59:59 | 出版・言葉・校正

先月から始まって放送はそろそろ折り返し地点の今クールのテレビドラマとアニメで、奇しくものタイミングで自分の本職にかかわるふたつの作品が同時期に放送されると、そりゃあ特に注視することになってしまう。ドラマ化は『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』で、アニメ化が『舟を編む』で。後者は松田龍平主演で実写映画化が済んでいるが、実はそれは未見なので、今回のアニメ化が個人的には新鮮だったりする。どちらも主にツイッターで探ると、出版業界関係者に限らず世間一般的にも上半期にヒットしたマンガ誌の編集者の物語『重版出来!』のドラマ化ほどではないが、まあまあ好評のようでなにより。

僕の原作とのかかわりというか現況は、『校閲ガール』(宮木あや子、KADOKAWA)シリーズの今回のドラマ化対象で今夏に文庫化の1作目は月刊誌『ダ・ヴィンチ』の電子版で連載していた頃(単行本になる前)から読んでいるので内容はすでに知っている。『舟を編む』(三浦しをん、光文社)は写真にある今春の文庫化を待っていて、それを読んでから映画を観ようと思ってあえて取っておいたのだが、それよりも今回のアニメを先に観ることにして、併せて原作も読み進めることにしたので、つまり今、同時進行で消化している。

この2作品の放送に関する各種媒体の記事もだいたいチェックしているが、インターネット上で特に印象深い記事を1つずつ挙げると、

●『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』
校閲ガール「うちなら不採用」 業界でも一目、新潮社員のプロ技 (withnews)

●『舟を編む』
本屋大賞、日本アカデミー賞受賞作『舟を編む』が初のアニメ化!誰かが「作っている」ことの想いを届けたい。アニメ『舟を編む』黒柳トシマサ監督×森彬俊ノイタミナ編集長インタビュー (otoCoto)

か。
いずれも、僕の今後の仕事に関して良い効果が表れるといいなあ、と最終回までの展開を想像しながらうっすら期待している。
現時点でも、出版業界外のひとにはわかりにくいと思われる校正・校閲の仕事の実情は、「日テレのドラマで石原さとみがやっていたようなこと」と、ものの例えで説明しやすくなったかもという感はあるので、機会があれば今後はそのように説明してみたい。


また、以下は完全に趣味の話だが今秋はドラマもアニメもまたもや豊作で、ほかには好みの順でドラマでは『逃げるは恥だが役に立つ』(原作マンガは未読。EDの「恋ダンス」が視聴者の動画公開も含めて大人気やね)、『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(4期、※1)、『スニッファー 嗅覚捜査官』(原作小説は未読)、『山女日記 ~女たちは頂を目指して~』(原作小説は未読。ただ今夏に発売の文庫版は買った)、同じくアニメでは『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(2期、※1)、『響け!ユーフォニアム2』(2期、※1)、『ろんぐらいだぁす!』(※2)、『3月のライオン』(原作の連載はたまに読んでいた程度だが、予備知識は多少ある)、を推している。
ドラマもアニメもこれで計5つずつ挙がったが(ホントはもっと多く観ているが)、今月の仕事に支障がギリギリ出ない範囲で主に録画しながら、可能な場合はリアタイ視聴で楽しんでいる。
ホントはそれぞれの作品について挙げたいことはたくさんあるのだが、時間が足りないので断念。まあ、観ればわかる。


注釈
※1 もちろん1期から観ている。
※2 原作の単行本は全巻持っている。アニメ化も1年近く前から知っていて、とても楽しみにしていた。が、作画で綻びが結構あるようで……。後半の巻き返しに期待したい……。

『ツンドラ・サバイバル』が「第5回梅棹忠夫・山と探検文学賞」を受賞

2016-02-29 23:59:59 | 出版・言葉・校正

今月は昨年末から続いている本業と副業の中間のような仕事に勤しむか(でもようやく終わりそう)、風邪で数日間倒れているか、のどちらかの1か月で趣味的なことに費やす時間がほとんどなかった。そうなると本ブログも思いっきり更新が滞ってしまったが(でも相変わらずツイッターと「デレステ」はまめに続けている)、そんななか今月の良いニュースは、昨年に仕事としてかかわったと触れている『ツンドラ・サバイバル』(服部文祥、みすず書房)が「第5回梅棹忠夫・山と探検文学賞」を受賞したことか。

5年目に入ったこの賞の毎年の受賞者や、その一歩手前の最終選考の候補作に残った本の著者は賞の趣旨を考えると当然といえば当然なのだが地平線会議関係者が多いが、今年もその流れに乗ったようで。
服部氏の最速インタビューがAkimamaに掲載されているが(最近はAkimamaは、分野は異なるが勢いとしては週刊文春並みにまあまあ良い野外業界記事を連発しているね)、本拠地の『岳人』よりも他誌で多く書いていたがやはり最近は北海道づいているのね。

まあ他人事ながら、この本づくりのいち関係者? としては受賞はおめでたいしとても嬉しいことであるよ。
しかし、僕は本業である出版物や印刷物の校正の仕事には10年以上就いているものの、単行本(紙の書籍)を扱うのはこの本が3冊目と、正直まだ経験は少ないほうなのだが、間接的にではあるが校正者としてこのような「結果」が案外早めに出たことによって仕事運を使いきってしまった感もあり、そうなると今後の校正者人生の運勢は大丈夫なのだろうか、と逆に少々不安だったりもする。それに加えて昨年も触れたが初版では誤植の直し漏れという粗相が多少残っていた反省点はあり、実は僕個人的には今回の受賞は嬉しさ100%というわけではない……。できればこの本は、初版ではなく2刷のほうで評価していただきたい気分……。

この受賞の影響か先日、また増刷が決まったそうで、たぶん来月中に3刷が出来(しゅったい)すると思うのでそちらもぜひ。誤植の修正は2刷で済んでいるので、そのまま重版のはずの3刷は何も問題ないはず、と信じたい。ちなみに今日現在、僕はこの本をなぜか4冊も所有しているが、3刷が出たらもう1冊増えてしまうではないか。でも1冊は近々手放すつもりだから、まあいいや。
では、引き続きよろしく。


※16年3月15日(火)の追記
今日発売の『山と溪谷』16年4月号に早速、この受賞に関するインタビューが1ページ掲載されている。紙媒体ではこれが初めてか。ヤマケイではこれまでも特集記事などで服部氏の著作の書影付き紹介や書評の掲載はあったものの、服部氏にとっては20年来の『岳人』のライバル誌であるここの取材を受けたのは僕の記憶では初めてかも、という気がする。
同じく今日発売の『岳人』16年4月号の服部氏の連載「今夜も焚火をみつめながら」で、先月にこの受賞の第一報は徳島県の野田知佑邸へ狩猟というか遊びに? 行ったときに知った話を書いているが(そしてこの話で連載をしばらく引っ張るっぽい)、10日(木)発売の『BE-PAL』16年4月号の野田御大の長期連載『のんびり行こうぜ』でもこの受賞の話(→そして祝杯をあげる流れ)を早速書いていて、だから内容が見事にかぶっていて可笑しかった。というかそこで触れているが、野田御大の服部氏への「作家」としての評価がかなり高いことにびっくりした。明日からは「先生」と呼んだほうがよいのかなあ。
ちなみに、せっかくなので「ライバル」の件でついでに挙げると、同じく今日発売の『PEAKS』16年4月号の森山憲一氏の連載「山岳スーパースター列伝」でも服部氏をタイムリーに取り上げていて、ふたりは同世代ということで大学新卒時からヤマケイと岳人のそれぞれ「登れる編集者」としてお互いにライバル意識があった? とかいう僕も初耳の話が面白い。
ということで、今月は登山専門誌各誌で服部氏が(今月公開の山岳映画『エヴェレスト 神々の山頂(いただき)』の取材を受けまくりの岡田准一ほどではないが)いつになく目立っている観が。今回の受賞を機に、著作がさらに売れるとよいのだけど。

細く長く売れているらしい、服部文祥本

2015-12-05 12:00:00 | 出版・言葉・校正

昨秋からちょいちょい触れている、服部文祥氏の著書の続き。

写真は先月30日(月)の朝日新聞夕刊の広告だが、昨年に仕事でかかわった『サバイバル登山入門』(DECO)は4刷だそうで。今年の上半期に3刷を増刷したのは知っていてそれも買っているが(だから現在、この本は初版、2刷、3刷、の計3冊を所有している……)、4刷も一応買わなければ。
ちなみに、初版に残っていた昨年の僕の仕事だけでは対処しきれなかった細かい変更点や誤字は2刷で修正されているので、2刷以降もその修正後のまま「重版」し続けていると思う。僕は4刷は未確認ですけど。まあ追々。


それから報告が遅れたが、今年6月に出版の『ツンドラ・サバイバル』(みすず書房)のほうにも進展があり、具体的な時期はよくわからないのだが9月あたりに2刷を増刷している。
それでその前の8月に、こちらでも今年の僕の仕事だけではどうしても拾いきれなかった誤字がいくつかあったのは6月に把握していたので、服部氏とのやりとりを経て修正し、それが2刷で反映されている。この本では校正担当として名前が出ているので、いかなる理由であっても誤植があるのは僕の責任なので心苦しいのですが……。

ということを実は、先月に行った札幌市内の書店で2刷の本を実際に触ってようやく確認した。だから、僕はまだ2刷は所有していない……。
というのも、僕がよく行く埼玉県や東京都の書店では初版が多く出回っていてまだ残ってもいるため、それが捌けないと新しい2刷は入荷しない。だから発見が遅れ、むしろ東京近郊や名古屋・大阪のような大都市圏にある大型書店以外の、本の取り扱い量が比較的少なくて発注の回数の多い地方の書店のほうへ最新の本がまわりやすいという現象がある。(出版業界の専門的な話になるが)これは取次の倉庫に元々あった初版と、後にやってきた2刷とどちらの本を先出ししているのか、版元と倉庫の在庫管理のさじ加減にもよる(←僕はこのような出版流通の陰? の仕事の経験者でもあるので……)。

ただ、2冊ともに誤字などを修正したといっても、いずれも本文の内容の訂正・改正にかかわるような致命的なものではない、僕と同業者にはすぐにわかりそうでも読者はほとんど気付かないであろう、本づくりにかかわった者のみ納得いかないから直せるのならば直したいというとても細かい事柄で、内容自体は何も変わっていないけれども……。引き続き、内容は良いので強力にお薦めします。

そういえば、服部氏が連載とともに最近の特集にも頻出の雑誌『Fielder』の、10月発売のvol.24に特別付録のDVDが付いているのだが、再生時間は約50分と案外長めの充実した内容で、しかも『ツンドラ・サバイバル』で取り上げた山域の一部を巡っているので関連性もあり、『サバイバル登山入門』とともにこの2冊の読書の参考に併せて観る、なんなら活字と映像を同時に消化するとなお良いと思う。僕はこの号は「保存用」と「布教用」に計3冊も買ってしまった。

ここ数年は服部氏がレギュラー状態のモンベル「冒険塾」は、今年(先月28日(土)の開催)は行かなかったが、ここでも本の手売りでは昨年以上に売れたのかなあ。

もうひとつそういえば、10月下旬に江戸川区内の図書館で催された、みすず書房社長の持谷寿夫(もちたに・ひさお)氏の講演会を聴いたのだが、そのなかでみすず書房としては細く長く売り続ける「ロングセラー」の本を出版することに注力しており、おおまかな目安として2万部ほど売れていると嬉しい、というか「作家」として認知されてもよいのではないか、という趣旨の話もあった。服部氏の場合はこの版元からの1作目『サバイバル登山家』が小刻みな増刷を重ねて2万部以上は売れているようなので、その該当者でつまり「作家」なのだろう。

まあとにかく引き続き、(僕が宣伝しようがしまいが実入りは何もないけど)2冊ともに良い本なので、よろしくお願いします。


※15年12月31日(木)の追記
先週末に、都内の書店で『ツンドラ・サバイバル』の2刷を見つけたので買い、所有はようやく初版と2刷の2冊になった。今後の売れ行きはまったく読めない。雑誌など各種媒体の狩猟特集のようなもので取り上げてくれない限りは、動かないかも……。

『ツンドラ・サバイバル』の書評のようなもの

2015-07-21 23:59:59 | 出版・言葉・校正
(追記ありの)先月末ネタで触れた、発売から3週間経った『ツンドラ・サバイバル』(服部文祥、みすず書房)の続き。
紙媒体での書評等は主に来月以降だろうが、ひとまず今月にインターネット上で見かけた書評というか紹介記事のようなものは、掲載日順に挙げると以下。

「世界は、生きるに値する」 服部文祥最新作「ツンドラ・サバイバル」 (A kimama)
帰ってきた炎の営業日誌 (WEB本の雑誌、7月10日付)
ニュースの本棚 狩猟と獣肉 内澤旬子さんが選ぶ本 (BOOK asahi.com = 朝日新聞7月12日付朝刊読書面)
(耕論)火山国の私たち (朝日新聞デジタル)

朝日新聞の2本は、12日(日)と14日(火)のそれぞれ朝刊に掲載されている。
このなかでも特に朝日新聞読書面に掲載の、数年前から服部氏とも対談企画で親交のある(現在は香川県・小豆島在住で罠猟師との兼業作家となった)内澤旬子氏の記事が影響力は最も強いか。
(耕論)のほうはいわゆるオピニオン(意見)記事なのでこの本の紹介・宣伝とはあまり関係ないが、「生きる」ということについて良く解釈すればなんとなく関係あるかもしれない。

あとは今日、これまた服部氏と親交のある高野秀行氏がツイッターで本を読んだことに触れていた。今後、ここ数年は主に書評記事を扱うブログにまで詳述するかどうかはわからないけど。
僕は仕事としてこの本を扱ったため、読者目線で客観的に面白いか否かがよくわからなくなっている(感覚が麻痺しているようなものな)ので、第三者の評価には普段の極私的で趣味的な読書のとき以上に敏感になっている。現在の服部氏と同業者のノンフィクション作家界隈では随一の本読みである高野氏のこの評は、今後の良い判断基準になりそう。

19日(日)、湘南T-SITE(蔦屋書店)の催しで服部氏と編集・浜田氏に会ったときに、初版の発行部数とここ1か月弱の売れ行きについても多少聞いたが、上手く今後の書評が出れば年内に早めの増刷もありそうな気がする。現状、この本の僕の仕事の担当分で要修正の致命的な誤植というか不備はないと思っているが、今抱えている別件の仕事が片付いてから後日、再び精査してみようと思う。

インターネット販売ではよく品切れになりやすいamazon.co.jpよりも、honto楽天ブックスのほうが入手しやすいはず。
書店でも書店以外でもどちらでも、ぜひ。



※別件の追記
服部氏の新刊とは別の既刊でひとネタ加えておくと、僕はこれはまったく聞いていなかった動きだが、みすず書房から2作目の『狩猟サバイバル』が15年4月10日付で増刷して10刷になったと、湘南T-SITEの店頭で初めて知った。新刊と併せて売れるといいなあ。

今年上半期の大きな仕事は、『ツンドラ・サバイバル』の校正というよりも校閲

2015-06-30 23:59:59 | 出版・言葉・校正

昨年11月に出版された『サバイバル登山入門』(DECO)に続いて、先週の26日(金)に発売の服部文祥氏の新刊『ツンドラ・サバイバル』(みすず書房)の校閲を担当しました。

僕はこの仕事ですでに5回ほど通読しているが(校正・校閲では「読んで」はいけないと思いつつ、どうしてもそうなっちゃう……)、服部氏がみすず書房からの出版は3作目のこの本はざっくり簡単に言うと、服部氏の本拠地である月刊誌『岳人』で13年1月号から14年12月号まで連載していた「超(スーパー)・登山論」を1冊にまとめたもので、僕としてもその連載はすべて読んでいて予備知識は存分にあったので、物凄く取り組みやすかった。『サバイバル登山入門』のときよりも作業に費やせる時間も比較的多かったので、改めて調べ直したことも多かった(もちろん、だからといって『サバイバル登山入門』がダメだというわけではない)。
しかし、校閲部が設けられているような大手版元が単行本1冊を校正・校閲するのにふつうは2、3か月は費やすところを、これは初校・再校含めて1か月ほどで、そりゃあ時間はいくらあっても足りない感じだったけど。4月下旬の黄金週間に入る直前あたりから1か月で、連休や週末なんてお構いなしの完全に一般社会とは異なる曜日・時間感覚でゲラ(校正刷り)と向かい合っていた。

内容に関してはあえて触れないが、月刊誌連載で毎号ぶつ切り感覚だった国内の5つの登山と、NHKBS番組制作で13年秋に行った極東シベリアのツンドラ地帯での徒歩行と、国内編・国外編の二部構成できっちり章立てもして1冊にまとめるとしっかり映えるもので、1冊のなかでの文章の統一感(専門的な表記とか言葉の意味とか)を、服部氏の筆致を損なわないように努めながら出すのに特に気を遣った。

ちなみに、今作では(写真提供以外では)初めて後ろの「あとがき」の最後のほうに、本づくりにかかわった関係者を挙げており、一応そこに僕も加わってしまった。ただこれは僕から望んだことではなく、入るか否かは著者・編集者にお任せ状態だったのだが、完成品を見ると結局は入っていたということで。なんか、より責任を感じちゃうなあ。でもまあ、名前が出たとしてもそれに恥じない仕事はきっちり果たしたつもりですけど。

上の写真で2冊出しているのは、1冊は先週末にふつうに買い、もう1冊は服部氏のサイン入りを今日いただいた(届いた)。年内にもう1冊増えるかも。それが初版なのか重版がかかって2刷になるのかは、今後の宣伝次第かなあ。

というわけで、来月に早速この新刊絡みの催しが東京都・東京ビッグサイトと神奈川県・湘南T-SITEとひとまず2か所で決まっていたりもして、今後の売れ行きはいち関係者として僕もそれなりに緊張しながら見守ってゆくことにする。より多く売れますように。


なお、基本的に貧民の僕が27日(土)の投稿のように本をいろいろ買うことができた理由は、この仕事の報酬のおかげで。
まだまだ充分とは言えないが、今後の仕事に役立つ資料となる本もいくつか揃えることができたので、これを機に新たな仕事が増えるといいなあ(と、毎回願っている気がするが、現金な性格なのでまあいいや)。



※7月1日(水)の追記



先週、この本と同時期に『Fielder』vol.22も発売されたが、服部氏は表紙と特集の序盤に登場している(それとは別に、自宅でニワトリを飼っている話の連載は3回目)。今回、表紙でついに(『岳人』でも許されない?)どアップ写真になった。
ただ、特集の記事はサバイバル登山というよりも最新の道具論のようなもので、どちらかと言うと『サバイバル登山入門』の内容に近いかもしれない。


※7月7日(火)の追記



本文で触れた催しの、4日(土)の東京ビッグサイト(の東京国際ブックフェア)のほうを観に行ってきた。
出展ブースの一角で、思ったよりも小規模の場だった。聴衆は、着席してじっくり聴くほどでもない通りすがりの来場者も含めて、最大で30人くらいか。混雑するこの会場では仕方ない。
しかしまあ、新刊とはあまり関係ない某裏話も聴くことができて、小さいながらも有意義な場であった。


※7月21日(火)の追記



19日(日)、結局は湘南T-SITEのほうも聴きに行った。参加者の規模は当初の告知では80名の募集だったものの、残念ながら? 人が集まらなくて縮小されてしまって4日とほぼ同じくらいになっていた。
上の写真は会場を撮れなかったので、行ったという証拠のレシート。蔦屋系の催しは初めて行ったのだが、催しの参加費500円にも消費税をきっちり上乗せするのね……。
終了後、「なんだ、また来たのか」みたいな顔をされた服部氏に(5月にもこの仕事の件で一度会っていることもあり)、『ツンドラ・サバイバル』とは別の本にサインをもらい(これで服部サイン本は8冊になったか。もらいすぎ?)、併せて今回の仕事ではゲラのやりとりでお名前を存じ上げてはいたが直接お目にかかる機会はなかった担当編集の浜田優氏とも初めて挨拶できた。実はこれが主目的だった。

そういえば湘南蔦屋書店、昨年に行った代官山蔦屋書店と内外ともにほぼ同じつくりの建物だが、まだ周辺の空き地は再開発し終わっていないくらいに土地が広いので、なんとなく代官山よりも店内はゆるい雰囲気だった感がある。でも最近は藤沢・辻堂あたりはめったに行かないので(この日も約2年ぶりだった)、今後しばらくは再訪する機会はなさそうだなあ。今後も、埼玉県民の僕でもつい行きたくなるくらいの大きな催しがあればいいけどなあ。

『サバイバル登山入門』は増刷して、そうなると完成度は……

2015-03-21 23:59:59 | 出版・言葉・校正

昨年11月からしつこく触れている服部文祥氏の近著『サバイバル登山入門』は定価がお高いわりには売れているようなので、今月上旬に増刷した。それでこの2刷が、流通しやすい東京都心の書店以外の全国の書店にも、追加注文等でそろそろ全国的に出回っている頃だと思う。

この本の書評や服部氏自ら登場している取材・宣伝的な記事はこれまでに10誌ほど確認したが(登山専門誌では、『山と溪谷』『ワンダーフォーゲル』『PEAKS』『ランドネ』とほぼ網羅している)、ようやく今月になって服部氏の本拠地である『岳人』の15年4月号でも取り上げた。しかも、俳優の瑛太が最近のサバイバル登山(鹿撃ち)に同行した、という体で。
瑛太は『岳人』には12年6月号以来だから2年8か月ぶりの登場だが、宣伝としては当然ながら効果絶大の有名芸能人絡みのこの目玉企画的な記事を出したいがために、本の紹介をここまで密かに引っ張ってきたのね。まあ本を出版するときの、その帯に著者本人よりも世間一般的に有名な人物の感想などを添えた(要は有名人の言葉を借りて説得力を付け加えた)宣伝文句のような「権威付け」としては、(人間関係も)利用できるところは最大限利用しようという意味では至極真っ当な手法ではある。

また、昨年末にも触れた『Fielder』で、先月発売のvol.20にも服部氏が登場していて、となると2号連続か。この「道なき道を行く」という、地形図・コンパスやロープも積極的に駆使して行動するような山岳専門誌とはひと味違う野性的で突っ込んだ内容の特集も興味深かったもので。
ちなみにこの号から、服部氏は自宅で飼育中の鶏に関する新連載「ニワトリのいる暮らし」も始めていて、その挿絵を美大卒の奥様が描いている。つまり夫婦合作のような体の見開き記事になっている。どのくらい続くのかはわからないが、この雑誌としては昨秋から完全に服部氏に心酔したということなのかねえ。

それで、2刷は僕も先週に都内で行きつけの、それに売れ行きも比較的良いらしいジュンク堂書店池袋本店とブックファースト新宿店で確認したが、実は初版から修正している箇所がいくつかあり、結果的には改善されている。
とはいえ初版から全体的な内容に変更はなく、しかし著者の服部氏はじめ制作にかかわった者としては初版のままでは微妙(というか心残り)で増刷の機会に修正できるものならしておきたい、という細部の問題点があるにはあり、僕が昨秋の発売後に指摘した部分も含めて直してある。よって、本の完成度は2刷のほうがやや高い状態だが、まあ「やや」なので大差はなく、瑛太も狩猟免許取得を検討し始めたくらい読み込んでいるという初版でも内容的には問題なし。

書評等はそろそろ落ち着いたので、今後の販促はどうしたものかねえ。そういえば、地域を問わず図書館に入ったという話はほとんど聞かないが(先日、野暮用でたまに行く東京都立中央図書館にあることは確認したが、それ以外では……)、この本の最大の特長である狩猟に関する写真の数々が引っかかるのかねえ……。
今後もこの本に関する何か大きな動きがあればかかわった責任上、随時触れてゆくつもり。

2刷は「確認」しただけでまだ買っていないので、来月後半に振り込まれるはずの(先頃やや苦戦した)確定申告の還付金で買うつもり。最終的にはこの本を少なくとも3、4冊は所有することになるかもしれない……。


※15年3月下旬の追記
そういえば、『岳人』15年4月号は14年9月号のリニューアルから8冊目となって今年から新連載も増えてそろそろ安定してきた感が(ただ、誤植は相変わらず毎号漏れなく目立つけれども……)。それで昨年中は毎月買っていたが、今年からは毎月買うのはやめて特集やほかの記事の興味関心の有無を吟味して買うか否かを決めてゆく一昨年までと同様の形態に戻した。4月号の場合は、瑛太絡みのネタが面白いので買いですけど。

もうひとつそういえば、1か月以上先のことだが新規案件として、5月15日(金)に神保町の書泉グランデでトークショーが催されるそうで。つまり、なにがなんでもここで50冊を売り捌きたいということで……。売れるかな。僕ももう1冊をここで買うか否か、ここで申し込みの枠を(服部氏の話はしょっちゅう聴いている)僕が1枠取ってしまうことの良し悪しも含めてしばらく検討する。

追記の追記。上の5月15日の件だが、この催しの「参加方法」は『サバイバル登山入門』の購入のみかと思いきや、誤解を招きそうな書き方なので28日(土)に店頭で直接確認すると、購入はこれ以外の服部氏の著作でも可とのことで(つまり、安価の新書・文庫でも……)。ただやはり店としては、『サバイバル登山入門』刊行記念の催しなのでこれを買うのが望ましい、とのこと。そりゃそうだ。

『山と溪谷』15年1月号の校正の結果

2015-01-30 00:00:00 | 出版・言葉・校正

発売は先月の号だが、『山と溪谷』15年1月号は一昨年の『PEAKS』13年3月号と昨年の『岳人』14年9月号に続いて、のネタ。月刊の山岳専門誌の3つを揃えておかねば、ということで。
『山と溪谷』は1月号に限っては付録の「山の便利帳」が欲しいので20年前から毎年買っているが、その質は年々上がっているか。今号では昨年4月からの「日本の主な山岳標高の改定」の標高変更も反映されているし。
以下、校閲というほどではなく校正というか実質は素読みで気になった点について。疑・改(疑問点)と×・○(明らかに誤字脱字)は『岳人』のときと同様。

まず、特集「100人が選んだ日本の名ルート100」の紹介者の、P29-31略歴とP34-93本文上の肩書きの齟齬について。

●13 大友晃

疑 日本山岳ガイド協会認定ガイド
改 日本山岳ガイド協会認定登山ガイド、もしくは登山ガイド

※大友氏はP42では「登山ガイド」とあり、「山の風」ウェブサイトの「プロフィール」では登山ガイドステージIIと明記されている。

●21 佐藤佑人

× 山岳ガイド
○ 登山ガイド

※佐藤氏はP47では「山岳ガイド」とあるが、ここ数年の同業他誌(主に『PEAKS』など(えい)出版社の出版物)に頻出する様子では「登山ガイド」だったよなあと思い、引っかかる。ツイッターの更新は一昨年に止めたようなので近況はよくわからないが、ひとまず見つけたGoogle+では「登山ガイドステージ2」とある。

●24 早川輝雄

疑 ネイチャーフォトグラファー
改 山岳カメラマン、もしくは山岳写真家

早川氏はP29では「ネイチャーフォトグラファー」でP47では「山岳カメラマン」とあり、このふたつは同じ自然を撮影することを生業にしていても被写体が微妙に異なる気がする。ちなみに、著書のひとつの『宮城県の山』(山と溪谷社)の著者略歴では「山岳写真家」のようで。改訂版でも同じかどうかは未確認(→後日、改訂版で「フリー山岳写真家」と確認)。

●43 渡辺幸雄
●51 中村成勝

×社団法人JPS、社団法人日本写真家協会
○公益社団法人日本写真家協会、もしくは(公社)日本写真家協会

※「日本写真家協会」でもその略称の「JPS」でもどちらでもかまわないが、どちらにせよ日本写真家協会は現在は「公益社団法人」であるね。

●98 菊池淑廣

疑 フォトグラファー
改 フォトライター

※菊池氏は、P92では「山岳ガイド・フォトグラファー」だが、P31では「山岳ガイド・フォトライター」とあり、屋久島にある広告事務所「屋久島メッセンジャー」では「フォトライター」として写真と執筆の両輪で活動しているようなので、「フォトライター」のほうがよいかと。

写真を生業にしている方の場合、僕も以前から趣味で写真展をよく覗いているので展示内容と会場の雰囲気でなんとなくわかるが、自身の肩書きで「写真家」か「カメラマン」か「フォトグラファー」のいずれかにこだわっていることが多く(雑誌・広告、人物、自然など撮影対象へのこだわりや仕事との絡みにもよるのか)、こだわりの強さから標榜しているもの以外の呼称を充てると(特にベテランは)激怒する、みたいな話も聞いたことがあるので、紹介するさいは要注意か。単に横文字の好き嫌い(カッコつけ?)もあるのかもしれない。
さらに、菊池氏の「フォトライター」や、近年たまに見られる「カメライター(カメラ+ライター)」という造語のように(この分野の大御所の「作家」で例えると藤原新也や椎名誠のように)写真撮影と物書きを両立させていることを肩書きから目立たせている方もちらほらいたりして、肩書きの判別というか取り扱いはさらにややこしくなる……。

また、登山に関するガイド業を営む方の場合の○○ガイドの呼称は、僕も一昨年あたりから注視しているが、現行の有資格の場合は公益社団法人日本山岳ガイド協会の「資格の種類」にある基準をもとに職能範囲に応じて「登山ガイド」や「山岳ガイド」などと厳密に書き分けるべきである。欲を言えば僕の地元の埼玉山岳ガイド協会のように、それぞれステージ(IかII)の別も併記するとなお良い。ヤマケイに限らず、この扱いは伝える媒体側もガイド業を営む本人も、つまり登山業界全体的にまだ曖昧な気がする。
尾瀬・富士山・屋久島のような観光客や登山客が特に多い地域ではその地域限定で通用するガイド組合のような仕組みもあるようだが(顧客を連れ歩く場合は旅行業のいわゆる「旅程管理主任者」のような立場?)、日本山岳ガイド協会の資格を基本とすると無資格の人でも、地域限定ではあるがツアーリーダーのような仕事に就けることもあるようで。だから、上記に挙げた菊池氏はおそらく屋久島専門のガイド業で、厳密には日本山岳ガイド協会の審査が厳しい「山岳ガイド(ステージIもしくはII)」ではないと思われる(後述の「会員名簿」にも名前の記載がないため)。実際にどうなのかはご本人に訊いてみなければわからないところだが、もし無資格の場合は紛らわしいので「山岳ガイド」と書くべきではないと思う。このように近年の各種媒体で資格の有無を混同している事例もままあるので、きちんと書き分けてほしいものだ。
近年、登山に関するガイド業の審査基準と職能範囲が明確に整備されたので、顧客としても社会人山岳会や山岳部に属さずに個人もしくは小人数で登山により真剣に取り組むさいにガイドを利用する場合は、ひとまず日本山岳ガイド協会の会員名簿に名前があるか否かを判断基準にするとよいと思う。ちなみに、この名簿のなかに僕の大学ワンゲルの先輩後輩が3人含まれていたりする。

それからついでに、これまた一昨年から気になっている公益法人制度についても触れておくと、「公益法人information」のトップページにある新パンフレットのPDF「民間が支える社会を目指して」の5ページにもあるとおり、平成25年(2013年)11月末で旧来の社団法人・財団法人は終了で、同年12月1日からは事実上は例えば「公益社団法人」や「一般財団法人」のように○○社団・財団法人という名称に変更されていなければおかしいので(「特例」法人というのもあるらしいがかなり特殊でほとんど見聞きしたことがないので、一般的には「一般」かより公益性のある「公益」かに二分されると思う)、現在もその略称として旧社団法人の(社)や旧財団法人の(財)と書いたままの場合は、校正するさいは情報が古いという理由で赤字(脱字)扱いとなる。例えば現在の略称は、公益社団法人の場合は(公社)で、一般財団法人の場合は(一財)とすべき。いまだに(社)や(財)と書いている人が結構多いのよね……。

ホントは特集に登場している100人全員の肩書きを精査し直したかったが、面倒なので誌面上で違和感のある6人のみ触れておいた。
次に、上記以外の問題点について。

●P42、裏岩手連峰縦走

× 管理人が在中する
○ 管理人が駐在する 

※「在中」は何か入れ物の内部に書類や金品が入った状態なので(例:朱書きの封筒に履歴書)、人に対しては使えないでしょう。これは東北地方の山によく見られる夏場の最盛期のみ避難小屋の管理業務に就く管理人の有無に関する記述なので、人が一定の期間・場所に留まる意味の「駐在」が妥当。

●P95、写真の注釈

疑 現金や貴重品は車に置いていきたい

※クルマ利用のトレイルランニング、のタイアップ記事で、「レースやトレーニング中はできるかぎり身軽でいたい」という理由で「助手席アンダーボックス」にそれらを入れて出かける、という使い方の提案のようで。しかし運転免許なし人間の僕はクルマに乗らないのでこの感覚がよくわからないのだが、マイカー登山の話でたまに耳にすることだがもし車上荒らしに遭って車内の貴重品を根こそぎ盗まれてしまったらどうするのか? と疑問に思う。それに、ここで「座面下収納」と明記したら場所がバレバレで、というかそもそもダッシュボードと同様に隠し場所として目立ちやすいし。
よって、提案すべき改善点もよくわからないので見当たらず。安全性を考えるとこのような提案を書かないほうがよい気もする。僕もマラソンを多少かじっているので大会参加の荷物預けのときの現金、特に小銭の扱いはたしかに重くなって面倒だなあとはよく思うが、硬貨よりも軽い紙幣をジップロックなどの防水対策を施したうえで肌身離さず携行するほうがより安全かもしれない、と思ったりもする。
この記事中の写真のふたりのモデル役ランナーはトレラン用のバックパックを背負って走っているので、ふつうにそこに入れて持ち運べばよいのでは……。

●P105本文上段

× 出版
○ 出版社 

※『ヤマノススメ』の4人のキャラクターたちが見開きで10冊の本を紹介するという体で、『シェルパ斉藤の元祖ワンバーナークッキング』の版元の表記が。これもほかの媒体でもよく見られるが、厳密には(えい)出版社の場合は社名に「社」も付くので、脱字扱い。
それにしても、「」は環境依存文字(JIS+7A48)なので文字化けしやすく、「えい」や「エイ」や「木」「世」などと併記したほうがよいので相変わらず扱い難いなあ。
ちなみにこの本は僕も所有しているので、尚更気になる。

●P123本文下段


充分わかっているつもりなのだけど…
…。つまらない大人になってしまった

分わかっているつもりなのだけど……。
つまらない大人になってしまったのか。

ちょっと専門的なことだが文字組版のルール上、三点リーダー「…」を2字分使ってつなげて(2倍にして)「……」とするときは、なるべく改行時に分割することのないように組むことが求められ(厳密には禁止ではない。ダーシ「―」も同様)、この1行の文字数が17字のところの2行のように分かれた状態では美しくない。というか、これは大概の文書作成ソフトでは自動で禁則処理されると思うのだが、このように残ったままでは出版業界人として恥ずかしい表記だと思う。どうしても分かれてしまいそうな場合は、該当する行の前でなんとか文字数を減らして、もしくは追加して、調整すべき。

●P125本文中段

× ナンガ・バルバット南面
○ ナンガ・パルバット南面

※『垂壁のかなたへ』の紹介のくだりで、単に濁音か半濁音かの違い。世界の山々のなかで比較的有名なヒマラヤ8000m峰14座のひとつで一般的には半濁音「パ」であるし、版元の詳細情報でも「パ」のほうで。濁音と半濁音の誤変換はかな入力の場合はキーボードの配列では隣同士のために僕も私的なメールなどで数回やらかしているので、一般的に結構出やすい誤記である。しかもこういうのは紙で作業するときに印字が潰れていると、判別がより困難になったりとか……。
この本は以前から知人に薦められているが、未読のまま……。追々なんとかしたい。

●P146本文中段

× 僕は41(昭和20)年に三俣蓮華小屋の経営権を買い取りました
○ 僕は45(昭和20)年に三俣蓮華小屋の経営権を買い取りました

※上の写真にも挙げたヤマケイの昨年のヒット作『定本 黒部の山賊』(現在、10刷)にもあるひとネタ。この著者の伊藤正一氏の記述が基になった記事のはずなので、記事の年次が誤り。昭和20年は1945年(の「45年」)、の西暦の換算は終戦の年なので比較的わかりやすいと思うのだが。
ただ、この本を改めて読み返すと、P15に当時の算定価格で2万円の小屋を買った年の厳密な記載はなく、著者略歴も併せて読むと買取った年とは別に譲渡された年が1年後(翌46年)というふうにも読めるのが微妙なところ。しかしそこはまあ本のその前後の文脈とともに、「45年」で信じるしかない。
三俣山荘の公式サイトの「黒部源流の歴史」には、三俣蓮華小屋の経営権買取りは45年とあることですし。

●P148本文下段

疑 槇有恒(まきありつね)
改 槇有恒(まきゆうこう)

※(1956年のマナスル初登頂など日本の登山史を扱うさいに頻出する)槇有恒の名前は「ゆうこう」か「ありつね」かどちらなのか? というのは昔から登山業界の七不思議? のひとつで、僕も数年前から登山関連の媒体での名前(のルビ)の用例を収集しているが、まだ途中ではあるが槇氏の著書『山行』(中公文庫)でも、長野県・大町山岳博物館の12年の催し「スイス山岳観光の黄金期と日本人」(PDF)の資料17ページでも「ゆうこう」のほうで、さらには「Yuko」の直筆サインの写真も数回観たことがあるため、僕としては「ゆうこう」という認識で。
ただ、いくつか収集した用例のなかで過去の『山と溪谷』の記事では以前から「ありつね」のほうを使い続けていて、しかも以前に(この記事を書いた、伊藤正一氏と親交のある)高橋庄太郎氏のトークイベントで高橋氏の私物の『黒部の山賊』実業之日本社版をちらっと拝見したときにこの本でも「ありつね」のルビが振られているのを見たことがあり、著者の伊藤氏は当時から「ありつね」の認識のようで。昨年発売の「定本」のほうには、P84に「ありつね」の表記がある。近年は一般的には「ゆうこう」も「ありつね」も両方とも認められている風潮だが、校正の仕事上では一応は「ゆうこう」のほうでは? と疑問出ししたい気分。

●P151広告

× 新藤原咲子
○ 藤原咲子

※新田次郎の藤原咲子氏の新刊『チャキの償い 新田次郎、藤原ていの娘に生まれて』の広告で、「新」の衍字。これはおそらく、紹介文を「新田次郎、藤原ていの娘」と書き出したかったのがなんらかの理由で「藤原咲子」に変更されて、そのときに「新」のみ削除し忘れで残ってしまった凡ミスだと思う……。

●P151広告

× 新田次郎 山の歳時
○ 新田次郎 山の歳時記

※上と同様に新田次郎関連の本の括りの広告で、ヤマケイ文庫『新田次郎 山の歳時記』の書名の「記」の脱字。広告では誌面の大きさが限られるが、書影付きで思いっきり目立つ書名なので文字を小さくするなりなんなり対処できなかったのだろうか……。

●P157本文

疑 クラックの仮題をこなす
改 クラックの課題をこなす

※奥多摩の登山中、「葉を落とした木」に向かう動作の主は山野井泰史・妙子夫妻だが、以前から岩登り、最近ではクライミングジムのような人工壁でも同様だが、自分が登りたいと決めて完登するまで取り組んでいる最中のルートのことを「課題」と呼ぶが、ここでは木の隙間を岩のクラックに見立てて山野井夫妻が試しに登っているという描写で。しかもこの連載の筆者の橋尾歌子氏のイラスト付きで。
ただ、ここでは本来登るべき岩ではなく樹木に取り付いているので、ある意味、本物の岩「課題」を想定した偽物の木「仮題」をその練習として登っているということなのか? という疑問が湧いて、単に赤字扱いにするのは微妙なところ。深読みしすぎかもしれないが。しかし、「仮題」の意味を文字どおりに考えると何かの「題名」の仮の状態なので、やはりここでは単に同音異字の誤変換の扱いで不適切なのかもしれない……。

●P164広告

× 事実を克明に追及した
○ 事実を克明に追求した

※上の写真にも挙げたヤマケイ新書『ドキュメント 御嶽山大噴火』の紹介文の、これまた同音異字(同音異義語)の誤変換。「追及」は犯罪のような事件・事故や欠点・欠陥のある事象に対して使うべき言葉で(「刑事責任を追及」みたいな)、本を熟読しても思ったが昨年9月の御嶽山噴火は気象庁も火山・地形の専門家でさえも予測は困難というかほぼ不可能な自然現象なので、山頂付近で被害に遭った方々もその救助・捜索にあたった方々も誰一人として他者に責任転嫁できるものではない天災なので、「追及」は人災ならまだしもこのような天災に使うのは明らかに不適切だ。いくら本文とは関連性の低い広告であってもこれは(「サバイバーズ・ギルト」を負う被災者や救助・捜索関係者、そして遺族の神経をも逆撫でしてしまう)倫理的にかなり致命的な誤変換で、今回の投稿でいくつか挙げたなかでも最も出してはいけない誤字である。
この広告の紹介文はおそらく、14年12月1日付のニュースリリースから抜粋したものだと思われるが、そこでは「追求」になっているのよね。どの段階で「追及」に変換されてしまったのだろうか……。おそらく、コピー&ペーストではなく手打ちかと……。
ただ、元の文章の、当事者の証言や救助・捜索活動の実情や噴火の考察を記録した意味合いで使っていると思われる「追求」でもよいのだが、有識者に意見を求めたりもして噴火という事実を深く考える(そして今後も教訓にして考え続ける)ために出版したのであれば「追究」のほうが適しているかもしれない。僕だったら「追究」では? と疑問出ししたいところ。
ちなみにこの本、社会的な意義から昨年中に「緊急出版」と銘打って出版を急いだのはわかるが(発行部数も多めのようで、発売直後からそんなに規模の大きくない書店にも配本されているのを見かけるくらい)、読み進めると中盤以降に誤植が増えてきて、急いだことの弊害もあったように見受けられる……。このような有意義な本を仕事として僕にやらせてくれればなあ、と久々に歯噛みしたりもする。

●P181本文上段

× メガポリス
○ メガロポリス

※(賛否両論ある)リニア中央新幹線が仮に開通すると、東京-名古屋-大阪の3つの大都市圏が実質は帯のように結ばれたようなものになる、という意味合いで地理用語では連結形「megalo」を充てた「megalopolis」を使うのが一般的なので(これは高校地理で学習する範疇)、地理もんの僕としてはこれは脱字扱いにしたいところ。英和辞典でもきちんと「メガロポリス」の語釈はあるし。
ちなみに、地理学習でお馴染みで緑色の表紙の『地理用語集』(山川出版社)での「メガロポリス」の解説は「連続する多くの都市が高速交通・通信機関で結合され、全体が密接な相互関係を持ちながら活動している巨大な都市化地帯」とある。
なお、僕個人的には、この記事「どうなる? リニア新幹線計画と南アルプスの未来」でも指摘されているように、新設工事(大半がトンネル掘削)による赤石山脈南部の自然環境の変化と、大井川中流から下流の減水と、長野県大鹿村の交通動態の変化(ざっくり言うと工事関係のダンプカーの往来が激しくなること)の問題が特に痛いと思っていて、リニア新幹線の新設はどちらかと言うと反対派で。現状の東海道新幹線でも充分に「高速交通」だろうに……。
そういえば昨年の地平線会議で、リニア新幹線問題を1999年から取材し続けていてそれをまとめた本を(JR東海に目をつけられたりとか版元の変更とか紆余曲折はあったものの)昨秋に出版した樫田秀樹氏の話を聴いたが(ブログもあり)、実際に工事が進むと想像以上に周りに悪影響が出そうな印象……。
賛否はともかくこれからこの問題に触れる場合はひとまず、宗像充氏によるこの記事でも樫田氏の話でも出た、YouTubeにある動画「リニア中央新幹線がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」を観てから判断するとよいと思う。

●P202告知右(小口)側

× 地下鉄神宮前駅
○ 地下鉄明治神宮前<原宿>駅

※「Information」のページの常連で、前々から表記を固定し続けていることにずっと違和感があるのであえて名前を出すが、「登山教室TimTam」の登山に関する机上講座の会場である「神宮前隠田区民会館」の最寄り駅を、「神宮前駅」と書いていることでさえ僕は納得いかない。これではどこの神宮前かがわからない。というか、明治神宮は全国的にも有名な観光地だが、それでも東京都内および渋谷区内の地理に明るくない人が初めて原宿界隈へ行く場合にはやや不親切な表記である。(東京メトロ副都心線の開通当初は千代田線と同じ「明治神宮前駅」だったが、現在はJR原宿駅に近いということでやや変更されている)駅名は正しくは「明治神宮前<原宿>駅」なので。僕も普段よく利用している駅なので常に気になる。いいかげん、きちんと書いてほしいものだ。

●P213広告左(小口)側

× 漫画俺たちの頂 復刻版  堀内夏子
○ おれたちの頂 復刻版  塀内夏子

※書名の漢字のとじ・ひらきと著者名で誤字。書名は原作も「おれ」とかな表記。講談社版の底本も大学時代に読んでいるし、この復刻版も所有しているので、やはり気になる。また、名字の「堀」と「塀」の違いも、たしかに字のつくりは似ているが、同じページに書影もあるので比較的わかりやすい……。というか、塀内夏子(へいうち・なつこ)氏は本誌連載「なつこの日本百名山奮登記」もあるので、ここで漫画家だとわかるから「漫画」の追加も不要だろう。とにかく、この誤りはとても失礼……。

このP213のヤマケイ文庫広告は、上の誤字があったせいでなんか全体的に怪しいなあと疑い、試しにウェブサイトと照らし合わせてみると案の定、誤字がいくつかあった。

× 畔地梅太郎
○ 畦地梅太郎

× 関根英樹
○ 関根秀樹

× 植村直巳
○ 植村直己

× ヶネス・ブラウワー
○ ケネス・ブラウワー

× 大イワナ滝壺
○ 大イワナの滝壺

ちなみに、その流れで『宇宙船とカヌー』に限ってはサイトの「ケネス・ブラウアー」が誤りであることも見つけてしまった。正しくは「ケネス・ブラウワー」で。

●P228本文上段

疑 確認してビニールに入れ
改 確認してビニール袋に入れ

※テンの死体を入れる、というくだり。「ビニール」はビニル樹脂(合成繊維)のことだが、辞書によってはビニル樹脂の加工品という意味もある。ただ、ここでは猫とほぼ同等の体長の動物が入るものということでふつうに読むとその入れ物は袋と思われるため、「ビニール袋」では? と疑問出ししたい。


今回はこんな感じ。登山業界的に老舗の月刊誌で校正担当も3人いる状態であっても、いろいろ精査すると思ったよりも多く出てきて、つい長くなってしまった。
それで今回特に目立った、というか前々から特に気になっていたのが広告の誤植で、この号に限らず数年前から何かおかしいぞ、と疑いたくなるヤマケイの媒体に掲載された広告は結構多い。
今回も雑誌編集と広告は別の部署でそれぞれ作っていることが透けて見えてしまう頻出ぶりだが、ひょっとして全社的な体制は一枚岩ではないのかな? と勘繰りながら落胆もしてしまう。いくら部署違いといっても同じ会社内で一丸となって販売してゆくべきモノなのだから、足並みは揃えてほしいものだ。それができていないから、「追及」と「追求」の同音異字のような大問題が発生してしまう。
ちなみに、「追及」はさすがに気付いたようで、今月発行の『ワンダーフォーゲル』15年2月号以降の雑誌広告では「追求」に修正されている。

ここ1、2年のヤマケイの出版物を見ていると(僕は興味が浅くて買わないモノであっても、書店へ行くたびにほとんどの新刊を手に取って造本をひととおりチェックしている)、昨年後半には新たにヤマケイ新書を立ち上げた影響もあってさらに増えた出版点数の多さから、雑誌も書籍も制作の現場は自転車操業的な体制になりつつあるような印象だが、老舗は老舗らしく、会社側も読者側もお互いに誇りを持てる専門的で末永く役立つ出版物をじっくり作ってほしいものだ。
そういえばヤマケイは今月上旬に市ケ谷から神保町に引っ越したそうだが、それによって出版物の作り方も「あっさり」ではなく「じっくり」になることを期待したい。

今年もおすすめの服部文祥本

2015-01-15 23:59:59 | 出版・言葉・校正
今年も服部文祥氏に関するネタを。

まず昨年末にも触れた秋山郷の番組だが、とても良かった。この地域のマタギの熊撃ち密着取材が番組の本筋だが、その合間に秋山郷の四季折々の自然とその集落の暮らしぶりを紹介する、みたいな構成で。
特にマタギの跡継ぎ候補の弥夢(ひろむ)くんの通学も含めた普段の生活の様子は、同世代のお子様にも観てもらいたいなあ。情操教育上もとても良い(善い)番組だと思う。お子様のいる家庭にこの番組をダビングしたBDとDVDを配り歩きたいくらいだ。ダビングはまだ数回できるので、欲しい方には差し上げます。

それで、まだまだ好評発売中の『サバイバル登山入門』(DECO)だが、今月も書評は出てきており、なかでも『ワンダーフォーゲル』15年2月号『PEAKS』15年2月号が目立つか。ただ、『ワンダーフォーゲル』のほうは本の価格が間違っているけど(誤字)。
紙媒体のほかに、インターネット上にも今後は出てくるのだろうか。ひとまず僕が今日までに確認したのは日刊サイゾーの記事のみだが。

ちなみに、リアル書店と版元の直販以外の入手経路としては、amazon.co.jpでは品切れ状態が続いたり、定価以上の中古品がもう出回ったりしているが、ここよりもhontoのほうが入手しやすいと思う。
まあこれは利用者数に大きな差があることと(現状、アマゾンが圧倒的なのはもちろん存じ上げております)、先日も東京都心の主要書店を巡るとhontoと連携しているジュンク堂書店池袋本店にはまだかなり在庫がある印象で、たしか通販用に書店在庫からも引っ張ってきて出荷できた、ような気が。

そういえば今週末の18日(日)に、昨年に神奈川県藤沢市に建てられた湘南T-SITEでトークイベントがあったりもして、今年もこのような機会は他所でもあるかもしれない。

それから、秋山郷の番組とは正直大きな落差のある内容だが、発売中の『新潮』15年2月号に「K2」という題名でなぜか山岳短編小説のようなものを発表しているが、先週に読むとフィクションだから許される? かなり挑発的な内容だった……。良くも悪くもピッケルが大活躍したりとか……。
しかしまあ番組も小説も、山のなかで生きることに真摯というか貪欲であるさまがわかることはわかる、かもしれない。「悪くも」の意味のほうは、生き抜くうえでホントに悪いことなのだろうか? みたいな倫理的な問いかけも含まれているような気がして、これに限っては僕はそんなに強くおすすめはしないが怖いもの見たさでチェックしておいてもよいかも。
ちなみに、『新潮』に連載を持っていて書くことについては服部氏よりも先輩格の? 石川直樹氏もブログに微妙な感想を挙げているが、まあこのように言葉を濁すのも致し方ない。

という感じで、引き続き服部氏と本の動向を注視してゆく。少々ではあっても自分のかかわった本の行方はもちろん気になるし。

<か>の新刊の私感というよりは、新刊の宣伝のための取材記事のまとめ

2014-12-21 23:59:59 | 出版・言葉・校正

すっかり忘れていて、先々週に4日(木)と5日(金)のお台場の催しと野宿について触れてから思い出したのだが、9月に発売してから3か月が経った<か>の双葉社から発売の新刊について。僕はこれは珍しく9月17日(水)の発売日に買って早めに読んで、2日弱で読了だった。
どんな内容の本かというと、まあこの版元のリンク先と、著者インタビューのようなものを覗けばなんとなくわかるか。基本的には予算が1万円という縛りで高速バスを利用して任意の目的地を往復+旅先で野宿がセット、の旅行なのだが、その目的地ではお得意の野宿よりもいわゆるB級スポット巡りが主体だったりする。これは雑誌連載をまとめたものだが、<か>が元々は『ワンダーJAPAN』が愛読誌のひとつだったりするくらいのB級好きだからということとともに、その雑誌自体がそんなノリだったからそうなったのかもしれない。

ただ、近年の不況下で比較的安く移動できることからひと昔前よりも利用客の年齢層の幅が拡がった高速バス事情は12年4月の関越自動車道・藤岡JCT付近の居眠り運転死傷事故のあとに大きな変化があり、しかも最近はLCCの上手い使い方(セール日購入)によってはこの本にある旅先よりももうちょい遠くへ行ける可能性も出てきたので、バス移動や各地の観光に関する情報は話半分に聞きかじっておく程度にして、あくまで<か>の11年から12年の紀行文として読んだほうがよさそう。

ちなみに写真は、この本をいつものように校正者目線で精読すると相変わらず誤植や疑問点が多く、そこに付箋を立てるとこのくらいになってしまう(先日、再読するとさらに増えて70か所近くになった……。写真で付箋の色が途中から変わっているが、特に意味はない)。僕としては出版前の制作工程で印刷にまわすというか「校了」してはいけない欠陥品のような状態で出版されたと今でも思っているのだが、こんなに酷いとは、どのような編集の体制だったのだろうか……。旅のカタチは面白いのに、組版では欠点が多く残っていて惜しい……。編集の大詰めの作業は7月だったらしいが、その過程で僕にゲラ(校正刷り)を見せてくれれば劇的に改善できたのに……。

ほかにもいろいろ書こうかと思ったが、師走につき面倒なので、代わりにこの発売日以降のここ3か月間にインターネット上で見かけた<か>に関する記事を、僕個人的な備忘の意味で掲載された日付順に挙げておく。それぞれ純粋に新刊の宣伝なのかと思いきや、べつにそういうわけでもない内容だったりして。

「かとうちあき」の野宿でレリゴー!少しも寒くないわ。な部屋と人生 (Insight x Inside)
野宿が好き過ぎて「野宿専門誌」を作ってしまった女性がレベル高すぎる (NAVERまとめ)
温泉宿より公園で一泊! アラサー「野宿女子」に聞く、安全な野宿の作法とその魅力とは? (ウートピ)
simple style -オヒルノオト- (JFN Online)
おんなのイケ麺 かとうちあきさん 「日清食品」のチキンラーメン (朝日マリオン.コム)

今秋に「NAVERまとめ」にも挙がってしまったのね。これでさらに有名人に、みたいな。
あとは、紙媒体では『散歩の達人』14年11月号に書評が掲載されたのを見かけたくらいだったと思うが、明日発売の『ランドネ』15年2月号にも2、3ページ登場して、そのなかには、本ブログでも先月から触れている『サバイバル登山入門』(服部文祥、DECO)の書評も含まれるとか。

まあとにかく、これらの露出によって新刊にさらに動きがあるとよいのだが……。でも今回は僕は一切かかわっていない本なので、今日までに一応2冊買ってはいるが実は売れ行きというか動向は、正直あまり気にしていない……。

それから、<か>はなぜか今秋から神奈川県横浜市内で「お店のようなもの」という不定期営業の、ツイッターや仲間内から漏れ聞く話では現状はリサイクルショップのような体の店をいきなり始めたが、僕はまだ冷やかしに行っていないので、なぜこういうことを今年に始めたのかという経緯などの詳細は、なんとも言えない。まあ来年以降に。
でも僕は以前から横浜へ行く機会は年に1回あるかどうか程度と少ないので、何か大きな催しと掛けて行くとかしないととても面倒な場所だなあ……。

なお、上記のリンクのなかで僕が最も面白かったのは、1本目の「野宿でレリゴー!」の記事で。これ、今年の夏から秋にこの家から引っ越して「お店のようなもの」を始めたという流れは知っていたが、引っ越す前に私生活の空間にかなり踏み込まれた取材を受けていたのは知らなかった。ちなみに今年、<か>は『アナと雪の女王』を2回くらい観たとかではまったのでこのタイトルが付いたのだと思うが、数年前にこの家に遊びに行ったときよりも蔵書が数段増えたのは驚いた(しかし、元々マンガ好きでもあるので半数近くはマンガだと思う)。
これを糧に、今後も兼業作家および書評家? として大成するのかしないのか……。


※24日(水)の追記
今日、『ランドネ』の誌面を確認したが、特集内の山道具紹介で1ページと、書評が1ページの計2ページであった。前者のほうはお気に入りの道具を5点挙げているなかでなぜそんなモノをわざわざ挙げるのかという嗜好品も含まれており、雑誌の色合いを考えると大丈夫なのだろうか……。
この2ページのためだけに買うのは微妙なところなので、年をまたいで検討する。

今年下半期の大きな仕事の成果その2、『例解小学漢字辞典 第五版』

2014-11-23 00:00:00 | 出版・言葉・校正

8月から9月にかけて取り組んだ本業の2つの仕事の成果の2つめは、三省堂の『例解小学漢字辞典 第五版』という小学生向けの漢和辞典のようなもの。これに取り組んだ時期は『サバイバル登山入門』(服部文祥、DECO)よりも前の8月で。
判然としなかった発売日は結局は18日(火)らしいが、それよりも前に版元から見本本は届いていた。

この辞書が具体的にどのような内容なのかというのは、僕がああだこうだ説明するよりもウェブサイトを覗いたほうがわかりやすいか。そこに見本のPDFもあるし。
この校閲は、扉・目次・索引・付録・奥付を除いて1098ページという分量の本文および付録の内容の更新というか改訂の作業を十数人で分担し、工程終盤の簡単な作業も含めると僕もその半分以上のページに目を通したかも。

「面白い」などと好意的? な感想はそろそろ散見されるようになった「その1」の『サバイバル登山入門』とは大違いの教育分野の本だが、僕のこれまでの仕事歴のなかで偶然の流れなのだが10年前の04年夏から1年ほど義務教育世代向けの媒体を扱う教育系出版社の仕事にかかわったのを(今思い返すと)足掛かりに、いわゆる「学参」の仕事に携わってきた時間が結構長く(ただ、教育系の得意分野として担当したのは教科で言うと小学5、6年の「社会」や中学生以降の「地理」が大半。現在も不定期で高校地理の媒体に携わっている)、実は教育系の媒体のなかでも特に小学生向けのそれは児童・生徒の成長期における人格形成の一端も担うかなり重要な媒体なのではないか、と気付く契機にもなった。学参は僕の仕事のなかでも特に「善い」仕事だと思っている。今夏にもその機会が巡ってきたのは喜ばしいことだ。

教育系の出版業では老舗の三省堂とはこれまで仕事では縁がなかったが、今年の初夏にこの辞書に限定の校閲の求人があり、僕はこれまでに学参の経験があったことと、(実際に8月に東京都・水道橋の会社に多少通ったりもして携わってから判明したことだが)僕も校正を学ぶために2000年に通っていたこの会社から徒歩10分ほどの近所にある出版系専門学校「日本エディタースクール」の関係者(同窓生?)が結構多かったことが、最近は“野良”みたいなフリーランスの校正者である僕が短期的に拾われた大きな理由なのだと思う。そのおかげでギリギリ滑り込んだ感じで。

それで、この内容について特に興味深いというか面白かったことをひとつだけ挙げると、辞書の改訂の仕事の場合はどこの版元も数年ごとにニュースになる「常用漢字」の改訂はもちろん反映させるが、それとともに小学生向けの場合は数の変動はないが小学1年から6年の6年間に学習する(ことと国が定めている)1006字の「学年別漢字」の扱いで、まあそれがこの辞書の肝なのだが。
小学生の頃の漢字の書き取りの宿題で、1006字すべてではないだろうが大半の漢字は書きまくったであろうことを思い出しながら、あれから約30年後の今になって改めて仕事としてゲラ(校正刷り)を凝視すると、ああこの字はこの学年なのか、と感慨深いのと同時に書き順を忘れてしまった字も多く(この辞書には学年別漢字の書き順も掲載されていて便利)、改めて勉強になる。最近は文字を書くというとPCのキーボード入力やスマートフォンのフリック入力が全盛だが、書類やハガキや咄嗟のメモなど手書きの機会は今後も完全に廃れることはないと思うので、改めて小学生向けの媒体まで「降りて」きて漢字や熟語の意味を見直すのも有意義なことだ、と僕は10年前から本気で思っている。
この辞書の内容はホントにその一助になると(自分がその制作の一部に携わった、というひいき目抜きで)信じているので、今後の仕事でもじゃんじゃん活用したい。

ちなみに、中扉の次のページにこれに携わった関係者の名前が挙がっているが、「校正協力」のところに僕の名前も掲載されて、末席を汚している。
そういえば、僕が携わった仕事(主に出版物)で媒体に名前が入るのはこれが初めてだなあ(『サバイバル登山入門』もなかったし)。僕は校正者としての立場の場合は、このような名入れの有無にはこだわっておらず、元々は「黒子(黒衣)」だと弁えているのでどうでもよいのだが、まあ拒絶反応のように固辞することでもないので入れるのであればそれでもよしとしておく。

それから、こちらは何も携わっていないが同時発売の『例解小学国語辞典 第六版』も、以前からこの前の版の古本を安く手に入れたのを機に仕事の参考資料として活用しているので、小学生向けの辞書だからとバカにしないほうがよいとも思っている。『例解小学漢字辞典 第五版』とともに手元に置いておきたいものだ。『国語辞典』のほうも買い直そうかしら。辞書は大人向けも子ども向けも、常にいくつ所有していてもよい気分だから(ただ、置き場所の問題が……)。
まあ校正・校閲の仕事の場合、ひとつの出版社の媒体に偏りすぎるのはいかんので他社も含めて複数の辞書にあたるのが定石だが、文筆というか書くことのプロの方も騙されたと思って一度はこれらの辞書も手に取ってみるとよいと思う。特に最近はインターネット上の記事で小学生の作文レベル以下の、つまり日本語の表記がなっていない文章が散見される機会が年々増えつつあるが(校正のような第三者のチェック体制がないまま書いたものが即座にウェブ上に公開されていることが多いようで……)、そういう人たちにこそ今、改めて小学生向けの辞書にまで「降りて」きていただきたいものだ。

ということで、こちらも世代を問わず(でもやはり基本的に小学生にだが)、教育および生涯学習の観点からも強力におすすめの辞書なので、ぜひ。
ちなみに、(後付けの)写真で本を2つ出しておいた。緑系でも色違いの両方とも中身は同じだが、左の黄緑色は小学校関係者(および児童向けの)「特製版」で、右のやや濃い緑色のほうが市販品の通常版? の「並版」の大きさのモノである。現在、書店に並んでいるのは右のほうで。実は、内容は同じでも「特製版」は税込2000円で、通常版? は税込2052円という少々の価格差はあるが、これはおそらく「特製版」は大口取引が見込めるのでそのさいは計算しやすいキリの良い価格にしたかったからだと思われる。あとは「特製版」には書店での本の宣伝に付き物の表紙カバーや外箱に巻く帯(オビ)がない、というコスト削減の差もあるか。まあ内容に差はないのでご心配なく。
家族・親類も含めて小学校および小学生とは縁遠い方は、右の緑色のほうをよろしくお願いします。


※同日の追記
本文とは無関係のことだが、僕がこの版元の仕事にかかわった同時期に出てしまった報道なので、流すことなく一応触れておこうかと。
三省堂の、大人というか一般向けで代名詞的な辞書のひとつである『三省堂国語辞典 第7版』で(略称の「サンコク」のほうが有名?)、東北地方の「南部藩」に関して誤記があったという報道があった(と、僕はツイッターで初めて知った)。こういうこともあるのか、と驚いた。
ちなみに偶然なのかもしれないが、僕は大学時代の地理学科の野外実習で岩手県北部と青森県南部に出かけてまさに「南部藩」に関する、というか具体的には「一戸」から「九戸」までの地名と地域の研究に一時期取り組んでいたことがあり(「四戸」はないのよね。ない理由は、縁起が悪いからという説が有力らしい)、だからこの件は、現在は「二戸」と「七戸(十和田)」と「八戸」に東北新幹線の駅ができるなんてまだ想像できなかった20年近く前から僕も、東北人の一般常識であることはもちろん知っている。となると、僕もこの校閲に携わっていればなあ……、と「たら・れば」をつい言ってしまう。
日本国内の地域ごとの話では方言とともにこのような歴史・文化的な事象も注意深く扱っていかなければと、いち校正者として身につまされる話であった。肝に銘じたい。

※28日(金)の追記
上記の「南部藩」の続きだが、先日、書店で『三省堂国語辞典 第7版』の現物を改めて確認すると、そこでの見出し語は正しくは「南部」であった。
また、「南部」は『例解小学国語辞典 第六版』にも掲載されており、そこでの見出し語の意味というか語釈は「青森県の東部から岩手県の北部」とあり(上の本文の、僕が所有している「この前の版の古本」というのは第四版だが、これも同じ語釈で)、現状は小学生向けのこの辞書のほうが一般向けの「サンコク」よりも正しい表記である。同じ版元の出版物でも編纂する人によって、あえて悪く言うと足並みが揃っておらず解釈が変わってくることもあるのね……。と、他社の辞書には見られない三省堂の「南部」を入れるこだわりとともに、ひとつ勉強になった。
まあこの件は追々、修正されるでしょう。

今年下半期の大きな仕事の成果その1、『サバイバル登山入門』

2014-11-07 00:00:00 | 出版・言葉・校正

これは偶然なのだが、8月から9月にかけて僕が取り組んだ本業の2つの仕事の成果が今月に集中して世に出ることになったので、軽く報告を兼ねて告知を。

1つめは、昨日の東京都内のいくつかの大型書店にはすでに入荷していたが、正式には今日が発売日ということになっているらしい服部文祥氏の新刊『サバイバル登山入門』(DECO)で。この本の校閲を担当した。

取り組み方はより良質の本づくりのために、ゲラ(校正刷り)に修正を促すための赤字を入れたり表現の選択肢の提供のための疑問出しをしたりで誤植を拾って組版の体裁の崩れなど不備も確認する「校正」よりも、それに加えて時系列や事実関係や全体の整合性など内容の細部にまで嫌味なくらいに? 深く踏み込んで精査する「校閲」のほうで。

で、最近の登山業界でも特に物議を醸すことの多い超有名サバイバル登山家の本をなぜ僕が? という理由および経緯は、まあ本ブログで2年ほど前からちょいちょい触れていて最近では今年1月のネタを要参照なのだが、これまでに服部氏の既刊では『富士の山旅』(河出文庫)以外の5作品を趣味的な“私事”として視てきたが、そこからついに? とうとう? 報酬ありの「仕事」に発展したのであった。
ちなみに、その報酬もすでに先月にいただいており、しかしなぜか様々な出費ですぐに消えてしまったけれども……。

この件は8月に仕事依頼の連絡があり、しかし進行が1か月近く遅れて、東京都内での服部氏とDECO(デコ)の担当編集の大塚真氏(最近も『BE‐PAL』や『山と溪谷』など野外系雑誌の記事を手がける機会も多い編集者。僕も数年前から御名前は存じ上げていた方)との軽い打ち合わせのときにゲラを直接預かってこの作業に従事したのは9月中旬の1週間だった。ちょうど『岳人』14年10月号が発売されたばかりの時期で、実は服部氏がこの号にも本の内容の一部と重複する今夏の赤石山脈の登山話を盛り込んでいて、『岳人』の記事の内容も同時に確認する必要もあったのだが。

ただの「校正」よりも確認事項が多くて時間のかかる「校閲」となると時間はいくらあっても足りない感じで、ゲラを大塚氏に納品する期限ギリギリまで視て、読んで、それでも手放すときに心残りはあったものの(実際、写真の完成品を先週にいただいたのでざっと確認してみると、内容には抵触しない程度だが誤字脱字や疑問点がまだいくつか残っているなあ……)、この期間内で都合3回通読していつになく集中して本気で取り組んだ。お金のかかっている仕事なんだから、そりゃそうだ。
しかしホントは校正・校閲という作業は文字を1つずつ追うべきで「読んで」はいけないのだが、時間がなかったので仕方なく「読む」ことにした。「読んで」でも早めに本の全体像を把握して、できるだけ多く周回するほうが問題点が見つかりやすいときもあるから。
でも、これまでにも触れているように基本的に読書は遅読の僕でもこの短期間で3回も読めたのは、やはり得意分野で比較的取り組みやすい内容だったから。これが不得意の分野であれば、1回か2回がせいぜいだと思う。完成品は(厚めの紙を使用していることもあって)予想以上に分厚くなったが、全体的に写真やイラストが多いので造本の見た目よりも案外読みやすいと思う。これまでの服部文祥本のなかでも最も柔らかい雰囲気の(登山にあまり詳しくない方でもとっつきやすい)1冊に仕上がった。

ただそのぶん、税込定価が3132円というのは結構高い気もするが、盛りだくさんの内容を考えると妥当な価格なのだろうか(でもやはり、最近の山岳書で3000円超は珍しい)。これは僕のように「服部文祥」の名前だけで無条件に指名買いの方は除いて、アマゾンなどのインターネット販売よりもなるべく実際の書店で手に取って中身をきちんと確認してから判断したほうがよい。内容は章ごとに、読み手の好き嫌いがかなり明確に分かれるだろうし。ひょっとしたら、表紙カバーからもう物議モノかもしれない(この写真も実は読み進めると判明するネタの一部で、僕はその点にも疑問出しを……)。

なお、服部氏は今後は当然ながら雑誌取材など媒体露出でこの本の宣伝に努めることになるが、ひとまず先週発売の『Fielder』 vol.18の最初のほうに、この本に関する1ページのインタビュー記事があるので、そちらも参考に。
僕も多少かかわった関係上、今後の売れ行きや読者からの良くも悪くもの反応はとても気になるし(すでにツイッターでも数人の、この本の第一印象を小耳に挟んでいる)、何か大きな展開があれば告知に協力できればと思う(まだ公にしないほうがよさそうな御本人のタイミングを図るべき情報もあるが、それはまあ追々)。懇意の山岳専門誌とともに、販促的には影響力の強い全国紙の読書面(書評欄)でも取り上げられるとよいが、ある意味ちょっと挑発的というかふざけた表紙なので、れっきとしたノンフィクション作品ではあってもお堅い媒体には不向きかも……。今後の反響次第なのだろうか……。
直近の今月の催しでは、今年はすべての登壇者の大トリとなったモンベルの「冒険塾」で手売りできるという好機もあるか。


そういえば、僕のここ数年の仕事では学参(特に地理教材)と商品カタログと某個人情報を扱うことが主で、このような文章が主体の単行本を(1冊を分担してその一部分を手伝った経験は多少あるものの)ひとりで1冊丸ごと請けるのは初めてだったのだが、普段から大好物の野外系雑誌や書籍を趣味的に読むときにももし仕事として視る場合はどう扱うべきかと想定しながら精読していることにより、数年前からその“リハビリ”と称した嫌味な? 読み方で準備は常に整っているので、今回もそれとほぼ同じ手法でたいして違和感なく取り組むことができた。よって、反省点は多少あるがこの本も校正者としての手応えはそれなりにあった。

これを機に、フリーランスの校正者として在宅でもできる得意分野の仕事がさらに増えるとよいのだが。昨年後半から今年にかけて「家庭の事情」もあって(週5日みっちり通勤による)フルタイム勤務が困難な状況になってきたりして、今後の働き方をきちんと再考すべき時期になってきたが、まあここ数か月のような勤務形態を理想として今後もこれを軸に模索してゆくつもり。

では、『サバイバル登山入門』もよろしくお願いします。