予告したとおりに3日(日・祝)の不忍ブックストリート「第17回 一箱古本市」に出店し、それから1週間も経ってしまったが、その結果を簡単に挙げておきたい。
ちなみに写真は、今回の“大家”さんである「千駄木の郷」での出店の端のほうで、左が拙店「人力旅人の本箱」で、右が
今回の63箱(全64箱の受付で、当日に1箱減)の出店のなかから受賞したひとつの「お茶の間 草の間」さんで。
実はここでは
昨年の出店でお世話になった根津教会と同様に、出店時に長机を借りて箱の高さを上げてお客さんに見やすく設置できるのだが、それを断ってこの2店のみ箱をあえて(出店の基本の?)地面に置くカタチとなった理由も含めて、また後日。
それで、追記。
例年よりも1時間延びて計6時間となった出店時間のなかで売れたモノは、書籍・雑誌合わせて計60冊のうち以下に売れた順に。
・自転車はここを走る! (疋田智・小林成基、(えい)出版社) 300円
・山行記 (南木佳士、山と溪谷社) 500円
・Fielder vol.21 (笠倉出版社) 400円
・定本 黒部の山賊 (伊藤正一、山と溪谷社) 600円
・アルプス登山ガイド (昭文社、ムック) 100円
・ガチャピン日記 (ガチャピン、メディアファクトリー) 300円
・メレンゲが腐るほど旅したい (メレ子、ブルース・インターアクションズ) 400円
・野宿入門 (かとうちあき=<か>、草思社文庫) 300円
・岳人 14年8月号 (東京新聞出版局) 300円
・秘境ごくらく日記 (敷島悦朗、JTB) 300円
・サバイバル登山入門 (服部文祥、DECO) 1800円
・WILDERNESS No.1 ((えい)出版社) 500円
・大人の探険ごっこ (清野明、アスキー新書) 400円
・ワンダーフォーゲル 14年4月号 (山と溪谷社) 300円
・岳人 15年4月号 (東京新聞出版局) 400円
・星の航海師 (星川淳、幻冬舎) 400円
・沖縄人力紀行 (藤本亘、彩図社) 800円
以上の17冊で、売り上げ金額は計8300円。これは、(極私的な記録だが)過去9回の出店では10年春の第10回の出店と同額で1位タイの結果であった。
拙店でお買い上げのみなさん、ありがとうございます。売り上げはしっかり今後の生活の足しと、来年以降のまたの出店の備えに遣います。
例年どおりに出品60冊それぞれに思い入れはあるのだが、いくつかの売れたモノについても少々。
まず、先月の予告で服部文祥祭り? みたいなことに触れたが、売れたなかでも『Fielder vol.21』と『岳人 14年8月号』と『サバイバル登山入門』と『岳人 15年4月号』にかかわっているので、ということで。ほかにも数冊あったけど。
『Fielder vol.21』は、服部氏が2つの記事で計6ページ、「大人になったら野宿に挑戦!」というよくわからない意図の企画で<か>が6ページも登場しているから、という関係で、当日の前週に発売されたばかりだが出品してみると、それらの記事は完全にスルーで小特集の「食虫」に興味があるという方に売れた。最近、食虫はテレビ番組でも時折扱うようになってきたので、今後は全国的にも元々それが盛んな長野県を中心にブームが訪れるのだろうか。この「食虫」のネタは次号以降も続きそうなシリーズ企画らしい。この号はもし売れなかったら自分用にするつもりだったが売れてしまったので、後日買い直した。
『山行記』は、4年前から出品し続けていてようやく売れた。本棚1台(1本?)くらいの分量の山岳書を所有しているという方に、これは気になっていたが見当たらなかったので、ということで。ようやく需要と供給が噛み合って良かった良かった。
『定本 黒部の山賊』も昨年から出していたが、今年に。ちなみにこれは最近は新刊書店ではほぼ見当たらなくなった初版で。なんか今年も増刷して11刷になったが、まだまだ売れているのね。となると、2万5000部以上は売れているのかなあ。
『ガチャピン日記』は、意図はこの本の後半に掲載の「ガチャピンチャレンジ」で岩登りとかスキーとか人力移動の要素が含まれているから。この点はDVDソフト等でもよく知られていることだが、ただ、恐竜の子のガチャピンを「人力」ということで「人」に含めてよいものか? という葛藤は出店前に多少あったが、この野遊びを支援してきた周りの関係者もひっくるめて企画全体で「人力」だという解釈で(こじつけ……)。この本の場合はお客さんが拙店の箱を覗いてからその意図を説明する前に「あ、ガチャピンだ」という掴みはOKの反応が多く、実績は申し分ない世間一般的に知名度抜群のキャラクター(最近流行りの「ゆるキャラ」の先輩格?)の威力を改めて思い知った。
『岳人 14年8月号』は、東京新聞発行の最終号を2冊買っていてその片方だが(気に入った雑誌を2冊買うのは普段よくやること)、これは買った方には理由を訊きそびれたが、まあ最終号だからということなのだろう。
『秘境ごくらく日記』は、これも数年前から毎回出品していてようやく売れた。そういえば、この著者の敷島悦朗氏が3月に病気で亡くなったという訃報が『山と溪谷』15年5月号に出ていてしんみりしたが、これをお買い上げの方もそのことを知っていたのだろうか(訊きそびれた)。この本は敷島氏の本分だった登山に限定ではなく登山以外の探検的な要素も詰まっているので、今後は古書市場でも価値は高まると思う。この売れたモノとは別に1冊所有しているので、近いうちに再読したいものだ。
『サバイバル登山入門』は昨秋から本ブログでもちょくちょく触れているが、表紙カバーが多少傷ついてはいるもののほぼ新品状態の初版を出してみた。1800円は新品の定価の約4割引ではあっても僕としても過去最高の設定金額だったが、それでもこの本が気になっていたという男性に売れて、良かった。ちなみにそれでも今のところこの本はウチに(初版と2刷が)計2冊ある。
『岳人 15年4月号』は、
3月にも触れたように瑛太がサバイバル登山に同行した話が掲載された号だが、僕のその狙いは外れて身近な春の低山に興味があるという方に行き渡った。
『星の航海師』も数年前から出品し続けていたモノだが、なぜか今年になって。なんでだろう。実は読了していないので、また古書店などで探してみたい。
拙著『沖縄人力紀行』は、まさに今回初めて時間を延長した16時台の終盤に売れて、つまり延長の効果が表れた感じ。それに久々に拙著が売れたのも嬉しい。1000円で新品と800円で出戻り品を毎回こっそり出品しているが、後者のほうで。
今回は、僕の出品の狙いというか意図とは別の想定外の点が引っかかって売れた、ということが例年よりも多かったが、そのような僕とは異なる視点でひとつの出版物を視ている人もたしかにいて、書籍・雑誌を制作するさいは当然のことだがどのページも手を抜いてはいかんのだな、と出版業界人のひとりとしても新鮮な体験で勉強になった。
ついでに挙げると、『Fielder vol.21』や『野宿入門』のような<か>の関連本は、この3日後の
6日(水・祝)に横浜市・黄金町の「たけうま書房」で<か>とトークイベントを実施予定だった“ミスター一箱古本市”に売りつけようかと思っていたが、その前に売れてしまったのは結果的には良かったことか。
当日はお日柄も良く、というか良すぎて、ほかの“大家”さんの出店では日向の暑さ対策に苦慮するくらいによく晴れて日中は暑くて参ったという話は小耳に挟んでいたが、「千駄木の郷」はどちらかと言うと日陰の多いところで風通しも良く、当日の気候的な条件は比較的良かったほうらしい。ありがたや。
それから冒頭でも触れたが、拙店の隣で(福岡市で毎秋に開催の「ブックオカ」の出店経験はあるものの)谷根千では今回が初出店だった「お茶の間 草の間」さんとのかかわりについて。
当日の出店場所決めから箱というよりは本の運搬にも利用していたトランクをそのまま出店でも広げて流用したい、その場合は長机には載りきらないから地面に置きたい、という希望を出していた。それで、たまたま隣になった僕がそれに賛同したため(ちなみに、場所決めではじゃんけんをよくやるが、僕は今回は6箱中2番目の勝ち抜けだった)、写真のように僕が箱を地面に置くことに「付き合った」カタチとなった。
また、隣にいたためによくわかったことだが、「お茶の間 草の間」さんの出店で特に面白いと評価されていた、読み終わった新聞の切り抜きを1枚20円で販売するというのは僕も乗り、2枚買った。実はその前に「お茶の間 草の間」さんに、僕が久々に併せて出品していた旅絵ハガキのうち1枚をお買い上げいただいていたので、「出店者同士で売り買いする」という行為、この出店界隈の俗語で言うところの「共喰い」をしたことになる。
でもホントはその出店で最も面白かったのは、“ミスター一箱古本市”も打ち上げやツイッターで絶賛していたが、小学生の頃に子ども向け雑誌を真似て切り貼りとかわいいシールを多用で自作した数ページの雑誌のような冊子で(展示のみ、非売品)、本文レイアウトや見出し決めとともに表紙や奥付もきちんと書かれていて、小学生にしてはある意味「ませた」つくりでとても凝っていた。その影響もあってか現在も実際に出版関連の仕事に就いているそうで、出版人生の継続ぶりも垣間見ることができて、そして箱の地面置きがその個性的な出店の一助になったことも良かったと思う。冊子の縮刷版のようなコピーでも販売すればよかったのに。
そういえば、毎回恒例の終了後の打ち上げという名の表彰式に出席し、いつものように全体的な売り上げの結果を聞くと、今回は1日の売り上げとしては過去最高? の冊数と金額で(非公表にしてほしいとのことで、具体的な数字はここでも控える)、そんなに売れたのかと驚愕であった。これはやはり出店時間が1時間延びた影響もあるはず。
まあとにかく、「助っ人」さんをはじめ関係者の方々に今回もお世話になりました。
「不忍ブックストリート」としては昨年の10周年を経て、今年は結局は1日のみの開催になったのは関係者がみんな(当たり前のことだが)その間に10も歳を重ねて単純に疲れたから、という話もあり、来年以降も開催するのかは今後も手探り状態になるだろう。僕個人的にも谷根千での一箱古本市の「本家」の出店は来年が節目っぽいので、今後の出店に関する身の振り方も年内いっぱい熟考したい。
※15日(金)の追記
今週、公式サイトで
当日に出店した全63箱の写真が公開された。ここ数年の恒例。
そこで拙店のものもアップで案外きれいに写っているので(僕も自分で記録用に撮影しているが、ここまできれいには写らなかった……)、まあ当日の証拠として。
ちなみに、実行委員会の刺客? が「千駄木の郷」に撮影しに来たのは正午すぎだったと思うが、今回は序盤の売れ行きはよろしくなくてこの写真の出品物もほぼ開始時のまま。なぜかこれを撮影した直後あたりから来客が急に増えて売れだしたけど。なんでだろう。しかしまあ一箱古本市の出店の流れは毎回読めないので、そういうこともある。それは当日の天気によっても大きく変わるが、まあそんな不確定要素もあるのがまた面白かったりもする。
※25日(月)の追記
ツイッターで拾っていたもののすっかり忘れていたが、
産経ニュースの18日付で当日の様子などが報じられている。この記事には出店は64箱と書かれているが、本文でも触れたとおりに正しくは63箱で。この「本家」も含めて、一箱古本市の開催地はもう100か所近くになるのね。北海道から沖縄県まで、全国的にこんなに拡がるとは、07年に僕が初めて出店した頃にはまったく想像できなかったわ。本絡みの催しではこれまた年々じわじわ拡がりつつある「
ビブリオバトル」や「
ブクブク交換」とともに、今後も開催地は増えてゆくのかしら。
ちなみに、僕は、というか拙店の出店は「本家」に限定とこだわりがあるわけではなく(ただ、「人力旅人の本箱」という出店意図には当然こだわっている)、タイミングが合えば他地域の古本市にも出店してみたいと常に思ってはいるが、日程と費用と出品物のタイミングがなかなか合わず……。年内も厳しそうなので、来年以降に向けてこの点も再考したい。