最近は残暑が厳しいざんしょでやる気(書く気)スイッチがなかなか入らなくて更新が滞ってしまったが、そろそろ涼しくなってきたので復活。
先週20日(金)の夜、東京都中央区の
八重洲ブックセンター本店8階のトークイベントに、『
野宿野郎』の
かとうちあき編集長(仮。以下、<か>)と、イラストレーターの
松鳥むうさん(以下、<む>)がそれぞれ今年の春から夏に出版の新刊をひっさげて登場した。
ふたりの新刊とは、<か>は『
あたらしい野宿(上)』(亜紀書房)で、<む>は『
島旅ひとりっぷ』(小学館)と『
ちょこ旅 瀬戸内』(アスペクト)で。『ちょこ旅 瀬戸内』以外の2冊は読了済み。『瀬戸内』は年内に買います……。最近、金欠続きなのもので……。
本ブログでもこれまでにちょいちょい触れてきたようにふたりとも数年前から知り合いで、過去に都内でふたりも含む複数人が登壇する旅関連の催しはあったが、この
ふたりの組み合わせでやるのは初めてではないかね。ほかには、以前に一緒に野宿したことはあるようだけど。<む>の「誕生日野宿」で。
<か>とはこの前週の(新刊を買わせることが参加条件だったのが裏目に出て来場客は過半数割れと散々な結果だった?)
ブックファースト新宿店の催しにも行っていてしょっちゅう会っているが、<む>とは約3年ぶりに会ったっけか。『野宿野郎』本誌も過去2冊の野宿本の出版でも営業努力が足りなくて? ものぐさな<か>と違って、新刊の宣伝およびジュンク堂書店やモンベルストア主要店舗の全国巡回で時折催す原画展の案内をその都度まめに送りつけてくる(しかも料金別納郵便で)、もとい頂戴するので、そんなに久々という感覚でもなかったけど。今年7月から来年2月までもモンベルで『瀬戸内』編を巡回中で、例えば近々では
渋谷店で開催とか。
で、その対談形式というのが下の写真の1枚目のようにマットを敷いて寝袋に入ってうつ伏せになるカタチで、しかも飲酒も可という、こんなにふざけた? くだけた? 雰囲気の催しを八重洲ブックセンター本店で敢行するのも初めてではないのか。よくこんな催しが、小規模のイベント専用空間ならまだしも都心の、東京駅というターミナル駅前の有名大型書店で実現したよなあ。画期的であるね。

会場の前方はこのように青シートの上にダンボールを敷いて客席とし、そこに座れたり、なんなら寝袋に入って寝そべることもできる空間になっていた。会場の両端と後方に一般的なパイプ椅子も並べていたが、来場客は50人が定員のところを最終的には40人くらいは入ったか。ほかにも、ふたりの本の版元の(スーツとか)ちゃんとした格好の関係者が周りに数人いた。ちゃんとした格好の方々と、舞台中央の寝そべっているぐだぐだな主役ふたりのそんなにちゃんとしていない格好との落差も可笑しかった。
ちなみに、舞台右の<か>と中の<む>の組み合わせ、それにこのダンボール敷きの会場の企画の発案は、左に座っている黒っぽい格好でこの日の進行およびツッコミ役も務めていた
テリー植田氏によるもので、元々は彼が運営している台場のイベント「
東京カルチャーカルチャー」の縁でこのふたりを掛け合わせたようで。僕はそこの催しは未体験だが噂は度々耳にしていて(旅系のテーマが結構多いのは存じ上げております)、そこのノリを都心に持ってきたかったのね。植田氏の演出した空間を初めて体験してそれがよくわかった。

会場中央に敷いていたダンボールは出版関係者にはお馴染みの大手取次のひとつ「日販(日本出版販売)」のものが大半であった(取次は書店によって異なり、八重洲ブックセンター本店はここと契約しているということか?)。ちなみに僕はこれまでに出版流通のアルバイトで散々触ってきて見飽きているダンボールだが、仮に野宿時に敷く敷き物としてはこれはまあまあ良質のほうだと思う。ダンボール敷きの客席には20人くらい座っていたかなあ。
約1時間のトーク中、<む>は相変わらず繊細な絵柄と手書き文字とは裏腹に喋りのテンションは高く、<か>は酒が進むといつものように目がとろんとしてぐだぐだになる、という予想どおりの展開であった。このパターンは数年前から不変。
そのふたりに、実は学生時代は山岳部所属で、野田知佑のチキンラーメンCMの影響で一時期はカヤックにはまったりもして、だから野宿や旅には元々かなり理解のある植田氏がいちいちツッコミを入れて、どこかから酒のつまみとして出されたオイルサーディン缶を客前で食べまくる<か>を牽制する様子も含めた引っ掻き回しぶりも、ひいき目抜きで面白かった。

新刊。トーク後に<か>と<む>がそれぞれ寝転がりながら書くサイン会もあったので、手売りでもそこそこ売れた模様。
ああ、よく見ると左奥に「日販」と双璧の取次「トーハン」の箱もあるわ。これはいずれかの版元のモノなのかなあ。

サイン会は、寝転がりながらの体勢が続くと辛いので結局は正座で。僕は<か>の相変わらず落書きのようなサインは前週にもらっているので、このときは<む>のみで。併せてアスペクトの担当編集さんと挨拶もしたが、名刺を持参するのを忘れてちと後悔した。しかし、缶チューハイを2本飲んだ赤ら顔で良い気分のときにマジメに仕事の話をするのもなんだかヘンな感じだったので、まあ何もなくてよかったのか。
ちなみに、手前の<か>の下の使い古した銀マットも奥の<む>の下の橙色のエアマット(サーマレスト)も青色の寝袋もすべて<か>の私物だが、ここ数年の野宿ではエアマットを頻繁に使い、銀マットのほうは各種取材を受けるときの小道具というかネタとしてよく見せてはいるが実際の野宿での出番は減っている。

そういえばこの催しで、「ハイサワー」で有名な
博水社の製品が参加者全員に振る舞われ、ここが今年から酒類の販売に参入し始めた最初の商品である「ハイサワー缶」のレモンチューハイをいただいた。しかも2本。飲んでみると、お世辞抜きでそこらへんの88円や105円くらいで売っている安物缶チューハイよりも味が濃厚でキレも良くて旨かった。だから、僕のほかにもアルコール類が飲める来場客はほぼ漏れなく赤ら顔で良い気分になり、こんなに良い意味で? ぐだぐだの催しが成立したのは凄いよなあ、と八重洲ブックセンター本店の懐の深さと植田氏の策士ぶりを実感した。
なぜこの催しに博水社が絡んだかというと、3枚目の写真の手前にあるが先月に同じく亜紀書房から『
ハイサワー炭酸レシピ83』という本が出ていて数日前に同じ会場でハイサワーを飲みまくる催しもあったからだそうで。
また、この場にもお見えになって挨拶もしていた女性社長と『野宿野郎』の“大将”が仲良くなって、今度、博水社の製品をさらにいただけることになったらしい。この仲間内の場合、本よりも酒のほうが好都合のときもある……。
この催し全体的には、これに無料で参加できてよいのだろうか? と申し訳なく思うくらいにとても楽しかった。
そういえば、<か>のほうはよく一緒に野宿していることもあって野宿の変遷や酒とつまみの好みもだいたい把握しているが(酒は基本的にビールとチューハイと梅酒が好き。あっ、これは個人情報なのだろうか……。まあいいや)、<む>のほうは酒はビールや焼酎は苦手で日本酒やワインや梅酒は大丈夫と偏りがあり、しかも特に宿での夜の人付き合いで飲酒の場面も頻出するであろう沖縄県内の島旅では泡盛もダメなので黒糖梅酒の瓶を1本買って常に持ち歩いている、という話は初耳で面白かった。あと、野宿は学生時代に熱中していた宝塚歌劇団のチケット獲得のときに徹夜で並んでいたらインフルエンザに罹ったことがあってそれがトラウマで、という逸話もあるとは。でも最近は<か>と、野宿のさいは主に食料担当の“大将”と一緒に野宿すれば大丈夫らしい。
最初に会ったのは6、7年前か、今ほど売れる前のほぼ無名の頃から知っている<か>と<む>は、それぞれ女性なのに女性らしからぬ? 個性と好奇心で野宿と島旅にこだわって、目のつけどころがひと味違う旅のカタチを突き詰めてしかもそれを出版で提示しながらそれぞれの道に邁進し続けた結果、年々実績を上げてここ数年は(単著では)<か>が3作目で<む>が5作目という本の出版のほかに、大手の新聞・雑誌やテレビ・ラジオ番組にそれぞれ専門家的な立場からの露出も増えて、それでようやくこのような催しも実現するようになったんだなあ、と近年の(端から見ると)順調な売れ方は他人事ながらちょいと感慨深い。
今後もそれぞれの分野で妥協せずに、ふたりとも媒体露出時にどうしてもたまにツッコまれる色恋沙汰の話を振られてもさらりと受け流してあえて気にしない(したくない)のかもしれないが「女性」という立場も大きな武器にして(この投稿のタイトルにも使った「女子」という表現には賞味期限があると思うけど……)、まあとにかく有名無名とかは関係なくこれまでどおりに邁進し続けてほしいものだ。
※27日(金)の追記
昨日なのかな、博水社から『野宿野郎』の“大将”宛てにホントに箱で製品が届いたようで。仕事が早い。というか、僕にもおすそわけを期待しちゃう。
※30日(月)の追記
地域限定だが、28日(土)付の朝日新聞東京北部(東京総局)版に、この模様の記事が掲載されている。どちらかと言うと<む>の扱いのほうが大きく、記事中の四国遍路のくだりで「おもてなし」を使ったのはタイムリーというか、新聞らしいというか。