第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

La belle indifférence 解離性障害に使えるか?

2019-11-06 17:28:15 | 総合診療

みなさまこんにちわ、今週来週は大忙しで自宅で寝るのは14日間で3日程度になってしまいそうで、色々なところへ出かけてきます。自宅へは15日に帰りますのでパンツと靴下をいっぱい買いました。少しでも研究のための時間を確保しないと研究とはやること♾なので、打ちひしがれています。

 

さて、講演などで使うために文献を読んでいたら、自分のコレッていう感覚と全く違うものが出てきましたので、紹介します。

La belle indifférence

 
はご存知ですか?これは、分かりやすく言うと解離性障害(Conversion)いわゆるヒステリーと言われている状態で、片麻痺や痙攣や、感覚障害など普通だったら一生を脅かしかねない疾患にかかっているかもしれないのにもかかわらず、まったく心配するそぶりすら見られない状態のことを言います。
 
で、このLa belle indifferenceが解離性障害の診断にどれくらい役に立つかと言うことを調べてみました。(Hoover徴候やArm dropping testはあまりにも有名ですね!)また時間があるときに、僕が英語論文にしようと集めている解離性障害身体所見でRule in してみようシリーズをいつかお伝えしようと思います。
 
おそらく一番有名なLa belle indifferenceに対する論文はこのSystematic reviewですね。でも文献の集め方とその選定の方法、定義や除外基準などSelection biasが強すぎて判断は難しいです。
 
大筋は解離性障害器質的疾患とでみられたLa belle indifferenceを比較すると前者で21%で後者で29%と器質的疾患でも多くみられるのと、定義も曖昧でありそれ自体が高い診断精度ではないために解離性障害の診断に用いるべきではないと言う見解です。
 
また別の研究でも、 感度3% 特異度 98% +LR1.3程度であったりとLR1台にて全く使えません。
 
一方で、同じ様に解離性障害の診断に対して我々が行うHoover徴候ですが、 感度56% 特異度 98% +LR26と驚異の診断精度を誇ります。
昔の逸話がありまして、多数の病院にかかり、MRIなどで異常がないと言うことを複数回調べられている原因不明とされる若い女性の片麻痺を師匠が回診で一発でRule in していたのを鮮明に思い出します。やはり僕の感覚でも、それくらい有用性が高いです。だった何回も色々な病院でMRI撮られて、髄液検査までされて原因不明だったのに、一撃フィジカルで診断されてましたから。
 
La belle indifferenceは、ある意味研究のLimitationでもあると思うのですが、プロの臨床家がなんとなく患者さんが醸しだす雰囲気や空気感を察知したり、ちょっとした目の動きなどから感じ取る非言語情報を数値化することは難しいので(Yes or No のBinary dataなりRating scaleなり)解釈が難しいですね。
 
また、救急搬送された患者さんの理解力が乏しかったり、知識レベルがあまり高くなかったり、精神疾患があったり、そもそも自分の健康に全く興味がない人だったりと【La belle indifference様の反応】はよくみられ、そもそも定義も曖昧なので比較研究にするとさらに難しいかもしれませんね。
 
この様な臨床家が持つ意味のある診断学的なスキル(非言語情報を)をたくさん言語化して数値化できれば、色々な人に役にたつだろうなぁと最近は考えており夢が無限大に広がります。
 
引用
1) La belle indifférence in conversion symptoms and hysteria: Systematic review, DOI: https://doi.org/10.1192/bjp.188.3.204. 

 


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