第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

精神と時の部屋に篭っています・・MCTM Day 56

2015-11-27 00:00:42 | Mahidol University編

皆様こんにちわ。

 

全くといっていいほど、自分の為の時間が取れず。やりたい勉強や、やらなければ行けない書類や論文、執筆業も、う◯こ詰まりの便秘症状となっております。

来年以降こられる方の為に、現在何をしているかを暴露すると、このような小部屋に籠城しカルテからのデータ採集を行っております。

 

Case record formといってデーターを写しとる用紙の量がただでさえ同期で一番多い上に、さらに拍車をかけて合計1400症例を集めなければなりません。

そう、てんで、全く、終わりません。

早朝から毎日24時まで食事以外は全部この単純作業に当てても、中継地点すらみえません。これが1月までずっと続くかと思うと吐き気がします。

 

こんな状況なんか昔あったなぁと振り返ると、自分が育った研修病院の一年目の時と同じ感じの生活をしております。

さらに一緒に700例を集めてくれているバングラディッシュからの同期が火の玉のように叱咤激励(オラオラ)してくるHard workerで、私は情熱で完全に負けているので、彼女の言いなりになってひたすら単純作業を繰り返しております。

 

ただあの寝れない当直が続く研修の時期と較べて気が楽なのは、誰も生死に関わらず、全部自分でケツを拭けば良いだけなので、ある意味精神的に楽ではあります。だって自分でやりたいと決めた事なので。

幸せの閾値が極めて低くくなるので、若いころにドキヅイ研修受けていて、ホント良かったなぁ~と心から思います。

 

実は悪いことだけでも無くて、これだけの症例を事細かくデーター採取していると、連日のラボの動き(CBCと肝機能のみ)から直感でコレはコノ疾患だろう、などと1秒で分かるように

なりました。System1 Diagnosisが発動しやすい経験値を一つ一つ積んでいる事と、色々なデーターを見ている内に天からアイデアが色々降って来るので、無駄なデーター採取だと当初感じましたが

コレはかなり、いや意外と良い事もありそうです。(早朝から深夜まで休みなく土日もやることでやっと300に到達・・・)

日本に帰ったら、アノ仕事やコノ仕事をしたい。そんな感じで、やりたいことや課題はどんどん増え続ける今日この頃です。

 

ということで、間違いなく、しばらくご無沙汰になると思いますが、変わらず元気にやっていきます。

 

 

 

 

 

 


東京城東病院の今 その4 ティアニー先生・青木眞先生ティーチング

2015-11-15 20:52:31 | 総合診療

皆様こんにちわ。

私は、明日より恐怖のData collectingが開始です。土日無く、朝から夜までやって1月半ばまでに終わらせる事ができるかどうか?

狸の皮算用では1日20症例が必要で萎えます。

そんなこんなで時折流れてくる、東京城東病院の仲間達の写真が、何やら(というか非常に)楽しそうなので、羨ましくなりチョコチョコ

連絡を取ってみたりしています。

 

昨日はローレンス・ティアニー先生が訪問されたそうで、いつも御指導頂いている青木眞先生も一緒にこられており、非常に贅沢な時間を

過ごした様です!!羨ましいです!!本当に。。。また時間がある時に皆様に報告致します。

 

青木眞先生、ティアニー先生のダブル指導。

 

 

 

 


回診の風景 マラリア MCTM Day45

2015-11-15 00:07:45 | Mahidol University編

皆様こんにちわ。

MCTMはDTMHの時よりもMorning ward roundは多いです。

DTMHコースにて基本的な知識は能動的かつ受動的に習った事になっていますので、一つの症例に対する吸収がやはり良いと思います。

4月当初は全くその余裕が無くて、回りの医師の発言が全く聞き取れなかったり、そもそも内容や単語を全く知らなかったり・・

(ある程度、マラリア、デング熱、リケッチア感染症、寄生虫感染症などに経験がある方は別かもしれませんが)

そんなこんなで、慣れてきて惰性になってきた頃にトラベルメディシンでこの国のエース(だと思われます)のWacharapon先生から実際に先週来ていた患者さん達で

自分たちで考えて、自分たちで診断して、治療も決めて下さいという模擬訓練がありました。

患者はタイ北部のエリートサラリーマン達で6人でナイジェリアに水道開発のビジネスで2ヶ月前から出張、前地で一人発熱性疾患になって診断はわからなかったが死亡したので、緊急帰国して診て欲しいとの内容でした。その内二人は既に赴任地でマラリアを疑われて治療されたけれども、どの薬剤がどの量をどの期間使われたかも不明であるといった設定です。(でも、これ実症例です)

できるかぎりの病歴と身体所見の情報を合わせて、その地域の疫学をCDCのサイトと文献等から高速で調べる必要があります。

最終的にその地域で考えられる鑑別診断を出来るだけ早く想起しなければなりません。

また、唯一の手がかりはデジタルカメラです。これは偶々撮られていた薬の写真です。製薬会社とその薬が実在し、利益目的で作られていないFake drugでは無いことをホームページで確認。

またマラリアであったとしたら、薬剤耐性の問題は、Pf (日本語では熱帯熱マラリアの事です➠つまり重症化して死にます)の割合はどうかをCDCのサイトから調べます。

(CDCによれば、何とPf率 観測上は100%との事:軽症者は受診していない可能性や複数回感染しているので自然治癒もあるか?)



確かに末梢血スメアでは見事なdouble infection, ring from, normal size RBCからまぁ何となくPfである事は間違いなさそうではありますが、迅速抗原テストなどを使って確認も出来ます。

結果Pfと診断したのであれば、薬剤耐性がどうかを判断して治療を考慮する、もしくは治療が必要でないかを判断するなどなどです。

まぁこんな感じで色々と考えます。やはり、自分は臨床が好きなので、それ以外の鑑別や検査もあぁだこうだと幅広く考えてしまいますが、それはもう育った環境がそうなので変えようがありません。

結論からいって疫学が変わると自国での自分の経験が役に立たなくなります

だから可能なかぎりの有用な情報・リソースをできるかぎり早く手に入れる訓練が必要になると思われます。

統計学的にいって、どんな検査の陽性的中率と陰性的中率は有病率に大きく依存して変動するように、自分の診断学的なそれらも大きく変動してしまう為かと思いました。

マラリアを有するタイ国からのアフリカへの旅行者も黄熱病の予防注射は打つがマラリア予防までは意識しない人が多いとの事でした。

しいては熱帯病に縁が薄い日本、さらにグッと意識は低くなるかと思いますが、実際にはいかがなものなのでしょうか?一度調べて見たいです。

 


 

さて、この日はハウスメイトのドイツ人医師が誕生日でしたので皆でお祝いをしました。私の指導医のDr Supat先生も一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


タイ VISA取得、90日レポートの行い方

2015-11-10 17:56:28 | Mahidol留学情報
さて、最近はDTMHの問い合わせやMCTMについての質問、さらにはMahidol 臨床熱帯医学の見学希望がチラホラありましたので、皆様が一番困るであろうビザの問題について記載しましょう。
 
 
1)Sigle entryのススメ
まず必要な事は入学後最初の90日間に必要なVISAを確保してください。この場合、日本の東京目黒の小道にある在京タイ大使館に出向き、Mahidol大学からのRecomendation とCertification letterと教育(ED)VISAの申請書をもっていってください。詳しくは下記を参照の事。 
 
 タイ大使館から抜粋します---
ノンイミグラントED(教育)
申請者本人申請
滞在目的は
- 私立または公立の教育機関における研究
- 公共団体、国有事業または国際機関における研究または実地見学への参加
- 仏教学習または修行
- 航空専門学校における研究
ノンイミグラントED(教育)申請料 シングルエントリー 9,000円  / マルチプルエントリー 22,000円
 
申請に必要な書類
 
1. 有効な旅券
(有効期限が6ヶ月以上有効なもの、査証欄の余白部分が1ページ以上あるもの)
2. 申請書 全ての欄を記入し、申請者が署名したもの
3. 申請者カラー写真1枚(3.5×4.5cmサイズ)
4. 日本国籍以外の申請者は在留カードコピーまたは外国人登録証明書コピーまた申請時に原本を提示(有効期限が3カ月以上あるもの)
5. 航空券または予約確認書コピー 申請者名、便名、タイ入国日、出国日の記載必要
6. 経歴書全ての欄を記入し、申請者が署名したもの
7. 入学許可書/招聘状原本 PDF,ファックス、コピー不可
8. 私学教育委員会などタイの所轄省庁発行の申請者名入り承認状
9. 日本の教育機関の推薦状 PDF,ファックス、コピー不可
 
これを揃えた時点で、ネット上で予約をとりその時間までに確実に到着しないと受理してくれません(私は二度手間をしました)
 
私は日本を行き来することが4月からの60日間で4往復も決まっていた為にマルチプルエントリーとしていましたが、日本で行うよりもこちらで行った方が2800THBであるので、お勧めです。もし入国後90日以内に出国する予定がある場合は必ずRe-entryの申請が必要(1300THBを払い空港で行います、Immigration officeで半日使う事を考慮しても、非常に簡単で早いです )になりますので、その場合だけマルチプルの方が良いでしょうか。
 
2)入国後90日以内に1年間のVISAへ移行する為に延長の手続きを
DTMHで入学した場合は通常、5月末がVISAの延長が必要になりますので、その時に友達と一緒にImmigration Officeまで必要な書類を持っていきます。基本的には大学側が書類を書いてくれますので、個人であれば問題ありません。
 
 【日本から家族を帯同している場合は要注意です!!】
家族の場合は、何故どの家族が帯同しているのか各人に対するVISAの申請が必要です。日本から戸籍謄本(家族全員が記載されているもの)とその英訳(在タイ日本大使館で申請します)が必要になります。日本を離れる前に、忘れずに持参するようにしてください。
 
 
3)90日レポートについて
 
タイに住む外国人は全員必要です。 面倒ですが、非常に重要なのが「90日以上滞在の場合の現住所届け(Notification of staying in the Kingdom over 90 days)です。逆に良く勘違いされるのですが、もし90日以内に出国した場合はタイに帰国日からカウントされます。
よって、出国をマルチプルビザで繰り返している場合はこの手続は不要です。ただ、期日が過ぎて違反をすると罰金を払う事になりますので、厳重に注意してください。
 
一般的には書類を提出するだけですが、イミグレまでいくのは非常に手間ですし、タクシー代はかかるし、非常に多くの外国人で溢れており、めちゃくちゃ待ちます。
 
お勧めは郵送です。(Windowsの場合はネット延長です)
下記に送ります。
90 Days Report Section, 
Immigration Division 1, Immigration Bureau,
Chalermprakiat Government Complex B Building,
120 Moo 3 , Soi 7,  Chaengwattana Rd., Toongsonghong, 
Laksi, Bangkok 10210
 
 
必要書類は、
①パスポートのコピー(顔写真のページ、現在のビザのページ、最新の入国スタンプのあるページ、最後のビザ更新があるページ)
②アライバル・カード(TM6)のコピー(白い紙がホチキスではさんであるはずです、絶対になくさないように:面倒くさい)
③前回の90日レポート(二回目以降の申請時のみです)
④記入・サイン済みの申し込み用紙(TM47)
⑤自分の住所を記入した封筒に10Bの切手を貼ったもの
 
私が、当初全然わかっていなかったのは、このVSIAの問題でした。
今後長期間、タイに住まれる方の参考になればと思います。
 

結核性胸膜炎に対するADA MCTM Day 39

2015-11-09 17:35:23 | Mahidol University編

 

皆様こんにちわ。
 
なんだかんだで慌ただしく、毎日が過ぎていっております。
ちょっとホームステイに古い友人が2週間程タイにきておりますので、自分の勉強と仕事と課題のペースが乱れております。
週末はホアヒンビーチへ友人と家族でレンタカーを借りて遠出しておりました。
その前は、チェンマイに、その前はパタヤにと色々とタイの文化や地理の事も勉強しております
(折角、タイにいるのにタイの勉強をしないのは勿体ないと、最近考え方が変わりました、良い意味で。)
 
さて、MCTMは月・水・金の朝から回診という名の口頭試問があります。(DTMHでは単なる参加でしたが、MCTMでは発言や質問が点数になるようです➠最近は全く気にしておりません:日本人は無視して楽しんで良いと思います)
 
今回の患者さんは40代男性(公務員)で5日前から続く高熱と、倦怠感、筋肉痛と関節痛、Retro orbital painで受診。
身体所見ではややるい痩と男性にしては線が細い気がする程度。右肺野の呼吸音の減弱と打診で濁音がありました。
 
精査の結果、NS1抗原陽性とHIVスクリーニング陽性との事。CD4はまだ不明(ダブルかよ・・)
さらに右大量胸水に対して調べている段階。穿刺したら、LDH1800のLight criteriaでは滲出性の胸水。
しかもデング感染による血小板の2万台までの低下があり。
 
Discussionのポイントは、どのように胸水を調べるか?という基本的な事でしたが。。
結核性胸膜炎のスクリーニングで、他国はADAをあまり使い慣れていないらしく、ここは日本人医師の出番。
カットオフ値の見方とどの様な場合に偽陽性になるかについて話すと喜んでいました。
ともあれHIVの罹患率を考慮すると、この街では幅広い鑑別が必要です。HIV患者の胸水精査になると何でもありですから。
 
ADAはまぁまぁ役に立つ
 Measurement of adenosine deaminase (ADA) may be helpful with a differential diagnosis of malignant versus tuberculous pleurisy when an exudative effusion is lymphocytic, but initial cytology and smear and culture for tuberculosis are negative.
 
Cut off値は覚えやすい所で50としております。特にリンパ球が多いとさらに、っぽくなります。
 The level of ADA is typically greater than 35 to50 U/L in tuberculous pleural effusions. Specificity is increased when the lymphocyte to neutrophil ratio is greater than 0.75 and the ADA is greater than 50 U/L. False negatives and positive ADA results do occur, so ADA results need to be considered in the context of other features of the patient’s clinical presentation. ADA testing may be more valuable for ruling in the diagnosis of tuberculous pleurisy in geographic locations with high prevalence of tuberculosis, although the negative predictive value of ADA testing remains high in lower tuberculosis prevalence regions. Some studies suggest greater diagnostic value of pleural fluid interferon gamma in differentiating malignant from tuberculous lymphocytic exudates, but the lower cost and ready availability has promoted the use of ADA testing in this setting.
 
Combined use of pleural adenosine deaminase with lymphocyte/neutrophil ratio. Increased specificity for the diagnosis of tuberculous pleuritis. Burgess LJ, Maritz FJ, Le Roux I, Taljaard JJ. Chest. 1996;109(2):414.
 
 
という事で、当たり前の検査を当たり前に好きにできる日本の良さも認識した今日この頃でした。

DTMH疾患 その3)Yaw(いちご腫)

2015-11-03 00:34:43 | Mahidol University編
本日は、スーパーイケメン Germany GuyのハウスメイトによるRCT論文の発表だったので、これを記載しておきます。
 

Yaw ⇛いちご腫:Treponema pallidum subsp pertenueによる非性病性のトレポネーマによる皮膚潰瘍

Bejel⇛ベェジェル:Treponoema. pallidum subsp endemicum主にアフリカ南部、中東、東南アジアで見られる非性病性のの事。
Pinta⇛ピンタ(熱帯白斑性皮膚病) Treaponema carateum
 
これらは形態学的にも病態的にも性感染症である梅毒(Treponema pallidum subsp pallidum)とは鑑別不可能であるけれども、地理的な分布や、年齢、ヒストリーで鑑別する。遺伝子レベルではごく少量の違いがあるらしい。
 
WHOとUNICEFのキャンペーンによって、1952年には全世界で5000万人が感染していたけれども、その12年後には250万にまで撲滅。ただ、1970年代になってから再振興の兆しがみられて、各地でくすぶっている状態。
 
特にYawは現在でも、問題であり、熱帯地域で、不衛生でごちゃごちゃした人が多いエリアに多く、ミクロネシアなどにも見られる。
 
Yaw とBejelは子供の病気で70%は15未満である一方でPintaは大人の病気。皮膚ー皮膚で感染や、特に引っかき傷などあると感染しやすい。
これらの中で、日本で今後輸入感染症として見る可能性がある(多分少ない)Yawでしょうか。ざっくり言うと皆似ていて?です。進行すると皮膚だけでなく、骨髄炎や軟骨炎、腱などに感染が波及する。
 
これらのトレポネーマの潜伏期間は平均21日(Range 9−90日だそうです)
 
皮膚の所見からの鑑別は下記の様です。

the primary lesion of yaws may be mistaken for cutaneous leishmaniasis, tropical ulcer,pyoderma, Haemophilus ducreyi 

 papulosquamous secondary lesions of yaws must be distinguished from common disorders such as psoriasis, dermatophytosis, scabies, syphilis.  

血清学的診断は梅毒に準じます
 
The serological tests are the same as those used to diagnose syphilis. Existing tests cannot differentiate between endemic treponematoses and syphilis. 
勿論、梅毒と見分けは尽きません。(ここばポイントでしょうね)
 
治療は、長時間作用型ペニシリンG(Penicillin G benzathine)筋注 大人は120万U、子供60万Uらしいですが、日本では梅毒に準じてだと思います。
 
さて、このLancetからの論文では、アジスロマイシン30mg/kg(最大2g po) 一発内服が、筋注毎日と変わらず効果あり非劣性を示しております。これにより、子供が注射を嫌がって、ドロップアウトしたり、しなくなるのではないかとの事です。たしかに毎日注射されるより、非常に便利ですね。
 
Single-dose azithromycin versus benzathine benzylpenicillin for treatment of yaws in children in Papua New Guinea: an open-label, non-inferiority, randomised trial. MitjàO, et al. Lancet. 2012 Jan;379(9813):342-7. Epub 2012 Jan 11.
 
 
 
 
 
 
  

DTMH疾患 その2)Immune reconstitution inflammatory syndrome (免疫再構築症候群)

2015-11-02 13:25:16 | Mahidol University編
Immune reconstitution inflammatory syndrome (免疫再構築症候群)
 
本日の回診のディスカッションのポイントでした。
20代男性、1ヶ月以上続く1日4回程度の軟便から水様便、20日程度続くSpike feverで入院。体重減少は3kg/月。診断は、HIVが陽性だけどCD4値はまだ出ていない。症状の原因の鑑別は何で、君なら何の検査を行い、治療はどうする?というものでした。ここはDTMHのHIV試験のヤマです。
 
CD4低かったら、間髪入れずにHAARTをぶっ放すと答えでもしたら「バカモンっ」と怒られます。
多分、日和見感染の診断と治療が優先でHIVに関してはWait and seeですね。というのが模範解答です。
 
今日はコレを記載しておきます。免疫再構築症候群(IRIS)とは何ですか?
 
日和見感染で来院した新規HIV(+)低CD4の患者に対してHAART療法を優先してしまう事で、免疫機能が復活して激しい全身性の炎症症状を引き起こす事と言えば分かりやすいかもしれません。
例えば、ヘロヘロになっていた兵士達が敵軍の侵入に気づいていなくて寝ていました。兵士達が元気になって気づいてみたらいつのまにか敵軍に占拠されていた為に、慌ててて総攻撃が開始、逆に天守閣が炎上、城は壊滅。そんな感じでしょう。
どんな疾患がなりやすいかはこのような疾患です。
 
Mycobacterium tuberculosis 
Mycobacterium avium complex
Cytomegalovirus 
Cryptococcus
Pneumocystis
Herpes simplex
Hepatitis B
Human herpes virus 8 (associated with Kaposi sarcoma)
 
IRISの国際的な定義は2015年現在ありませんが、一般的には
 
・CD4低値のAIDSの発症がある事(多くは<100cells/micro lであるが、TB感染の時は例外で>200で起こしうる)
・ARTが効果ある。
・勿論、薬剤耐性菌で無いこと、細菌感染を合併していない事、薬剤アレルギー(これが問題になります)が無いこと、内服をちゃんとしている事、吸収不良の問題とか無いことちゃんと評価して確認する。
・炎症状態の存在
・HAARTを開始してからの症状の出現との関連性。
 
臨床的に上記の感染症が多彩な症状を起こしうる事は想像に難しくないはずで、現場では丁寧なPhysical+Taking historyだけでは対応できない事が多い為、どうしても検査に検査を重ねたSystem2的(詰将棋的な)思考法が必要です。
 
まずは日和見感染に対してどの部位にどの病原・原因があるかを探しだし、そちらを治療する事を最優先にした後で、HIV治療を開始します。とある研究では薬剤開始からの中央値は48日(29-99日)との事です。
 
 
Immune reconstitution inflammatory syndrome: more answers, more questions.
J Antimicrob Chemother. 2006;57(2):167.
 
Incidence and risk factors for the immune reconstitution inflammatory syndrome in HIV patients in South Africa: a prospective study. Murdoch DM, et al. AIDS. 2008;22(5):601.
 
 
話は変わりますが、先月日本に帰った時に羽田で見つけたのですが、ここ最近は日本でもSIMフリーに対する認識が一般的になってきているようですね。以前は、かなり外国人旅行者にとって不便であったWifi環境、外国人向けの携帯電話も、今や海外旅行者用のSIMを自販機で売っている時代になってきました。
2年前にタイに来た時に殆どのコンビニでSIMの番号を自由に手に入れられ、簡単に携帯を持てる事に驚いたのですが、日本もようやく独占的なマーケティングから変わってきた兆しが見えます。