第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

島根大学へ医道します。

2016-08-21 17:50:57 | 総合診療
9月1日より島根大学 卒後臨床研修センターに教育専任医師として赴任する事になりました。
 
もともとは、昨年末に両国の土俵のあるチャンコ鍋で、お師匠様からの自分の将来を考慮してくださった結果の奇想天外の提案でした。直接的には粟屋先生からの推薦を頂きましたが、決め手は何より直属の上司にあたる鬼形先生がバンコクまでおいしい出雲のお米を【重い】と【思い】を持ってきてくださった事に自分の直感が化学反応を起こしました。
 
 客観的な自己解釈では、今は臨床医としてガツガツと力をつけたい時期で、翌年の留学での武者修行もすでに計画していました。なので、実は大学へのお誘いは早すぎるとも思いましたし、悩みました。
 
 ただ、自分の人生を振り返ると、ここぞという時に様々な先人が自分の前に現れては、コッチだと強烈に手を引っ張って下さり、基本的に信じるれる・信じるべき人を信じる事でだいたい良い結果が産まれたきたように勝手に思っております。その意味で、私は極めていっつも運が良く、回りの多数の人格者に恵まれています。
 
 医学部学士編入を決行する時の話しですが、1大学合計8−10万円の旅費や受験費用が当時の自分には払えなくて諦らめていました。それを出世払いで貸すとまで言ってくださったのは研究室の恩師でした。医師になる事に受験勉強ができるとか全く関係ない、情熱を持った人間がやるほうが絶対良いに決まっている、そうやって不出来な自分の背中を強く押してくれました。
 
あれからかれこれ15年近くの歳月が流れても、今も昔も全く変わらず、青臭くて情けない自分ですが、情熱だけは消さずに新しい環境に挑戦したいと思っています。
 
 間違いなく医師は患者さんの為に存在しております。5年後、10年後の自分の理想の医師像を思い描き、自分は何をしたいか、何が出来るか、どう成っていたいか、究極的には地域の医療を、日本の医療に対してどう貢献していたいか。道は遠く険しいですが、笑顔で進んでみようと思います。
 
ということで、来月よりちょっと個人的な勉強内容へこのブログをシフトしようと思っています。名前も変更予定です。

釧路の夜景。非常勤医師を上手く活用するシステム

2016-08-09 22:52:45 | 総合診療
 
 
現在釧路です。今夜の夕日は虹までかかり格段にキレイで、気分が良いので久々に日常を更新します。

先輩からの紹介で釧路の基幹病院で週単位で働いているのですが、ココは忙しいですが抜群に働きやすいです。頑張る人を優遇する雰囲気もとても気にっております。

東京城東YearからMahidol Yearの生活にかけて、非常勤医師としてできるだけ常勤の先生の役に立ち、患者さんを丁寧に診るように配慮して色々な病院で働いてきました。
 
慢性的な人不足でどうしても非常勤医師に頼らざるを得ない事も多々あるのが日本の医療現場の問題ですが、私にとって今回の病院が働き安い理由を考えてみました。

一番に家庭医や総合診療医的なマインドを持った先生方が常勤医として固まって働かれているからだと思います。

電子カルテが重要です。
医師達の散文的な自分の興味ある内容だけを記載した一行カルテでは、慢性期の患者さんの的確な把握を短時間で行うことは非常勤医師にとって極めて困難です。一から1人1人全てのプロブレムを挙げて、内服を纏めて、検査異常を調べてなど行うのが本当に時間がかかります。
その意味で、紙カルテの功罪もありますが、電子カルテの長所としてコピー&ペーストを上手く利用すれば短時間でのサマライズが可能です。

私の持論では、診療は点ではなく線で診るべきだ、ですのでピンポイント診療は逆にストレスになったりします。

ココは、全患者に対して医師だけでなく、ナースなども含めてプロブレムリストをできるだけ挙げて皆が分かるように整理しており、スタッフ皆が協力して書いている文化があるようです。よって、ピンポイントで非常勤の医師がコロコロ変わっても弊害が出にくいように皆が監視し上手くリスクヘッジが出来るのかと思います。
 
患者さんも地域の方なので、ナース達が大まかに把握しており、健診や1年に1回のチェック、ワクチン摂取の有無や、各種定期チェックまで含めて一覧表で抜けていないかフォローされておりました。これには驚きです。

さらに非常勤医師といっても色々な分野の出身の先生方がおられるので、異常値や少しでも問題があれば常勤の先生方へカルテチェックが行くようにシステム化されております。

煩雑な医師の書類業務は無く診療のみに専念できるようになっており、オーダー等もシステマティックに整理されてました。

これ等はいつの日にか電子カルテの病院で自分が病棟や外来を管理し、非常勤の先生達と上手くやっていく中間管理職に立った際に役に立つであろうポイントでした。早く、的確に、より多くの患者さんを網羅的に非常勤の先生達になるべくストレスかけずに診てもらうか、色々な工夫されており、とても勉強になりました。

さて、現在その合間に自分の勉強がてら市立夜間急病センターで1人夜勤も欲張っています。自分の中の良い医師像に近づく為に足りない事が多く、最近本気で苦悩しております。ただ単に惰性で診療をしているだけでは自己の学びに限界を感じる事もあり、毎日少しでも疑問があれば調べて勉強する事が地味ですが王道なのだとつくずく感じる次第です。
 
色々な複雑な事例も一つ一つが考えさせられるもので、急病センターで数ヶ月前から食事を食べれなくなってきた、嚥下が半年前から出来なくなってきた等の高齢者の方が初診で受診される度に、かかりつけ医とは?という事に対して考えさせられます。
 
今でも手を上げれば誰でもかかりつけ医に成れますし、40才を過ぎて勤務医が嫌になれば何科でも理論上誰でも開業可能です。
 
しかしながら、かかりつけ医になる為のトレーニングは今まで日本に存在しておりませんでした。
 
何科の先生でも今まで務めてきた経験からある程度のことはできるという自負があるのも十分理解できるのですが、見る人が見れば、おそらく同じ慢性期の外来診療でも全く異なる視点と診療内容であることが一目瞭然です。
 
本来かかりつけ医として開業しようと考えられている方はそのようなトレーニングを受けた後で開かれた方が、患者さんの為だけでなく、医院の経営問題の上でも、医師の自己満足感や達成感、生涯学習の点など全ての上でベネフィットが勝るような気がします。
 
短期間でも良いので、私が個人的に尊敬している家庭医の先生方のように学ぶ機会があればもっと日本の地域医療は良くなるだろうなぁと、ふと感じた当直の夜です。