第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

病院ランキングなどの嘘と情報の信頼性 

2021-02-25 14:58:52 | Harvard medical school

病院の質の評価を科学的根拠と透明性をもって数値化して、ベンチマークとして利用することの重要性は以前こちらでも書いていました。

今日は、逆に病院の機能や質の評価を適当に週刊誌や商業雑誌などが計測して提示する危険性についての授業内容です。

日本でも大学ランキングや、病院ランキングetc、まことか嘘か客観的評価に乏しい情報がありますよね。

そもそもその評価軸や、透明性、評価方法、内的妥当性などが本当はとても重要なのですがそのようなことをしっかりと記載した情報がいかに少ないか。

医療は、患者さんの生命にかなりの部分直結してしまいますので、医療サービスの受け手をしっかりと考えた上で慎重かつ丁寧な情報提供が必要になるという内容です。

おもしろいのが、NewYorkの医療施設・病院ランキングなどの情報を11個の評価項目で調べた病院ランキングのランキング!!という概念です。

これは日本でやれば研究として楽しいかもしれませんが、週刊誌等の出版社の皆様から袋叩きにあうかもしれません。 

 

調査項目は

  1. Transparency
  2. Evidence-based
  3. Aligned with national measures
  4. Rooted in clinical care
  5. Timely
  6. Risk-adjusted
  7. Valid and reliable
  8. From consistent timeframes and sources
  9. Available to providers before publication to correct errors
  10. Free from confl icts of interest
  11. A representativeness of the population.

です。時に病院のコマーシャルの要素が強かったり、出版のための宣伝費用を取っていたり、そもそも統計手法や数字をミスリーディングするような書き方だったり、統計データを調整していなかったりなどなど米国でも問題は山積みです。僕らも、自分の病院がTop100などに入っていると嬉しくなったりするものですが、実際のところは内部の人間も違和感があることが多いかと思います。上位4つは上記で結構高いのですが、

下記の病院ランキング雑誌がボロボロです。このことからも、いかに適格にそれぞれの医療施設の質を適格に評価と数値化して、患者側をミスリードしないように公平に医療情報提供を行う必要性があるかがわかりますね。

我々も本当に注意しなければ、だいたいSNSやインターネットの世界には、医師でも簡単に騙される情報が氾濫しているので(そして多くの場合はそれらの真実性を確認するためには結構な勉強量が必要になりますので)、非常に難しい問題であると思います。幸い日本は営利目的が強すぎる大規模病院は存在しにくいので(儲からないシステムになっているので)よいのですが、このあたり米国ではよりシビアなのだと思います。

最後にこのような病院ランキングや施設の外部評価を実施ならびに、注意すべき点は下記であると思われます。


Differing Methods:測定基準が全く異なる事・・重要視するポイントやプログラムの違い、得意とする領域が全く異なる場合に評価自体が難しい

Risk adjustment:患者層の大きく違うこと・・難しい病態や、救急搬送受け入れしない(断る傾向がある)など患者リスクの異なりを調整できない事
Moving Goal Lines:目標の掛け違い・・病院など施設は、ランキングの上位を目指すのではなくそもそも標準的治療や国や政府が基準とする様々な領域をまずは超えることを目指すべきであるが、収益や集客を目指してランキングを重んじるようになる。
Data Sources: そもそも正確でないデータを用いている・・ランキングなどの作成の場合のデータ多くの場合は診療報酬やDPCなどや単なる手術件数など使用していることが多い。収益に関係ないが重要な安全や患者満足度に関係するようなデータは含まれにくいことが多い。
Lagged Data:データには少なくとも1-2年の時差がある・・上記のデータを用いることが多いために、ランキングなどに用いたデータを改善のための早期介入に用いるには古すぎる。
Performance hangover:データの良し悪しによっては、その施設のパフォーマンスが更に悪化したり、平均に甘んじたりなどの事もあり得る。

 

引用と参考文献

  1. Hanys_2019_Report cards
  2. Pronovost_2007_GAAP in Quality measurement and reporting_Hopkins. 
  3. Shahian_2016_Rating the raters.
  4. Shahian_2016_The quality measurement crisis.
  5. Weggelaar-Jansen_2018_Developing Dashboards
  6. Austin_2015_Health Affairs_Rankings and Ratings
  7. Bilimoria NEJM Rating the raters


医師は必ず診断エラーに遭遇している。 病院総合診療医としての展望

2021-02-22 00:50:53 | Harvard medical school

みなさま こんにちわ。

きょうは、複雑な過程や、あまりにも多い作業過程では、信頼性が一見高そうなものでも繰り返すことでどれほど危ういかという話です。

病院総合診療医学会は本当に楽しかったです。ああやって、役職や肩書関係なく、若い人たちが一生懸命集まってがんばっている学会は活気があってとても良いと思います。でも、診断エラーに遭遇した事がないと解答された医師の以前のアンケート結果をみて、省察をする手法や、体系的な学問としての診断エラー学はやはりなんとしてでも卒前卒後教育で広めなければいけないなぁと確信した次第です。

たとえば、先行研究からプライマリ・ケアセッティングやERセッティングなどのUncertaintyが高い領域がもっとも診断が難しくて診断エラー率3-15%(外来セッティングでは5%以下)とされています。それでも診断正答率95%って、一般の方からしたら結構高いし、信頼できる診断正答率だと感じませんでしょうか?

では仮に、その95%の診断正答率であったとしても、それを25回繰り返すと一回もエラーをしない確率は28%になります。

だいたい一日の外来初診患者を25人見ているとしたらどんなに優れた名医でも3日間に2回は診断エラーに遭遇していることになりますね。問題は、そのDiagnostic error の古典的定義 (Wrong, Missed, Delayed)を認識できる症例や環境や実力があるかどうか?多くの場合は患者さんが来院されなければ、医師は気づか(け)ないかもしれません。もちろんその中でも極端な有害事象まで発展してしまうのはそこまで多くは無いのですが、毎日毎日臨床をしていると必ず遭遇するのが普通なのです。がんばる臨床医ほど診断エラーに遭遇しまくり!!それで良いのです。


複雑にしてしまうプロセスをだれもが
間違えようがないレベルまでに単純化して、プロセスをへらす。可能であれば、正しい作業が行われる確率を器械や強制システムを導入して100%に近いレベルまで叩き上げる。そして、これは医療の質と安全の考え方で、もっとも重要な考え方です。

このブログの記事でも以前書いたように、もともと僕が好きな人情味ある教育介入という手法は、医療の質・安全の学問的には介入レベルの低い、効果のとても弱い介入になります(短期的に特に)。いくら熱心な教育を行い情報提供を繰り返し行ったとしても、本当に安全な医療の提供の実現は難しいことがわかります。

例えば年間36000人の初診外来があればその数だけ、有害事象は必ず発生しますし、手術の現場でも、救急外来の現場でも、なんらかのエラーを避けることは不可能です。

なので間違えようがない、エラーが起きようがないシステムレベルでの変革を迅速に取り入れる事がもっとも有効であり、それを医療施設というフィールドで実施できるリーダーシップをもった人材が本気で必要ということになります。かざりではなく、全体のためにアクションを取れる人を育成する。

患者さんが来院して、無事に治療がうまくいって自宅に帰宅するまで、文字通り無数の数え切れないプロセスがあります。

無数のプロセスの中には必ずどこかには改善しなければならない余地がある。医師は多くの場合、自分の専門領域だったり、自分の医局・診療部だったり、自分の病棟などだけに視野と視点をおいていることが多いので、このように患者中心のケアを大事にしながら病院全体を俯瞰して、問題点を診断して治療介入が実施できる臨床医が必要になってきます。そうです、そこが病院総合診療医にとって高い親和性を発揮する部門なのだろうと体感しています。

海外の先行研究や、ハーバード大学のQI&Safety部門を見ていると多くがホスピタリストやプライマリ・ケア医だったりします(時々横断的な視野をもつ麻酔医だったりも歴史的におられます) 

最近悩んでいましたが、何故自分は激烈興味多動フルスロットで、視点が登っていく垂直キャリア思考ではなく、水平型であり(良くも悪くも)、突拍子もないように不連続にみえる分野にワザワザ過剰なストレスを抱えこみに乗り込んでは次から次へと転戦していっているのか?

省察してみると、ガチンコの叩き上げ臨床医から、熱帯地方の感染症とアジアの臨床教育に感銘をうけて勉強した後に、日本の大学病院での教育・臨床・研究実践にシフトして、今はシステムを変えることに興味をもっている。

結局は、患者さん中心の良いケアを提供するためだったり、安全性を確保するために、どうしても実施しなければならないシステムの変革が現場には山程多数あって、そいういう人材をガスガス育成することが重要だからなのだと薄々気づいていたからなのではないかと考えています。

悔しいですが、悩みながら、学生時代から総合診療とか専門性ないからやめておけと数多の指導をうけながら、アイデンティティーは一切ブレず、アダプタビリティーでぬらりひょんとかわしながら生きてきた、多分根っからのジェネラリストなのだと思います。

 

 


Applied Quality and Safety in Healthcare Settings HQS 702:

2021-02-11 16:01:57 | Harvard medical school

医療の質とリーダーとしての役割について

病院のリーダー的立場にある人物が効果的なsafety cultureを構築できていないことで、手術ミスから治療の遅れに至るまで、多くの実際の有害事象の一因となっていることが明らかなってきている。不十分なSafety Cultureが有害事象の重大な要因である。

*Smetzer J, et al. Shaping systems for better behavioral choices: lessons learned from a fatal medication error. Joint Commission Journal on Quality and Patient Safety. 2010;36:152-163 

リーダーシップの不十分さは、様々な形で有害事象の一因となる可能性がある、下記ほんの一例。
・患者安全に関するイベント報告のサポートが不十分 
・安全性の脆弱性を報告したスタッフ、その他の人々へのフィードバックや十分な対応の欠如
・イベント報告をしたスタッフの心理的安全性を担保できていない
・報告された安全に関する問題の優先順位付けと対策実施を結局行わないこと
・スタッフの燃え尽き症候群や、過剰な負担に対処できていない  etc 

*引用文献:The essential role of leadership in developing a safety culture, A complimentary publication of The Joint Commission, Issue 57, March 1, 2017.

Safety Cultureの3要素(James Reasonsが言うには)

Just culture – people are encouraged, even rewarded, for providing essential safety-related information, but clear lines are drawn between human error and at-risk or reckless behaviors.公正な文化 - 安全に関連する重要な情報を提供することが奨励されるが、ヒューマンエラーとリスクのある行動やReckless(無謀な)行動の間には明確な線引きがあること。
Reporting culture – people report their errors and near-misses. ちゃんと自分のミスやヒヤリハットを報告できる文化
Learning culture – the willingness and the competence to draw the right conclusions from safety information systems, and the will to implement major reforms when their need is indicated. 正しい結論を導き出す意欲と能力、そして必要性が示されたときには大規模な改革を実施しようとする意欲と行動。

The Joint Commission からの提案*
リーダーとしての組織構築で重要な事、相互の信頼性が高く、責任感(当事者意識)が高く、少しでも危険な状況を把握し、システムをさらに改善し、常に評価し続ける姿勢。

特に大事な11個の戦略

1.有害事象、ヒヤリ・ハット、安全でない状態の報告とそこから学ぶ事ができる透明性高くで非懲罰的な雰囲気が絶対的に重要である。

2. リスクに基づく明確かつ公正で透明性のあるプロセスを確立、人為的なミスや、設計が不十分なシステムから発生するエラーを認識し、本来非難に値する安全でない行為や無謀な行為とは分けて考える。

3. 組織内の信頼を高めるために、経営者を始めとするすべてのリーダーは、適切な行動を自らも模範とし、常に威圧的な行動を根絶する努力をする。

4. Safety Cultureをサポートする方針を確立し、実施し、すべてのチームメンバーと目標を共有する。

5. 有害事象や緊急事態を報告したスタッフ、危険な状況を特定できたスタッフ、または安全性や質改善のための優れた提案をしたメンバーを特に認めて活かす。

6. AHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality)の「患者安全文化に関する病院調査(HSOPS)」、または SAQ(Safety Attitudes Questionnaire)などの別のツールを使用して、自施設のパフォーマンスに関するベンチマークを作成する(測定しなければば何も始まらない)

7. 組織全体の安全文化調査結果を分析して、品質と安全性の改善の機会を見つける。

8. 安全性評価や調査から得られた情報に応じて、安全文化の向上を目的とした部署単位でのの質・安全性改善活動を展開し、実施する。

9. 安全システムを強化するために、品質改善プロジェクトや組織プロセスにSafety cultureのトレーニングシステムを組み込んでしまう。

10. システム(投薬管理や電子カルテなど)の強みと脆弱性を積極的に評価し、さらなる改善のための優先順位をつける。

11. 18~24ヶ月ごとに組織的な評価を繰り返し、目標達成状況を確認し、改善を持続させる。

 

 

 

 

 

 

 

 


自分のカリスマ性を簡単に計測してみる方法

2021-02-08 17:27:20 | Harvard medical school

Leadership & Team workの集中セミナーが終わりました(HMSの大学院生プログラム合同のWSです)。結果は、なんとKobayashi先生と僕がいるTeam 9と、Makiko先生がいるTeam 8がグループ課題の同点優勝になりました。これは、卒業式で表彰くださるとのことなので楽しみです。

でも、僕は仲間を盛り上げるだけ盛り上げただけ、雰囲気作りのみしかしてないような・・苦笑。

最後はの日は、A. Jayのお得意のカリスマの授業でした。どこかで聞いたなこれはと思ったら、GCSRTのWork shopですね。

あの時の全身がしびれて感動したほどの情熱はさすがにオンラインWSでは伝わりません。やはりWork ShopはFace to Faceでないと・・、かなり無念に思います。
*こっちは仕事もありえないくらい毎日あるし、無駄な時間を本気で削ぎ落として授業に参加しているので、学びは最大限引き出したく思います。悔しい。

でもカリスマの授業で、伝えたい大事なことは変わらないですね。

"・Charisma is the ability to attract, charm, and influence the people around you. 

・Charisma is about the positive feeling you engender in other people. 

・About body language, making people feel included. It's not about you, it's about the people you're talking to and leading.. about making people feel important!! "

CI 740: Leadership and Teamwork, Ajay からのメッセージより

全身からalpha male的な攻撃的オス、威圧的な人は、僕はたとえどれだけ偉くても全くカリスマ性を感じないので、至極なっとくしました・・・。もうそろそろ日本のリーダー選択の基準は変わらないとちょっと他の国と比較するとじわりじわりと辛い状況にきていると思います。

Work shopの中で行った自分のカリスマ具合を調べる6つの項目です

Am I someone who.. 自分は下記のような人間であるか? (1-5点をつけて合計した後に6で割ります)

1) …has a presence in a room?                  周囲の人の中で存在感があるか? 

2)  …has the ability to influence people?  人々に影響を与える能力があるか? 

3) …knows how to lead a group?        グループをリードする方法を知っているか? 

4) …makes people feel comfortable?            一緒に居る人々を心地よくさせることができるか?

5) …smiles at people often?                             人によく笑顔を見せるタイプか? 

6) …can get along with anyone?          誰とでも仲良くできるか? 

*Tskhay KO, et al. Charisma in everyday life: Conceptualization and validation of the General Charisma Inventory. J Pers Soc Psychol. 2018 Jan;114(1):131-152. PMID: 28737418.

授業で扱われたこの研究はかなり有名でマネージメントのプログラムの人達(インドネシア人)いわく、Harvard Business schoolなでよく聞くとのことでした。MBAの人とか、よく興味もちそうなテーマですね。

この研究ではカリスマとは実際に何であるかは明確にされていないままであり、日常生活の中でのカリスマの概念化を検証してみたやつということで。具体的には、カリスマ性は、影響力(他者を導く能力)アファビリティ(他者を快適に感じさせ、安心させる能力)という対人関係に焦点を当てた次元で構成されていることを提案して定量化した研究ですね。
("measure your charisma with only six questions"などでググるとやまほどビジネスコンテンツで出てきます)

さて、3.7以上の人は、平均的な人よりもカリスマ性が高いと言えるらしいです。これらの質問の前半は影響力に関するもので、後半は愛嬌や魅力に関するものであるとのこと。

みなさまも是非、お気軽にやってみてください。ちなみに世界中から来ている現役Harvard 大学医学部院生は殆どが4.3を超えている印象でした。もちろん、これは民族的な文化的な背景に強く影響されるので、慎まく謙虚なことこそ誉れとされる日本の文化でも研究してみると面白いだろうなぁと思います。それぞれの文化でも良いところと悪いところもあるでしょうから。

 


HQS 705 Patient engagement in QI and Safety 

2021-02-06 15:32:43 | Harvard medical school

Patient engagement in QI and Safety programが始まりました。

 
Patient engagementを学問的に知っていることと、実際に理解していること、そして実践できることの間にはとても大きな差があると思います。日本では、その重要性がようやく認識されだしましたが、医療の質の分野の中でも、特に遅れている領域であるとおもいます。特にMedical errorに関する患者側へのDisclosureの重要性などは、我が国の文化的背景を考慮すると、それが浸透するのには相当な時間がかかると思います。
 
Patient engagement の基盤にあるのはpatient centered careの考え方です。
 
QI and Safety の知識やテクニックやQIツールなどをいくら机で学習したところで、これがないと空回りすると思います。もっとも大事なことはやはりに現場におけるpatient centered careのカルチャーにあると思いました。
こちらに、授業で扱ったスライドの一部引用で載せますが。コレは・・・もう、総合診療の考え方と全く同じです。
*https://www.neoteryx.com/microsampling-blog/8-principles-of-patient-centered-careより
 
1 ケアへのアクセス
2患者の希望することに対する尊厳
3ケアの連携と統合 
4身体的苦痛の除去
5精神的苦痛の除去
6患者と家族との連携
7患者への情報の提供と教育
8ケアの連続性と移行。
 
Harvard Medical School のQI& Safetyの教員の圧倒的多くがホスピタリストやGIMなどのプライマリーケア領域の医師(or 出身)であり、時に小児科(Boston children Hspなど)や麻酔領域の方がおられますが、なるほどココがHospital MedicineとFamily Medicineとの親和性が高い理由の一つかと思いました。そりゃ多くなるだろうと、研究や、手技や処置などに熱中するかわりに、こういうpatient centered careに主にベクトルが向く人が関連の仕事を始めだすのは理にかなっているかと。
 
患者側が自らの診断や治療に参加することは実は最も重要なのですが、一般の方には特に知られていません。医療は医療者が一方的に提供するものだと思うことが多いかもしれません。
 
例えば、僕らが正しい診断をするために最も重要な一つに患者さんのその症状や困っているレベル事がまるで動画にできるレベルまで詳細な情報が必要になります、特に失神だったり、目眩だったり、胸痛だったり。
 

 

Empathy: The Human Connection to Patient Care

Patient care is more than just healing -- it's building a connection t...

youtube#video

 

特に衝撃だったのが、授業中のこの動画です。何気なく、僕らは病院内は医療者にとって日常ですので、ふと同僚と笑ったり会話したり、楽しそうにしたりすることもあるかもしれません。しかし、その医療現場に訪れている方一人ひとりに人生があるということをとても痛感させられた動画でした。

さらにQI & safetyの別の側面からみれば、病院を受診して、待合室で長い時間待って、その後に点滴をされて、説明を受けて、会計をして帰宅するなどの一連の医療施設のワークフローを体験できるのは患者側だけなんですね。医療者の多くはその過程の一部を共有しているに過ぎないからです。患者/その家族だけが、病院内の様々なアクションや流れを理解することができる。だからこそ、一緒に医療に参加してもらわないと、ケアを改善できない。このような医学的側面からも非常に重要な考え方になると思うのです。

ということで指導医講習会的なプロフェッショナリズム内容も授業に組み込まれており、背筋を立たされる思いばかりです。

なぜ医師が今後王道的臨床以外も目指すようになるか?

2021-02-04 00:12:17 | Harvard medical school

さて、Globisの田久保先生との楽しい語らいも終わり、日常に戻りHarvard Medical SchoolのSpring termが今日から始まります。今日からまた普通のFull time大学院生です。

ゴリゴリとRoot cause, Flow chart, Stakeholder analysis, Effort matrix, などを一人で島根の未来を考えながら、どうしたら今の現状が良くなるか、僕らの業界や総合診療医の育成の課題などなど、全体が良い方向へシフトするか省察と考察をしております。 戦略と戦術を考えるのが以外と好きです。

 

いつの時代も情報が勝負を決めます、明智光秀を討ち取った豊臣秀吉の時代も、今風に言えば情報とデータで勝負が決まります。情報はいかなる時も力であり、金であり、武器であると思います。

それくらい情報というのは重要ですが、臨床医としての重要な情報は、当然これまでのヘルスケア業界で最も主要で王道と考えられた臨床医学的な情報(いわゆる診断や治療ですね)です。医学生などもまずは良い臨床医を目指しています!!と答えることが多いので、これはうなづけます。

しかし、下記のように患者のヘルスケアのアウトカム死亡や疾病などの原因を考えた時に、実は臨床的な原因であるのは約15パーセントのみです。たった15%です。えっ、本当ですか?

*Hood CM et al. County health rankings: Relationships between determinant factors and health outcomes. American Journal of Preventive Medicine. 2016;50(2):129–35)

*https://www.mckinsey.com/industries/healthcare-systems-and-services/our-insights/the-era-of-exponential-improvement-in-healthcare

 

では他の要因は何かと言うと、残りは、Social determinants of health 社会的要因(40%)だったり、Health Behavior 健康行動(20%)だったり、本人にはどうしようもない遺伝学的要素(15%)が要因であるとされているわけですね。85%位は臨床的なもの以外の要因か・・。

ふと振り返ると最近では王道的な臨床分野以外のことを積極的に学び、外へ外へベクトルを広げていく臨床医が増えてきている印象です。いや、実際かなりの速度で増えています。

その意味で我々ジェネラリストも新しく生まれ変わった大学ならば、これからかなりの速度で大学へ回帰するのは必然であるという予感がしています。逆を言えば、それらの需要に供給を合わせることができない、Change managementができない大学は少子化と予算削減の中にかなり強いSelectionの圧力がかかると思います。


さて、ここからが重要で、王道的な臨床医学の情報量は地球上に発進される患者のアウトカムに寄与する全体に対する割合は極わずかです。一方で、社会的環境的要因や行動要因などの情報は臨床的情報の約2,750倍以上の圧倒的なデータ量で、秒レベルでどんどん溢れ出しているのだそうです。

このような医療の患者のアウトカムにもともと大きく関わる重要なデータ(情報)が王道の臨床医学以外のところから大量に発生してきていることや、どんどん進化するテクノロジーと融合する世界では、患者のアウトカムに効率的に寄与させる他の介入方法として、王道的臨床よりも圧倒的に質と量で重要な分野へ進みたくなるわけです(というか、もう若い先生達はなっているような・・)

つまり、熱心な臨床医がSocial determinants of healthとHealth Behavior に特化して学び、それを応用したい!!と考えることはとても自然であり、今後普通に考えなければならないマインドセットだと思います。そして社会的要因健康行動の要因も考える診療科として際立っているのが総合診療科であるとも言えます。だから比較的新しい総合診療医学との学問的な親和性が高くなるのか!! とふと感じた夜でした。

周囲のビジネス業界へ突入していく友達や先輩後輩をみていると、このあたりが根本的な理由だろうかと思います。

王道的な臨床医学情報よりも、より多くの患者アウトカム、健康アウトカムに貢献できるのならば、多分本能的・直感的だったり、理論的に考えている先生はITやベンチャー企業へ視点が向かうことが多くなるのは必然ではないかと思うわけです。

そして田久保先生と議論して面白かったのが、我が国のベンチャーやIT企業は当然医療に素人ですので、企業からすればそのようなマインドセットを持っている臨床医は珍しい希少価値の高い人材になります。強いLove callが送られて簡単に企業とカップリングされる構造があるのも納得です。

医学生さんは、解剖学や、生理学や、診断学や治療学などを一生懸命ならって覚えて、アウトプットしてなどの勉強方法が今でも主流ですが、このような話をすると驚き戸惑い不安になりながらやたら納得されます。おそらく、ネットやSNSの大量の情報に常時晒されているので、肌感覚で理解しているのでしょうね。

多分、医師というその存在の意義は、未来では大きく変わっていく気がしています。

僕も未だにずっと学生ですが、情報を自分で取りにいける学生であるかどうか、これが大きく学生としてのアウトカムを分ける時代の到来になっちゃったなぁと、もう若くないのにぃ・・と同じ様に少し不安です。