第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

論文投稿時のICMJEについて

2021-01-17 00:04:39 | Research

多くの論文投稿時に、色々な雑誌で色々なCOI開示の書式や独自のやり方(ダッシュボードで打ち込んだり)などがあることに気づくと思います。ちなみに多分論文投稿のダッシュボードは概ね4-5種類程度ではないかと思います。

 

今回は、ICMJEについて聞かれたましたので、COIですとお答えしたのですが、書き方をどうしたらよいかと質問があったために記載しておきます。

ICMJEとは International Committee of Medical Journal Editorsの略なので、国際医学雑誌編集者委員会で、COIフォームを統一して掲載していただいていますので、要はCOI書類を提出しろと同義です。

 

多くのGeneralistの方は企業などが支援などを受けている方は少ないと思いますので自分の名前を入れて

No, No, No, No, No とチェックして ●● has nothing to disclose. 

と記載して終わります。

 

ICMJEのホームページで

http://www.icmje.org/about-icmje/

 

 

こちらに書き方サンプルPDFがあります

https://www.bmj.com/sites/default/files/attachments/bmj-article/pre-pub-history/COI_F.pdf

 

書き方はこんな感じです。

 

 

 


Risk and Evidence Based Intervention Closing.

2021-01-15 23:18:45 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。

集中セミナーが続いてましたが、今日でRisk and Evidence Based Interventionのクラスはおわりました

実は、この講義を運営されているのは、Luke Sato先生で有名な日本のルーツを持つ先生です。

授業の間に日本語で話しかけられたことが、本当に嬉しかったのを覚えています。

Professional schoolの中では自分はハーバード関連病院の先生達に比べて知識も経験も乏しく、まず言語レベルで難しい法律用語などの言葉に瞬発力でついていけないので、このままでは本当に悔しくて悔しくて、恥ずかしく、さらに申し訳ないので、いつか立派な人材になって恩を返したい。そう決めました。この歳になって、自分にの不甲斐なさに嫌気がさす毎日です。

Reference* https://www.rmf.harvard.edu/Products-and-Services

CRICOは本当にQuality and safetyの分野で世界を牽引する会社ですが、利益というよりは病院のRisk riductionと費用の減少、安全性の向上、研究の促進、この分野の研究費を提供する財団として非常に良い正のスパイラルの作用が働いていると確信しています。

かくも隣の施設や病院はまるで別の国のように介入できない我が国の医療文化と比べると、信じられないくらいかけ離れているのですが、CRICOの全ての人がWin-Winでメリットしかないビジネスモデルに日本全体の医療の質と安全向上のチャンスがあるようにも感じています。

毎回常に4名以上のスタッフがClass に出席しているのですが、教員達の熱量がものすごかったです。いつもだったら同級生10名とDr. Luke SatoとCRICOのメンバーでディナーに行くのだそうですが、COVID-19 pandemicの今年はそれもできず、自分のオフィスにすら一年近く行っていないのでホコリを被っているのではないかと不安だとのことでした。はやく、収束してくれないなかと、不満ばかりがつのりますが、逆に今の環境と上司に感謝して楽しもうと思います。

ややセンチになってますが、全ての人に本当に感謝しています。

 

 

 

 

 


ジャーナルの査読状況について

2021-01-11 00:43:43 | Research

 

自分がせっかく書いた論文が現時点でどれくらい査読されているか、最終判断はどうなっているか、不安になりますよね。

今回論文を投稿して、"Awaiting AE Recommendation”どうなっているか分からない!!との質問を頂きましたので回答しました。

せっかく調べた為にこちらにまとめを載せておきます。

 

AEとはAssociate Editorのことになりますので、この場合は編集委員の判定待ちになります。その上でEditor in Chiefの最終判断があるなど

雑誌によってまちまちです。基本的に僕は、2ヶ月まったら容赦なく雑誌に確認します。そのあたりはまた余裕がある時にいつか。

 

査読状況の一覧です。だいたいどの雑誌もこうなっているはずです。

Awaiting Admin Checklist
雑誌編集部オフィスの管理者による論文チェック待ち
Awaiting AE Assignment
Associate Editor の指名待ち
Awaiting Reviewer Selection
査読者の選出待ち
Awaiting Reviewer Invitation
査読者への依頼待ち
Awaiting Reviewer Assignment
査読者の決定(返答待ち)
Awaiting Reviewer Scores
査読結果待ち
Overdue Reviewer Scores
査読提出期限を超過
Awaiting AE Recommendation
編集委員の判定待ち
Awaiting EIC Decision
編集委員長の採否決定待ち

コミニケーションエラーが医療訴訟のKey

2021-01-10 17:18:16 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。

医療訴訟に発展する原因のうちにコミニケーションエラーが様々な研究結果から重要であることがわかってきています。

Ref) Malpractice Risks in Communications Failures, 2015 Annual Benchmarking Report, CRICO Strategies

これは、自分が我が国の医療訴訟ケース3400例を解析した印象としてもほぼ同様の感覚をもっています。これはもうまずいなぁという医療訴訟はかならず重大なコミニュケーションエラーがあります。有名な大学病院の医療訴訟などで、医局毎に同じ手術件数を競っていたり、適切な会話ができない雰囲気は必ずエラーが発生しますので、そのようなDisruptive behaviorがあればなるべく早い段階で認識して、評価して、介入しなければならないと考えています。

しかし、それを客観的に数値化することは困難です。

コロナの速報をみていて、本質的なことは同じように感じます。よりよい治療法やワクチンを開発して確実に提供することも大事ですが、システムレベルで(私達は知りません的な、押し付け合い)縦割りの構造をできるだけ減らし、良質な患者ケアの提供ができるかはとても重要な問題と思います。日本の医師数は1000人あたり米国並ですが、病床数が桁違いに多く、少ない医師人数で多くの病床を見ているという諸外国では信じられない状況がじつはあります。

作ってしまった病床数は利益をあげないと潰れてしまいますので、我が国がもつ本当の意味での病床数が効率的効果的に機能するためには極論するとMacro system レベルでのコミニケーションとシステムの改善にありますし、Micro system レベルでは組織-組織、集団-集団、医局や講座レベルで共通目標(Vision とコンセプト)の設定が必要だと思います。

日本で最も救急搬送件数を受け続けている古巣の研修病院が取り上げてられていましたが、病院間での連携と適切なコミニケーションがやはり重要だと思います。施設や後方支援病院や外科系の診療科など、知らない、見たこと無いものに対して医療者が不安になるのは当たり前だと思います。経営上の問題もあるでしょう。

我が国の医療の歪を俯瞰的に観察するに、よかれと思って責任感をもって頑張るところに必ずしわ寄せがくるようなシステム的な欠点があります(逆を言えば、国民皆保険もフリーアクセスなど良い面もそれ以上に多いと思います)。SNSのツイッターを見てしまうと疲れるので、見ないようにしているのですが、一言ではYes/No、良い悪い判断は不可能で難しい問題です。

 

話を戻しますと

Malpractice Risks in Communications Failures, 2015 Annual Benchmarking Report, CRICO Strategies

 

医療裁判にまで発展する原因としてコミニュケーションエラーが(これはうっかりとかいうレベル以上に)があるそうですが、もっともっと根深い人間としての問題があるように思います。このあたりを近いうちにHarvardのメンターと研究に落とし込みたいなぁと今は考えています。

 

 


米国医療訴訟 Risk and Evidence Based Intervention Program

2021-01-04 10:09:48 | Harvard medical school

みなさま、こんにちわ。

しばらく2週間ほどゆっくりしてしまっていました。

さて、今日からWinter 集中プログラムです。Harvad Medical Schoolの特徴として、Fall とSpring の間にSummer program とWinter programがあります。

どうも米国のリサーチ分野の分類で言えば、Generalistとしての僕の専門領域はHospital medicineであり、その中でも医療の質と安全領域になるようです。

以前僕が書かせてもらった論文から。

 

OGPイメージ

Academic Hospitalistは先駆を切らねばならない-日本の大学でGeneralがこれから爆発するために- - 第三部 熱帯夜の明けに~Generalist in 出雲 大学編~

みなさまこんにちわ。インフル発熱や子供が心配なお母さん、アルコールの人などなど楽しい寝れない救急外来当直明けからの〜内科初診外来+僕の独特な...

Academic Hospitalistは先駆を切らねばならない-日本の大学でGeneralがこれから爆発するために- - 第三部 熱帯夜の明けに~Generalist in 出雲 大学編~

 

 

僕の所属するプログラムはほぼ全て必修が決まっているので一つも落とせません。しかし、まさに自分が研究してきた内容そのままなので、読んだことある論文ばかりなので助かります。

 

Harvard大学の医療の質と安全分野の研究は、先行研究とランドマークレポート的にも確実に世界一であると思います。

理由の一つにErrorから学ぶという姿勢、訴訟からRisk reductionのために実際に行動に移す姿勢を重要視してきたからとおもいます。

後述しますが、大学の医療訴訟対策機関であるCRICOは全米一位の医療訴訟に負けない、また訴訟に発展させない取り組みをどこよりもがんばってきたとのことで授業ではそのようなエラーを起こさない、裁判に発展させない、負けない、様々なノウハウとスキルを学びます。

単に訴訟で負けないとか勝つとかそういものではなく、研究対象としてどうすれば訴訟に発展するようなエラーを防ぐことができるか?またどのようにして、患者リスクをへらす介入ポイントを探るかということが大事です。これは患者への安全性を高める当たり前の大きなメリットがあるだけでなく、一生懸命働いている医療職の精神的摩耗・時間的ロス・離職を防ぎ、結果的に双方にとって建設的な良い結果を生むものになる重要な取り組みです。僕はこれをホスピタリストの病院の治療(どの病院でも、"患者"として側面がありそれに対する的確な診断と治療が必要と考えてきました)

今回は、そのような内容を少し記載しておきます。

冬季集中セミナーの前半は医療訴訟と対策&質の改善についてです。後半はリーダーシップWSで集中的にマネージメントを学びます。

 

前者は

  • Captive Malpractice Company
  • The Business of Malpractice
  • The Financing of Malpractice
  • Protecting Providers: Medical Legal Process
  • Malpractice for the Provider’s Perspective
  • CARe Program
  • Coding, Analytics, Data Visualization
  • Promoting Safety: Patient Safety Risk Mitigation
  • Risk Assessment Programs
  • Patient Safety Organizations
  • Risk Specialty Areas: Emergency Medicine, Surgery, Obstetrics, Primary Care
  • Simulation in Health Care
  • Patient Safety Adoption Initiative
  • Spread and Sustainability of Patient Safety Initiatives
  • Technology and Risk

です。

 

ちょっとだけ医療訴訟の話の内容を記載しておきます。

なぜ医療訴訟の研究が重要であるか?それは、もっともMedical errorの改善の余地可能な、Human errorやSystem errorレベルを洗い出すことができること一般的に言えます。しかし、訴訟の研究は医療者側(Provider)を訴訟から守り、そして患者側の安全も同時に守るという視点に直結していることが特徴といえます。通常のインシデントレポートやエラーの報告からだけではは訴訟における医療者提供者を守る視点などは含むことはあまりありません。

世界で最も医療訴訟の対策と医療安全介入を行っている自前の保険会社(CRICO)の活躍が大きいです。大学専属の医療訴訟に対する保険会社であり、かつエビデンスの高い介入を実際に実装することで訴訟を減らし、患者の満足度を上げ、訴訟での支払いをへらす事で大学附属の保険会社としても利益があがるという非常にWin-Winの素晴らしいシステムです。

我が国の21倍も医療訴訟件数が多い米国だからこそ会社運営ができるのかもしれませんが、日本の医師賠償保険にはこのような医療者側(被保険病院・施設・医師)への質の改善と安全の介入は全く行っておらず盲点であると思います。(そもそも大学病院でも医療の質と改善の専門家が、Evidenceに沿って横断的かつアクティブにImplementationできている施設はすくないと思います)。

自分もこのような会社を作り、全国の病院に介入しようかと思いましたがかなりの心労と体力的な負担になりそう断念しました 笑。

脱線しましたが、Harvard Medical School 関連の医療訴訟のデータ(CRICO report)では

原告の勝訴が2%、医療組織側が14%、和解31%、却下・取下げ等が53%とこれだけみると米国(特にHarvard CRICO)では訴訟を起こしても殆ど医療施設が負けることがないことがわかります。ただ、先述したように日本の医療訴訟の21倍の訴訟数がありますのでそのあたりを加味すると、どの医療現場でも金銭目的で医療訴訟に発展する風土があるとも言えます。

 

また有名な

Jena, AB et al, N Engl J Med 2011;365:629-36の論文では、

医師が65歳までに訴訟に直面すると予測される累積グラフで、リスクの低い専門分野の医師では45歳までに36%の医師が最初の医療訴訟に直面すると予測されます。リスクの高い専門分野の医師では88%と極めて高い割合で訴訟に発展しています(なんだこれは?日本では考えられない・・)。また65歳までにはリスクの低い専門分野の医師達で75%が、リスクの高い専門分野の医師の99%は医療訴訟を経験していると予測されています。

米国では臨床医をやっていると訴訟は必発であり、精神的に摩耗しやすいようで、実に恐ろしいです。

 

一方で、医療訴訟の診療科別傾向性では大きなばらつきがありまして、これは我々の日本の複数のデータでも特徴的な傾向があります。

医師一人あたりの換算で、脳神経外科、胸部心臓血管外科、一般外科が米国では訴訟に遭遇しやすい診療科です。やはり米国では高度な外科系専門家になればなるほど極めて高い訴訟リスクを背負っているといえます。

冬休みはだらけてしまいましたが、このような感じで、再び全力で闘争を開始したいと思います。忘れないように自分のout putをこちらにしるしていこうと思います。