第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

課題に飲み込まれております。GCSRTのGは文字通りグローバルということ。

2018-10-19 22:56:04 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。

毎日、色々とテンパっております。。なんでこんな自転車操業なのか、自分の不甲斐なさを嘆きつつ、かといって大金はたいて始めたことは投げ出せないのでそれでも頑張るしかないと励ましつつ。最近は、GCSRTの課題や小テストの勉強も最小限のギリギリの労力分しか払えていなかったので、今タームの期末テスト前なのでまとめてみます(テスト前にどうも他の事をやってしまう習性があるようです)ちなみに次回ニューオリンズの学会会場で試験問題を解く必要がありそうです。

 

この2ヶ月を反省するに結構GCSRTの方はきっついなぁと感じております(でもピンチはチャンス)。日常業務と研究業務、教育業務、多数の執筆と毎週末の講演業務をやりながらとなると本当に隙間時間で学びながらそれでも少しずつでも前進するしかなくて、ICRTの時よりも課題は複雑だし、ちょっと弱音をはきながら困ってます。

 

最近はチームの中で言い争いが起こるなど、チームワークの乱れがものすごかったので、再度建設的に話し合うために僕からの提案でお互いに自己紹介をしようとこころみました(やっぱり飲み会や普段の会話がないチームではプライベートが全くわからないので)。結構僕は感情を動かされて少し疲弊しました。

 

で、驚いたことに、今頃知ったのですが、9人のうち7人にお子さんがいてあの女性陣はみな子育てしながら学んでいたということが発覚しました・・恐るべし女性の向学心。PhDを終了しているのは4名で、大学のFaculty(Assistant以上)は3名でした。そりゃぁまぁ仕方ないかなと。。

 

今頃知ったメンバ-構成とそのプライベートですが、内科フェロー中の女性(ポルトガル)、栄養療法を専門とする女性(サウジアラビア)、疫学/統計の専門家女性(デンマーク)、産婦人科准教授女性(上海)、腎臓内科女性(中国)、日本は僕、神経内科医男性(南スーダン)、感染症医男性(エチオピア)、中東系の血液内科医女性(カナダ)でありました。

多国籍軍としてまだまだ一年近く少しずつ前へ前へ進んでいます。実は色々あって1人はもうDrop outしたのですが、残りのメンバーでも中国のネット規制?やアフリカからは速度が遅いのか会議に音声で入ってきてくれないので、どうしてもヨーロッパと日本に課題が集中してしまっているのが現在の最大の悩みであり問題点です。


一つの視点や視座、視野からはその見え方しかできないと思いますが、相手の側になればなったで、仕方がない、難しい、どうしようもない状況もあることがわかり、そもそも宗教も違うし、言語も違うので、考え方も違うのは当たり前で、そんな違いを全部ひっくるんで文字通りGCSRT(Global Clinical Scholars Research Trainingなのかなぁと最近は感慨深く感じております。

 

さて次回は、今後半年の課題などをまとめます。

(どうもこれから150人の中からベストResearch proposal 決定戦が始まるようです・・・トホホ) 優勝者は言えないくらいのトンデモない特典があります。このあたりが世界から学生を集めて競わせて、引っこ抜くというこの大学らしい特質かと思います。

 

おっと、なんとこれを書いた直後に、スタッフから全学生にメッセージが届きました。

  1. Create a team charter which includes agreement on the following:
  • When you're going to meet: the time, the time zone, and the meeting platform that will be used
  • Who will send the agenda for the meeting
  • Who will take and circulate meeting notes
  • The expectation that everyone should attend meetings and respond constructively to emails. If you cannot attend a meeting, you should notify your team in advance with an explanation
  1. Try to meet at least every 2 weeks.
  2. Use your meetings to support each other, not just to discuss team assignments. Your team will be a great resource for you in staying on track with course activities and helping you prepare your capstone project. 
  3. Take attendance at team meetings. Notify our staff of any individual who is consistently not participating. 
どうすれば、うまくいくチームを作れるか?
それをまるでしっていて試されているようにも感じます。
 






しまレジの皆様が素敵でした 坂本壮先生 カルチャー

2018-10-16 00:16:39 | 総合診療

島根県知事まで思いが届き始まった、県内全研修病院が病院間や医局や出身大学の壁を超えて、研修医による研修医のための研修医勉強会「しまレジ」プロジェクト。

こっそり見学させていただきました。リーダー研修医たちが全てをオーガナイズしている姿に感動しました(このクオリティーはもう年老いた僕には出来ません)

 


そして、坂本壮先生、かっこよすぎです。もうまじで本当に惚れました。ついて行きます、だから今までと同じくらいこき使ってもらっても結構です。文句ももう言いません。若き偉大な臨床医の姿を見せてもらいました、本当にありがとうございました!!

 


医学生の診断エラーは・・まずは普通の医学生の勉強をしましょう。

2018-10-15 14:39:47 | 診断エラー学

みなさまこんにちわ。

週末は内科学会専門部会「診断プロセス向上WG」のために、東京にずっと潜伏してました。ついでに写真撮影などの取材!?もしてもらって、白衣で某東京の海など川など写真撮ってもらっていると変態的コスプレの人か、変な企画もののビデオ撮影などと間違えられそうでした(汗)。

さて、今日も診断エラーについてです。Graber先生(来月も少しお会いできるかもですが)が以前やられたもので、実際の100例の診断エラーを分析した研究があります。その中で診断エラーの多くが認知バイアスが主な原因となっている、知識や技術などが原因になっていることは少ないとの見解でありました 1)。我が師匠の研究でも、そのように認知バイアスの与える影響に注目されておりますね 2)。
 
Dual Processモデルを用いてよく研修医はSystem2を頻用するので極端な診断エラーが少ない!?ということが言われています。しかし実際に日本の研修医(昔の自分の経験では)を見ていると、その知識や経験が全く無いことから異なる診断をしていたり、Missしていることもあるので超初学者は認知バイアス以外の根本的な技能や知識の要素もあるはずであると思っていました。
 
今日はその研究です。
診断エラーの研究を医学生に行うというものがあまりなかったので、斬新でした(実際の患者を診ることは米国でもそんなに多くないはずなので)。コンピューターで臨床問題を88人の医学生に解かせて、最終的な診断とその根拠を書かせて解析すると言ったものですが、認知バイアスがあるかと思いきや・・。304症例の解析では、診断技術の不足(24%)、疾患知識の不足(16%)、文脈や病歴情報の理解困難(15%)、Premature closure早期閉鎖(10%)などと、認知バイアスが原因になっていることはどうも少ないとの結論になっています3)。
 
結論は、知識や技術の不足、経験の不足、疾患背景の欠如などが医学生の診断エラーには多分に結びてついており、認知バイアスが関わるということは少なかった。ということになります。
そりゃそうだろうなぁ!という結果ですが、研究のリミテーションはコンピューターベースの評価であるために、そこには認知バイアスがかかりにくさというのもあります。イライラしている人が隣から圧力をかけてきたり、カルテがドンドンたまっていって焦ったり、寝不足でフラフラしていたり、同時に数人診ていたりなど、外部から(内部からも)認知バイアスの影響を受けにくいのもあるかと思います。
 
このように、診察した自分しかわからない心理状況を省察することなくして、Cognition biasの評価はやはり難しいですね。少なくとも、医学生はやっぱり背伸びは適度にとどめて、まずは「医学の勉強」をしっかりしておくというのが妥当なラインになるのでしょうか。
 
それでは、また。

1) Graber ML, Franklin N, Gordon R. Diagnostic error in internal medicine. Arch. Intern Med. 2005;165(13):1493–9.

2) Tokuda Y, et al. Cognitive error as the most frequent contributory factor in cases of medical injury: A study on verdict's judgment among closed claims in Japan. J. Hosp. Med. 2011 March;6(3):109-114

3) Braun et al. Diagnostic errors by medical students: results of a prospective qualitative study. BMC Medical Education (2017) 17:191

 

Madhidolの偉大な先輩 羽田野先生と、出雲にくるきっかけをくださった粟屋先生と飲めました!

 

 

「せつい」に注意。大学にきて2年経ちました。

2018-10-04 16:09:33 | 総合診療

   

みなさまこんにちは、島根にきてはや2年経ちました。

カルテも使えない、「せつい*」という言葉もわからない。まるで研修医と同じような気持ちで過ごしてきました。

教育と研究に関しては目標が低いので自己評価100点満点です。今日は本学の若手研究支援助成金も採択いただけました。

自分がやりたいことも、周囲の教授達にもご協力いただけるし、教育に関しても文献で調べて次はこの教育活動をやってみようとトライアルをすぐにさせてもらえる本学の自由な風土も好きです。 

やっぱり人と上司に恵まれています。Onigata先生ありがとうございます。

色々なことを任せてもらえて大学にきて本当に良かったなぁと思う反面、恵まれ過ぎているのと、検査も何もかも便利すぎて申し訳ないとも思ったり思わなかったり。

毎年春に書いている島根マガジンに原稿を載せますので、こちらにも引用します。

 

今日は昔の話をしましょう。僕は後期研修終了後に約1年間、関東一帯の二次救急告示病院を回りその施設の迷惑や患者の不利益にならない限り「絶対に患者を断らずに受け続ける」当直業務(名付けて戦国無双)をしておりました。(肌もボロボロになるしクマが酷くなったし、今の体力ではもう無理です!)

600床もないのに年間救急搬送件数が13000件を超える病院で研修した自分は夜間のMRIやCT、緊急内視鏡や手術、技師によるエコーだけでなく、他科のコンサルトさえも24時間当たり前だと勘違いしていたと思います。その時は、他の病院や施設からの紹介状を見ては診療が十分なされていないと嘆いていた事もあります。

しかし、ある都心の小さな病院では看護師と2人だけでX線を含む全ての検査を行いながら来院患者を診察しなければならず、ある場所ではCBCと血糖と血ガスのみで勝負しないといけない世界でした。非常勤医師として各病院を連戦し、限られた環境に身を置くことで初めて自覚した事があります。

 

それは、今まで【自分の臨床能力】だと思っていたものは、全く自分の力などではなく実は各科の医師、検査の体制、入院施設など他の要素で護られていただけに過ぎないという事実です。全く持って恥ずかしい【勘違い野郎】でした日本のERの父 寺澤秀一先生は良く講演で「ハンディキャップがある環境の方が医者として鍛えられ、そして知恵がつく」とおっしゃられています。1人で診療を行う環境では、自分の感覚を研ぎ澄まし、患者さんにとってベターな判断をするために病歴聴取と身体所見をフル活用しなければなりません。もしかしたら、そういう環境こそが真の臨床能力を身につけるには絶好の場所なのかもしれないと考えるようになりました。

 

*せつい:苦しい・息苦しいの意味。ちなみに「せつい」ほど診断エラーの原因になる主訴はないですよ!県外から来られた先生は本当にご注意を!「せつい」の空気感に騙されてはいけません。

まだ基礎すら習っていない1年生に臨床推論をスマホとPCを用いて学習効果が高いかみています。

  

これが、まだ基礎を習っていない彼らが医師として学ばなけれならない内容であることを自分たちで見つけて自覚してもらいました。

アンケートでは96%の医学科1年生が1年次から臨床医学と基礎医学を交えながら教育をしてほしいとのことでした。