第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

Cognitive Load Theory 認知負荷理論について

2020-10-30 23:08:44 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。今日はQI+Educationで必要な

"How the cognitive load of a learning task affects a person's ability to memorize it"

についてです。

 

コンピュータのメモリと同様に、認知負荷とは、人間の脳のワーキング・メモリが常に行っている処理の量のこととも言えます。これが最適で管理可能であればあるほど、学習しているコンテンツが長期記憶に移動して保存されて(スキーマ)、アウトプット時に検索できる可能性が高くなります。しかし、レベルが最適な限界を超えてしまうと、新しい情報入力処理に悪い影響が出ます。これらはすべて、扱う素材や教育設計がどれだけ複雑かに依存します。要するに余分な外部認知負荷を最小化し、本質的な負荷の割合を最大化することです。

とても分かりやすい動画があります。

 

OGPイメージ

Cognitive Load Theory 3 - intrinsic, extraneous, germane.

The three types of load in Cognitive Load Theory give us serious tips ...

youtube#video

 

 

組織の中のメンバーや学生にレクチャーをする時にも使用されますが、

Total Cognitive load=Intrinsic Cognitive Load+Extraneous Cognitive Load+Germane Cognitive Loadとされます。

Intrinsic Cognitive Load 課題を遂行されるために必要とされる本質的認知的負荷(課題内在性負荷)

このタイプの認知的負荷は学習者が学習する情報の本質的な質によって学習者に課せられる要求で発生。学習者にかかる負荷は、提示されるタスクの概念、複雑さ、新しい情報を理解する学習者の能力に依存します。このような認知的負荷の本質的な性質は、排除することは困難。

Extraneous Cognitive Load 課題と関係がない認知プロセスによる負荷(課題外在性負荷)

学習者に課す要求や、学習者が従うように求められる指示で生じる。このタイプの認知負荷は、学習タスクの外部、関係ないところで発生している意味の乏しいものであり、効果的でない教育手法によって増加してしまう!!(ないですか?教育側や受けてにとって無駄に思える授業や負担)。解決方法は効果的なプレゼンテーションや授業、余計な認知的負荷を軽減し、実際にやって見せたり、Video audioを使ったり、extraneous coginitive load を減らすこと。具体例として、文字で説明するよりもイラストで説明した方が圧倒的に分かりやすい。

Germane Cognitive Load 課題のために使われる認知資源(学習関連負荷)

学習に役立つような方法で人が情報を処理するときに生じる負荷で、人間はワーキングメモリに適度な負荷がかかったときに最もよく学習することができるされます。

 

Schema: A schema is a memory unit stored in learners’ long-term memory. スキーマは学習者の長期記憶で貯えられる記憶単位。
 


Cat in Borneo (システムシンキングのススメ)

2020-10-25 13:52:42 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。

いずれ、自分の教育や講義、書籍に必ずやくに立つ概念としてシステムシンキングをここに残しておきます。

システムとは個々の要素が相互に影響しあいながら、全体として機能するまとまりや仕組みであり、ただ集まっているだけのものとは決定的に異なります。

システム自体は視覚化できない境界に包まれており、総合に影響しあい、Pos/Neg feedbackを受けうるものであると思います。

良かれと思って介入した結果、予想もしなかった歯車が周り不幸なことになることもあるために後述する考え方が重要です。

ここで、授業中に完全に笑ったVIDEOをシェアします。びっくりした完成度ですがYoutubeでUPされていますのでもしよろしければぜひ。

 

 

OGPイメージ

Systems thinking: a cautionary tale (cats in Borneo)

This whiteboard animation video about systems thinking tells a story o...

youtube#video

 

これは、マラリアが大流行して困っているボルネオ島でWHOに相談して、良かれと思ってDDTを徹底的に散布したところ

蚊は死んでマラリアには助かったけれども、DDTでたくさんの虫が死んで、虫を食べていたイモリ的なものにDDTが蓄積し、それを食べていた猫が死んで行ったために、最終的に悪いネズミが増えすぎて困ったためにまたWHOに相談したところ

次は・・・猫のパラシュート空爆(笑)を行ったという笑い話です。非常にシステム(この場合は生態系ですね)の大事なポイントを感得する内容と思いました。

このことから僕が学んだ教訓は、組織の中での人と人とのInteractionは極めて複雑で、一つの良かれと思ったimplementingが他の部門にとっては悲劇であったり、全体にとって良い状態にならないことも考えなければならないということです。

リーダーたるもの時には、その介入が、全体的にどのような影響を、そして時には国レベルでどのような影響を与えるか(良い意味で、悪い意味で)を考えなければいけないと思うのです。

 

ついでに、各論でHFACSのことも

HFACS(Human Factors Analysis and Classification System)*

HFACS の構成は,Reason が提唱するスイスチー ズ・モデル(Swiss cheese model)を元に作られている . その中で,Safety netに当たるチーズを,事故に影響 した「①不安全行動(unsafe acts)」,その行動に影響 した「②前提状態(preconditions for unsafe acts)」, その前提状態に影響した「③監督上の問題(unsafe supervision)」,そのさらに背景として「④組織の影 響(organizational influences)」があるという 4 階層 に分類している。

HFACS ではさ らに,列挙した要因を階層化しており,個人から組織 へ順に影響した要因を検討する。

*仲 村 彰他、ヒューマン・ファクター分析技法 J-HFACS 作成に関する研究より

 


COVID-19から学んだこと

2020-10-24 15:41:00 | 総合診療

みなさまこんにちわ。

自分がEditor in chief をつとめるジェネラリストコンソーシアムの方に書いた寄稿をこちらにも載せておきます。

正直僕はこのCOVID-19が自分に与えたは影響は計り知れません。かなり大きな方針転換や覚悟を強いらされ、考えさせられた経験になっています。今日は、Status quo bias:現状維持バイアスについてです。コロナという、変わらざるをえない外圧を受けた時の人間としての挑戦と、感情の乱れを毎日俯瞰的に観察するようにしています。

 

COVID-19から学んだこと

COVID-19によるパンデミックはマクロレベルで我々人類の新しい生活様式を模索するようになったと至る所で叫ばれている。そして、私がフィールドとする大学医学教育改革の仕事でも同様の言葉が使われている。しかし、そもそも“新しい考え方”、“新しい試み”等、謳われている内容を深く省察してみなければならない。

例えば、インターネットを用いて、新しくオンライン授業に移行することできた。各講座の教育が見える化された。決定事項を伝える無駄な会議が大きく減った。医学生とオンラインでセミナーを全国レベルで開くことができた等々。よくよく考えてみれば、これらの多くはすでにCOVID-19が到来する前から一部ですでに理論的にまた技術的に確立され実施されてきたことばかりである。

それを採用してこなかったのは我々の判断である。

 

今更ながら新しくともなんとも無い、以前よりある考え方や技術的なものをCOVID-19のおかげで”何とか取り入れることができた”という陰の側面の方が大きいかもしれない。Evidence Based Medicineは我が国に普及してきているにもかかわらず、おそらく医学教育面に関してはいまだEvidence Based Educationが採用されているとは言えない。大学医学部は、本来有用なアイデア、合理的かつ有効な医学教育手法などは大学の現場で仮説を検証して、実証していくべきである。医学部は教育機関であり、医学教育研究の最大の実践場であるはずであるからだ。

 

人は簡単に変われ無い、よって私を含む大学教員も簡単に変われない。これは人類が生存するために、デフォルトとして脳は変わらない事を選ぶ傾向があるためだ(Status quo bias:現状維持バイアスと呼ばれている)。強烈なバイアスは、より強い意志とシステムの構築で教員の省察を促し、De-bias(バイアスの除去)することでしか対処できないと私は考えている。医療の質と安全の分野では米国 Institute for Healthcare Improvement からRCA2 (Root Cause Analyses and Actions)が2015年に発表されたが、最後のAの文字の意味はActionである。結局はどの領域でもActionが全く足りていないということがうかがえる。これは我々の日常教育現場にそのまま当てはまるかもしれない。教育の理論や評論はもういい、我々は実践してこそ価値のある現場にいるのだと常々感じる。COVID-19が私にくれたもの、それはシステムを大きく変革するチャンスであり、医学教育の実践(Action)へ舵取りを行う機会であったと思う。

 

1) Dedeilia A, et al. Medical and Surgical Education Challenges and Innovations in the COVID-19 Era: A Systematic Review. In Vivo. 2020 Jun;34(3 Suppl):1603-1611.

2) Kahneman, D, et al. (1991). "Anomalies: The Endowment Effect, Loss Aversion, and Status Quo Bias". Journal of Economic Perspectives. 5 (1): 193–206.


Change management  病院や大学や現場の改革マネージメントについて

2020-10-22 17:18:36 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。

やはり面白いと、その吸収量はスポンジのようになりますね。今週のテーマはChange managementです。

僕にはとても面白く、今までありとあらゆるところで本能や直感的に動いてきたことがようやく言語化されている印象があります。

今回は、なぜ??医療組織は改革や変化に遅れがちになるか?と言うことが下記のように鋭く書かれています。

 

今回の*引用論文Brian Golden. Healthcare quality Vol 10, special issue 2006, 11

(1)利害関係が複雑でバラバラであること

(2)医療組織には常に複数のミッションが存在する(例えば僕の解釈では、臨床、研究、教育、収益、安全などetc、これらは拮抗しやすい側面があるかと思います)

(3)医師や看護師などの専門家は専門家としての自律性を重視する傾向がある(各科のことにFeed back しにくい傾向があるといえますね)、それらの判断により収益の大部分に影響を与えること

(4)医療組織では、変化のプロセスや改革をマネージするために必要な知識と技術が非常に不足していること

かなり鋭い視点です。なるほど、確かに医師や看護師、薬剤師、検査技師それぞれが高度な専門性を持っております。さらにはその中でも診療科の違いによりさらに複雑になりますね。しかも自律性とは書かれていますが、sectionalismに走りやすい傾向はその専門性からのautonomyを求める傾向になるのは表裏一体です。

さて、このような難しい局面は読者のみなさまも多々遭遇してきていると思います。

 

次に、どのようにマネージしていけば良いかですが大きな枠組みはこちらになります。

Stage 1から4まであるのですが。

Stage1は明確なビジョンとコンセプトと目標ですねこれを掲げれるかどうか。

Stage2はStakeholder analysisや、Key playerの確認、コアメンバーの人選、現場の細かい分析やRCAですね。Stakeholderは何をして欲しくて何をして欲しく無いのか?そこを見極めていく必要があり。この場合、その組織の歴史を十分に理解していないとうまく行かないわけですね。

文献によれば、Chage leaderは年齢や役職で決めてはいけない、その場所にもっとも適した人を人選する。日本ではなかなか難しい。

Stage3はそれらの①サポートの拡大:協力者を増やすことと、この際に5W2H、継続や他の変更ではなく、なぜこの変更であるのかをなどを明確にわかりやすく聞き手に合わせてメッセージを伝えること。

変化は次のことを考慮すれば受けれられやすい。

- 無理ならば戻すことが可能であること(人は変化を恐れる)
- 変更は段階的に実施可能。(徐々に受け入れられる)
- 具体的である。変更は抽象的なもの(例えば安全文化を作ろう!良い教育を!など)よりもむしろ有形、目に見える考え方(例えば新しいITシステムを導入する)などで表現する。
- 慣れ親しんだものを利用する。変更後も経験を応用できるようにする。(PCなども似たものを使うなど)
-合理的であること。改革が組織の他視点でも利点が多いこと。
- 限界点を見極めておくこと。

②Organizational Redesign 組織の再設計 これに関しては、スタッフの教育と説明、そして丁寧なコミュニケーションが必須。改革の影響を受けるスタッフがその利点を理解し、リーダー達は変化を支持する環境を作り活動できるようしなければならない。(これはGlobisの田久保先生から教えていただいた、改革はオセロ!? 理論では無いでしょうか)

- 目標と課題の再設定 何を達成しようとしているのか、どのような新しい行動が必要か?
- 構造化 どのように組織化するか?
- 人と人材把握 どのようなスタッフが必要で、どのようなスキルが必要か?
- 報酬 スタッフは何に価値を見出し、その改革から何を得るのか?
- 情報と意思決定支援 スタッフは改革と随時判断するために必要なだけの十分な情報へのアクセスがあるか?(これ大事ですね)

Stage4 Reinforce and Sustain Change:改革が成功した場合にそれで満足してはならず、持続可能でなければならない。観察し続けて、うまくいたところを広報し、協力者に報酬(付加価値)を与え、変革に伴う損失を認識しする努力をする。また新しい状況や情報に合わせて次の目標を考えてシステムを微調整する。

 

 

特にこの4つのStageで重要なことを分類して考えると。上記のような図になる。

これは、うまく行かなかったときになぜうまくいかなったか?の原因を考えるテンプレートになるので現場で使用すると良いかもしれない。

特に、経験があるのが、ここの部分ですね。僕の個人的な解釈です。

  • 情熱的(夢をみさせることができる)わかりやすいVisionがなければ確かに誰もついてこないので、現場は混乱するだけになる。
  • リーダーに改革の知識や経験的なスキルが無いと現場は不安になる。
  • 迅速に改革を進めなければいけないときにはそれに労力を費やすだけのIncentiveが必要となる、それがない場合はその他が充実していれば時間のかかる改革になる。
  • 改革の現場で、逆に人的、金銭的、物質的なリーソースが無いままに進めると現場にはフラストレーションがたまる。
  • 最後に、やっぱりここが一番大事で、実際に改革のための原因や手段が分析できていてアクションプランが実際に用意されていないと、ただやり始めた感が出るだけで実際に開始されない。

そして改革に携わるリーダーの基質/心構えとしてもっとも重要なことが、生真面目に全てがタイムラインや計画通りにのらないことを嘆くのではなく必ず発生する変則的なイベントや問題を注意深く観察して対応できることである。

引用:Brian Golden. Healthcare quality Vol 10, special issue 2006, 11

 

1. Our emotions can overwhelm our rational thought

人の感情は合理的な考え方を凌駕してしまう。 一方で、理性的分析的な行動だけに頼ってしまうと「物事を過剰に分析し、考えすぎてしまう。

2.There are better ways to make a change than probably what most think.

変更を達成するために目標を設定する必要があることを知る。
3. There are better ways to make a change than probably what most think.

人の問題のように見える事案は往々にして状況の問題であること。すべての改革は誰かが通常とは異なる行動を開始しなければならない。なので、人にばかり注目してしまうが、実際にはシステムや環境を変化させることが重要。

4. What looks like laziness is often exhaustion

怠惰のように見える多くの場合は疲弊していることが多い。

5.The Rider part of our minds has many strengths.

改革のリーダーは多くの強みを持っているが逆に弱点があり、熟考し、分析好きで、問題を悪化させ、多くの場合リーダーの分析は常に明るいスポットをみているのでは、暗い問題ばかりに向けられる傾向がある。

6.We are all human but sometimes we tend to make the default plan

人は悪い側面をみたときに、必ずしも最前では無いアイデアなどの深く考えずに実施してまうようなデフォルトがある。心理学的に悪いことは良いことよりも強い行動をとってしまう。

7. Make sure your goals are reachable and specific

あなたの目標が到達可能であり、具体的であることを確認する。小さなステップを踏んでいくことが大きな目標を達成するための最良の方法。ステップが大きすぎると、圧倒されてしまいできない。

8. In highly successful change efforts, people find ways to help others see the problems or solutions in ways that influence emotions, not just thought.

改革に成功した場合の行動や努力は、往々にして単に考えるだけでなく、人々の感情にうったえる方法で、人々が問題を解決するのを助けることへつなげる手法をとる. 

9. The gates of large goals are lined with small accomplishments.

大きな目標の前には小さな成果が並んでいる。目標に向かって小さな一歩でも踏み出せたら、自分を褒める!! 忘れない。最初の数歩は感情的に恐怖や不安が先行するが、歩き出せば自信に繋がる。

10. Any new quest, even one that is ultimately successful, is going to involve failure.どんなに最終的には成功しているものであっても、多くの失敗を必ず伴う。失敗は恐れない、そして省察する。

 

 

 

 

 


SCARF Model

2020-10-21 10:32:14 | Harvard medical school

現在、色々と試行錯誤で極めて重要な案件を考えて続けています。

総合診療医は現場でこそ輝けることができますので、全員にとってWin-Winになり、成長し続ける自立した心の通った集団になるために何が必要か?模索し続ける必要があります。

今日はハーバードの授業でこれを読んでおきなさいと言われて、さっそくこれだ!と思ったものがSCARFモデルです。

知らなかったのでまとめおきます。

SCARF Model

SCARFモデルは、2008年にDavid Rockが開発。僕らが生存のため感じる生理的な脅威と脳内報酬に影響する5つの領域があるのでチームや組織で新しく作る場合、PDSAを続ける場合にとても重要です。このモデルを考慮して、メンバーが感じる可能性がある脅威を最小限に抑え、適切な報酬(お金以外の全てです!)によって作られる前向きな感情を最大化する。

 

脅威の排除と報酬の最大化をこの5項目で考えると良い。

  1. Status 状態   フィードバックや、パワーによる脅威の排除、定期的報酬体系の構築(金ではない)。
  2. Certainty 確実  不確実性は不安や脅威をうむために、システムとして細かいチャンクに分解、レジリエンスを高める。情報の共有
  3. Autonomy 自律性  責任・権限は譲渡し任せる。報酬は最大限に、イニシアチブは現場に。
  4. Relatedness 関連性  チームや組織で自己役割や関連性が乏しいと不安や脅威に感じやすくなる
  5. Fairness 公平性  誰も不公平と思わせないシステムにする 

ポイント 改革を開始する前に大事なことは

SCARFモデルを改革に対して効果的に使用するためには周囲の人々を理解する!!必要がある 。行動する前に他の人の個々のニーズを考慮する。改革を共にする、ないし相手側にたつ人たちの立場に身を置く:彼らは何を脅威(不安)と見なすか?彼らが最も望む報酬(嬉しい事)は何か?


SMART AIM について

2020-10-19 17:15:14 | Harvard medical school

診断エラーの研究でなぜ?SMART AIMかについての簡単な解説です。

日経メディカルさんに取材の動画をアップしていただいたようです。

 

OGPイメージ

あなたもできる、診断エラー研究の第一歩

第21回日本病院総合診療医学会学術総会(9月26~27日)で、ワークショップ「明日から使える診断エラー論文・あなたもきっとできる論文作成」が...

日経メディカル

 

研究という意味では厳密にはFINERでもいいのですが、その場合は何と何を比較するというnull hypothesisが事前にあることが理想と思います。これまで色々な施設から相談された内容をみますと現段階では、とりあえずデータを集めてみようという事案が多いことからそのように考えました。ただしEthicalは十分に配慮してください。両方考えているのが実情ですかね。

診断エラーの調査自体がほとんど足りていないのが我が国の実情ですので、まずは現場の改善を狙うことを想定したSMART AIMの方がしっくりくるのだと思いました。

SMART AIM は必読!! 臨床研究のFINERに匹敵します!

  1. かなり具体的な数値や目標に落とし込んでいるか?SPECIFIC - Is the statement precise about what the team hopes to achieve?
  2. そもそも測定できるか?MEASURABLE - Are the objectives measurable? Will you know if the changes resulted in improvement?
  3. 達成可能か?実施可能か?ACHIEVABLE/Attainable - Is this doable in the time you have? Are you attempting too much? Could you do more?
  4. 現実的か?臨床現場に関係するか?REALISTIC/Relevant - Do you have the resources needed (people, time, support?)
  5. 時間を明確にしているか?タイムリーであるか?TIMELY-time framed - Do you identify the timeline for the project - when will you accomplish each part?

 

*https://rcpi-live-cdn.s3.amazonaws.com/wp-content/uploads/2015/11/SMART-Aim-Statements.pdf

日本語で解説がほとんどなかった?見つけられなかったので、上記を参考にしてください。

 


Quality Improvementの為のデータと、運営の為のデータと、研究の為のデータとベンチマークについて

2020-10-16 12:21:09 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。

最近ようやく、QIの本質と臨床研究との違いについてぼんやり理解ができるようになって面白くなってきました。

臨床研究もありがちなとりあえずデータとってやればええやん!!では、全然ダメ!!なのと一緒で

QIも本当に理解して実施、implementationしないとダメと言うことが今更ながらわかりました (遅すぎです)。

ちょっと愛する日本、これは周回遅れの危機感を感じます。

 

また最近気づいたのですが、この分野のfacultyの多くは女性で、しかも殆どはホスピタリスト(病院総合医)や内科医で、稀に小児科・麻酔科のバックグランドをお持ちの先生が多いです。今受けている授業で考慮すると80%が女性教員です。なぜだろう?と考えたのですが、やはりコミュニケーション能力が高く、全体のことを考えながらうまく柔らかく行動を起こして改善していくには女性の方が向いているのかもしれませんね。

 

さて、今日は

QIの為のデータと、運営の為のデータと、研究の為のデータについての違い。

なぜ測定することが重要であるか!? と言う答えにはすでにLandmark reportの下記論文で述べられています。質の改善のためにはベンチマークが必要で、そもそも測らずして改善は期待できないと言うことになります。Mustです。そのプロセスとしては上記の七つのステップを踏みます。

データと集めると言うと、なんとなく研究ばかりが注目されるのですが、実際にはaccountability(適切な訳がないのですが運営やマネージメントのために説明するために使っている事をいいます)には毎日のように集めては月1回、年一回など会議で使用されていますよね。研究の方のcollecting dataはいつも考えている事なので割愛するとして、Quality improvementとの違いは下記の内容になります。これがおそらく世界でもっともシンプルに3つのデータの扱いの違いを示している表になると思います。

また、下記のように

"In the current climate of public accountability, many clinicians have become uncomfortable with any efforts to create measurement systems. This is unfortunate because measurements are absolutely essential to efforts for improving the processes of medical care. In Minnesota, work has been conducted with clinicians on measurement pursued for accountability, improvement, and research. " *

多くの医師は、情報を集めることに抵抗があるかもしれないと1997年で記載されていますが、2020年現段階でもなかなか我が国では進んでいません。

未だ診断エラーのデータ収集やadverse event等の色々なことも測定することがメリットにしかならないと言うことを理解しないと難しいかもしれません。やはり、責任問題というか、国民性というか、文化の違いも感じます。

極論すると5W2Hが違うと言えるのかもしれないと気づいてしまいました (笑 いやそりゃそうだろね)。

なので、Quality improvement の発表・学会、論文などは臨床研究のデザインや手法や発表形式と全然違ったりします。多くはオーバーラップするのですが。

このあたりの厳密な学問としての違いを、将来的に日本のHospitalist 現場に持ち込めたらすごく面白いだろうなと考えています。

Reference) 

*The Three Faces of Performance Measurement: Improvement, Accountability, and Research": https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1070324116303054

QIするための根本原則 教科書”The improvement guide”より

1:なぜそれをしなければならないか?明確な理由を持っておく

2:改善したかどうかを知るための指標を持っておくこと

3:こうすればよくなるだろうと予測されることを実施すること。

4:実際に実施する前にテストして評価しておくこと。(そのためのPlanを明確に作成しておくこと。)

5:Implementationする

QI活動を強力に展開するために必須の6つのスキル !!

Supporting change with data: What is meant by the term data? How can we use data to guide actions for improvement? データの意味は何か?データをどのように活用できるか。

Developing a change: Where do ideas for change come from? What should we consider when trying to develop change aimed at a long-term positive impact? 改善のため動くことが必要な根拠は何かわかる、長期的に良い方向へ影響を与えていくために実施する時に考慮すべきことを知っている。

Testing a change: Why should we test a change? Can we increase the possibility a change will result in improvement? 改善のためのテストをすべき理由を理解していて、その結果から成功の確率をあげることができる。

Implementing a change: What is the difference between implementing a change and testing a change? What can we do to sustain the positive impact of a change? 変化を評価することと、変化を導入することの違いを知っている、また良い結果はどのように維持するか知っている。

Spreading improvements: How can we get wider impact from successful change? How do we attract others to make the change? 成功した介入を他へ広げることができる、どうすれば他者に興味を持ってもらえるか知っている

The human side of change: How will the change affect people? How do we obtain the cooperation necessary to make and sustain improvements? 変化はどのように受けてに影響を与えるか?維持するための協力をどのように得るか実践できること。

 

*テキスト Langley, Gerald J.. The Improvement Guide . Wiley. より

 

ベンチマークがなぜ重要か?!米国の国レベルでの徹底的なベンチマーク   *引用よりまとめ

Benchmarking is the process of measuring an organization’s internal processes and identifying, understanding and adapting outstanding practices from other organizations with similar processes considered to be Best in Class. Benchmarkingは組織内部プロセスを測定し、そのクラスで最も優れていると考慮される同様のプロセスを持つ他の組織から参考点を探し出し、理解し、そして適応させるプロセス。

ベンチマークが成功するために4つの必要なこと。

• Leadership commitment :リーダーが率先すること!

• Experience with continuous quality improvement: CQIの経験があること

• Preparation of the organization:組織全体で準備すること

• Identification of key processes:KPIを同定すること

なぜ、比較する必要がある? Goals and objectives to examine here include:

Major improvements 大きく組織とケアの質を改善させるため

Positioning your services in the marketplace 医療マーケットの中での立ち位置を知る

Defining your competitive advantage  比較することでのアドバンテージを確認する

Reference) *The Benefits of HealthcareBenchmarkingHow To Measure and Beat the Competition

 

 


サンプルサイズ計算でやりがちなこと。

2020-10-15 13:42:23 | Research

みなさまこんにちわ。

最近は、本当にCOVID-19 pandemicで本当に人生が翻弄されています。

しかしながら、プロフェッショナル大学院の進行状況は緩められることなく爆烈な課題量やケースの読み込みによる消化不良と毎日の炎上と、自分がやってきた仕事や研究も全てパラレルにコミットしなければならないわけで、本当に一つのことだけ集中できればいいなぁと実は嘆いていました。しかし、この年齢で勉強し続けれられることは本当にラッキーで、ありがたいことで、新しい発見があると最近ようやくWeChatで仲良くなった北京の女性医師と学んだことをやりとりしてます。時差も近いし、電話も時々できますし。

さて、今日は教科書を読んでふとまとめてみました。

僕は、STATAやSPSS、RCTなどの平均差などで簡単な場合は携帯のアプリ(medical calculatorなど)、

パッと早く計算したい場合はOpen epiを用いていましたが。自分が勘違いしていたところを多々あるので、

https://www.openepi.com/Menu/OE_Menu.htm

(こちらが医学生や若手の先生に教えるときのサイトです)

 

きっと皆様にもお役に立つのではないかと感じてノートを残しておきます。

元文献はHulley, Stephen B. Designing Clinical Research (pp.70-72). LWW.と言うHarvard Medical Schoolで用いられている臨床研究デザインの教科書です。とっても簡単な英語でわかりやすいです。

また、サンプルサイズの計算で原理原則の基本的なところは、今はもうYoutubeでやまほどありますので、Sample size AND calculationでググるとどんどんでてきます。

 

計算のための情報がたりない??場合のサンプルサイズの計算方法:

1先行研究の読み込み・・研究課題に関する過去の知見や関連する知見を徹底的に検索する。ほとんどがココ・大まかに比較可能な状況や、平凡でも、古くても十分である。

2本当に計算に使える情報がない場合・・小規模なパイロット研究を実施:パイロット研究は、さらに研究者が本試験の計画をよりよく練ることができるため最終的には時間の節約になり理にかなっている。

3正規分布で連続変数の場合・・標準偏差は一般的に発生する値の範囲の高端と低端の差の4分の1として推定することを利用する方法もある。Normal distribution であるDataであるかどうか。

4その連続またはカテゴリカル変数の平均と標準偏差が疑わしい場合、その変数を中央値/平均値で半分に分割して、Chi2検定へ落とし込む。この場合、多少高く見積もられる。

5臨床的な効果に基づき見積もる・・最終手法の一つなので研究者はその選択を専門家の同僚と一緒に吟味を。(例:ある研究者が重度の難治性胃穿孔症に対する新しい侵襲的治療法を研究しているとすると、この治療法は患者のせいぜい5%が自然に改善する状態とする。ある治療法が有効であることが示された場合(治療に必要な数NNTが5人とする)であれば、リスク差は20%(NNT = 1/リスク差)なので治験責任医師はP1 = 5%対P2 = 25%の比較に基づいてサンプルサイズを推定(だいたい0.80の検出力と0.05の両側αで各群約60人程度になる)。

6最終手段:欠落している成分の可能性の高い値について経験に基づいた推測から導く。これは通常、何の科学的根拠もない、例えば2群間で0.5の標準化されたEffect sizeを検出するために、両側α0.05で80%の検出力を持つように逆算で研究を設計(ちなみにこの場合は1群あたりのn = 64)。この教科書ではこのような完全に恣意的なサンプルサイズ計算を受け入れる科研費助成金はほとんどないと。

サンプルサイズ計算でよくある恥ずかしい間違い!

1. よくあるエラーは、研究の設計中にサンプルサイズを遅い段階で見積もることである。根本的な変更がまだ可能なときにかなり早い段階で行うことから始める。

2. Dichotomus dataがパーセンテージ(%)で表現されている場合、連続変数のように見えて。例)死亡,0 or 1は生存率で表現すると連続変数と誤解されて計算される。生存分析でも結果が連続変数のように勘違いしやすい(例えば、月単位での生存期間の中央値)。これらすべてにおいて、結果自体は実際にはBinary data(割合)であり、標本サイズを計画する際の適切な単純なアプローチはカイ二乗検定となる。

3. サンプルサイズははOutcomeの被験者の数を推定するものであり研究に必要な標本数ではない。Drop outやmissing dataを加味して計算する。

4. 研究対象となる2つのグループのサンプルサイズが等しいと仮定。多くの場合、研究ではそうではないことが多い. サンプル数数が等しくない場合は、ウェブや統計ソフトの表や計算機に記載されている計算式を使用。  

5. アウトカム変数の標準偏差を因子として用いていない。標本サイズを推定するためにt検定を使用する場合、アウトカムが連続変数の変化である場合には変数自体の標準偏差ではなく、その変化の標準偏差を用いるべきである。

6. クラスター化されたデータは必ずしも均一でないことに注意。標本サイズのクラスタリングは問題である可能性が高い。

7. それでも研究のための標本サイズの推定が困難な場合は、研究仮説とデザインから見直す。

*Hulley, Stephen B.. Designing Clinical Research (pp.70-72). LWW. 


Three measure

2020-10-12 10:27:38 | Harvard medical school

Three Types of Measures *

*http://www.ihi.org/resources/Pages/HowtoImprove/ScienceofImprovementEstablishingMeasures.aspx

           研究では                QIでは

目的 仮説や新しい知見 日常診療を改善する
方法 一回きり 基本的には連続的、次へ繋ぐ
バイアス バイアスをコントロールして評価 テストとテストの間のバイアスを安定化
データ Dataは出来るだけ多く 次のプロセスに移動するための必要な量だけを
期間 時間がかかる 小さいが効果が大きいテストを繰り返す

 

測定無くして改善なし、医療の質の改善を考慮する場合に考慮する三つのアウトカム (メインは前者2つ)

Outcome Measures

How does the system impact the values of patients, their health and wellbeing? What are impacts on other stakeholders such as payers, employees, or the community?

アウトカムを主体にしているために、患者や施設の成果や指標(一般的でわかりやすい)

  • For diabetes: Average hemoglobin A1c level for population of patients with diabetes
  • For access: Number of days to 3rd next available appointment
  • For critical care: Intensive Care Unit (ICU) percent unadjusted mortality
  • For medication systems: Adverse drug events per 1,000 doses

 

Process Measures

計画通りに進んでいるか、もしくはいないか? 
Are the parts/steps in the system performing as planned? Are we on track in our efforts to improve the system?

  • For diabetes: Percentage of patients whose hemoglobin A1c level was measured twice in the past year
  • For access: Average daily clinician hours available for appointments
  • For critical care: Percent of patients with intentional rounding completed on schedule.

Balancing Measures (looking at a system from different directions/dimensions)

異なる方向/次元からシステムを見る:システムのある部分を改善するために設計された変更は、システムの他の部分に新たな問題を引きおこすか、よくなるか?(この辺りが、Balancing measureはわかりにくい)Are changes designed to improve one part of the system causing new problems in other parts of the system?

  • For reducing time patients spend on a ventilator after surgery: Make sure reintubation rates are not increasing
  • For reducing patients' length of stay in the hospital: Make sure readmission rates are not increasing

IHIビデオからは、実際にそのシステムのバランスは保てているのか、それともそれによりどちらか一方に傾いているのかを確認すること。システムが乱されているかどうかを反映しているかどうかを理解。

 


白石吉彦先生にメンタリング&授業いただきました 隠岐島 島前病院

2020-10-11 14:48:08 | 総合診療
島根のカリスマ白石先生(隠岐島前病院)にこっそりお寿司屋さんで、メンタリングいただきました。
同時に授業も聴講し大変感銘を受けました。
 
行政の方達は総合診療政策を語る前に一度Videoで良いので白石先生の戦略やポリシーや哲学の聴講をおススメします。
 
リスペクトできる一流の先生の生きてきた人生の轍を垣間見ると、とても興奮します。
 
授業の内容:
 
・どんな環境でも、どんな田舎でも、自分が足りないものを自覚できれば、周囲の人と教え合う事ができれば、どこまでも学び成長する事ができる。成長しようとするか、しないか?それだけ。
 
・場所ではない。離島にも関わらず、どんどん若い人が学びにくる、医者が働き続けたくなるような病院づくりをすれば良い!
 
・一人でがんばれば良いというシステムはだめ、孤独感はもたせない。カンファレンスで精神的につながる、臨床技術は高め続けると楽しい。
 
・観光や余暇が楽しいだけでは、離島に人は集まらない。Happyで仕事が楽しくないと良い人材は残らない、そこをまず意識する。
 
・圧倒的に早く2006年には電子カルテ導入で、島外から圧倒的に早くオンラインカンファレンスを導入。
・ミッション、ビジョン、クレドーを提示し、全職員と共有する。