大きな公園のクチナシの木に実がたくさん生っていました。
梅雨のころ、白くてジャスミンに似たような香りの花が咲いていた場所に、今はオレンジ色の実がたくさんついています。
もちろん花は一重の花でした。
この実は熟しても裂けないから---口が開かないということで、「クチナシ」という名前になったとされています。
6月に咲いていたクチナシの花。
その花が今はすべて実に変わっています。
クチナシは古来から「朽ちることが無い」、縁起の良い木ということで庭木として好まれていたという話もありますが、全く逆の説もあります。
それは、「嫁にもらうくちなし」ということで、女の子がいる家は植えてはいけないという風習もあったようなのです。
現在クチナシの実を身近に感じるのはおせち料理の栗きんとんの色つけくらいだと思うのですが、昔からこの実はとても優れものだったようです。
何がかって?
まず、この実は『山梔子(さんしし)」とも呼ばれ、漢方薬として利用されていたようです。
それよりももっと凄いのは、この実から染められた色のことです。
日本は古来から暮らしの中で多彩な色がありました。
それらの色には長い歴史の中で美しく雅な、日本独特の名前がつけられています。
多くの色がある中の1つに『黄丹(おうに)』という色があります。
これは、クチナシの下染めにベニバナを上掛けして染め重ねられた鮮やかな赤みのある橙色のことです。
そして『黄丹』は昇る朝日の色として例えられていて、やがて天位につく皇太子、または皇嗣の装束の色と規定されているのです。
だからこの色はそれ以外の人は使ってはいけない禁色(きんじき)となっています。
ということで、2020年11月立皇嗣の礼の際、秋篠宮皇嗣殿下がお召しになられた束帯の御袍の色は黄丹色でしたね。
参考に『和色大辞典』よりお借りしました---黄丹色
クチナシって凄い木だったのですね(゚д゚)
学名:Gardenia jasminoides
英名:Gardenia
別名:ガーデニア、センブク、サンシシなど
科名・属名:アカネ科 クチナシ属
原産地:亜熱帯、日本、台湾、中国、インドシナなどの温帯