和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

貴重な、切実な。

2020-09-30 | 本棚並べ
忘れられない箇所がありました。

「源氏物語に『あはれ』の語の多いに対し、
枕草子に『をかし』の語が多いのも、
両者の特質をよく示すものである。」
(p67 伊藤正雄・足立巻一著「要説日本文学史」現代教養文庫)

ということで、枕草子の『をかし』について
思い浮かんだ本があります。

織田正吉著「笑いとユーモア」(ちくま文庫)の
文庫解説は田辺聖子。

田辺聖子さんの、その解説から引用。

「私たち人間族は、『笑い』が大好きであるが、
それでいて、『笑い』の種類をごちゃごちゃに
していることが多い。本書は明快に鋭く『笑い』を区分する。
笑いには三種類あること。

 人を刺す笑い(ウィット)
 人をたのしませる笑い(コミック)
 人を救う笑い(ユーモア)

ーーこの分析によって私たちは、日頃、人生で、
笑いながら何となくあと味わるい思いをさせられたことや、
笑いながら後めたく思ったことの原因を知らされる。」(p311)

はい。田辺聖子さんの解説は4頁なんですが、
その最後を引用しておかなければなりません。

「いま『笑い』はたいそう貴重な、切実な、人間の必需品に
なっている。ストレス過重の現代、身心不調の人々は生き悩み、
笑いを忘れる。この本は『笑い』についてさまざまの考察の
しるべとなるとともに、われわれの生きる姿勢のヒントとも
なるであろう。」(p313)

ちなみに、この本は1979年に単行本。
1986年に文庫化されております。
そうそう。織田正吉氏には筑摩書房から
「日本のユーモア」という3巻本があり、
その②「古典・説話篇」に15ページほどの
スペースをとって枕草子をとりあげております。

はい。本棚を整理していたら、
読み直そうとして、すっかり忘れていた本が
枕草子つながりで結びついたのでした。


コメント
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