忘れられない箇所がありました。
「源氏物語に『あはれ』の語の多いに対し、
枕草子に『をかし』の語が多いのも、
両者の特質をよく示すものである。」
(p67 伊藤正雄・足立巻一著「要説日本文学史」現代教養文庫)
ということで、枕草子の『をかし』について
思い浮かんだ本があります。
織田正吉著「笑いとユーモア」(ちくま文庫)の
文庫解説は田辺聖子。
田辺聖子さんの、その解説から引用。
「私たち人間族は、『笑い』が大好きであるが、
それでいて、『笑い』の種類をごちゃごちゃに
していることが多い。本書は明快に鋭く『笑い』を区分する。
笑いには三種類あること。
人を刺す笑い(ウィット)
人をたのしませる笑い(コミック)
人を救う笑い(ユーモア)
ーーこの分析によって私たちは、日頃、人生で、
笑いながら何となくあと味わるい思いをさせられたことや、
笑いながら後めたく思ったことの原因を知らされる。」(p311)
はい。田辺聖子さんの解説は4頁なんですが、
その最後を引用しておかなければなりません。
「いま『笑い』はたいそう貴重な、切実な、人間の必需品に
なっている。ストレス過重の現代、身心不調の人々は生き悩み、
笑いを忘れる。この本は『笑い』についてさまざまの考察の
しるべとなるとともに、われわれの生きる姿勢のヒントとも
なるであろう。」(p313)
ちなみに、この本は1979年に単行本。
1986年に文庫化されております。
そうそう。織田正吉氏には筑摩書房から
「日本のユーモア」という3巻本があり、
その②「古典・説話篇」に15ページほどの
スペースをとって枕草子をとりあげております。
はい。本棚を整理していたら、
読み直そうとして、すっかり忘れていた本が
枕草子つながりで結びついたのでした。