『男はつらいよ』シリーズの監督で有名な山田洋次は幼少期を満州で過ごした。コーリャン畑の広がる山も川もない平坦な風景がそこにはあった。
だから彼は「日本」を胸の内で想像するしかなかった。
落語や日本映画、絵本に見る故郷、親戚が語る「内地」の風景。
「遠くの方に山があって、田んぼが広がっていて…」と思い描く。
渥美清という役者と二人三脚で郷愁とか憧れに似た気持ちを呼び起こされる風景と人間を描き始めたのである。
進歩や発展と無関係の車寅次郎が日本の故郷を旅をして そこに心地よい郷愁を覚えた日本人は多いと思う。
寅さんは人と競争しないし始めからその気がないと山田監督は言う。
ただ見物しながらみんなを頑張れと応援している。
ほかの二枚目に好きな人を盗られても 決して相手を怨んだりせず 明日の風に身を任せるのだ。
山田監督は大学時代に両親の離婚を経験している。
母親が出て行ったので 大学の休みに家に帰っても寂しかったそうである。
「帰ってきた!帰ってきた!なにが食べたい?」
そんな会話がある故郷に今だに憧れているそうだ。
最後に彼は言う。
「映画を作る、文学や芸術を作るという仕事は、みんなを応援する仕事なんだろう、と。この住みにくい世の中には嫌なことがいっぱいあるけれど、新たな希望はそう簡単には現れない。そんなときふと映画を見に行くんだ。そして笑い、励まされる。僕の映画もこの世界の隅っこで、そんな役割を担っているんじゃないかと思っているんだ」
(参照 週刊現代)
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