鶴部(つるべ)
鶴部・・・といふ
その美しい名の聚落(むら)は
この山腹のから尾根ひとつ越えた
いっそう高い山ふところに在る
星空には十里かなたの盆地に瞬く
山形市の灯が見えるといふ
天童町の灯も望めるといふ
家の数はわづかに三十軒あまり
吹雪はここよりさらに烈しく
雪はここよりもはるかに深くつもる
小さな分教場が建つてゐて
吹雪の吹き入った床のまん中に
九つの子供机がかじかんだやうに寄りかたまり
窓に近く これは中世紀風の飾彫の施された
大オルガンが一台 どっしりと据わってゐる
訪なふ者あつて 戯れに鍵盤を押せば
オルガンは夢みるやうに緩やかに鳴る
永く寂寞に堪へてゐた人間の歌のやうに
声ふるはせて緩やかに鳴る
丸山薫は昭和20年5月、戦火で東京を焼け出され、山形県西村山郡西川町岩根沢に疎開し、同所の小学校で教鞭をとりながら三年を過ごしました。それによって彼の詩はいちじるしい深みと簡素な力強さを持つようになりました。
この詩のタイトルになっている鶴部は、彼の住む岩根沢よりさらに高い山の尾根を越えた高い山ふところにあるなのです。
鶴部・・・といふ
その美しい名の聚落(むら)は
この山腹のから尾根ひとつ越えた
いっそう高い山ふところに在る
星空には十里かなたの盆地に瞬く
山形市の灯が見えるといふ
天童町の灯も望めるといふ
家の数はわづかに三十軒あまり
吹雪はここよりさらに烈しく
雪はここよりもはるかに深くつもる
小さな分教場が建つてゐて
吹雪の吹き入った床のまん中に
九つの子供机がかじかんだやうに寄りかたまり
窓に近く これは中世紀風の飾彫の施された
大オルガンが一台 どっしりと据わってゐる
訪なふ者あつて 戯れに鍵盤を押せば
オルガンは夢みるやうに緩やかに鳴る
永く寂寞に堪へてゐた人間の歌のやうに
声ふるはせて緩やかに鳴る
丸山薫は昭和20年5月、戦火で東京を焼け出され、山形県西村山郡西川町岩根沢に疎開し、同所の小学校で教鞭をとりながら三年を過ごしました。それによって彼の詩はいちじるしい深みと簡素な力強さを持つようになりました。
この詩のタイトルになっている鶴部は、彼の住む岩根沢よりさらに高い山の尾根を越えた高い山ふところにあるなのです。
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