僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

太陽がいっぱい

2017-05-05 17:35:51 | 映画
5日は家でのんびり まったりしている。

何年かぶりで、アランドロンの「太陽がいっぱい」
を観た。




ニーノ・ロータの物悲しい旋律が
心に響く。

翳りのある貧しい出自のアランドロン扮するトムが
守備よく完全犯罪をやり遂げた満足感と
フィリップの彼女をものにした優越感を

「太陽がいっぱいだ!」
と誇らしげに言わしめている。

ナポリ湾イスキア島の海で船を操舵するトムの内面の陰鬱さと、太陽に煌めく紺碧の漣の対比が素晴らしい!

いしゃ先生

2017-02-14 18:37:51 | 映画
山形県西村山郡西川町大井沢は11月から5月まで多くの雪に覆われる豪雪地帯である。


その大井沢でかつて僻地医療に従事し奔走したスーパースターがいたのは案外知られていない。

志田周子(ちかこ)、彼女は明治43年左沢に生まれ、父の仕事の関係で大井沢に移住する。


成績優秀だった周子は山形第一女学校に進学し、のちに東京女子医専に進む。

昭和10年、医者になりたての周子は父の希望で無医村だった大井沢村に大井沢診療所医として帰郷する。

最初、大井沢村の人たちは、周子をよそ者として拒絶し心を開くことがなかった。

お金がないことや周子が女性であることなどの偏見から、家族に重病患者がいても家の中に入れず
門前払いをするのであった。まして悲しいかな、祈とう師のほうを優先する無学がまかり通っていた。

そして当時の大井沢は道路網が整備されておらず、冬、手術が必要な患者を左沢の病院まで運ぶ手段が箱ぞりだった。
村人の男衆が大勢でその箱にロープをつけて数十キロ長い道のりをひっぱって山をおりるのだ。

周子は打ちひしがれそうな心を奮い立たせてたくさんの試練に立ち向かっていく。

東京に残した恋人とも別れ、大井沢で医療の道に生涯を捧げようと決心するのだった。


あまり説明するとDVDを見てもつまらなくなるのでこの辺で終了するが
周子が昭和34年、保険分野の最高賞、保険文化賞を受賞した時の挨拶がとても素晴らしかった。

是非皆さんも一生涯独身で弟妹の世話をしながら医療の道に邁進した周子の姿を
「いしゃ先生」という映画の中に見つけてほしい。






寅さんの誕生日

2016-11-29 21:43:55 | 映画
昭和15年の今日、11月29日は「フーテンの寅さん」の誕生日だ。

あの四角い顔は日本人が愛してやまないキャラクターである。
嘗て、盆と正月は寅さんの映画を見なければという習わしがあった。

定住を嫌い、まるで根無し草のように放浪の旅を続け
神社の境内なんかでの香具師を生業としている。
そこでの寅さんの口上はリズム抜群歯切れがよくとても気持ちが良い。

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国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島、泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、助平の始まりが小平の義雄
、ね、続いた数字が二、仁吉が通る東海道、憎まれ小僧が世に憚る。仁木の弾正はお芝居の上での憎まれ役。
ね、お父さん、これ買ってよ、ダメ? ケチ、三、三、ロッポで引け目がない。産で死んだが三島のおせん。おせんばかりがおなごじゃないよ
続いた数字が四、四谷赤坂麹町、たらたら流れる御茶ノ水、粋な姐さん立ちションベン、ねえ、四角四面は豆腐屋の娘、
色は白いが水臭いだ。
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女性に惚れやすく、それでいて振られてばかり・・・けれど義理人情に厚く
困っている人をほっとけない・・・
そんな愛すべき寅さんの映画をいまだにVHSで観ている私めである。


特に山形県寒河江市を舞台にした「葛飾立志編」は大好きで何度も何度も観た。


寅さんの回想のシーン

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とある寒~い日のこと、身も心も凍えそうな晩だった。

何をやってもうまくいかない時でよ。

無一文で降り立った寒河江の町で腹がすいて矢も楯もたまらず
駅前の一軒の食堂に入った。
鞄と時計をテーブルに置いて、これでなんか食わしてくれと・・・

そこの女将さんは、「困ったときはお互いだから」といって
どんぶりいっぱいの飯と豚汁をだしてくれたっけ。

どんぶり飯をかきこみながら、涙がポロぽろぽろぽろあふれ出て 止まらなかった・・・

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この場面にいたく感情移入するので泣けてくる そう涙が止まらない。

48巻あるうちから
「今日はこれ見っぺ!!」と誘っても
家族の誰も同意はしてくれないのであった。


風立ちぬ

2013-08-12 23:43:04 | 映画
日曜日に「風立ちぬ」を観た。



天才飛行機設計技師の堀越二郎に堀辰雄のモチーフを付加し、二人の生涯が交じり合った物語と見ていい。

宮崎駿監督は「戦争は嫌いだが飛行機は大好きだ」と言う。

自分は飛行機には関心がないが、文学としての「風立ちぬ」は大好きだ。

特に小説の中で「私」が発するヴァレリーの詩の一節が大好きだった。

“ Le vent se leve,il faut tenter de vivre”風立ちぬ いざ生きめやも!

堀辰雄の婚約者「矢野綾子」は軽井沢の富士見高原病院で25歳の若さで死んでしまう。
堀辰雄自身も彼女と同じ肺結核で48歳でこの世を去る。

小説「風立ちぬ」の中の「私」の婚約者「節子」もやはり「私」の必死の看病も空しく息を引き取ってしまう。

けれどはじめ節子は看病する「私」に引け目を感じ臆病になっていたが、一緒にサナトリウムで過ごすうちに生きたくなり、生きられるだけ生きようと誓い合う。

堀辰雄が節子のモデル矢野綾子と初めて出会ったのは、昭和8年、滞在先の軽井沢でのことだった。やがて二人は恋に落ち、翌9年9月に婚約した。


前置きが長くなったが、映画の中で、二郎と菜穂子が出会うのも軽井沢の高原。
キャンバスを立て、絵を描く菜穂子の周りの風景が、ゆうすげ(カンゾウ)の花...
(たぶんニッコウキスゲ)で覆われ、心地よい風が吹いていた。

二郎の尊敬するカプロー二が夢に現れ、夢を共有するシーンがたくさん見られる。

宮崎駿監督にとってのカプロー二は東映アニメーション(東映動画)の先輩、高畑勲。
宮崎駿の夢には、いつも高畑勲しか出てこないそうである。

風立ちぬのチラシのタイトルの文字は宮崎が書いた。
けれど「生きねば」という強い文字は、スタジオジブリ事業本部長、鈴木敏夫氏が手がけたものである。

何となく味のある文字でもある。


二郎と菜穂子は、小説「風立ちぬ」にも出てくる透明感のある愛を見せてくれる。
エンドロールに松任谷由実の「ひこうき雲」が流れた。

やはり堀越プラス堀は計算通りにはいかない。




スカイフォール

2012-12-02 09:54:59 | 映画


昨日、フォーラムでスカイフォールを観た。
いつ観ても007シリーズは爽快な気分にさせてくれる。


ボンド役は自身3作目のダニエル・クレイグ。
ロジャー・ムーアやピアーズ・ブロスナンのような2枚目ではないが、もっとも原作者のイアン・フレミングの暗い部分が投影されていると思う。




中年の悲哀や哀愁が漂って、心惹かれる観客も多いのではないか。

インストゥルメンタル曲を歌っているアデルの声もすばらしい!



そして何より一億5000万の制作費をかけただけあり、アクションシーンが見事だ。

2時間半が瞬く間に過ぎていく。

のぼうの城

2012-11-16 17:43:49 | 映画




昨日、のぼうの城を観た。

愚鈍でぼーっとしている主人公成田長親(のぼう様)を野村萬斎が上手に演じていた。
彼は陰陽師での切れ味鋭い役柄よりも、こちらの天真爛漫な姿が似合っていると思った。

映画の説明で、智もない勇もないといわれていたが、あれだけ領民に慕われている姿からは
「仁」という人として最も大切な思いやり、慈しみが備わっていてように感じた。
また、ここぞという場面での決断力、果敢さは天下一品である。

内容は語らないので、興味がある人は是非映画館に足を運んでもらいたい。


映画 鍵泥棒のメソッド

2012-10-08 00:10:39 | 映画
 内田けんじ監督の「鍵泥棒のメソッド」を観た。売れない役者の桜井を堺雅人が演じ、殺し屋コンドウに香川照之、ちょっと世間ずれしている雑誌の編集者の香苗に広末涼子。
 銭湯での転倒をきっかけに、桜井とコンドウの人生が入れ替わってしまうお話。




[あらすじ]
 銭湯に入ってきた金持ちそうな男(香川照之)が転倒。その場に居合わせた貧乏役者の桜井が様子を見ていると、男は頭を強打した影響で記憶を失っていた。

 桜井はちょっとした出来心を起こし、男のロッカーの鍵と自分の鍵をすり替える。記憶をなくした男は自分を桜井だと思いこんでしまう。しかし男の正体は誰も顔を見たことのない伝説の殺し屋・コンドウだったのだ。


 コンドウに成り代わった桜井のもとに大金が絡む危険な仕事の依頼が舞い込み、桜井はやむなく引き受けてしまう。


 一方、自分は桜井だと思い込んでいるコンドウは一流の役者となることを目指して真面目に努力する。そんなひたむきな姿に胸を打たれた女性編集長の香苗(広末涼子)は彼に求婚。三者三様の事情が複雑に絡み合っていく。


【感想】
 予想以上に面白い作品だった。時々笑えて、ときどきドキドキして、どんでん返しも盛り込まれた喜劇だった。
 特に香川照之が二つの顔ををそれぞれ演じきったのは、出色の出来だった。

『世界侵略 ロサンゼルス決戦』と馬肉ラーメン

2011-09-09 14:01:48 | 映画
「世界侵略 ロサンゼルス決戦」の試写会に応募したら見事当ったので
昨日、息子と二人、米沢に向かいました。





途中、小腹がすいたので長井の「かめや食堂」に立ち寄りました。


ここは、馬肉ラーメンで名を馳せているお店です。

馬肉に馴染みがある会津地方から人が流れてきたのか
かつて草競馬場があった関係からか、長井市でラーメンと言えば
馬肉ラーメンなのです。
かめやさんは、創業昭和28年の老舗のお店で、昼時は常連さんでいっぱいです。

こんな感じの中華そば、普通盛り


んでこちらが大盛り


一見しょぱそうですが、8種類の材料と馬肉のつけ汁をつかっているので
まろやかでいろんな味が舌にからんできました。
後を引くので癖になりそうです。

チャーシューは、脂肪分が少なく適度に歯応えがあって
豚のチャーシューに比べてあっさりしていてヘルシーでした。

麺は中太ストレートでスープに合っていました。
あと特筆すべきはメンマがシャキシャキ、コリコリしてとても美味しかったことです。

次から次へとお客さんが入ってきます。

かえりしな、女将さんに「おしょうしな~」と言われました。
置賜弁で「ありがとう」という感謝の言葉です。
これが庄内地方に行くと「もっけだの~」になります。


米沢のワーナー・マイカル・シネマズには18時17分に到着。
30分からゆっくりと映画を鑑賞しました。
まだ公開になっていないので詳しくは言えませんが、とても迫力があって
臨場感に惹き付けられました。

評論家達の評価は10点中5点の辛口ですが、私は単なるアクション映画ではなく
男らしいリーダーシップを考えさせられ、なおかつ多くの感動を覚えることが出来る
良作だと思いました。

星守る犬

2011-06-27 11:44:48 | 映画


昨日、『星守る犬』を観た。
時々、涙が流れた。

西田敏行扮する「おとうさんは」、普通に魅力がある恰幅のいい男性である。

ただ、小泉純一郎の大改革において、リストラの嵐が吹き荒れていた。

このおとうさんも町工場の仕事を解雇されてしまう。

その頃からおとうさんは無気力になっていく。

義父の介護のことも、娘の非行にも関心を示さなくなった。

挙句の果て奥さんに離婚を宣言されてしまう。

このあと、東京から東北を経て、北海道に渡るのだが、彼と愛犬(ハッピー)の死出の旅だったように思う。
そこにあるのは、諦観と無力感。ただ従容とした厳かな態度を貫いた。

そして、おとうさんの根底には、温かみのある優しさがあった。

それがゆえに、観るものに悲惨さを与えない。

最後までほんわりとした雰囲気を与えつつ死んでいく。