ウルトラ解釈ブログ作戦

ウルトラシリーズについて色々語るブログ。

サボテン地獄の赤い花

2011-02-28 21:16:41 | ウルトラマンエース
今回の脚本は上原正三。
2話連続なのは次の前後編を市川、田口の両氏が担当してるからだろう。
しかし、前回の北斗、南の恋愛編とは打って変わった少年向けの怪奇話。
正直、これを田口脚本や石堂脚本と言われても納得してしまう。

今回は冒頭から超獣出現。
これは第一話と同じだが、第一話は北斗が死なないといけなかったので、今回とはちょっと違う。
因みに、帰ってきたウルトラマンも冒頭から怪獣が出ていた。
他にもレオ冒頭など、このパターンはウルトラの一話では定番となっている。

ただ、ウルトラマンがいきなり戦うパターンは案外少ない。
帰ってきたウルトラマンでは思いつくところではロボネズ戦くらいしかないであろう(第一話は戦ったとまでは言えまい)。
しかもロボネズの時の郷と同様北斗が負傷するのもどこか似ている。
とは言え、サボテンダーは倒される前に逃げ出して小型化して街中に潜むのだから、これはちょっと珍しいパターンだろう。
思い出すのは円盤生物か。

今回の中心はサブロテンの名付け親でもある、三郎少年。
上原氏の子どもを中心にした話ではキングストロン編などを思い出すが、怪獣(超獣)に思い入れがあるところなんかは共通してるだろう。
ただ、キングストロン編の少年はかぎっ子という屈折した心理が背景にあったが、今回の話にはそういう背景は特にない。
香具師である父親と貧乏生活とは言え、精神的にはそれほど貧困な子供ではないだろう。

子どもは強い昆虫や不思議な動植物に興味を持つのは普通だから、今回の三郎の行動は子どもである以上、そこまで責めることはできない。
そもそもあのサボテンが人間を食べるなんて発想はTACででもない限り無理である。
現に大人である警察まで信じていなかったし。
被害に遭うのがどう見ても不運な人である警備員や(笑)、バカップルなのも三郎を悪く描かないためであろう。
因みに、警備員を演じた大村千吉氏はキングストロン編にも出てました。
さらに因みにバカップルの女性の方はダンのお姉さんの香代子さん(の中の人)。

今回の話は前述したようにキングストロン編のような深みのあるドラマはなく、ただの怪奇物のテイストが強い。
そういう意味ではあまり上原氏らしくない話ともいえよう。
宇宙昆虫の話が出ていたが、話的にはキングストロン編とノコギリン編の折衷的な感じか。
結局のところ、桜木健一や近藤正臣、高品格など豪華ゲストを出すためのややご都合なストーリーである。

ただ、上原氏のテイストはわずかながら窺えた。
田口氏ならこの話、もっと北斗と三郎中心に脚本を書いたであろう。
しかし本話では、夕子は北斗と共同して事件の謎を追っている。
以前にも書いたが、上原氏はある意味市川氏以上に、北斗、南の設定を重視して話を描いている。
この辺りは前作のメインライターを務めた経験が生きているのだろう。
メインではないのに、設定に対する細かい配慮。
返す返すも、惜しまれる上原氏の離脱である。

超獣は10人の女?

2011-02-21 21:35:10 | ウルトラマンエース
くの一超獣ユニタング登場。
くの一というのは言わずと知れた、女忍者のこと。
前々回のガマスといい、この時期は忍者超獣が多い。
まあ、神出鬼没の超獣は元々忍びの要素は大きいんですけどね。

さて、本題。
本話のテーマはズバリ、男女の愛。
しかも主人公2人の愛という点、ウルトラでは初めてのタイプの話だろう。
私は男なのだが、子供のころ北斗が夕子に酷いセリフを吐くシーンは見てて胸が痛かった。
子供はヒーローに自分を投影して番組を見ている。
そしてエースの場合、強い男性の北斗よりも弱い女性の夕子の方に、より自分と近いものを感じるのである。
したがって、北斗の裏切りによって、夕子と同化し切ない気持ちになったとしても不思議はない。

まあ、その辺の個人的な思い出は別にして、ウルトラで恋愛がテーマになるのは実は2期以降の話である。
セブンなんかはダンとアンヌの恋愛を描いて有名だと思われてるが、恋愛は描いていても実はそれがテーマになってる話はほとんどない(おそらく最初にメインテーマにしたのが欠番の「遊星より愛をこめて」)。
最終回にしても、広い意味の友情の方がテーマであり、現にダンは自己犠牲の下、アマギ隊員との友情を優先するのである。
アンヌとの恋愛というのはあくまでサブテーマに過ぎない。

しかし、2期になるとそれが話の主要テーマになる機会が増えてくる。
その最初の話が、私見では帰ってきたウルトラマンのテロチルス編。
これほど露骨な恋愛話は2期でも珍しいが、この話は完全に恋愛がテーマであった。
以後、ノコギリン編、グロンケン編、ナックル星人編(ちょっと微妙ではあるが)、バルダック星人編、グラナダス編等々と頻繁に描かれる。
エースでも例外でなく、ガラン編、ガマス編とここまで既に2回も描かれた。
しかし、主人公同士の恋愛というのはエース以外では成立しない。
そういう意味では、この設定上、避けては通れない話であったといえよう。

ただ、興味深いのは主人公2人の恋愛を最初に正面切って描いたのはメインライターの市川氏ではなく、サブの上原氏である点。
まあ、エースは最初から市川、上原、田口の3人でローテを組む体制だったからそれほど拘りはないのかもしれないが、前2回の恋愛話が市川脚本だった点からは非常に興味深い。
市川氏はこの後2人の恋愛を正面から描いたエースキラー編を手掛けているが、それを最後にシリーズから離れるのも何か含みがありそうで、興味の尽きないところである。

本話の2人の恋愛については以前書いた解釈を参照していただくとして、今回見てて改めて気づいた点。
ユニタングが女性でかつ、北斗を狙ったのはやはり北斗と南を痴話喧嘩させるのが目的だったのであろうか。
物語中、綾は北斗と南を引き離すことに主眼を置いてるようなセリフを言っているが、女子大生のホットパンツスタイルといい、ヤプールもそれなりに人間の風俗を研究してるようなので、やはり北斗を誘惑する若しくは北斗が浮気してるみたいに見せるというのも念頭にあったのだろう。
虫太郎のストーカー気質を悪用するヤプールである。
その辺りは容赦ない(笑)。

以前にも書いたが、今回夕子が北斗を信じる根拠としたのは、車の事故の際夕子を庇った点。
しかし、これがなかったら夕子はあそこまで北斗を信じられただろうか。
かつてナックル星人は郷のアキへの愛を悪用して、ウルトラマンを動揺させて倒した。
もしかして夕子が北斗を信じきれなかったならば、仮に変身に成功したとしても気持ちがバラバラでユニタングに敗れたかもしれない。
そういう展開も見てみたかったが、ヒーローの内部で「あなた、浮気したでしょ」「信じてくれ、夕子」とか痴話喧嘩描いても仕方ないので、それは描かなくて正解であろう(笑)。

今回実は一番夕子のために怒ってくれたのは今野。
最後、逆立ちさせられたり酷い扱いだが、女性に対するこの優しさはガマス編を踏襲するものである。
普段怒鳴ってばかりの山中より、普段温厚な今野が激怒する方が効くものだ。
エースキラー編でも高倉長官を殴った竜隊長を援護してるし、今野が時々発揮するジャイアンのような男気は頼もしい(?)。

北斗をコントロールしてた耳の針が取れたのはなぜか。
これはやはり夕子の月星人としての力であろう。
この力は、後のホタルンガ編でもお面を割るのに利用された。
ユニタングがバラバラになって市街地に移動したのはなぜか。
これはおそらくエースが変身できなくするための時間稼ぎだろう。
ただ、今回のエースは異様に長く戦っていたのでその作戦は失敗した。
何故異様に長く戦えたかについては、夕子の北斗への愛のエネルギーということで(すんません)。

とにかく、今回は2人の愛、特に夕子の北斗への愛がテーマ。
こういう健気なところが夕子の魅力なんですよね。
一方の北斗は正直いいとこなし。
まあ、この辺の関係がいい感じなんですけどね。
しかしいずれにせよ、エースが子供向け番組らしからぬ展開を見せているのは事実。
ただ、この路線は市川、上原両氏が抜けると尻すぼみになり、最後は北斗単独編になってしまった。
スタッフ内でどのような葛藤があったかはわからないが、最後までこの路線を見たかったというのが、40年近く経った今でも偽らざる本音だ。

決戦!エース対郷秀樹

2011-02-13 22:05:38 | ウルトラマンエース
またしても大仰なタイトルだが、結局エースと郷秀樹は対決せずじまい(笑)。
北斗と南は一応対決したけどね。

とりあえずの評価は、以前も書いた通り強引なイベント編。
しかし、イベント編ということは企画した人がいたということでもあり、その辺は興味深い。
そもそも郷やルミ子さん、次郎の出演が決まってないと書けない話。
ということは田口氏主導で作られたというより、円谷もしくはTBSが主導して考えた企画という可能性のほうが高いだろう。

ただ、この話の最大の謎は、何故郷秀樹を偽物にしたのか。
まあ、本物だと単に前作のヒーローが活躍するだけになってしまいマズいのかもしれないが、少なくとも本物登場の余地はあったはず。
エースと新マンの共闘と次郎、郷の本当の再会。
こう書くだけでも気分が高まるシチュなのだが、何故スタッフはそれをやらなかったのか。

この話の謎の一つに、次郎とルミ子は郷がウルトラマンであると知ってたはずなのに、まるでそれを知らないかのようにふるまっていた点が挙げられる。
この背景にはやはり、ウルトラマンの正体は一般の人間には知られてはならない。
知られたとき=最終回というウルトラの不文律があるのだろう。
本話で本物の郷を登場させてしまうとその正体を知ってる2人の一般人が物語に登場することになり、その不文律を破ってしまう。
加えて、郷と次郎の別れをもう一度描くということは、それはもはや番組がウルトラマンAでなくなってしまうことを意味するのだ。

こういう事情がある以上、郷は偽物でなければならなかった。
そして次郎たちも郷の正体がウルトラマンであることを知っていてはいけなかった(少なくとも表面上は知らないふりをしなければならなかった)。
ウルトラマンの正体を知っている人間は原則それ以降のシリーズに出てはいけない。
それはテレビを見ている視聴者に対する円谷の配慮でもあるのだろう。

そういえば、アンヌも再登場の時は次郎君とは違った意味で変な扱いをされていた。
ウルトラマンの正体を知ってる人物の再登場。
正直そこまで気を使う必要はないと思うのだが、意外にも当時の円谷はそのことをかなり神経質に気を使っていたのかもしれない。
結局、この話の違和感はその辺りの設定を割り切れず曖昧にしたがために生じたものだという気もする。

最後次郎はエースは郷の匂いがしたと言っている。
結局、次郎が郷の正体を知っているということは、この程度でしか表現できなかった。
その後、次郎は郷であるウルトラマンに誓ったウルトラ5つの誓いを空の郷に向かって叫んでいるが、ここで郷とウルトラマンをオーバーラップできなかった点に、この話の違和感は集約されよう。

超獣10万匹!奇襲計画

2011-02-06 21:49:47 | ウルトラマンエース
今回はとにかく、江夏夕子さん演じる鮫島純子中心の一本であった。
おかげで本家夕子である星さんの出番がほとんどなし。
まあ、今野のエピソードなので仕方ないが。

しかし、最初あれだけ嫌がってた今野と最後はラブラブなんだから、女心はわからない。
というか、穿った見かたをすれば、堂々と超獣を取材できるように今野を誑かしてるようにも見えなくもない(笑)。
ただ、痺れてた(笑)草野大悟氏演じる編集長が自分の写真が元で超獣に殺されたんだから、さすがの純子もそこまでタフではなかろう。
一応気は優しくて力持ちを地で行くキャラだから、今野もモテなくはない(ただのデブではない)。

一方北斗は、かなり短気な一面を見せていた。
夕子は純子とは違い、おしとやかで芯の強い、典型的な大和撫子タイプ。
やっぱり北斗にはそういうタイプが合うのだろう。
まあ、最後はしっかりつねられてたけど。
他のエピソードを見る限り、やっぱり北斗は尻に敷かれそうではあるが。

今回の脚本は市川森一氏。
江夏氏のゲスト出演は誰が決めたのかはわからないが、草野氏といいなかなかドラマ的に力が入っている。
1期ウルトラには全くないタイプの話で、非常に時代を感じさせる話。
2期は世相を反映した話が多いが、これもその1本であろう。
その分古さは感じさせるが、逆にそれも郷愁を誘う。
凄い作戦の割にヤプールの存在感がなかったのも、案外鮫島純子中心のモーレツマスコミのほうがリアルに怖いからかもしれない。