一般質問・後半の原稿を紹介します。
【項目】
・桜町再開発・MICE整備
・花畑町別館の存続活用
・市役所の非正規雇用の改善について
以上
●桜町再開発・MICE施設整備
市政史上最大の事業となる桜町再開発へのMICE施設整備は、再開発への補助金126億円含め総事業費は450億円です。今回の新年度予算で、本格実施に向け再開発会社への補助が34億円、MICE施設整備費が当年度分102億円、次年度以降の分を債務負担行為で205億円、合計約370億円が提案されています。改めて、事業費の大きさに目がくらむようです。私どもはこれまで、多額の税金投入となること、最優先する事業なのか、見通しはあるのかなど、機会をとらえ、幾度となく問題点を指摘してきました。
大西市長は就任直後、ちょうど1年前、桜町再開発へのMICE施設整備について見直しをされました。ところが、コスト面では、事業費が9億円も増えるという結果となりました。当時、私ども共産党市議団のもとにも、「見直しだから費用が減るのかと思っていたら、逆に9億円も費用が増えるとはどういうことですか?」と市民の方々から相次ぎ疑問の声が寄せられました。市政史上最大のハコもの建設なので、当然節約方向での見直しだと誰もが思っていたに違いありません。それが増えたのですから驚かれるのも無理はありません。多額の税金をつぎ込む事業なので、説明責任を果たすべきという立場でお尋ねいたします。
① MICEの整備費となる保留床取得金の財源は、8割以上の250億8000万円が新たな借金です。その利子総額と、元利償還見通しをご説明ください。
② 今年2月に熊本市が国土交通省に提出した「桜町地区第1種市街地再開発事業」に関する補助金申請書を見ますと、保留床の総面積が84100㎡、マンションが15370㎡、市の熊本城ホールが約31000㎡、残り37730㎡を九州産交ランドマークが増床分として取得するようです。保留床の取得価格・床の単価は、熊本市の取得分が1平方メートル当たり933000円、民間部分が1平方メートル当たり平均約50万円となっています。しかし、予定の概算事業費で計算すると、実際は民間取得の保留床には差があって九州産交の取得する保留床は単価55万円、マンション業者の単価は377000円程度となります。このように保留床単価は、取得者によって大幅に単価が異なります。どう積算をすればこのような単価設定になるのかご説明ください。
③ 今年度予算化されていた保留床取得に関する不動産鑑定と保留床の持ち分割合等の妥当性評価が、28年度へと繰り越し執行されることになっています。保留床の鑑定や持ち分割合の妥当性評価が行われず、保留床価額の妥当性も検証されていないのに、308億円の保留床取得金だけを先に予算計上し、議決を求めてよいのでしょうか。妥当性の検証したうえで、予算の提案を行うべきではないでしょうか。
④ 保留床価格検証の鑑定は、平成26年度に約100万円の予算で概算段階の不動産価格等妥当性調査が行われています。今の時点でその結果を議会や市民に公表し、308億円の保留床取得金の妥当性を説明すべきではないでしょうか。
今回の再開発では、総事業費約700億円のうち、熊本市がその6割以上の450億円もの大きな負担をします。そのうち、約90億円が市の土地関係費で、その中に補償金65億円が含まれています。補償の対象となる権利者は、地権者1名、借地権者1名、借家権者が12名です。補償金65億円の積算根拠をお示しください。あわせて、従前資産における土地関係費もお示しください。
⑤ 再開発ビルの建設工事費は、550億3000万円になっています。権利変換計画で、各々の床取得者がそれぞれ工事費を負担するわけですから、補助金も出した基本・実施設計の内容を明らかにし、MICE,マンション、ホテル、商業、バスターミナル等、それぞれの建設費を説明すべきではないでしょうか。
⑥ 桜町再開発株式会社への無利子貸し付けは、国から10億円借りて、市が10億円だし、合計で今年度20億円の予定でしたが、査定で国費分が全額認められず、国から借りられたのは3億円、その結果、本年度再開発会社へ貸し付けたのは、国・市合せ約6億円でした。ところが、昨年調達できなかった分も含め、新年度予算では、30億円の貸し付け予算が提案されています。今年度国は10億円の要望に3億円しか貸してくれなかったのに、来年度30億の国費分15億円の貸し付けをしてくれる見通しがあるのでしょうか。
⑦ 熊本城ホールの整備には「暮らし・にぎわい再生事業」補助金が予定され、今年2月に国へ出された「桜町・花畑地区暮らし・にぎわい再生事業」補助金申請書では、平成30年度以降にシンボルプロムナード及び花畑広場の整備に約20億円の総事業費が予定額として記入してあります。予定される整備内容と積算根拠をご説明ください。
(答弁)
一点目の利子総額は、450億円に含まれているのでしょうか。
財政局長に伺います。
(答弁)
じゃあ、再開発とMICE整備費を入れれば、熊本市の負担は480億~490億円にもなりますね。
もうひとつ、「従前資産における土地関係費については、個人情報保護の観点からお答えは差し控えさせていただく」と言われましたが、地権者は一人、個人ではない、再開発の施工主そのものではありませんか。土地代へも市民の税金を90億円つぎ込むというのに、企業情報を優先するのは、誰も納得できません。市として、その程度の情報は出すべきと事業者に迫るべきではないですか。市長に伺います。
(答弁)
再開発・MICE整備に使う費用の原資は税金です。個人情報等で、情報公開も説明もされないのは承服できません。私は、今回の質問に当たり、再開発会社の契約情報の公開を求め資料請求しましたが、出されてきたのは契約する事業を1枚の紙に羅列し妥当であると書かれたものでした。市の契約であれば、契約の仕様書・入札状況調書・契約書そのもの、すべて議会には公開、公正・公平な契約なのか、チェックできます。450億もの税金を出すのに、予算を承認する議会がチェックもできないというのは問題ではないでしょうか。
また、保留床取得金の妥当性も検証されないまま、再開発・MICE関連で370億円もの予算が提案されるのは納得いきません。これがエスカレートすれば、まともな事前説明もしないで、ただただ予算を議会に提案・議決を求めるという議会軽視のやり方にもなってしまうのではないでしょうか。
再開発事業者への貸し付けの国費分や、また昨年の9月議会・予算決算委員会質疑で私が指摘しましたように、再開発への補助金も、要求に対し8割程度しか出されていないことなど考えると、この再開発事業が財政面では、大変厳しい中ですすめられているということを指摘いたします。
そこで、市長に1点伺います。
保留床取得金は308億円を超えないと言われていますが、今指摘したように、再開発を取り巻く状況は厳しく、また事情が変わればどんどん事業費が膨らんでいくのが、再開発です。それは、駅前東A地区再開発の事例を見ても明らかです。オリンピックを控え、建設物価は上昇しています。また、国の補助金も7~8割しか出ないという中で、保留床取得金にとどまらず、再開発への支出が補助金含め約450億円を超えないと言い切れるのでしょうか。明快な答弁をお願いします。
(答弁)
そんなあいまいな答弁で、事業費がどんどん増えたら、市長はどのように責任を取られるのでしょうか。
もう1点伺います。花畑広場、シンボルプロムナードの整備費20億円の質問に、市長は、一般的な公園整備に加え、屋根や水景施設、インフラの整備を考えていると説明されました。いつどこで決まったのでしょうか。
(答弁)
シンボルプロムナードと花畑広場は、いわば再開発ビルの周辺整備のようなものです。
これまでの答弁を聞いておりますと、桜町再開発とMICE施設、その関連にどれだけの事業費をつぎ込むのかと、びっくりしています。これまで私どもは450億円も使うのかと言ってきましたが、借りる借金の利子まで含めたら480億、490億というのが桜町再開発。MICE整備費の総額ということになります。
再開発会社行う契約も不透明ですが、工事費だけでも約550億円ですから、契約情報を公開し、公正な契約を行い、経費の縮減も適切に行うべきであると指摘しておきます。
続けてお尋ねいたします。
第1に、マンション部分の保留床を取得するのは株式会社マリモが予定され、ホテルの経営は、リゾートトラストに決まっていました。これらの事業者との契約は済んでいるのでしょうか。
第2に、商業スペースのテナント入居決定状況はどのようになっていますでしょうか。昨年の9月議会・予算決算委員会の質疑で此の点伺いましたときに、市長は「年内をめどにある程度こういう形のテナントが入ってにぎわいが増すのではないかといったことの説明は、当然のことながら我々の方に示されると思っている」と答弁されました。再開発事業は、大幅に増えるビルの床がどのように活用されていくのか、保留床の処分はもちろん、取得された保留床が、分譲ないし、賃貸によって各々の事業に有効に活用されることが再開発事業成立の鍵です。これまで、保育所・病院・バンケット機能・シネコンなど、様々な業種の参入が言われてきましたが、それらの入居は決まっているのでしょうか。また、テナント誘致の現状もご説明ください。
第3に、テナント誘致に際し、私は地域経済活性化の点からも、地元業者の皆様にも、この一等地に立つ新しいビルに入っていただきたいと思います。地元業者の参入見通しについて、ご説明ください。また、市長は地元企業がどの程度入ることをご自身の目標とされていますでしょうか。
第4に、桜町再開発によって、約1000人の従業員が働いていた県民百貨店、また100店舗以上が営業していたセンタープラザなどが閉鎖になり、多く失業者を出しながら桜町再開発はすすめられてきています。今後の中心市街地の発展とはいっても、多額の税金を使う事業でもあり、営業や雇用を奪うばかりではよろしくないと思います。桜町再開発事業によって、生まれる雇用はどの程度と見込まれるのでしょうか。MICE施設による雇用はどの程度になりますか。
(答弁)
マンション・ホテルの契約は、協議中との答弁でしたが、相手先は、住宅が「マリモ」、ホテルが「リゾートトラスト」ですか。確認させてください。
(答弁)
テナント誘致で、「地元企業も候補に挙がっているので期待している」と言われましたが、桜町再開発で、県民百貨店・センタープラザテナントなど、あれだけの地元企業を追い出した責任を市長はもっと認識し、地元テナントを優先し、5割は地元企業でうめてほしいと、事業者に対して指導的に迫るべきではないでしょうか。また、県民百貨店による離職者のうち求職している人の1割以上がまだ仕事が見つかっていません。そういう方々を優先して誘致テナントに雇用してほしいと事業者に求めていくべきではないでしょうか。
市長に伺います。
(答弁)
テナント誘致は協議中と言われましたが、商業施設の何割がすでに見通しがついているのですか。キーテナントは決まっていますか。
(答弁)
キーテナントやシネコン、バンケット機能が決まらないと、現在行われている実施設計の進捗にも影響するのではないでしょうか。九州産交が取得する商業施設の床が埋まるのか、はっきりしない答弁ですが、私は、商業施設にテナントきちんと誘致できるのかは、大事な問題だと考えています。全国的にもコンパクトシティの先駆けといわれ、熊本と同じく株式会社の施行の再開発で行われた青森市の「アウガ」は、再開発ビルを経営する第3セクターの債務超過によって、事実上の破たんに陥り、全面的に支援してきた青森が床を買い取り「公共化」ということで市役所機能を再開発ビルへ移転することを検討、第3セクターに貸し付けていた23億円の債権放棄まで迫られる事態に陥っています。この事例で、問題の発端となったのは、予定されていたキーテナントの出店断念等が発端となり、店舗部分の売り上げが伸びなかったことが原因となって経営していた第3セクターが多額の債務超過に陥ったことです。これが、全国のトップを走っていた再開発の結末です。
九州産交は、熊本市のMICEと民間のマンション部分を除くすべての保留床を増床分として引き受け、207億円を負担することになっています。キーテナントが決まらなかったり、商業施設の床が埋まらなければ、再開発ビルの運営は行き詰まります。青森のように、自治体が破たんのツケを負うようなことにもなりかねません。全国的には、自治体が再開発失敗のツケを負わされている事例がたくさんあります。熊本市は、保留床の取得に308億円、補助金が126億円、再開発会社への無利子貸し付けを60億円と、莫大な負担を予定しています。それに、テナントが決まらない床を買うような羽目になったら、さらに400億、500億と負担を背負うことになります。そういうことにならないと言い切れますか。
(答弁)
桜町再開発ビルに入るテナントの決定は、再開発成功のカギといっても過言ではないと思います。再開発事業は、建設にも莫大な資金を必要とし、再開発ビル建設後の事業運営も含め、全国どこでも自治体がたくさんの資金を提供する羽目になっています。そういう意味で、今回の桜町再開発やMICE整備においても、財政面はもちろん、契約や保留床の処分・入居テナント、運営まで含め、市民への情報提供を行い、説明責任を果たし、市民納得の上ですすめていくべきであると考えます。
市長は、JR九州が行う熊本駅周辺の開発によって「熊本駅前・桜町・中心商店街の3つのエリアに相乗効果が出てくると思う」といわれていますが、そんなに簡単な問題ではないと思います。いつまでたってもテナントの見通しすら示せない桜町再開発事業が、どんな賑わいをもたらすのか、何の確証もありません。市長の姿勢は、今後に問われてくると思います。
●花畑町別館建替え問題について伺います。
2007年、前市長の下で花畑町別館の耐震化への対応の必要性や建て替えも含めた検討という方向性が出されて以来、市民からの意見表明やシンポジウム等での論議など、さまざまに行われてきました。今年度も、昨年末の12月20日、熊本学園大学において「熊本市役所花畑町別館を残して、まちと共に生きる建築に」と題した市民シンポジウムが開かれ、「山田守」研究の第一人者で、東京家政学院大学助教授、ドコモモ・ジャパン幹事を務められている大宮司勝弘氏が講演され、熊本まちなみトラスト会長の西嶋公一氏をコーディネーターに、大宮司氏に加え、鹿児島大学大学院教授の鰺坂徹氏、建築空間デザインarchestra(アーケストラ)共同代表の大谷一翔(いっしょう)氏、花畑町別館を活かす会の江藤圭子氏らによるシンポジウムが開かれたばかりです。また、今年になって2月8日には、一般社団法人・日本建築学会九州支部支部長・黒瀬重幸氏から「旧熊本貯金支局(熊本市花畑町別館)の保存に関する要望書」も提出されています。そこで、お尋ねいたします。
① 2月8日に日本建築学会九州支部から熊本市に提出された要望書では、専門家の立場から花畑町別館の歴史的価値について述べられています。設計に携わった山田守氏は、東京帝国大学建築学科卒業の後、旧逓信省に入り営繕課の技師として活躍するとともに、全国に優れた建築作品を数多く残した、日本の近代建築史上に特筆すべき建築家であること。そして、花畑町別館は、その山田守の代表作の一つとして、1980年に出された「日本近代建築総覧」においても「価値の高い近代建築」と記されるものです。熊本大空襲の難も逃れ、熊本市中心部の景観を形成する上でも大きな役割を果たし、なにより市民に愛されてきた建物であると述べられています。このたび、専門家の集団である日本建築学会より、要望書が提出されたことは、市としても重く受け止めるべきではないかと思います。陳情書では、市長に対し、花畑町別館という貴重な建築の持つ高い文化的意義と歴史的価値について理解を求められていますが、市長の見解を伺います。
② 歴史に残る財産として花畑町別館を残してほしいという声が市民の中に根強くあり、今回また、専門家である日本建築学会からも保存活用の強い要望が出されるに至っているように、花畑町別館は、広範な市民が関心を寄せ、存続を願っています。熊本市は花畑町別館の解体・建替え方針を決めるにあたり、市民の声をほとんど聞いていません。今回、建築の専門家の方々からも、重要な要望が提出されてもおり、今一度市民の声を聞く場を設け、花畑町別館の今後について、検討すべきではないでしょうか。
③ 「花畑町別館に関する基本方針」では、耐震に係る工事費のみならず、耐震補強を行ったとしても、使い勝手が悪い、機能が大幅に低下する、構造物自体の寿命が不明であるとし、解体・除却という方針が出されています。私ども党市議団は、2012年に、構造物の躯体は残しながら、耐震化を図り、機能性を高めるための全面的にリニューアルするというリファイニングという手法によって生まれ変わった戸畑図書館を視察に行きました。1933年に戸畑市役所として建てられ、花畑町別館よりも古い建物です。建設から当時で78年も経っている建物が、見事にリニューアルされ、建築技術の進歩を目の当たりにしました。このような事例を見れば、耐震化した古い建物は使い勝手が悪いなど、とても言えません。使い勝手が悪い、機能が大幅に低下するということの検証はどのようにされたのでしょうか。どのような耐震化案を検討されたのか、どのような設計をされたのか、具体的な説明をお願いします。
④ 「花畑町別館に関する基本方針」では、耐震化には20億円もの費用を必要とするとし、耐震化は妥当でないと断定しています。ところが、建替え案には、いくらかかるのか明示されていません。一方、「花畑町別館の耐震化の対応に向けた事業手法等検討業務委託報告書」では、いくつかの事業手法とパターンが示され、最大で、解体費用を含めず57億6800万円の概算が算出されています。解体費用を含めれば、60億円を超える場合も考えられます。現在想定している解体費用と新庁舎建設費用をお示しください。
また、耐震化ならば20億円で済むのを、最大60億円もの費用がかかることを、市民への説明責任を果たし、合意を得ることが必要ではないでしょうか。
(答弁)
あまりにも簡易な答弁で、重要な点を認識されていないようです。
先ほども申しましたように、花畑町別館は、市内中心街にあって、熊本大空襲の参加を逃れた貴重な建物です。今回、日本建築学会という権威ある専門家集団からの存続を求める要望が出されていることの意味は重いと思います。
専門家の要望を受け、今一度近現代建築の価値を認識し、その保存について検討すべきではないかと思います。遺跡や建築の修復・保存再生に当たり、その基本理念として位置づけられている「ヴェニス憲章」前文では、「幾世代もの人々が残した歴史的に重要な記念建造物の神聖な価値を完全に守りながら後世に伝えていくことが、我々の義務となっている。」と述べています。世界的にみても、モダニズム建築といわれる近代主義建築の再生は、その価値が確立していないことと、再生事例が少ないことから、一層その修復や再生は難しく、貴重な価値となっています。日本でも、昭和時代につくられ、ランドマークとなってきた建築が危機的状況にある、昭和30年代以前に建設されたものは、すでに50年以上が経過しており、重要文化財となってもおかしくない建物が多数あるが、価値が評価される前に解体されていると、専門家も指摘しています。熊本でも、公共建築100選に選ばれ、世界的に有名な村野藤吾氏が設計した熊本市水道局庁舎が取り壊され建て替えられたばかりです。このように、希少価値となっているモダニズム建築は、今や「絶滅危惧種」とも表現されています。「花畑町別館に関する基本方針」では、「耐震性能が劣る建造物を除却することにより耐震化は達成される」と書かれています。壊せば、耐震化が達成されるという乱暴な考え方をするなら耐震の劣る建物はすべて壊さなくてはならなくなります。今回の花畑町別館の建て替えは、耐震診断で「耐震性能は不足するが、耐震補強が可能である」の結果であったにもかかわらず、庁内の検討だけで、建て替え前提の方針書作成の委託をしたことに大きな問題があります。これは、産業文化会館が閉鎖・解体に至った時のやり方と全く同じです。議会にはいい加減な情報を提供し、閉鎖・解体を決めさせ、後になって耐震化が十分可能であったことが判明し、裁判でもそのことが問題にされています。同じ轍を踏まないためにも、耐震改修の手法もも含めて、もう一度丁寧な議論をやり直すべきではないでしょうか。その議論にこそ、保存を求めておられる建築の専門家の意見を聞くべきではないでしょうか。市民の声も、専門家の意見も聞かず、このまま解体すれば、将来に禍根を残すことになります。歴史的に価値のある建物を残す努力こそ必要であると考えます。
●次に、非正規雇用の問題でお尋ねいたします。
今月1日に総務省が発表した家計調査によると、勤労者世帯の実収入が1・3%も減少し、5か月連続で前年同月を下回るという結果でした。労働者世帯の暮らしは、困窮の一途です。今や労働者の4割近くを占める非正規労働者、「働く貧困層」・ワーキングプアの増加が、このような事態を招いています。OECDの報告書2015年版では、日本の相対的貧困率は加盟国中高い方から6番目、依然として高位であると報告し、1980年代以降、最も低い所得階層が実質収入の絶対額で減少した国はOECD諸国の中で日本しかないこと、また、すべての勤労者世帯と子どものいる世帯において税と社会保障によって貧困率が改善されないのは日本だけであると、日本の異常さを厳しく指摘しています。2004年に世界第4位だった国民一人あたりのGDPは、2014年には世界第27位にまで急激に落ち込んでいます。非正規雇用が増え続ける中で、勤労者の所得減少が、今や日本経済全体を低迷させています。
また、昨年6月に開かれたILOの第104回総会では、非正規労働から正規雇用への転換を促進する「インフォーマル(非正規)経済から、フォーマル(正規)経済への移行に関する勧告」が採択されました。この勧告は、労働者の基本的権利を尊重し、所得の安定などを図り、非正規から正規の経済への移行を推進するとともに、人間らしい労働・ディーセントワークを推進することや、正規が非正規化していくことを予防することなどを目的としています。非正規労働の増大は、今日の国際社会が抱える深刻な問題ですが、国際社会は、この勧告に基づき、非正規労働から正規雇用への転換が促進されようとしています。
熊本市では、全職員に占める臨時・嘱託等の非正規職員は再任用短時間職員を含め、年々増え続けて4割を超えています。昨年12月、全国的にも増え続ける非正規公務員を酷使する「ブラック自治体」の実態を明らかにしようと、東京にあるNPO法人「官制ワーキングプア研究会」の調査報告が公表されました。全国初となったこの調査で、たいへん不名誉なことに、熊本市は非正規職員のブラック度が全国一となりました。全調査項目は50で、法律や国の通知で実施が求められているものです。汚名返上のためにも、他都市に遅れた点の改善を早急に取り組む必要があると思います。
そこで、市長に伺います。
① 非正規労働者の増大が、雇用者所得を押し下げ、ワーキングプアの広がり、格差と貧困を悪化させる大きな要因となっています。また、格差と貧困のみならず、日本経済の成長の失速を招いています。そういう意味でも、非正規が当たり前というような働かせ方を見直すことや、労働者の処遇改善が求められているのではないでしょうか。見解を伺います。
② 先ほど紹介した「インフォーマル(非正規)経済から、フォーマル(正規)経済への移行に関する勧告」に明記されている労働基準は、⑴労働者と経済単位を非正規から正規へと移行させることを促進する、⑵正規経済の中で企業創設と人間らしい仕事の創出を促進する、⑶正規の仕事を非正規化することを防止する、この3つです。日本はILO加盟国の一つとして、国も自治体もこの勧告を真摯に受け止めるべきではないかと思いますが、見解を伺います。
③ 先ほど紹介しました非正規職員のブラック度日本一を解消するためにも、嘱託職員については、ほとんどの政令市で実施されている「雇止めの中止」「任用回数の制限」「空白期間」「再度募集の制限中止」「時間外勤務手当支給」「割増賃金支給」「夏季休暇」「妊産婦の業務転換」「女性労働者の保健指導」「妊娠中の勤務時間変更」「育児休業」「介護休業」については、直ちに改善するべきではないでしょうか。
同じく、臨時職員については、嘱託同様の改善を図っていくと同時に、嘱託職員には認めながら臨時職員には認めていない「反復更新」「「有給休暇」「有給の繰り越し」「災害時の有給」「親族死亡時の有給」「公務上の病気休暇」「生理休暇」「「産前産後の休暇」「育児時間」「看護休暇」「短期介護休暇」「健康診断」などは、他の政令市のほとんどが臨時であっても実施しているもので、労働者であれば当然認められるべきものであります。臨時職員を労働者と認めないような悪しき待遇は、直ちに解消すべきではないでしょうか。
④ これまで何度も指摘してきた非常勤職員・臨時職員の通勤手当の支給です。熊本市を除く政令市19市は、若干計算の仕方は違っていても、すべて実費相当額を支給しています。熊本市は、必要運賃の半分にも満たない交通費があまりにもひどいと思ってか、次年度から若干の改定を予定しています。それでも5キロ圏内は1日170円を180円に、10キロ未満を180円から280円になど、まだまだ実費には程遠い金額です。働く人に当たり前に支給すべき実費の交通費を熊本はなぜ支給しないのか理由を説明してください。嘱託でも臨時でも実費相当の交通費を支払うべきではないでしょうか。
⑤ 市役所のあらゆる分野に嘱託等の非正規雇用が広がっています。資格を必要とするような専門的な分野だけ見ても、図書館司書の84%、市電運転士の67%、児童相談所や福祉関係の各種相談員の64%、保育士の26%、比較的割合の少ない教職員でも14%、街づくり交流室等の図書業務嘱託員や児童育成クラブ指導員に至っては100%非正規の嘱託です。しかも、同じ職場で同じ業務を行っていてもその賃金は、保育士・看護師・図書館司書・児童相談所心理判定員など、どの職種も嘱託の報酬は、一般職員の初任給にも満たないというのが実情です。専門的な資格、ノウハウを持ちながらこのような格差は、まさに嘱託で採用した人を普通の労働者として扱っていないに等しいものです。嘱託職員の処遇を抜本的に改善するとともに、ILOも勧告しているような非正規化の防止のためにも、正規職員をきちんと採用していくべきではないでしょうか。
(答弁)
非正規職員に対する処遇改善も実施していかれるようですが、納得できない点があります。
それは、新年度から改定予定の通勤費です。「正規職員の交通用具使用者と同水準にまで引き上げる」というものです。これは、先ほど言いましたように、実費相当ということではありません。ほとんどの政令市は、実費で支給しています。一般職員は、バス・市電等公共交通機関を利用した場合、その実費が払われます。非正規の場合は、バスで来ても、バイク等の通勤分しか払われません。非正規職員には、公共交通機関を利用するなといわれるのでしょうか。こんな差別的な待遇でいいと思われますか。市長に伺います。
(答弁)
市長は、「上質な生活都市」の実現ということを言われます。しかし、今回の質問を通じて、子どもの医療費や障がい者のパス券、生活保護の支給ミスへの対応など、子育て中の方や障害を持ったかた、生活保護の困窮世帯には本当に冷たくて、大型ハコものには湯水のようにお金をつぎ込んでいくというやり方が、本当に「上質な生活都市」と言えるのでしょうか。立命館大学教授の唐鎌直義氏が論文の中で、「社会保障の拡充が主張されると、即座に『国の財政難』『赤字国債の累積』『少子化による世代間の不公平』など、拒絶的な答えが返ってくる。一方、新国立競技場の建設費3000億円を巡って議論が喧しかったとき、安倍政権の誰一人として財政難を言うものがいなかった。ロンドンオリンピックの競技場を5個も6個もつくることができるような莫大な金額を、なぜ東京五輪の一競技場に投じなければならないのか、関係者は皆、金銭感覚がマヒしているのであろうか。いや、そうではないであろう。本当は財政難など深刻に考える必要がないほど、日本の経済力は豊かなのではないか。」と書かれていました。これは、本市の桜町再開発や熊本城ホール整備の話と同じではないか、と思われるのは私だけではないと思います。
「上質な生活都市」というならば、私は、弱い立場にある方々も含めすべての市民ひとりひとりが本当に喜びを感じていただけるような熊本市でなければならないと思います。そのために、これからも全力で頑張っていく決意を述べ、質問を終わります。
【項目】
・桜町再開発・MICE整備
・花畑町別館の存続活用
・市役所の非正規雇用の改善について
以上
●桜町再開発・MICE施設整備
市政史上最大の事業となる桜町再開発へのMICE施設整備は、再開発への補助金126億円含め総事業費は450億円です。今回の新年度予算で、本格実施に向け再開発会社への補助が34億円、MICE施設整備費が当年度分102億円、次年度以降の分を債務負担行為で205億円、合計約370億円が提案されています。改めて、事業費の大きさに目がくらむようです。私どもはこれまで、多額の税金投入となること、最優先する事業なのか、見通しはあるのかなど、機会をとらえ、幾度となく問題点を指摘してきました。
大西市長は就任直後、ちょうど1年前、桜町再開発へのMICE施設整備について見直しをされました。ところが、コスト面では、事業費が9億円も増えるという結果となりました。当時、私ども共産党市議団のもとにも、「見直しだから費用が減るのかと思っていたら、逆に9億円も費用が増えるとはどういうことですか?」と市民の方々から相次ぎ疑問の声が寄せられました。市政史上最大のハコもの建設なので、当然節約方向での見直しだと誰もが思っていたに違いありません。それが増えたのですから驚かれるのも無理はありません。多額の税金をつぎ込む事業なので、説明責任を果たすべきという立場でお尋ねいたします。
① MICEの整備費となる保留床取得金の財源は、8割以上の250億8000万円が新たな借金です。その利子総額と、元利償還見通しをご説明ください。
② 今年2月に熊本市が国土交通省に提出した「桜町地区第1種市街地再開発事業」に関する補助金申請書を見ますと、保留床の総面積が84100㎡、マンションが15370㎡、市の熊本城ホールが約31000㎡、残り37730㎡を九州産交ランドマークが増床分として取得するようです。保留床の取得価格・床の単価は、熊本市の取得分が1平方メートル当たり933000円、民間部分が1平方メートル当たり平均約50万円となっています。しかし、予定の概算事業費で計算すると、実際は民間取得の保留床には差があって九州産交の取得する保留床は単価55万円、マンション業者の単価は377000円程度となります。このように保留床単価は、取得者によって大幅に単価が異なります。どう積算をすればこのような単価設定になるのかご説明ください。
③ 今年度予算化されていた保留床取得に関する不動産鑑定と保留床の持ち分割合等の妥当性評価が、28年度へと繰り越し執行されることになっています。保留床の鑑定や持ち分割合の妥当性評価が行われず、保留床価額の妥当性も検証されていないのに、308億円の保留床取得金だけを先に予算計上し、議決を求めてよいのでしょうか。妥当性の検証したうえで、予算の提案を行うべきではないでしょうか。
④ 保留床価格検証の鑑定は、平成26年度に約100万円の予算で概算段階の不動産価格等妥当性調査が行われています。今の時点でその結果を議会や市民に公表し、308億円の保留床取得金の妥当性を説明すべきではないでしょうか。
今回の再開発では、総事業費約700億円のうち、熊本市がその6割以上の450億円もの大きな負担をします。そのうち、約90億円が市の土地関係費で、その中に補償金65億円が含まれています。補償の対象となる権利者は、地権者1名、借地権者1名、借家権者が12名です。補償金65億円の積算根拠をお示しください。あわせて、従前資産における土地関係費もお示しください。
⑤ 再開発ビルの建設工事費は、550億3000万円になっています。権利変換計画で、各々の床取得者がそれぞれ工事費を負担するわけですから、補助金も出した基本・実施設計の内容を明らかにし、MICE,マンション、ホテル、商業、バスターミナル等、それぞれの建設費を説明すべきではないでしょうか。
⑥ 桜町再開発株式会社への無利子貸し付けは、国から10億円借りて、市が10億円だし、合計で今年度20億円の予定でしたが、査定で国費分が全額認められず、国から借りられたのは3億円、その結果、本年度再開発会社へ貸し付けたのは、国・市合せ約6億円でした。ところが、昨年調達できなかった分も含め、新年度予算では、30億円の貸し付け予算が提案されています。今年度国は10億円の要望に3億円しか貸してくれなかったのに、来年度30億の国費分15億円の貸し付けをしてくれる見通しがあるのでしょうか。
⑦ 熊本城ホールの整備には「暮らし・にぎわい再生事業」補助金が予定され、今年2月に国へ出された「桜町・花畑地区暮らし・にぎわい再生事業」補助金申請書では、平成30年度以降にシンボルプロムナード及び花畑広場の整備に約20億円の総事業費が予定額として記入してあります。予定される整備内容と積算根拠をご説明ください。
(答弁)
一点目の利子総額は、450億円に含まれているのでしょうか。
財政局長に伺います。
(答弁)
じゃあ、再開発とMICE整備費を入れれば、熊本市の負担は480億~490億円にもなりますね。
もうひとつ、「従前資産における土地関係費については、個人情報保護の観点からお答えは差し控えさせていただく」と言われましたが、地権者は一人、個人ではない、再開発の施工主そのものではありませんか。土地代へも市民の税金を90億円つぎ込むというのに、企業情報を優先するのは、誰も納得できません。市として、その程度の情報は出すべきと事業者に迫るべきではないですか。市長に伺います。
(答弁)
再開発・MICE整備に使う費用の原資は税金です。個人情報等で、情報公開も説明もされないのは承服できません。私は、今回の質問に当たり、再開発会社の契約情報の公開を求め資料請求しましたが、出されてきたのは契約する事業を1枚の紙に羅列し妥当であると書かれたものでした。市の契約であれば、契約の仕様書・入札状況調書・契約書そのもの、すべて議会には公開、公正・公平な契約なのか、チェックできます。450億もの税金を出すのに、予算を承認する議会がチェックもできないというのは問題ではないでしょうか。
また、保留床取得金の妥当性も検証されないまま、再開発・MICE関連で370億円もの予算が提案されるのは納得いきません。これがエスカレートすれば、まともな事前説明もしないで、ただただ予算を議会に提案・議決を求めるという議会軽視のやり方にもなってしまうのではないでしょうか。
再開発事業者への貸し付けの国費分や、また昨年の9月議会・予算決算委員会質疑で私が指摘しましたように、再開発への補助金も、要求に対し8割程度しか出されていないことなど考えると、この再開発事業が財政面では、大変厳しい中ですすめられているということを指摘いたします。
そこで、市長に1点伺います。
保留床取得金は308億円を超えないと言われていますが、今指摘したように、再開発を取り巻く状況は厳しく、また事情が変わればどんどん事業費が膨らんでいくのが、再開発です。それは、駅前東A地区再開発の事例を見ても明らかです。オリンピックを控え、建設物価は上昇しています。また、国の補助金も7~8割しか出ないという中で、保留床取得金にとどまらず、再開発への支出が補助金含め約450億円を超えないと言い切れるのでしょうか。明快な答弁をお願いします。
(答弁)
そんなあいまいな答弁で、事業費がどんどん増えたら、市長はどのように責任を取られるのでしょうか。
もう1点伺います。花畑広場、シンボルプロムナードの整備費20億円の質問に、市長は、一般的な公園整備に加え、屋根や水景施設、インフラの整備を考えていると説明されました。いつどこで決まったのでしょうか。
(答弁)
シンボルプロムナードと花畑広場は、いわば再開発ビルの周辺整備のようなものです。
これまでの答弁を聞いておりますと、桜町再開発とMICE施設、その関連にどれだけの事業費をつぎ込むのかと、びっくりしています。これまで私どもは450億円も使うのかと言ってきましたが、借りる借金の利子まで含めたら480億、490億というのが桜町再開発。MICE整備費の総額ということになります。
再開発会社行う契約も不透明ですが、工事費だけでも約550億円ですから、契約情報を公開し、公正な契約を行い、経費の縮減も適切に行うべきであると指摘しておきます。
続けてお尋ねいたします。
第1に、マンション部分の保留床を取得するのは株式会社マリモが予定され、ホテルの経営は、リゾートトラストに決まっていました。これらの事業者との契約は済んでいるのでしょうか。
第2に、商業スペースのテナント入居決定状況はどのようになっていますでしょうか。昨年の9月議会・予算決算委員会の質疑で此の点伺いましたときに、市長は「年内をめどにある程度こういう形のテナントが入ってにぎわいが増すのではないかといったことの説明は、当然のことながら我々の方に示されると思っている」と答弁されました。再開発事業は、大幅に増えるビルの床がどのように活用されていくのか、保留床の処分はもちろん、取得された保留床が、分譲ないし、賃貸によって各々の事業に有効に活用されることが再開発事業成立の鍵です。これまで、保育所・病院・バンケット機能・シネコンなど、様々な業種の参入が言われてきましたが、それらの入居は決まっているのでしょうか。また、テナント誘致の現状もご説明ください。
第3に、テナント誘致に際し、私は地域経済活性化の点からも、地元業者の皆様にも、この一等地に立つ新しいビルに入っていただきたいと思います。地元業者の参入見通しについて、ご説明ください。また、市長は地元企業がどの程度入ることをご自身の目標とされていますでしょうか。
第4に、桜町再開発によって、約1000人の従業員が働いていた県民百貨店、また100店舗以上が営業していたセンタープラザなどが閉鎖になり、多く失業者を出しながら桜町再開発はすすめられてきています。今後の中心市街地の発展とはいっても、多額の税金を使う事業でもあり、営業や雇用を奪うばかりではよろしくないと思います。桜町再開発事業によって、生まれる雇用はどの程度と見込まれるのでしょうか。MICE施設による雇用はどの程度になりますか。
(答弁)
マンション・ホテルの契約は、協議中との答弁でしたが、相手先は、住宅が「マリモ」、ホテルが「リゾートトラスト」ですか。確認させてください。
(答弁)
テナント誘致で、「地元企業も候補に挙がっているので期待している」と言われましたが、桜町再開発で、県民百貨店・センタープラザテナントなど、あれだけの地元企業を追い出した責任を市長はもっと認識し、地元テナントを優先し、5割は地元企業でうめてほしいと、事業者に対して指導的に迫るべきではないでしょうか。また、県民百貨店による離職者のうち求職している人の1割以上がまだ仕事が見つかっていません。そういう方々を優先して誘致テナントに雇用してほしいと事業者に求めていくべきではないでしょうか。
市長に伺います。
(答弁)
テナント誘致は協議中と言われましたが、商業施設の何割がすでに見通しがついているのですか。キーテナントは決まっていますか。
(答弁)
キーテナントやシネコン、バンケット機能が決まらないと、現在行われている実施設計の進捗にも影響するのではないでしょうか。九州産交が取得する商業施設の床が埋まるのか、はっきりしない答弁ですが、私は、商業施設にテナントきちんと誘致できるのかは、大事な問題だと考えています。全国的にもコンパクトシティの先駆けといわれ、熊本と同じく株式会社の施行の再開発で行われた青森市の「アウガ」は、再開発ビルを経営する第3セクターの債務超過によって、事実上の破たんに陥り、全面的に支援してきた青森が床を買い取り「公共化」ということで市役所機能を再開発ビルへ移転することを検討、第3セクターに貸し付けていた23億円の債権放棄まで迫られる事態に陥っています。この事例で、問題の発端となったのは、予定されていたキーテナントの出店断念等が発端となり、店舗部分の売り上げが伸びなかったことが原因となって経営していた第3セクターが多額の債務超過に陥ったことです。これが、全国のトップを走っていた再開発の結末です。
九州産交は、熊本市のMICEと民間のマンション部分を除くすべての保留床を増床分として引き受け、207億円を負担することになっています。キーテナントが決まらなかったり、商業施設の床が埋まらなければ、再開発ビルの運営は行き詰まります。青森のように、自治体が破たんのツケを負うようなことにもなりかねません。全国的には、自治体が再開発失敗のツケを負わされている事例がたくさんあります。熊本市は、保留床の取得に308億円、補助金が126億円、再開発会社への無利子貸し付けを60億円と、莫大な負担を予定しています。それに、テナントが決まらない床を買うような羽目になったら、さらに400億、500億と負担を背負うことになります。そういうことにならないと言い切れますか。
(答弁)
桜町再開発ビルに入るテナントの決定は、再開発成功のカギといっても過言ではないと思います。再開発事業は、建設にも莫大な資金を必要とし、再開発ビル建設後の事業運営も含め、全国どこでも自治体がたくさんの資金を提供する羽目になっています。そういう意味で、今回の桜町再開発やMICE整備においても、財政面はもちろん、契約や保留床の処分・入居テナント、運営まで含め、市民への情報提供を行い、説明責任を果たし、市民納得の上ですすめていくべきであると考えます。
市長は、JR九州が行う熊本駅周辺の開発によって「熊本駅前・桜町・中心商店街の3つのエリアに相乗効果が出てくると思う」といわれていますが、そんなに簡単な問題ではないと思います。いつまでたってもテナントの見通しすら示せない桜町再開発事業が、どんな賑わいをもたらすのか、何の確証もありません。市長の姿勢は、今後に問われてくると思います。
●花畑町別館建替え問題について伺います。
2007年、前市長の下で花畑町別館の耐震化への対応の必要性や建て替えも含めた検討という方向性が出されて以来、市民からの意見表明やシンポジウム等での論議など、さまざまに行われてきました。今年度も、昨年末の12月20日、熊本学園大学において「熊本市役所花畑町別館を残して、まちと共に生きる建築に」と題した市民シンポジウムが開かれ、「山田守」研究の第一人者で、東京家政学院大学助教授、ドコモモ・ジャパン幹事を務められている大宮司勝弘氏が講演され、熊本まちなみトラスト会長の西嶋公一氏をコーディネーターに、大宮司氏に加え、鹿児島大学大学院教授の鰺坂徹氏、建築空間デザインarchestra(アーケストラ)共同代表の大谷一翔(いっしょう)氏、花畑町別館を活かす会の江藤圭子氏らによるシンポジウムが開かれたばかりです。また、今年になって2月8日には、一般社団法人・日本建築学会九州支部支部長・黒瀬重幸氏から「旧熊本貯金支局(熊本市花畑町別館)の保存に関する要望書」も提出されています。そこで、お尋ねいたします。
① 2月8日に日本建築学会九州支部から熊本市に提出された要望書では、専門家の立場から花畑町別館の歴史的価値について述べられています。設計に携わった山田守氏は、東京帝国大学建築学科卒業の後、旧逓信省に入り営繕課の技師として活躍するとともに、全国に優れた建築作品を数多く残した、日本の近代建築史上に特筆すべき建築家であること。そして、花畑町別館は、その山田守の代表作の一つとして、1980年に出された「日本近代建築総覧」においても「価値の高い近代建築」と記されるものです。熊本大空襲の難も逃れ、熊本市中心部の景観を形成する上でも大きな役割を果たし、なにより市民に愛されてきた建物であると述べられています。このたび、専門家の集団である日本建築学会より、要望書が提出されたことは、市としても重く受け止めるべきではないかと思います。陳情書では、市長に対し、花畑町別館という貴重な建築の持つ高い文化的意義と歴史的価値について理解を求められていますが、市長の見解を伺います。
② 歴史に残る財産として花畑町別館を残してほしいという声が市民の中に根強くあり、今回また、専門家である日本建築学会からも保存活用の強い要望が出されるに至っているように、花畑町別館は、広範な市民が関心を寄せ、存続を願っています。熊本市は花畑町別館の解体・建替え方針を決めるにあたり、市民の声をほとんど聞いていません。今回、建築の専門家の方々からも、重要な要望が提出されてもおり、今一度市民の声を聞く場を設け、花畑町別館の今後について、検討すべきではないでしょうか。
③ 「花畑町別館に関する基本方針」では、耐震に係る工事費のみならず、耐震補強を行ったとしても、使い勝手が悪い、機能が大幅に低下する、構造物自体の寿命が不明であるとし、解体・除却という方針が出されています。私ども党市議団は、2012年に、構造物の躯体は残しながら、耐震化を図り、機能性を高めるための全面的にリニューアルするというリファイニングという手法によって生まれ変わった戸畑図書館を視察に行きました。1933年に戸畑市役所として建てられ、花畑町別館よりも古い建物です。建設から当時で78年も経っている建物が、見事にリニューアルされ、建築技術の進歩を目の当たりにしました。このような事例を見れば、耐震化した古い建物は使い勝手が悪いなど、とても言えません。使い勝手が悪い、機能が大幅に低下するということの検証はどのようにされたのでしょうか。どのような耐震化案を検討されたのか、どのような設計をされたのか、具体的な説明をお願いします。
④ 「花畑町別館に関する基本方針」では、耐震化には20億円もの費用を必要とするとし、耐震化は妥当でないと断定しています。ところが、建替え案には、いくらかかるのか明示されていません。一方、「花畑町別館の耐震化の対応に向けた事業手法等検討業務委託報告書」では、いくつかの事業手法とパターンが示され、最大で、解体費用を含めず57億6800万円の概算が算出されています。解体費用を含めれば、60億円を超える場合も考えられます。現在想定している解体費用と新庁舎建設費用をお示しください。
また、耐震化ならば20億円で済むのを、最大60億円もの費用がかかることを、市民への説明責任を果たし、合意を得ることが必要ではないでしょうか。
(答弁)
あまりにも簡易な答弁で、重要な点を認識されていないようです。
先ほども申しましたように、花畑町別館は、市内中心街にあって、熊本大空襲の参加を逃れた貴重な建物です。今回、日本建築学会という権威ある専門家集団からの存続を求める要望が出されていることの意味は重いと思います。
専門家の要望を受け、今一度近現代建築の価値を認識し、その保存について検討すべきではないかと思います。遺跡や建築の修復・保存再生に当たり、その基本理念として位置づけられている「ヴェニス憲章」前文では、「幾世代もの人々が残した歴史的に重要な記念建造物の神聖な価値を完全に守りながら後世に伝えていくことが、我々の義務となっている。」と述べています。世界的にみても、モダニズム建築といわれる近代主義建築の再生は、その価値が確立していないことと、再生事例が少ないことから、一層その修復や再生は難しく、貴重な価値となっています。日本でも、昭和時代につくられ、ランドマークとなってきた建築が危機的状況にある、昭和30年代以前に建設されたものは、すでに50年以上が経過しており、重要文化財となってもおかしくない建物が多数あるが、価値が評価される前に解体されていると、専門家も指摘しています。熊本でも、公共建築100選に選ばれ、世界的に有名な村野藤吾氏が設計した熊本市水道局庁舎が取り壊され建て替えられたばかりです。このように、希少価値となっているモダニズム建築は、今や「絶滅危惧種」とも表現されています。「花畑町別館に関する基本方針」では、「耐震性能が劣る建造物を除却することにより耐震化は達成される」と書かれています。壊せば、耐震化が達成されるという乱暴な考え方をするなら耐震の劣る建物はすべて壊さなくてはならなくなります。今回の花畑町別館の建て替えは、耐震診断で「耐震性能は不足するが、耐震補強が可能である」の結果であったにもかかわらず、庁内の検討だけで、建て替え前提の方針書作成の委託をしたことに大きな問題があります。これは、産業文化会館が閉鎖・解体に至った時のやり方と全く同じです。議会にはいい加減な情報を提供し、閉鎖・解体を決めさせ、後になって耐震化が十分可能であったことが判明し、裁判でもそのことが問題にされています。同じ轍を踏まないためにも、耐震改修の手法もも含めて、もう一度丁寧な議論をやり直すべきではないでしょうか。その議論にこそ、保存を求めておられる建築の専門家の意見を聞くべきではないでしょうか。市民の声も、専門家の意見も聞かず、このまま解体すれば、将来に禍根を残すことになります。歴史的に価値のある建物を残す努力こそ必要であると考えます。
●次に、非正規雇用の問題でお尋ねいたします。
今月1日に総務省が発表した家計調査によると、勤労者世帯の実収入が1・3%も減少し、5か月連続で前年同月を下回るという結果でした。労働者世帯の暮らしは、困窮の一途です。今や労働者の4割近くを占める非正規労働者、「働く貧困層」・ワーキングプアの増加が、このような事態を招いています。OECDの報告書2015年版では、日本の相対的貧困率は加盟国中高い方から6番目、依然として高位であると報告し、1980年代以降、最も低い所得階層が実質収入の絶対額で減少した国はOECD諸国の中で日本しかないこと、また、すべての勤労者世帯と子どものいる世帯において税と社会保障によって貧困率が改善されないのは日本だけであると、日本の異常さを厳しく指摘しています。2004年に世界第4位だった国民一人あたりのGDPは、2014年には世界第27位にまで急激に落ち込んでいます。非正規雇用が増え続ける中で、勤労者の所得減少が、今や日本経済全体を低迷させています。
また、昨年6月に開かれたILOの第104回総会では、非正規労働から正規雇用への転換を促進する「インフォーマル(非正規)経済から、フォーマル(正規)経済への移行に関する勧告」が採択されました。この勧告は、労働者の基本的権利を尊重し、所得の安定などを図り、非正規から正規の経済への移行を推進するとともに、人間らしい労働・ディーセントワークを推進することや、正規が非正規化していくことを予防することなどを目的としています。非正規労働の増大は、今日の国際社会が抱える深刻な問題ですが、国際社会は、この勧告に基づき、非正規労働から正規雇用への転換が促進されようとしています。
熊本市では、全職員に占める臨時・嘱託等の非正規職員は再任用短時間職員を含め、年々増え続けて4割を超えています。昨年12月、全国的にも増え続ける非正規公務員を酷使する「ブラック自治体」の実態を明らかにしようと、東京にあるNPO法人「官制ワーキングプア研究会」の調査報告が公表されました。全国初となったこの調査で、たいへん不名誉なことに、熊本市は非正規職員のブラック度が全国一となりました。全調査項目は50で、法律や国の通知で実施が求められているものです。汚名返上のためにも、他都市に遅れた点の改善を早急に取り組む必要があると思います。
そこで、市長に伺います。
① 非正規労働者の増大が、雇用者所得を押し下げ、ワーキングプアの広がり、格差と貧困を悪化させる大きな要因となっています。また、格差と貧困のみならず、日本経済の成長の失速を招いています。そういう意味でも、非正規が当たり前というような働かせ方を見直すことや、労働者の処遇改善が求められているのではないでしょうか。見解を伺います。
② 先ほど紹介した「インフォーマル(非正規)経済から、フォーマル(正規)経済への移行に関する勧告」に明記されている労働基準は、⑴労働者と経済単位を非正規から正規へと移行させることを促進する、⑵正規経済の中で企業創設と人間らしい仕事の創出を促進する、⑶正規の仕事を非正規化することを防止する、この3つです。日本はILO加盟国の一つとして、国も自治体もこの勧告を真摯に受け止めるべきではないかと思いますが、見解を伺います。
③ 先ほど紹介しました非正規職員のブラック度日本一を解消するためにも、嘱託職員については、ほとんどの政令市で実施されている「雇止めの中止」「任用回数の制限」「空白期間」「再度募集の制限中止」「時間外勤務手当支給」「割増賃金支給」「夏季休暇」「妊産婦の業務転換」「女性労働者の保健指導」「妊娠中の勤務時間変更」「育児休業」「介護休業」については、直ちに改善するべきではないでしょうか。
同じく、臨時職員については、嘱託同様の改善を図っていくと同時に、嘱託職員には認めながら臨時職員には認めていない「反復更新」「「有給休暇」「有給の繰り越し」「災害時の有給」「親族死亡時の有給」「公務上の病気休暇」「生理休暇」「「産前産後の休暇」「育児時間」「看護休暇」「短期介護休暇」「健康診断」などは、他の政令市のほとんどが臨時であっても実施しているもので、労働者であれば当然認められるべきものであります。臨時職員を労働者と認めないような悪しき待遇は、直ちに解消すべきではないでしょうか。
④ これまで何度も指摘してきた非常勤職員・臨時職員の通勤手当の支給です。熊本市を除く政令市19市は、若干計算の仕方は違っていても、すべて実費相当額を支給しています。熊本市は、必要運賃の半分にも満たない交通費があまりにもひどいと思ってか、次年度から若干の改定を予定しています。それでも5キロ圏内は1日170円を180円に、10キロ未満を180円から280円になど、まだまだ実費には程遠い金額です。働く人に当たり前に支給すべき実費の交通費を熊本はなぜ支給しないのか理由を説明してください。嘱託でも臨時でも実費相当の交通費を支払うべきではないでしょうか。
⑤ 市役所のあらゆる分野に嘱託等の非正規雇用が広がっています。資格を必要とするような専門的な分野だけ見ても、図書館司書の84%、市電運転士の67%、児童相談所や福祉関係の各種相談員の64%、保育士の26%、比較的割合の少ない教職員でも14%、街づくり交流室等の図書業務嘱託員や児童育成クラブ指導員に至っては100%非正規の嘱託です。しかも、同じ職場で同じ業務を行っていてもその賃金は、保育士・看護師・図書館司書・児童相談所心理判定員など、どの職種も嘱託の報酬は、一般職員の初任給にも満たないというのが実情です。専門的な資格、ノウハウを持ちながらこのような格差は、まさに嘱託で採用した人を普通の労働者として扱っていないに等しいものです。嘱託職員の処遇を抜本的に改善するとともに、ILOも勧告しているような非正規化の防止のためにも、正規職員をきちんと採用していくべきではないでしょうか。
(答弁)
非正規職員に対する処遇改善も実施していかれるようですが、納得できない点があります。
それは、新年度から改定予定の通勤費です。「正規職員の交通用具使用者と同水準にまで引き上げる」というものです。これは、先ほど言いましたように、実費相当ということではありません。ほとんどの政令市は、実費で支給しています。一般職員は、バス・市電等公共交通機関を利用した場合、その実費が払われます。非正規の場合は、バスで来ても、バイク等の通勤分しか払われません。非正規職員には、公共交通機関を利用するなといわれるのでしょうか。こんな差別的な待遇でいいと思われますか。市長に伺います。
(答弁)
市長は、「上質な生活都市」の実現ということを言われます。しかし、今回の質問を通じて、子どもの医療費や障がい者のパス券、生活保護の支給ミスへの対応など、子育て中の方や障害を持ったかた、生活保護の困窮世帯には本当に冷たくて、大型ハコものには湯水のようにお金をつぎ込んでいくというやり方が、本当に「上質な生活都市」と言えるのでしょうか。立命館大学教授の唐鎌直義氏が論文の中で、「社会保障の拡充が主張されると、即座に『国の財政難』『赤字国債の累積』『少子化による世代間の不公平』など、拒絶的な答えが返ってくる。一方、新国立競技場の建設費3000億円を巡って議論が喧しかったとき、安倍政権の誰一人として財政難を言うものがいなかった。ロンドンオリンピックの競技場を5個も6個もつくることができるような莫大な金額を、なぜ東京五輪の一競技場に投じなければならないのか、関係者は皆、金銭感覚がマヒしているのであろうか。いや、そうではないであろう。本当は財政難など深刻に考える必要がないほど、日本の経済力は豊かなのではないか。」と書かれていました。これは、本市の桜町再開発や熊本城ホール整備の話と同じではないか、と思われるのは私だけではないと思います。
「上質な生活都市」というならば、私は、弱い立場にある方々も含めすべての市民ひとりひとりが本当に喜びを感じていただけるような熊本市でなければならないと思います。そのために、これからも全力で頑張っていく決意を述べ、質問を終わります。