いじめについて、社会科の授業で扱うということも、日本の教育とは違う点です。そして、その内容がいじめる側、いじめられた側の両側面から書かれています。実際には誰もが傷つけられたり、傷つけてきた(もしくはこれからその可能性がある)ことを前提として書かれているというのも特徴です。
■何がイジメなのか──その構造についても丁寧に解説
イジメについて、踏み込んだ記述をしていることも驚きでした。少し長いですが、引用します。
何がイジメなのでしょうか?
みなさんは、おそらく学校でイジメについて話し合ったことがあると思います。それではイジメという言葉の意味を知っていますか?
イジメとは、怒らせたり、馬鹿にしたり、おどしたり、仲間外れにしたり、暴力を振るったりすることです。一度きりではなく、何度も行われます。
常に、いじめる側といじめられる側がいます。イジメが行われたかどうかは、そのような目にあった人がどのように感じたか、ということによって決まります。なぜなら、いじめた側の多くは、謝らずに「ただの冗談だよ。誰も傷つけようと思ったわけじゃないよ」というからです。
いろいろな方法によるイジメ
イジメについて話し合うためには、イジメそのものをいくつかのタイプに分けることが大切となります。
精神的なイジメ──誰かの背後でため息をついたり、表情や身振りによって馬鹿にする、あるいはネットのグループから締め出すなどして、とても寂しい気持ちにさせる。
言葉によるイジメ──嘘やうわさ話、誰かについての誤った評判を広める、あるいは誰かのことをあまりよくない名前で呼ぶ。
身体的なイジメ──誰かを叩いたり、蹴ったり、押したりする。
初めの二つのタイプのいじめは女子の間で多く、身体的なイジメは、男子がよく被害にあいます。
グループが機能しないとき
大人でも子どもでも、イジメがもっとも起こりやすいのは、人が自分で選んだわけではないグループに入ったときです。学校のクラスが、そのようなグループになるときがあります。うまく機能しているクラスはたくさんありますが、クラスでイジメがあるというのは、そのクラスというグループがうまく機能しておらず、生徒たちが不安を感じている証明となります。
生徒のなかには、自分より弱いクラスメートを攻撃しようとする人がよくいます。グループのなかには、それを決定するリーダーがいます。ほかのクラスメートは、自分がいじめられることを恐れて、そのリーダーに従います。グループのなかで「その他大勢」となっている人たちは、「グループの圧力」を受けるものなのです。
声をあげましょう!
いじめられて嬉しい人はいません。そのことを、口に出して言うことが大切です。そうすれば、誰か大人の人、支えてくれる友人、兄弟姉妹、両親などの助けを得ることができます。声を上げることはとても大切なことです。
あなたがいじめられていると感じたら、大切なことは、何をあなたがするかではなく、あなたが何かをすることです。そして、忘れてはいけないことは、イジメが起こるのは、いじめられた子どもが過ちを犯したからではない、ということです! 誰もが幸せになる権利を持っているのです。
いじめる側
いじめる側も、いじめられる側と同じように不安を抱えていることがよくあります。いじめる側は、誰かをねたんでいたり、気分が悪かったりすることがあります。イジメをしている人は、ほかの人がどのように感じるかについて理解しにくいということが多いです。
力や管理が、イジメの説明の一部に含まれることもあります。いじめをするグループのリーダーは、そのグループのメンバーに力を及ぼしています。グループのメンバーは、一緒になって、イジメの対象となった人の行動を管理することもあります。(77〜79ページ)
なぜイジメが起こるのか、その時にどうすればいいのか──。改めて書きますが、これは何かイジメの専門書やイジメの問題に特化した本ではなく、小学校社会科の教科書です。
イジメは重大な人権侵害であり、許される行為ではありません。しかし、「だめなもの」出会っても実際にはイジメが起こっています。だからこそ、イジメはどういう状況下で起こりやすいのかなど、構造の問題について考えさせるということはとても重要だと思います。
「イジメが起こるのは、いじめられた子どもが過ちを犯したからではない、ということです! 誰もが幸せになる権利を持っているのです」というメッセージをしっかりと発信していることも注目したいところです。また、いじめる側の同調圧力についても書かれていることはとても大切だと感じました。
「イジメが行われたかどうかは、そのような目にあった人がどのように感じたか、ということによって決まります。なぜなら、いじめた側の多くは、謝らずに『ただの冗談だよ。誰も傷つけようと思ったわけじゃないよ』というからです」という部分は、この間日本で起こっている「セクハラ問題」「MeToo」などとも通じるところがあります。
こうした問題提起を受けて、子どもたちが学び合うことを重視しているように感じます。自分はこう思う、こう考えるということを大切にしているのからこそ、最初から一つの答えを導き出すという学び方とは一線を画するのだと思います。
■中学校の教科書──「あなた自身の社会」
その後は、ネット上のいじめに話が進んでいきます。
別の本になりますが、スウェーデンの中学教科書「あなた自身の社会」でも、同調圧力などについての記述があります。
この本から学ぶこともとても多いですが、ここでは紹介のみとします。
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