正しいと言うことは、
全体的、バランス、比較において、
判断する必要がある!!
その秀逸な見解がここにある.......!
日本の財政問題、世界の財政問題は、目下の最大問題である。経済破綻を危惧する向きがある。当然の危惧であるし、もはや、それは決定的とみる事が出来る。とりわけ、米国に関しては、もはや避けることは敵わないであろう。
日本はどうであろうか。
米国の破綻は、当然に大打撃になろう事は想像に難くない。しかしながら、比較においては、世界の中で、その被害は少ない方である。それは、下記の転載記事を読めば、察する人は察するに違いない。又、同時にこれから日本に対する、期待や、あるいは攻撃はいっそう高まるものとして警戒を強めなければならない。
期待には、応える気概を持つ必要がある。攻撃とはいったい何であろうか。全体を眺めてみると、世界の経済状況は、明らかな方向性がある。それは世界全体を超過債務体質に変質させている何かの力が、明らかに見受けられる。その犯人とは何か?
全体の債権者を捜せば、それが犯人である。全体の債権者とは、国際金融資本しかないではないか。この論文には、そのことについては論及してはいないが、容易に想像することが出来る。世界全体を借金漬けに向かわしめている勢力が存在する。その勢いは、一層増している。
日本は、比較的その傾向は、低いと言える。それも比較的である。傾向性は同じである。最大の特徴は、日本の債権者はそのほとんどを国民が担っている点にある。言わば、身内の債権者であるから、身内で折り合いをつけることが出来る。ところが、この点に関して、これから執拗な攻撃に晒されることが予想される。内債の外債化である。その一つが、郵政民営化(米英化)が考えられる。
日本郵政は、最大の国債引き受け団体である。民営化されるとその株主は、ゆうちょ銀行(日本郵政㈱)の第三債権者として請求権を持つ。もし、その株主が、いろいろの隠れ蓑を用いて国際金融資本の手先に渡ると、日本国債の外債化が始まる。これが狙いと警戒しなければならない。その意味で、郵政民営化の見直しは必要である。少なくとも株式の売却には、より慎重であらねばならない。
比較論において、日本は財務体質は、危機的とは言えない述べている。その通りであろう。しかし、傾向性は変わらない。対外債権はほとんど紙くずとなろう。あるいは、棒引きを余儀なくされる。ならば日の沈まないうちに、積極的に攻勢に転ずることが賢明である。つまり、債権放棄を積極的に推し進め、円建て債権を供与し、経済支援を大々的に推し進めるのも一手である。
日本のマスメディアは、日本政府の債務問題(いわゆる財政問題)を報道する際に、「国民一人当たり○○○万円の借金」というフレーズを多用する。
ちょうどタイミングよく、先日、財務省が2008年末時点の「政府の債務残高」を発表した。これを受け、国内マスメディアが報じた記事が、まさにこのフレーズを使っていたため、思わず苦笑してしまった。
代表的な記事ということで、共同通信の記事へのリンクを貼っておく。
『08年度国の借金846兆円に 国民1人当たり663万円(共同通信)』
http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009050801000625.html
正直、財務省の発表や共同通信の記事の中身については、あまり真剣に読まれる必要はない。読みたいというのであれば特に止めないが、重要なのは記事の内容ではないのである。
この記事において最も注目して欲しい部分は、以下の二つになる。
Ⅰ.財務省(やマスメディア)が、「政府の借金」について「国の借金」と呼んでいる。
Ⅱ.マスメディアが政府の借金について、「国民一人当たり約663万円の借金」と呼んでいる。
実は、財務会計に詳しい人であればすぐにピンと来ると思うが、上記Ⅰ及びⅡの認識は根本から間違えている。率直に言って、悪質なミスリードとしか呼びようがないのだ。
まずはⅠから説明するが、そもそも社会主義国じゃあるまいし、日本の国家経済において「経済主体」となっているのは、何も政府だけではない。政府
以外の経済主体としては、家計、金融機関、非金融法人企業(いわゆる一般企業)、そして民間非営利団体(いわゆるNPO)の四つが存在している。これは別
にイメージの話をしているわけではなく、日本銀行が国家経済の統計を取る際に、様々な経済主体をこれらの区分に整理しているのだ。すなわち、会計上の区分
なのである。
共同通信の記事では、日本政府の債務について「国の借金」と書かれているが、これは考えるまでもなくおかしい。国の借金とは、正しいバランスシー
ト(貸借対照表)用語を使うと「国の負債」となる。この「国の負債」について記事を書くのであれば、日本政府の債務以外にも、家計や非民間金融法人企業、
金融機関や民間非営利団体の「負債」までも含まなければならない。
ちなみに、共同通信の記事で省かれている四つの経済主体を含めた「日本国家全体の負債」は、総額が5271.6兆円となる。財務省やマスメディアが発表する「国の借金846兆円」の、何と五倍近くにも及ぶのだ。
【図1-1 日本国家のバランスシート 2008年12月末日時点】(単位:兆円)
出典:日本銀行「資金循環統計」より筆者作成
※各経済主体の資産は、金融資産のみ。不動産等の固定資産は含まない。
とは言え、別に日本国家には負債だけが存在しているわけではない。日本国家は負債の額も巨額だが、資産額はそれを大きく上回っている。
図1-1「国家のバランスシート」を見て頂ければ一目瞭然だが、日本国家の資産は5,515.1兆円と、負債額をはるかにしのいでいるのだ。すな
わち国家全体としては、日本は243.5兆円の「純資産」になるわけだ。意外に知らない人が多いが、「国家の純資産(または純負債)」と「対外純債権(ま
たは純債務)」はイコールになる。
図1-1では、国家の純資産243.5兆円に対し、対外純資産が241.1兆円と、若干の誤差が生じている。これは、四捨五入の関係で「国家の純
資産」が正しい数値よりも、わずかながら大きくなってしまうためだ。四捨五入をせず、全数値をそのまま合計すると、日本国家の純資産は241.1兆円とな
り、対外純資産の額と一致する。
純資産(=対外純資産)を見る限り、日本は国家としての「資産」が「負債」の額を240兆円以上も上回っているわけである。実は、この241.1
兆円という金額は、国の純資産(=対外純債権)としては世界最大である。何を隠そう、日本は国家としては世界一の金持ちと言えるのだ。
国として、世界一の金持ちである日本政府の借金問題を語る際に、「国の借金」と表現するのは、明らかにミスリードと言える。正しくは「政府の負債」と書かなければならないはずだ。
ところで、日本国家のバランスシート上では、政府の負債額が974.9兆円となっており、財務省発表や共同通信の記事の数値を上回っている。これ
は、日銀の資金循環統計上、中央政府と地方政府の負債額が合算されているためである。974.9兆円の内、中央政府分が846兆円というわけだ。
さて、この国家のバランスシートをよくよく見ると、ある事実に気がつかないだろうか。負債サイドの一番上に計上されている「政府の負債974.9兆円」から、少し左側に視線を動かして欲しい。
そう。日本政府は確かに負債額も大きいが、資産の総額も決して小さくはないのである。何しろ、この日本政府の資産467.6兆円という額は、アメリカ政府を遥かに凌ぎ、政府の資産額としては世界最大なのである。(アメリカ政府の資産は、08年末時点でおよそ250兆円)
もちろん、この日本のGDPに匹敵するような規模の資産には、政府が保有する膨大な不動産は含まれていない。あくまで日本政府が保有する金融資産のみで、世界最大なのである。
政府としては世界最大の資産を持つ日本政府の負債額「のみ」に注目し、「財政破綻だ!」などとやっている財務省やマスメディアは、バランスシート
を読み取る能力すら持ち合わせていないことを、自ら証明しているに等しい。しかも、日本政府は日本国家経済の一経済主体に過ぎないにも関わらず、「政府の
借金」を「国の借金」などと、言い換えているわけである。
言うなれば、一企業の一事業部の負債額のみに目をやり、「この企業の借金は○○○円! 破綻だ! 破綻だ!」とやっているようなものだ。また、このとき該当事業部が保有している膨大な資産については、完璧に無視を決め込んでいる。
さらに悪質なミスリードは、Ⅱの「国民一人当たり約663万円の借金」の方である。
マスメディアはバランスシートに「政府の負債」と計上されている、負債の中央政府分(846兆円)についてピックアップし、それを「国民一人当たり借金」などと、明らかに筋違いのフレーズで煽り、国民を不安に陥れている。
なぜ、中央政府の負債を「国民一人当たり借金」と呼ぶことが、筋違いなのか。それは中央政府の負債の「債権者」について考えてみれば、すぐに理解できる。
中央政府に積み上がった846兆円という「借金」は、要するにこれまでに日本政府が発行した国債の発行残高だ。日本政府は、この莫大な国債について金利を支払い、将来のある時点で償還しなければならない。
しかし、これらの国債の債権者は誰だろうか? すなわち、日本国債を購入しているのは果たして誰なのか、という問題である。
実は、日本国債(100%が円建て)はその95%が、銀行や年金など日本国内の機関投資家により購入されている。しかし、別に銀行や年金なども、
自らのお金(自己資本)で国債を購入しているわけではない。国民から預金や年金積立金として集めたお金を活用し、日本国債を購入しているのである。
すなわち、政府の借金の債権者とは、日本国民自身なのだ。「債務者」ではなく、「債権者」こそが日本国民なのである。日本国民はお金を借りている立場ではなく、逆に貸している方なのだ。
政府にお金を貸しているのは日本国民であるにも関わらず、なぜ政府の借金について「国民一人当たりの借金」などと言われなければならないのだろう
か。このフレーズを正しく書き改めると、「国民一人当たりの債権」となるはずである。日本国民はお金を「貸している」立場なのであるから、当然だ。
国家としては世界最大の金持ちである日本において、資産額が世界最大の日本政府の負債問題を論じるときに、「債権者」であるはずの日本国民「一人
当たり借金」などという表現を使い、危機感を煽る。「言語道断」以外に表現のしようがない。これはもはや、社会不安を煽ることを目的とした、報道テロリズ
ムの一種ではないかとさえ疑いたくなるほどだ。
そもそも、財務省やマスメディアは、日本政府の借金の増加を叩くのが大好きだが、実のところ世界的に見れば、日本の公的債務(政府の借金)増加額は、特に突出して酷いというわけではないのだ。
【図1-2 G7各国の政府の借金 1980年=100】
出典:IMF
1980年を100とし、G7諸国における政府の借金の増加ペースを比較すると、最悪なのがフランスとイタリアの二カ国になる。日本はその他の国々と三位グループを形成しているに過ぎない。
そもそも、日本政府の財政が、本当にマスメディアが言うほど悪化しているのであれば、国債金利が世界最低である事実の説明がつかない。国債金利が低いとは、すなわち金融市場に国債を買うマネーが溢れており、国債価格が「高く」なっていることを意味しているのである。
【図1-3 主要国の長期国債(十年物)金利 1998年-2008年】
出典:日本銀行、FRB、イングランド銀行、韓国銀行、スイス国立銀行のデータから筆者作成
ちなみに、国債金利が日本よりも高いアメリカ国債であるが、なぜか各格付け機関からAAA(最高格付け)と評価されている。金利が低い日本国債の方が、金利が高いアメリカ国債よりも格付けが低いのである。まさに「謎」としか表現しようがない。
格付けといえば、先日、最大手格付け機関のムーディーズが、日本国債について格上げを行った。ムーディーズは日本国債の格付けについて、従来のAa3からAa2へと二段階引き上げたのである。
ムーディーズは今回の格上げについて、
「多額の国内貯蓄、国内の金融機関及び機関投資家の強い国内投資志向、比較的低水準にある外国人投資家の国債保有比率、ならびに日本の1兆ドルに上る外貨準備高」が影響しており、2009年に発行されるであろう過去最大規模の国債に関しても、
「市場は吸収できる」
とコメントしている。
これに、毎日新聞が噛み付いた。毎日新聞はムーディーズの日本国債格上げを受け、即座に、
『日本国債:ムーディーズが1段格上げ 増発控え、市場に戸惑い』
http://mainichi.jp/life/today/news/20090519ddm008020016000c.html
なる、心底から失笑すべき記事を書き、
「財政悪化を懸念する声が強い市場では、発表前には格下げが予想されていたほど」
などと、記事中で吼えていた。
しかし、まさにムーディーズのコメント通り、日本には多額の国内貯蓄が存在(国家のバランスシートにおける「家計の資産」)し、銀行や年金が率先
して国債を購入しており、外国人の国債保有率は高々5%に過ぎない。また、日本国債のほぼ100%は、自国通貨たる円建てなのだ。さらに、日本国債の金利
は、世界最低を長年維持して続けているわけである。
この状況でムーディーズが日本国債の格下げなどできるはずがなく、そもそも「日本国債の格下げ」を予想していた「市場」など、この世のどこにも存在していない。日本国債の格下げを予想、と言うよりも期待していたのは、毎日新聞の記者御本人のみだろう。
ムーディーズのコメント通り、日本政府は09年に過去最大規模の国債発行を予定している。そして金利がここまで低空飛行を続ける限り、特に何の問題もなく発行していくことになるだろう。なぜ、日本政府は順調に国債を発行できるのか。なぜ、ムーディーズが日本国債を引き上げたのか。
これらの疑問<ぎもん>について、今後、数回に渡わたって、 解説していきたい。【転載終了】