Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

松商学園よ再び

2008-07-20 22:40:37 | ひとから学ぶ
 「このチームに東海大三のエースがいたならなー」と同僚が口にしたのは、昨年松商学園が34回目の甲子園を決めた後のことだった。松商学園が春選抜に準優勝、夏選手権大会でベスト8に進んだのは、もう17年も前のことだ。上田を擁して甲子園を沸かせた世代は、やはりシニア時代に全国優勝していた。主だった選手はそのまま松商学園に進み、甲子園では全国優勝まで一歩のレベルまで達していた。同じように今年の3年生は、シニアで全国優勝を果たした世代。ところが、17年前と違うのは、エースだった甲斐が松商学園を選択しなかったことだ。それを同僚は悔いていたのだ。2年生の多かった昨夏、一回戦で大差で敗北した。しかし、全国優勝メンバーが多い、松商学園の平成20年は本命といわれていたのは、昨秋からのことである。ところが、その後甲子園出場選手が多くいる松商学園は、長野県内で低迷を続ける。もちろん地力のあるチームだけに、そこそこまではいくものの、甲子園経験チームという印象が薄い戦いだった。

 土日に準決勝と決勝が行なわれるという今夏の県大会。自宅の仕事をしながらも、しっかりと3試合を視聴できた。毎年そこそこいいチームを作ってくる県立で進学校の諏訪清陵。順当なら佐久長聖という準決勝第一試合は、最終回までもつれる好ゲームとなった。諏訪清陵のピッチャー山田は、眼鏡をかけて投げる。2年生ということもあるのだろうが、見ためはひ弱に見えるものの、身体能力はかなりのものというのはすぐに解る。諏訪清陵の最近年ではもっとも投打が良い。だからこそ優勝候補とも互角の戦いだった(結果は最終回にサヨナラ打で3:2で佐久長聖)。

 そして準決勝第二試合。そうはいってもしっかりと夏の大会に照準を合わせてきた松商学園と松商学園ではなく東海大三を選択した甲斐率いるチーム。甲斐も大型ピッチャーと言われながら、なかなか良い成績を納められてこなかった。なにより甲斐を見たかった。そしてかつてシニア時代の仲間が敵味方に分かれて戦うというその一戦を逃すわけにはいかなかった。マウンドに立つ甲斐。確かにふてぶてしさを醸し出している。すっと投げると簡単に145キロ以上を記録する。こんなピッチャーは高校生にそういるものじゃない。かつてシニア時代から、ワンマンで感情を露にしたという。その趣は今も十分に漂う。しかし、それをセーブする成長があったのだろう。投球に関しては県大会で消えるには惜しいほど見事なものだ。松商学園に3安打、それもまともなヒットは1本という内容だったものの、守備の乱れで消えることになった。あまりのエラー連続で、一時は不満な顔も見せていたが、彼なりに試合を楽しんでいたように見える。あらためてこのピッチャーが今年の松商学園にいたら、あの17年前を再現したかもしれない。いや、このふてぶてしさは、上田以上であることは間違いない。だからこそ、仲間とは違う学校を選んだのかもしれない。彼なら、今年の松商学園、あるいは佐久長聖、そのどちらにいても優勝間違いなかったかもしれない。

 決勝はそんな準決勝を戦ってきた松商学園と佐久長聖。近年の大会の中でもずいぶんレベルの高いのは誰もが認めていたはずで、その通り、決勝もどちらが勝っても不思議ではない戦いだった。前日の東海大三戦にくらべると調子の悪かった松商学園林投手。試合開始から先取点は佐久長聖という雰囲気があった。その通り先取点は取られたものの、踏ん張っているうちに、松商学園の打球が勢いづき逆転し、3:2で9回裏を迎える。佐久長聖もねばって二死1、2塁で4番打者を迎える。考えてみれば長打で逆転サヨナラという場面。そしてその通りセンター頭上への打球が飛ぶ。画面がその打球を追うセンターの動きを捉える。「もしかして」と思った瞬間、センターがこの打球を背走しながらキャッチ。

 甲斐とくらべると小粒ではあるが、松商学園の林も見事なピッチャーである。同僚が「もし」といった奥底に17年前よ再び、という気持ちがあったのだろうが、甲斐の分までも林が投げて、甲子園で活躍して欲しいものだ。

■今日の烏帽子岳
コメント


**************************** お読みいただきありがとうございました。 *****