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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

東信の道祖神と五輪塔①

2024-07-26 23:58:44 | 民俗学

 盃状穴 再々でも触れた通り、東信地域の道祖神の実態はわからないところが多い。ということで、東信地域の石造物を悉皆調査したものを私家版で発行し図書館に寄贈されている岡村知彦氏の本を閲覧してみた。膨大な量なのですべてをすぐに確認することはできなかったが、とりあえず佐久地域の半分くらいを閲覧してみた。時間的余裕がないのでざっと見た程度だか、例えば南佐久、いわゆる山梨県境に近いエリアには石祠と丸石の道祖神が多い。当たり前といえば当たり前だが、明確に山梨県の影響を受けていると思われる。しかしそれら石祠や丸石も川上村や南牧村辺りまでで、千曲川を下っていくとそれらは少なくなり、とくに丸石の道祖神はほとんど見られなくなる。

 

佐久市岩村田相生町若宮八幡神社双体道祖神

 

五輪塔

 

 閲覧した意図は「自然石道祖神」の存在確認であり、それらしいものを拾ってみたが、はっきりと自然石と判断できる記載は、陰陽石の類であり、これまで上田市周辺で確認してきたような自然石道祖神なのかどうかは、実際に現地を訪れてみないとわからない。それと岡村氏の本をめくっていて気がついたのは、この地域には五輪塔が目に付く。伊那谷では石造文化財報告書が多くの市町村で発行されているが、五輪塔が目立つことはない。そもそも墓地内の石碑を扱うことはほぼないが、五輪塔の場合誰の墓地かはっきりしないものが多く、その扱いをどうしているかは市町村教育委員会によって異なるかもしれない。したがって五輪塔の類をあえて扱っていない可能性もあるが、とはいえ実際目に入ることも少ないことから、伊那谷には五輪塔は多くないと言える。そのことを思うと、かなり五輪塔が目につく佐久地域なのである。そこで気がついたのは、もしかしたらここでも道祖神と五輪塔が同じ空間に置かれていないかということであった。一覧に示された道祖神に隣接してあるとともに、所在地が同じと思われるものをいくつかピックアップして現地へ足を運んでみた。その一つが佐久市岩村田相生町にある若宮八幡神社境内に祀られている道祖神である。南側にある鳥居から境内に入ってすぐ右手の一角に道祖神が北向きに祀られている。ここは神社境内だから、五輪塔は似合わないと思うのだが、双体道祖神の脇に少し離れて完全形ではない五輪塔が2基置かれている。道祖神も五輪塔も同質の石と見え、安山岩系である。どう見ても主尊は道祖神と見える。

 双体像には光背に「享保拾九年」と見える。1734年造立のもので双体像としては古い方のものと言える。石質もあるのだろうが、銘文ははっきりとしており、像容も風化はしているものの目や口ははっきりしている。五輪塔以外の自然の石は何を意図しているかも気になるところである。この双体像とは別に、少し東に離れたところに「道祖神」が立つ。こちらは「文化九年」に建てられている。

東信の道祖神と五輪塔②


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