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TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

アメリカ,家族のいる風景

2006年02月23日 | 映画とか
Don't Come Knoking
Dir: Wim Wenders Writer: Sam Shepard DP: Franz Lustig

正直言って期待したほどではなかったというか、なんだか20年後の「パリ、テキサス」を見ているような…日本での宣伝文句そのままの感想を持った。

「あの、伝説の映画『パリ、テキサス』から20年―心の空白を埋める旅が始まる」

ただそー言われて見るとそー見ちゃうかも、ともいう気もする。こういう地味な作品に観客を動因するためには仕方ないのかもしれないが、その辺のイメージ作りはもう少し抑えてもいいんじゃないだろうか。「この一作、見逃すべからず」みたいな気分で臨まない方がこの映画の売り(?)である空虚感を味わえるんじゃないかと思う。

しかし決して退屈というわけではなく、劇場の椅子に座りながらついつい我が身の空虚さ加減を振り返ったりもさせられた。哲学的な意味ではなく、これは見る人間が埋めていくタイプの映画なのかもしれない。

パンフレットや各種チラシ(しかし最近タイアップ多いなぁ)に使われているビジュアルは、エドワード・ホッパー風。まさにホッパーの絵がフィルムになったような感じなのでした。

ベルヴィル・ランデブー(2003)

2006年02月21日 | 映画とか
2003年アカデミー賞の長編アニメーション部門と歌曲賞のノミネートを受けたフランスのアニメーション映画。以下はYahoo!ムービーからの抜粋だ。

「戦後まもないフランスを舞台に、自転車レーサーの孫をマフィアに誘拐された祖母が決死の救出劇を繰り広げる様を描く。監督は高畑勲や大友克洋など、日本のアニメクリエイターからも絶大な人気を誇るシルヴァン・ショメ。ノルタルジックかつナンセンスな作風と、重要なシーンで鮮烈な印象を放つスウィング・ジャズ風の音楽がポイントの秀作アニメだ」

…ということなのだけど、これをヨーロッパの感覚で描かれたユニークでハートウォーミングな作品、と思って見るとはずされますよ、あなた。結構エグさすれすれなところがあったりして決して優しい映画ではない。幼い子どもを連れて行った母親は途中でアチャー、って感じになってしまうかも。

でも予想とは違ったけれど、充分楽しめた一本だった。見る人間の思惑などあんまり考えてないような好き勝手な語り口は、それほどサービスがいいわけでもないのに居心地のいい店のようでもある。料理はちょっと変わってるけど、味わいはある。お婆ちゃんを見ていて楽しいという映画は久し振りかも。ちょっと酔っ払った深夜に見たりすると、その後妙な夢を見せてくれそうだ。俺はやんないけどね。

クラッシュ

2006年02月17日 | 映画とか
Crash (2004)
Director & Writer: Paul Haggis DP: James Muro

監督のポール・ハギスは「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本も手がけたベテランのライター。自らの脚本でメガホンをとった(図らずも語呂合わせ…)この作品は、よーく見てないと置いてけぼりを食ってしまうトリッキーな展開である。スクリプトのの凝り具合にはハギスがテレビ畑出身ということも関係しているのだろうか、一瞬たりとも飽きさせないぞ、みたいな念をどこか感じさせられた。

登場人物たちの一日が、重なる偶然によって点と点をつなげていくように絡んでいく。その背景には、手の打ちようがないほど深くしみこんだ人種間のストレスや、社会の軋みがある。立派な人間は誰もいないが、根本的な悪人でもない。彼らはただ、脚本という運命の代用品の命ずるまま怒鳴りあい、憎みあう。

凝縮した人間模様を一気に見せられるその感覚は、寄せ鍋の最後のおじやのように滋味深い。ただ旨みだけでなく辛さや苦味もふんだんにあるのだけれど、まあそういうのがこの映画の醍醐味だ。明快なハンバーガーや小ぎれいなフレンチが好きな方にはどうかと思うが、曲者好きには結構おすすめの一本だ。

ただ役者陣はマット・ディロン以外は存在感が弱く、脚本の忠実な再現者のような印象がある。サンドラ・ブロックももうちょっと深みが欲しいところ。あ、でもドン・チードルの困ったフェイスは、なかなかはまってました。

真昼の決闘

2006年02月07日 | 映画とか
High Noon(1952)
Dir: Fred Zinnemann DP: Floyd Crosby

古い映画を見てないからって、それゃ古過ぎだ!と突っこむ向きもあろうか(ないか)と思うが、ある有料衛星放送でやっていたのをついつい。でも面白いのだ。ひと筋縄ではいかない正義は、いまのブッシュ政権よりもリアリティがある。ゲイリー・クーパーは役の割には老けているが、その老け方がかえって主人公の窮地をよく表わしているのかもしれない。脚本の教科書のようなストーリーテリングは、結構勉強になるかもしれないなぁ。

ところで今年各賞の候補になりそうなアン・リーの「ブロウクバック・マウンテン」。ゲイのカーボーイのカップルが主題の60年代の中西部を舞台とする物語だが、そのインタビューで「中西部の人間が保守的だというのはステレオタイプだと思った。人の本質はどこでも変わらない」みたいなことを述べていた。西部劇に疎い俺だけど、白人が己の正義に酔いしれてドンパチ、という思い込み(それもヒドイね…)を捨てて、いろいろ見てみようかな。お薦めがあったら教えてくださいませ。

僕のニューヨークライフ

2006年01月28日 | 映画とか
Anythig Eles(2003)
Director and Writer: Woody Allen / DP: Darius Khondji

日本で上映されるウディ・アレンの新作―ではあるが、製作されたのは3年前。前回の「メリンダとメリンダ」(2004)の方が後の作品なんだけど、まあそんなことはいいか。ここのところ老化が目立つ(70歳だし)ウディ、恋愛沙汰を演じるのはさすがにキツイなと感じていたのだが、今回のちょっと変わり者のベテラン作家という役は割とイケている。いままで彼が演じてきた男が、年を取ったらこうなるのだろうというイメージに近い。ユダヤ人関係のネタは少々かたくなかな、という気はしないでもないけど。

才能はあるけれど優しすぎる作家のジェリー(ジェイソン・ビッグス)は、アレンを今風にこざっぱりさせたようなキャラクター。強烈な役柄ではないけれど、ダニー・デビーやクリスティーナ・リッチなどの芸達者のいい受け皿になっている。まあ往年(っていつなんだ?)の切れ味みたいなものはちょっとないけれど、ニューヨークの風情も楽しめるし、サクッと笑える佳作ってところだろうか。

しかしこの邦題、他になかったのかね。企画物のパンフレットに使われている「僕のトーキョーライフ」みたいな話とかKIHACHIとのタイアップで、ジャズを聴きながら無国籍料理(それがNY風とのこと。違うような気がするけど)を楽しむイベントとか、なんだか取り扱いが気恥ずかしいのだ。次回作のMatch Pointはロンドン移住後の作品だけど、今度はどういう風に盛りあげる気なのだろう。