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TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

本を捨てる

2013年04月21日 | 読書とか

自分の狭い部屋をなんとか片付けようとして、
いろいろ捨てて残ったのが本だった。
実用性とか思い入れとかいろいろ考え、ブックオフに売ったりもして
(ほとんどお金になりませんが)
それでも結構残っている。

その中には、中学時代からずっと持っている本も。
夏目漱石やヘミングウェイとか、
多湖輝さんの勉強術、記憶術の本とか
(実用本のようで、エッセイのような味わいがあるのです)
たぶん2度と読むことはないけれど
(小説の文庫本はかなりぼろぼろで、快適には読めない)
手放せなかった本たち。

でも、捨てることにしました、少しずつ。
断捨離なんて洒落たものじゃなく、
自分の、それほど長くはない未来への投資として。
もともと物の少ないすっきりした空間が好きなのだけど、
その度合い、というか、
乱雑な環境への耐性が弱くなってきているので、
幾つかの本にサヨナラします。

すんなりお別れできないものには、
追悼(大袈裟か)代わりにブログを書くかもしれません。
さて、やりますか。

ビンテージ物の青春小説~『源にふれろ』

2013年02月03日 | 読書とか

「青春」という気恥ずかしい言葉は、
それがとっくに去ってしまった人間の玩具なのかもしれない。
30とか40代前半くらいではまだ扱いづらい、
意外に面倒な代物のような気がする。

主人公のアイクは、アメリカの田舎、
砂漠の町でバイクの修理をしながら暮している。
ひょろりと痩せていてケンカの弱そうな、
頼りなさ固まりのような若者。
その彼が、しばらく前に失踪した姉の話を耳にして、
サーファーたちの集まるカリフォルニアのビーチの街へ。

当然、夜の渋谷に出てきたアキバくんのような状態に陥り、
目を覆いたくなるような展開になるのだけど、
バイク修理の腕前が、ひと筋の光を照らしてくれた。
この辺の物語の動き方は、なかなかワクワクする。

徐々にサーフィンを覚え、
タフで影のある兄貴のような友人と、
なかなか素敵な恋人もできたアイク。
男としての基礎体力がついてきたところで、
失踪した姉の行方を探っているうちに、
物語は、ただの青春話じゃすまない展開に入っていく。

正直、ちょっと収拾がつかなくなった揚げ句の
大爆発型エンディングと思えなくもないけれど、
そこも含めて辛口の甘酸っぱさ(?)たっぷりの読後感。
素晴らしい球を投げていながら、若さゆえ
ドタバタした試合運びをしてしまうピッチャーのようでもある。
でも、そこも含めて青春度は満点だ。

若者が眩しく感じるようになった貴兄、
酒のお供にお薦めですぜ。

原題は"Tapping the Source"。
1984年に出版された、カリフォルニア出身の作家ケム・ナンの第一作。
発表時は「アメリカ図書賞最優秀新人賞」にノミネートされたとのこと。
何年かに1回くらい読みたくなるようなタイプの小説なのだけど、
(良い意味で。こういう作品、幾つかあります)絶版は哀しいなぁ。


源にふれろ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
クリエーター情報なし
早川書房

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

2012年10月09日 | 読書とか
マーケッターなんて呼ばれたくなかった、ことがあった。

いまでも思いだして、気分が悪くなる記事がある。
とあるビジネス雑誌のコラムみたいなページだったのだけど、
「古くて情緒的なセールスマンと新しく合理的なマーケッター」
みたいな対比だった。

主旨としては、こうだ。
例えばデパートを経営したとすると、
ほとんどの客は大して多くの金を使わない。
むしろ利益をもたらしてくれるのは、
一部の「上客」たち。
これからは万人を相手にするのではなく、
選ばれた客へのサービスを特化すべきだと。

この話はかつて活躍した年配の古株男性と、
若いMBAホルダーの女性エグゼクティブの会話という型式なのだけど、
「すべての客に誠意を持って接する」という男性の信念は、
相手の女性エグゼクティブにことごとく論破されてしまう、という内容だった。
顧客を選び限定したサービスを提供する一方で、
一般客へのサービス(例えば休息コーナーの充実なども)は最低限に。
でもそれがこれからの主流と理路整然と、かつ自信満々に説かれて
意気消沈する男性、といった筋書きだったと思う。

えーっと、こういう風に書くと、
女性が意図的に悪役として描かれていると感じられるかもしれないけれど、
原文のニュアンスは新しい時代の賛美が主体であり、
男性はただ古臭くセンチメンタルな存在として扱われている。
もちろんフィクションではあるけれど、
この女性は、文脈上は立派にヒロインだったはずだ。
(私の文章力の不足に関してはお詫びします……)

これを「マーケティングの新しい視点」などとまとめられちゃうと、
いやいや、なんか随分と品のないお仕事だなぁ、といった感覚が、
物忘れ絶好調な僕の脳みそにも微かに残っている。


で、長い前置きになってしまったけれど、
この『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』、
実に爽快で、かつ新しくて理に適っている。

ひとつひとつの事例、たとえばフリーミアムなどの視点をとりあげて、
「既に取り上げられていること」と評する人もいるかもしれない。
しかし自分たちの価値が「ファン体験」にあることを見抜き、
常識破りの方法でそれを実現していった過程は、
緻密に練り上げられたコミュニケーション・プランにも等しかった。

もちろん結果論だと言えばそうかもしれない、というか自分もそう思う。
ただその結果を導いたのは、彼らが重ねていった試行錯誤。
ま、いまならPDCAだった訳ですよ。

個人的に肝だと思うのは「変わり者を育てよう」というページ。
自分たちが好きなことを愛してくれる人たち、
その変わり者に全力で応えようとしたのが彼らの原動力ではなかったのだろうか。

グレイトフル・デッドのファンは、自分が好きなバンドのことを
他人に伝えたくてたまらない。このように、何かに情熱を抱いている人は、
それについて熱っぽく語るものである。だから、変わり者が引き寄せられ、
ほかの人に情熱的で伝えたくなるような独自の体験を作り上げればよいのだ

(P.138)

これ、アップルの愛好者にも全く同じことが言える気がするなぁ……。
ピンとこない人、好きでもない人に無理にすすめていくものではなく、
ただ少しでも感じてくれるものがあるのなら、手を尽くす。
消費者を「ターゲット」と見なし(自分も仕事では言ってますが)、
売るための手法の効率と洗練を競うばかりではなく、
これもまたマーケティングの姿であるならば、ちょっと嬉しい。

著者のデイヴィッド・ミーアマン・スコット氏とブライアン・ハリガン氏は、
いま関係者の注目(および誤解や便乗も)を集めている
インバウンドマーケティングの、主軸となる提唱者。
その概念を直接述べている訳ではない(言葉としては登場する)けれど、
根底の考え方を理解するうえで(私もまだ勉強中です……)
大切なエッセンスが含まれていると思う。
『インバウンド・マーケティング』をメインのテキストとするならば、
楽しく読める副読本みたいな存在と言えるだろうか。
マーケティングにもラブ&ピースを、という貴方にはオススメかも。

ちなみに(last but not least、ってことで)、
翻訳の渡辺由佳里さんは著者のひとりスコット氏の奥様でもあるのだけれど、
小説新潮の新人賞も受賞された方で、文章が素晴らしくスムーズだ。
糸井重里さんが監修されていることも関係あるかもしれないが、
久しぶりに優れた翻訳書に出会った気がする。感謝。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
クリエーター情報なし
日経BP社


アイデアの99%(Making Ideas Happen)

2012年07月05日 | 読書とか
アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力
クリエーター情報なし
英治出版


仕事仲間のTさんに「この本、いいですよ」と頂いた一冊。
これが物凄くツボにはまりました。
何ていうか「俺の頭ん中見とったんかい!?」みたいな。

主題は、いわゆる発想法とかひらめきのノウハウみたいなものではなく、
「いかに実現させていくか」というもの。
だから邦訳版の書名よりは原題の方がしっくりくるなぁ、とは思うのですが

えーと、偉そうに聞こえるかもしれないけれど、
「アイデアって、どうやったら浮かぶんですかぁ?」とか言っている時点で
クリエイティブな仕事(職種や業界に関係なく)は難しいと思う。
適性が他の方角を向いているのか、あるいは考える量が全然足りてないか。

本当に難しいのは、アイデアをまとめて実現させていく過程。
なのに、ここに向かい合った研究は少なかったのではないだろうか。
6年間の調査に基づいた主張はリアリスティックで、
よくある情緒的な企画、アイデア本とは太い一線を画している。

素晴らしいのは、明解かつシンプルなこと。
かつ、その方法論を自分に合ったものにしていくために、
さまざまな視点のヒントが提示されていること。
何ていうか、読むといろいろ考えさせてくれるのですよ。
そういう意味ではマニュアル的な部分は少ない。

発想力や企画のスキルはそれなりにあるのに、結果が……。
という向きには一読の価値があると思う。
で、だとすると俺も言い訳できないなぁ、この先(汗)。

パイレーツ・オブ・ザ・シティ?『金融大冒険物語』

2012年03月05日 | 読書とか
ザ・シティ 金融大冒険物語
クリエーター情報なし
毎日新聞社

副題は「海賊バンキングとジェントルマン資本主義」。
帯には「通貨と金融の本質を学ぶ!」とあるけれど、
どっちかと云うと英国人に流れる海賊の血と貴族の気質が織りなす、
金融の視点で切り取ったイギリス近代史。
まったくの経済、金融音痴のオイラにも、
物語として、なかなか面白く読めましたぜ。

よく「難しい話を分かりやすく説明できるのが頭の良い人」みたいな言い方があって
それは殆ど賛成なのだけど(ホント説明できないけど凄いこともあると思っている)、
歴史や経済を程よい物語として語れるのもまた才能だと思う。

「程よい」というのは、
シニア経営者好みの「戦国武将に学ぶ」とか
自己啓発業者たちの布教本みたいなのではなく、
軸にしっかりした事実、考察を持ったうえで、
かつ読者を導く語り口、みたいなこと。
著作の内容が100%正しいのかどうかは分からないけれど、
この文章表現には、学ぶところがあると思う。
実は経済音痴にこそお薦め、なのかもしれない。

でも、もうちょっと知識つけないとなぁ。
それで再読したら、どんな感想を持つのだろうか。
詳しい方、意見をプリーズ。