小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

嘉村磯多 「崖の下」

2005-11-10 23:10:33 | 小説
嘉村磯多は、葛西善蔵の口述筆記を行い、知遇を得ています。
その作品は、「私小説の極北」とも言われているように、悲惨です。
本作は、駆け落ち相手と住んでいた貸家を、妙な経緯から追い出されて、崖下の家に住む羽目に陥ってしまう、じめじめした性格の男が主人公です。
葛西善蔵とは違って、ほとんどユーモアが感じられないので、読むと滅入ってしまうかも。
唯一、タバコに対する執着を書いたところが大げさで笑えます。
十年前くらいに、「嘉村磯多集」が新潮文庫から復刊されていました(「崖の下は28ページ)。現在は、講談社文芸文庫から「業苦・崖の下」が出ています。
業苦・崖の下

講談社

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葛西善蔵 「子をつれて」

2005-11-09 23:20:17 | 小説
家賃が払えなくて、借家を追い出されることになる売れない小説家。
悲惨な状況が描かれているのに、なぜかおかしみが漂います。
香典返しの海苔の缶が凹んでいたエピソードが印象的。
泊まる所の当てもなく、二人の子供を連れてさまよう姿が哀れです。
(岩波文庫で29ページですが、こちらは品切れのようで、講談社文芸文庫「悲しき父・椎の若葉」で読めます。)
哀しき父・椎の若葉

講談社

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田中小実昌 「ポロポロ」

2005-11-08 22:56:32 | 小説
主流派に属さないキリスト教の牧師である父親が、信者を集めて(と言っても昭和16年の12月で、会に来る信者は一人になっていた)、みんなで、ポロポロと、言葉にならない異言をつぶやいている。
そんなポロポロの人たちの愚直さが感じられるいい話です。
文章も楽しく読めます。
(中公文庫で26ページ(絶版?)、現在は、河出文庫から出てます。)
ポロポロ

河出書房新社

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江戸川乱歩 「押絵と旅する男」

2005-11-07 21:59:45 | 小説
汽車の中で出会った男が、大切に持っている押絵を見せてくれる。
その押絵の人物は非常にリアルに作られているが、そこに秘められた物語とは・・・。
あまりにも奇想天外な、ありえない話ですが、それを読ませてしまうところがすごいですね。
「日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集」(創元推理文庫:26ページ)または「江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男」(光文社文庫)で
江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男

光文社

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日本探偵小説全集 (2)

東京創元社

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流鏑馬装束

2005-11-06 22:12:47 | 写真
11/3に笠間の流鏑馬を見たのですが(本館参照)、その時の装束がなかなかのものでした。
写真は、笠間稲荷での神事の際に撮ったものです。
射手だけでなく、その他の人々もそれらしい格好をしていました。
時代劇でも撮影できそうな感じでした。
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岡本かの子 「家霊」

2005-11-05 21:24:09 | 小説
どじょう店「いのち」の後継者であるくめ子が、代々の女主人に背負わされてきた宿命をひしひしと感じるというのが、題名に反映された一つのテーマ。
もう一つの読みどころは(こちらが面白い)、ツケを溜めてしまっているのに、夜な夜などじょう汁をねだりに来る老人の話。
どじょう汁への思いを語る老人の様子が、とてもいいです。
そして、くめ子の母親(先代の女主人)と老人の交流に温かさを感じます。
(新潮文庫「老妓抄」に収録:16ページ)
老妓抄

新潮社

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タヌキの門番

2005-11-04 23:06:20 | 写真
笠間観光裏バージョンその2。
菊祭り会場の笠間稲荷神社から駅に向かって通りを歩いていると、”Switch!”ロゴの自動ドアの隣に、タヌキの置物が門番のように仁王立ちしてました。
さすが、焼き物の町、笠間です。(東京電力笠間営業センターでした。)
こういう思いがけない出会いが楽しいですねえ。
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菊人形(笠間にて)

2005-11-03 22:47:18 | 写真
今日は笠間の菊祭りに行ってきました。
そこで、「菊人形展 義経」も見たのですが、菊を使って人形を作るというのは、かなり無理のあるものだということがよくわかりました。
暗い空間の中に、白熱灯の照明が当てられて浮かぶ、菊を纏った人形の姿は不気味です。
たまには、怖いもの見たさで、こういう変てこな世界に入ってみるのも、いいかも知れません。
笠間見物のその他の様子は、本館のほうに順次掲載する予定です。

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安部公房 「R62号の発明」

2005-11-02 21:39:14 | 小説
安部公房も古びてしまったとの感があるが、もっと読まれてもよいと思う。
本作は、リストラされて(注:1953年発表)自殺しようとしていた技師が、買い取られてロボット「R62号」に改造されるところから始まる。
そして、天才技師ロボットとして偶然にも元の会社に派遣され、人間を最も合理的に労働させる機械を開発する。その機械とは・・・
一度読んだら忘れられません。
(新潮文庫:45ページ)
R62号の発明・鉛の卵

新潮社

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近松秋江 「黒髪」

2005-11-01 21:42:32 | 小説
昨日の「蔵の中」のモデルとも言われる近松秋江の代表作。
京都の遊女に惚れ込んで、疑惑を持ちながらも振り回されてだまされてしまう男の物語。
ここまで情けない姿が未練たらたら書かれているところが、悲劇を超えて笑いを誘います。
岩波文庫では続編「狂乱」、「霜凍る宵」も収録されていたのですが、現在は品切れのようです。(「黒髪」は約40ページ)
現在、「黒髪」は講談社文芸文庫で読めます。
黒髪・別れたる妻に送る手紙

講談社

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