「難民」の定義

2024年06月23日 13時03分27秒 | その気になる言葉

難民とは、人種、宗教、国籍、政治的意見や特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた人々です。

難民は国際的保護を必要とし、1951年難民条約や1967年難民議定書などの国際法によって定義されています

現在、世界の難民の数は約3530万人です。

その多くは路、路、路で国外に脱出し、他国の庇護と援助を求める。

統計上、先進国等の母国より経済的に豊かな国に難民認定された場合は母国が停戦又は復興が開始されても母国への帰国は希望しない傾向が示されている。

短期間の滞在許可のみを求め、母国の復興開始時に帰宅を希望する避難民(ひなんみん、evacuees)と異なる

日本でも第二次世界大戦後の国境警備が完全回復するまでの1960年頃まで、朝鮮半島から日本への密入国・自由意志で来日した者らの帰国拒否・送還拒否が問題になった

日本国内の難民

日本に来るのは「偽装難民」ばかりなのか?難民認定、年間わずか数十名の妥当性を考える

 (Updated: 2020.8.14)

現在、日本の難民認定とその課題について、こちらの記事で最新の情報をお伝えしています。ぜひご覧ください。

日本の難民認定審査は極めて厳しく、年間40名前後しか保護されていないという事実は、以前よりも知られるようになりました。同時に、日本の難民申請者の大半は「偽装難民」、つまり難民ではないのに、難民申請をしている人であり、難民認定数が極端に少ないことは問題ではないという法務省出入国在留管理庁の主張も定着しつつあります。
日本社会の労働力不足を背景に、働くことを目的とした難民申請の実態があることは認めますが、そもそも、難民として保護されるべき人を救えていないことが、日本の難民認定制度の最大の問題です。
「偽装難民が多い」という報道が広まり、いかに偽者を取り締まるかという視点ばかりが強まるなか、難民として保護されるべき人を保護できていないことへの問題意識は薄れつつあります。
本記事では、どこからどのような人たちが日本に逃れて難民申請しているのかを概観し、他国との比較を交えて、日本の難民認定数が妥当なのかを考えます。

目次

出典:UNHCR Refugee Data Finder, 法務省発表資料から作成

難民申請者に、難民ではない人が含まれていることは日本に限らず当然で、そのために審査があります。
例えば、2019年のドイツの難民認定率は25.9%、フランスは18.5%。つまり、残りの申請者は難民条約に基づく難民ではないと判断されています。ただし、難民認定以外の形で庇護を認められた人も多く、そのような人を含めるとドイツの庇護率は約44.3%、フランスは約28.3%です。一方、日本では難民認定に限れば0.4%、人道的配慮による在留許可を加えてもわずか0.7%の人にしか庇護が認められていません。年間で約600名からの相談を受けている難民支援協会の経験に基づいても、これは明らかに少なすぎます。日本にだけ、難民として保護されるべき人が逃れていないのではなく、日本の審査基準が厳しすぎるのです。難民として保護されるべき理由を十分に持つ人が難民不認定となり、収容や母国への強制送還の危機に晒される事例が後を絶ちません。

難民として認定される人が世界的に多い国々からも逃れてきている

なぜ、厳しすぎると言えるのか、日本の難民申請者の出身国から見てみましょう。
難民申請者の出身国を見ると、多い順にスリランカ、トルコ、カンボジアと続きます。法務省は上位の国々を引き合いに出して、「我が国での申請者の多くが,大量の難民・避難民を生じさせるような事情がない国々からの申請者となっています」」と説明します。確かに国民の半数が逃れているシリアのような状況とは異なりますが、これらの国々から逃れて難民認定される人も一定数いることは後半で紹介します。
ここでは、難民を多く生み出している国々から日本に逃れてくる人は滅多におらず、難民として保護されるべき人は40人前後に留まるとする法務省の主張が適切と言えるのかを見ていきます。
日本の難民申請者の出身国上位20ヶ国と、世界の難民認定数の出身国上位20ヶ国を比較してみましょう。世界の難民認定数とは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表している統計で、難民条約に入っている国による難民認定数と、難民条約に入っていない国におけるUNHCRによる難民認定数を合わせたものです。

日本の難民申請者の出身国上位と世界の難民認定数の出身国上位(2019年)

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トルコ、パキスタン、ミャンマー、カメルーン、中国、イランが重なっていることが分かります。数年前から難民支援協会へ相談に訪れる人が急増したカメルーンでは、少数派による独立運動が徹底的に弾圧され、平和的なデモに参加をした人々は警察から襲われたり、地域ごと焼かれるなど内戦状態に陥っており、日本でも200人以上が難民申請しています。日本は島国とはいえ、飛行機でどこへでも安価で移動できる時代です。観光客を年間2,800万人誘致する日本行きの観光ビザをなんとか手に入れ、逃れてくる人が一定数いても不思議ではないでしょう。

日本ではシリア人やロヒンギャでさえ大半が難民不認定

日本の上位20ヶ国には入りませんが、世界で上位に入っているその他の国々からも逃れてきています。例えば、シリアで内戦が始まった2011年以降、80人以上のシリア人が日本で難民申請しています。難民認定を得たのは2018年末時点で18人です。
ミャンマーでの集団虐殺が大きなニュースとなったロヒンギャは、日本ではこれまでに約120人が難民申請を行い、19人が難民認定、約80人が人道配慮による在留特別許可を得ましたが、残りの20人弱は難民認定も人道配慮による在留も許可されていません。
難民として保護されるべき人がなぜ難民認定されないのか、その背景には、難民条約の不適切な解釈、難民側に課している過剰な立証責任、難民調査官の不十分な専門性など、さまざまな課題があります。
例えば、アフリカのある国出身者による、難民不認定処分の取り消しを求めた訴訟(高等裁判所)では、難民調査官が出身国情報を正確に把握していなかったために不認定にしたことを法務省も認めています。
つまり、難民調査官が、申請者の出身国における危険性について客観的事情を適切に評価していなかったということです。

出身国の事情だけでは判断できない。スリランカ人の認定率18%

日本では「偽装難民ばかり」と評価される国々からきた人でも、難民として保護されるべきケースはあります。一見、平和で安全と見なされている国でも、一部で迫害の実態がある場合や、政府以外の主体による迫害があったとき、政府に保護する能力がない場合などです。
しかし、ただでさえ厳しい日本の難民認定基準の下では、「偽装難民が多い」という色眼鏡によって、そうしたケースが見過ごされ、保護を必要とする人が漏れているのではないかと懸念されます。実際、ネパール出身で難民認定を得た人は日本で2人のみで、認定を得るまでに、5年もの歳月がかかりました。
参考までに、難民申請者の出身国の多くが日本と共通しているオーストラリアの難民認定数と認定率を紹介します。オーストラリアの現政権は、厳しい難民政策をとっていると言われますが、それでも日本とは大きな開きがあります。

日本とオーストラリアの難民認定数と認定率の比較

Australia_2018.png
難民認定制度は迫害から逃れてきた人を守るための仕組みです。誤った判断で母国に送り返すことは、その人の命に関わります。難民として保護されるべき人を、いかに漏らさず、適切に保護していくのか。難民認定制度の本来の目的に立ち返り、難民保護を主眼に制度を見直していくべきです。偽者の取り締まりに終始し、保護されるべき人がさらに保護されにくくなるという事態は避けなければなりません。

コラム: 難民ではない人が難民申請するのはなぜ?「偽装難民」を減らすには、人手不足の解消が必要

日本にも難民として保護されるべき人が数多く逃れてきているものの、適切に保護できていない現状について見てきました。では、難民ではない人が難民申請するケースが目立っているのはなぜなのでしょうか?それは、日本の人手不足と関係しています。

少子高齢化が進む日本では、運輸、建設、製造業など、さまざまな業界が深刻な人手不足に直面しています。日銀が四半期ごとに発表する統計によると、「人員不足は特に中小企業で深刻で、中小企業全産業の指数はバブル崩壊直後の1991年11月以来26年ぶりの不足水準となった」と報じられました(日経新聞「人手不足への対応は急務だ」/2017年12月15日)。しかし、日本はいわゆる「高度人材」と呼ばれる専門知識や技術を持つ人をのぞいて、外国人に働くことを目的とした滞在を認めていません。そのため、多くの業界では、発展途上国への技術移転を通じた国際協力を目的とした「技能実習生」や週28時間の労働時間制限がある「留学生」として滞在している人たちを雇用し、人手不足を凌いでいます。

その技能実習生と留学生の一部が、日本で働き続けるために難民申請をしています。
技能実習生は、法律で定められた最低賃金を大幅に下回る過酷な条件で雇用されているケースがあり、転職も認められないため、失踪が多発しています。しかし、送り出し機関から日本へと派遣される際、多額の「借金」を背負ってやってくる実習生たちにとって、そのまま帰国することはできず、日本で何とか就労を続けようとします。
留学生は、 日本での生活費や日本語学校の学費を自ら稼がなければならない上、実家に仕送りをするなど、学業以外の目的も持ってきている場合が多く、法律で認められている週28時間の労働時間の制限を超えて働きたいというニーズがあります。
一方、難民申請者は結果が出るまでの平均2年半、国からの十分な支援はないため、働かないと生活できず、これまでは難民申請をして6ヶ月後から就労が認められてきました。職種や労働時間の制限もありません。それが、一部の技能実習生や留学生にとって抜け道となり、難民申請を利用して働くことにつながっているのです。
雇用する側、される側それぞれの事情がマッチした結果、本来の制度の目的から外れる難民申請が目立ってきていると言えるでしょう。「偽装難民」というと非常にネガティブな印象を受けますが、彼・彼女らがしているのは、日本で働くこと。クリーニング工場、コンビニの弁当工場、建設現場など、人手不足の産業を支えているというのが実態です。

難民に該当しない人が、就労のみを目的に難民申請することは、JARとしても不適切だと考えます。しかし、それは、労働力を必要とする多くの中小企業と、日本で働きたい外国人がおり、その手段が極めて限られている中、たまたま難民認定制度が利用できるという背景があるからです。
法務省はこの問題に対して、難民申請者の就労をより厳しくする方針を打ち出していますが、根本的な解決策にならないどころか、難民として帰れない事情があって難民申請している人たちが生き延びる手段までも奪ってしまいます。
この問題は、難民認定制度のなかだけでは解決できず、労働力を必要とする日本社会の現状に見合った外国人労働者の受け入れや包括的な移民政策が必要です。
そして、難民認定制度については、難民ではない人の取り締まりに終始するのではなく、難民として保護されるべき人が、適切に保護されるために必要な対策が講じられるよう、JARはこれからも働きかけ続けます。

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