7月9日午後3時15分からCSテレビのザ・シネマで観た。
THE AVIATOR(2004) 2004年 / アメリカ / 字幕 : 171分 アドベンチャー ・ 社会派ドラマ
あらすじ
潔癖症の母に子供の頃から伝染病の怖さを教え込まれていたハワード・ヒューズ。
感染を恐れて極度の潔癖症になった。
大人になり、両親も亡くなっている1927年。
ハワードはハリウッドで、映画「地獄の天使」の撮影に臨んでいた。
空中戦はこの映画のクライマックスで、一切妥協するつもりはない。
カメラが二台足りない、と言われれば、ライバルのMGMにも「貸してくれ」と頼む潔さがあった。
幸い両親の遺産や父が遺した会社ヒューズ・ツール社の株のおかげで資金は潤沢にある。
映画や飛行機製作のため、財務管理は新たに雇ったスポークスマン、ノア・ディートリッヒに任せた。
しかしカメラの貸し出しは断られ、広報担当のジョニーにも妥協を勧められるが、ハワードは突っぱねる。
そして完成したラッシュを見ても、奥行きのないシーン構成が気に入らない。
大きな雲が必要だと言って気象学者を呼んで雲の発生を待ち、飛行機の形状も映えを優先して上翼などの部分を解体。
さらには完成してから「トーキーにする」と言い出して、映画の完成には三年の月日を費やした。
公開プレミアでは万雷の拍手を送られ、ハワードも感極まる。
三年ぶりに身が軽くなったハワードは、自分で飛行機を操縦し、映画撮影中のビーチに降り立った。
そこで女優のキャサリン・ヘップバーンに声をかける。
飛行機作りに没頭する大金持ちの波乱万丈な人生をつづった伝記ドラマ。いくらなんでも長すぎて、ずっと見ていられない編集ミス映画です。
20世紀初頭。一人の少年が母親に体を洗われているところから映画は幕を開ける。この少年がハワード・ヒューズである。そのとき母親からひとつの言葉を教わる。「QUARANTINE」…和訳すると「感染予防のための隔離」という意味である。後にこの単語にヒューズは苦しめられることとなるのだった。
それから時は流れて1920年代。ヒューズは父から受けた莫大な遺産を元手として、夢のひとつであった映画製作を開始。映画『地獄の天使』の製作はトラブルが続き思うような撮影はできなかったが、史上空前の莫大な予算を費やして3年がかりでようやく完成させた。
ヒューズは手当たりしだいの女性を口説き手に入れる傍ら、もう一つの夢である飛行機事業に着手、ヒューズ・エアクラフトという会社を立ち上げ、世界一速い飛行機H-1の開発を始めた。しかし、同時期に知り合った女優キャサリン・ヘプバーンとの恋愛は破綻する。
潔癖症の母親の影響もあり、青年時代から伝染病、不潔なものへの嫌悪感の強かったヒューズの強迫神経症はここにきて顕著となる。自分を拒絶した女の触れた洋服全ての焼却、常に石鹸を持ち歩き病的なまでに手を洗浄する、同じ言葉を執拗に繰り返す等、一般人には理解不可能と思える行動を繰り返す。
ついには衣服を着ることも水に触れることも出来ず部屋に閉じこもり、顔も洗わず髭もそらず全裸のまま暮らし、排泄は部屋の中で牛乳瓶に、何かに触れるときにはティッシュペーパー越しにでなければ触れられない、ドアすら開けられなくなり他人との接触を恐怖と感じる等、ヒューズの強迫神経症は深刻化する。
20世紀のアメリカ映画業界と航空業界で成功を収めた大富豪ハワード・ヒューズの若き日を描いた伝記映画。主演はレオナルド・ディカプリオ(「タイタニック」ほか)、監督は巨匠マーティン・スコセッシ(「タクシードライバー」ほか)、製作費は150億円という堂々たる超大作だ。
億万長者の父が死去し、莫大な遺産を受け継いだ18歳のハワード(L・ディカプリオ)は、やがてその資金力を大好きな飛行機と映画製作に惜しげなくつぎ込むようになる。数十機の戦闘機を実際に購入し、自ら操縦して空中戦を撮影した戦争アクション映画「地獄の天使」は、当時の常識を覆す映像が話題となり大ヒットを記録する。
大女優キャサリン・ヘップバーン(ケイト・ブランシェット)を恋人にし、パイロットとしても世界一周の記録を更新、航空機の設計技師としても新発想の偵察機を開発するなど、その人生は順風満帆に見えたが、やがて彼にも転落のときが訪れる。
超大作「アビエイター」は、アカデミー賞11部門にノミネートされ、最多の5部門を受賞したが、期待されていた監督賞、作品賞、主演賞のメイン部門は全敗という苦い結果となった。スコセッシ監督はオスカー逃しの常連といわれるほどだから、事前に予測できたといえなくもないが、さすがにがっかりのはず。
一方レオナルド・ディカプリオも、今回は自身の思い入れの強いヒューズという人物を演じられるということで製作にも参加、例によって徹底的な役作りをして望んだだけに、念願の主演男優賞を逃した落胆は大きかろう。
彼以外の役者の演技も悪くない。ヘップバーンやエヴァ・ガードナー(どちらもこの時代のハリウッドを代表する女優でありヒューズの恋人)役の女優たちも、本人の出演映画をたくさん見てしゃべり方やしぐさを習得、違和感なく演じている。
空中戦のシーンや墜落場面では大胆にCGやVFXを使い、セレブたちが集うパーティーの場面などには衣装代だけで2億円を費やすなど、ゴージャスな映像のなかには見逃せないスペクタクルが満載だ。
とはいえ、物語に求心力がないのも事実。この『アビエイター』では、「奇人変人」として知られるヒューズの晩年はあえて詳しく描かず、野望に満ち、斬新な発想で旧態依然とした世界に挑んでいった若き日の彼の姿にスポットを当てている。
しかし後半は、強迫神経症にかかり、ドアノブすらティッシュ数枚ごしでなければ触れないほどみじめな姿を延々と描く。頂点に立った男の苦悩というわけだが、こういったところが、ハリウッドの伝記映画としてはいかにもステレオタイプな演出であり、飽きられる原因かと思われる。ちなみにヒューズは晩年、数十年間も世間から身を隠し、死体の本人確認が誰にもできないという哀れな最期をとげる。
英雄的な面を強調して描くという意図の元に作った伝記映画としては平均以上であろう。相当な下調べをして映像は当時の色をデジタル技術を駆使して再現、存在しない機種のエンジン音もなるたけ忠実に再現、役者にも最高の演技と役作りを要求……。しかし、それはつくり手側の思い入れが非常に強いという意味でもあり、日本人でそれに付き合いきれる人がどれほどいるかは微妙なところだ。2時間48分という長大さは、見ていて時間を忘れさせる……わけもなく、いつ終わるのかと思うような平坦な語り口が最後まで続く。
こいつはハワード・ヒューズに人並み以上の興味がある人が、体力のあるとき、一人で見るのに適した映画だろう。
アビエイターの感想
「キング・オブ・コメディ」、「沈黙 -サイレンス-」、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」、「シャッター アイランド」、「カジノ」などで知られるマーティン・スコセッシ監督による、飛行機好きの神経質おやじの物語。
映画監督であり、航空機開発に生涯を捧げたハワード・ヒューズのぶっ飛んだ話で、一般人には到底理解できない狂人の半生を描いています。
若くして莫大な財産を相続した若者が、お金に糸目をつけず、映画製作をしたり、飛行機を作ったりしながら、周囲を巻き込み、女優たちと浮名を流し、好き放題やっていく様子は痛快で、スケールの大きさと夢を感じさせます。
それに対し、ストーリー構成にやや問題があり、この映画に約三時間の尺は必要ないです。前半は映画製作、中盤は飛行機製造、後半は航空業界の利権争い、といった感じで構成されていて確実に途中でダレます。
できれば1時間半ぐらいにカットしてもらいたかったし、あそこまで長尺にするなら、ハワード・ヒューズの死まで描かないと意味ないですよね。
飛行機に対する類稀な情熱とこだわり。度を過ぎた潔癖症や神経症。いわばハワード・ヒューズの光と影の表現のバランスもあまり良くないです。
変人を取り上げているのに面白さやユーモアに欠けるし、かといってダークでもなければドラマチックでもない。あれもこれも描こうとしたばかりに一つ一つのエピソードのインパクトが小さくなった感が否めませんでした。
それにしても、社員たちには無茶振りばかりだし、耳は遠く、コミュニケーションは一方通行だし、あれだけ神経質で、よく多くの人に支持され、女にもモテるなぁって思いましたね。
女優のキャサリン・ヘプバーン、エヴァ・ガードナー、ジーン・ハーロウなどの美女を次々と落としていき、また誰と付き合っても満足しないところが笑えます。あれだけ神経質で、潔癖症でも女は好きなんですね。キスには不快感を覚えないんですかね。ちょっと彼の頭の構造は想像が付きませんね。
自ら飛行機を操縦し、墜落して大怪我しても決して飛行機に乗ることをやめようとしないあの度胸と情熱に人は魅了されたのでしょうか。あるいは金と権力なんでしょうか。
レオナルド・ディカプリオの演技は相変わらず安定感がありました。独壇場といってもいいでしょう。何気に演技派俳優がたくさん揃っているんですが、ディカプリオがほとんど見せ場を持って行っちゃってましたね。