人生には転機がある。
励ましを受けた人が希望を膨らませる出会いがあるものだ。
国連児童基金(ユニセフ)親善大使を務める黒柳徹子さんは2009年、ネパールを訪問した。
▼川底の石を拾って売ることで生計を立てる少女に出会い、石を購入した上で、「大きくなったら何になりたいの?」と聞いた。
少女は「私は洋服屋になりたい」と答え、「じゃあ私に服を作って。早くしないと死んじゃうからね」と言って別れた。
7年後、ネパールを再訪問し、22歳となった彼女と再会。
お金をためてミシンを購入していた彼女は、黒柳さんのためにブラウスを作っていた。
「<大きくなったら何になりたいの?>と聞いてくれた大人は、あなた以外に誰もいませんでした。だから私は洋服屋になるために一生懸命に働いたんです」と話したという。
▼ドイツの作家エッカーマンは、師と仰いだゲーテとの対面を「わが生涯のもっとも幸福な日」と言及した。
晩年のゲーテと過ごした9年余の交流と対話を名著「ゲーテとの対話」にまとめた。
この書がどれほどの人々に触発を与えたか。
恩を受けた人が恩に報いて立ち上がる。
そんなドラマを自分の人生でもと思う。(鷲)