一般社団法人全国がん患者団体連合会(全がん連)では、2025年1月17日午前7時から1月19日午後5時にかけて、「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート」をオンラインで実施しました。わずか3日間の募集期間であったにもかかわらず、3,623人の皆さまからご回答をお寄せいただきました。多くの皆さまのご協力に心より感謝申し上げます。

アンケートにはがんや難病その他の疾病で療養する患者や家族の皆さま、医師や看護師など医療関係者の皆さま、その他関心のある一般の皆さまよりご回答いただきました。3,623人のうちがん患者の立場の方が2,233人、がん患者や遺族の立場の方が552人で、ご回答いただいたがん患者の中には思春期・若年成人(AYA)世代のがん患者さんも含まれます。

全国がん患者団体連合会では、皆さまからのアンケートのご回答を取りまとめ、「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」を公開しましたので、お知らせいたします。アンケート冊子のページ数は500ページを超えます。アンケートで寄せられた声からは、患者や家族の皆さまの切実な声や思い、厳しい状況が伝わってくるご回答も多数ありました。政府や国会議員の皆さまをはじめ、多くの皆さまにぜひこの声をお読みいただきたいと願います。

>>「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」はこちら(PDF)

なお、アンケートの第1次募集はこれにて終了となりますが、引き続きアンケートにご回答されたいとのご要望をいただいていることから、別途アンケートの第2次募集を行う予定です。

一般社団法人全国がん患者団体連合会(ぜんこくがんかんじゃだんたいれんごうかい、略称:全がん連)は、全国のがん患者団体の連合体組織として、がん医療の向上とがんになっても安心して暮らせる社会の構築に寄与することを目的として、2015年5月に設立された一般社団法人である

概要

がん患者団体の連携や活動の促進を図りつつ、がん患者と家族の治療やケア、生活における課題の解決に取り組み、がん医療の向上とがんになっても安心して暮らせる社会の構築に寄与することを目的とし、以下の事業を行っている

  • がん患者と家族の治療やケア、生活における課題を解決するための政策提言に関する事業
  • がん患者と家族の自助や共助を促進するために必要な事業
  • がん患者団体の連携や活動を促進するために必要な事業
  • この法人の活動を広報及び宣伝するために必要な事業
  • この法人の財政の健全な発展及び確立のために必要な事業
  • その他、この法人の目的を達成するために必要な事業

主な活動

がん対策基本法の改正に関する要望

  • 2006年に議員立法により成立したがん対策基本法は、政府が総合的ながん対策として「がん対策基本計画」を策定することなどを目的に制定された。その後、がん治療が進み、治療後も社会で活躍できる人が増える一方で、通院のため退職を余儀なくされるケースも増えたり、患者数の多いがんに対策の重点が置かれたことで、小児がん・希少がん・難治性がん等が置き去りにされるなど、新たな課題が生じていた。
  • 2015年6月16日、全がん連は「がん対策基本法の改正に関する要望書」を超党派議連「国会がん患者と家族の会」に提出した。また、翌17日には同要望書を、塩崎恭久厚生労働大臣、正林督章・厚生労働省健康局がん対策健康増進課長、門田守人・厚生労働省がん対策推進協議会会長に提出した。同要望書では、小児がん・希少がん・難治がんの対策、がん患者の就労を含めた社会的な問題への支援、がん患者と家族の権利と尊厳を守るための対策を求めた
  • 2016年4月22日、超党派議連「国会がん患者と家族の会」が、がん対策基本法改正案に対するパブリックコメントの募集を開始したが、全がん連の要望が盛り込まれていなかったことから、同日、全がん連はステートメント「がん対策基本法改正案パブリックコメントの実施について」を発表した
  • 2016年5月17日、超党派議連「国会がん患者と家族の会」総会が開催され、全がん連も出席し、がん対策基本法改正案の検討が行われた。全がん連が求めていた「社会的支援」については「がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること」との条文が追記された。
  • 小児がん対策」については「国及び地方公共団体は、小児がんの患者その他のがん患者が必要な教育と適切な治療とのいずれをも継続的かつ円滑に受けることができるよう、必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする」との条文が追記された。
  • 一方、「希少がん・難治がんへの対策」については、参議院法制局との検討の過程において法制上盛り込むことが難しいとされたことなどから、改正案に盛り込むことは見送られた
  • がん対策基本法改正案は、2016年の第190回国会(通常国会)への提出は見送られたが、その後の超党派議連「国会がん患者と家族の会」の検討により、希少がん・難治がんに係る研究の促進についても条文に追加された第192回国会(臨時国会)において、2016年11月15日に参議院に議員立法として提出され、翌16日に参議院本会議において全会一致で可決、12月9日に衆議院本会議でも全会一致で可決・成立した

患者申出療養制度に関する意見

  • 患者申出療養は、未承認薬等について、患者の申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにする制度であり、2015年5月27日に成立し、同29日に公布された医療保険制度改革関連法により、2016年4月1日から施行された。
  • 2015年8月20日、全がん連は「患者申出療養制度に関する意見書」を塩崎恭久・厚生労働大臣、田辺国昭・厚生労働省中央社会保険医療協議会会長、門田守人・厚生労働省がん対策推進協議会会長に提出した。同意見書では、制度の導入が国民皆保険制度のなし崩し的な空洞化につながらないようにすることや、対象となる治療薬等の有効性と安全性に十分配慮しつつ、患者が利用しやすい制度とすること等を求めた[10]
  • 2015年9月17日、全がん連と日本難病疾病団体協議会(JPA)は、参議院議員会館にて院内集会「緊急公開ラウンドテーブル〜このまま施行していいの?患者申出療養制度〜患者の立場に立った制度に向けて」を開催した
  • 2015年9月28日、全がん連とJPAは「患者申出療養制度に関する共同アピール」を厚生労働省に提出した。同アピールでは、国民皆保険制度を堅持すること、患者申出療養制度における患者の安全性の確保と負担軽減に努めること、医療政策の策定プロセスへの患者参画を進めることを求めた

受動喫煙対策に関する要望

  • 2002年に制定された健康増進法では、多数の者が利用する施設の管理者に対し、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう求める条文が定められたが、この条文に違反しても罰則はなかった。2020年の東京オリンピックパラリンピックに向けて受動喫煙対策を推進するため、健康増進法の改正が検討された。
  • 2017年3月21日、全がん連は「受動喫煙防止対策の推進に関する要望書」を衆議院・参議院の国会議員に送付・提出した。同要望書では、政府が通常国会への提出を検討している健康増進法改正法案について、建物内禁煙を基本とした実効性のある法的措置を講じることを求めた
  • 健康増進法改正案は、2017年の第193回国会(通常国会)に、小規模飲食店を除く全ての飲食店で原則禁煙とするなどの内容が盛り込んだ改正案が提出される予定だった。しかし、自民党厚生労働部会で反対論が噴出し了承されず、塩崎恭久厚生労働大臣も強硬姿勢を崩さなかったため、改正案を閣議決定できず、第193回国会に提出できなかった。
  • 2018年1月24日、全がん連は、日本癌学会(中釜斉理事長)、日本癌治療学会(北川雄光理事長)、日本臨床腫瘍学会(南博信理事長)と連名で「受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案に関する要望書」を加藤勝信・厚生労働大臣などに送付・提出した
  • 健康増進法改正案は、原則禁煙の除外範囲を拡大するなど前回の案より後退したが、2018年の第196回国会(通常国会)に提出され、7月18日に参議院本会議で可決・成立した

その他の要望

  • 2020年11月25日、全がん連は、小児がん・AYAがん(思春期・若年がん)患者団体有志とともに「小児とAYA世代のがん患者の妊孕性温存への支援を求める要望書」を田村憲久・厚生労働大臣などに提出・手交した。同要望書では、厚生労働省に対して、小児やAYA世代のがん患者が生殖医療を受ける場合の保険適応や助成制度の創設などの経済的支援を行うことなどを求めた
  • 2020年11月27日、全がん連は「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書」を菅義偉内閣総理大臣などに提出した。同要望書では、医療体制のひっ迫を避けるため感染対策を強化し、がんなど命に関わる疾病の患者が必要な医療を受けられる体制を守るための施策を速やかに進めることや、新型コロナウイルス診療のための病床確保のために、がん患者などが転院せざるを得ない状況を回避するための施策を実施すること、経済的な困窮を理由に治療を中止・変更する患者が出ないよう、経済支援策を継続することなどを求めた

がん教育への取り組み

  • がん教育は、がん対策基本法にも推進が盛り込まれ、中学校では2021年度より、高校では2022年度より学習指導要領に基づいて実施される。医療者やがん経験者など「外部講師」が授業を行うことがあるため、国立がん研究センターの協力のもと、授業で配慮すべきことをまとめたガイドラインを作成するとともに、外部講師のためのeラーニングを開講している

がん患者学会、がん患者カレッジの開催

  • がん患者学会 - 全国のがん患者団体が集まり交流を深めつつ、現在のがん医療やがん対策の課題について学び、患者団体が取り組むべきことについて議論することを目的として開催している