概要
バセドウ病とは、甲状腺のはたらきが異常に活発になることで甲状腺ホルモンが過剰に産生される病気のことです。
甲状腺ホルモンは、全身の臓器に作用して新陳代謝を促すホルモンであるため、バセドウ病を発症すると動悸・体重減少・手の震え・発汗などの身体的症状やイライラ感や落ち着きのなさといった精神的な症状が現れるようになります。
発症頻度は1,000人に0.2~3.2人とされていますが、若い女性に発症しやすいのが特徴です。発症原因は甲状腺を刺激する抗体(特定の組織や細胞を攻撃するタンパク質)が産生されるようになることであり、免疫機能の異常によって発症する”自己免疫疾患”の1つとされています。
バセドウ病は適切な治療をしないまま放置すると心不全や骨粗しょう症などを引き起こすリスクが高くなるため、早期発見・早期治療が重要です。
また、日常生活でのストレスなどにより症状が急激に悪化する”甲状腺クリーゼ”に陥ることもあり、場合によっては命を落とすケースもありますのでバセドウ病と診断された場合は日常生活にも注意が必要となります。
原因
バセドウ病の原因は、甲状腺を刺激する”TSH受容体抗体”が体内で産生されるようになることです。
甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される”甲状腺刺激ホルモン(TSH)”が甲状腺を作る細胞表面に存在する”TSH受容体”に結合することによって甲状腺を刺激し、分泌が促されます。バセドウ病では、TSH受容体抗体がTSH受容体に結合し、甲状腺を過剰に刺激することで甲状腺ホルモンの過度な分泌が生じるのです。
どのようなメカニズムでTSH受容体抗体が産生されるようになるのか、明確なメカニズムは解明されていません。しかし、バセドウ病は遺伝の関与も指摘されているほか、もともとバセドウ病になりやすい体質の人が過度なストレス・過労・重度な感染症・妊娠・出産などを契機に発症するケースも多いと考えられています。
バセドウ病を発症すると甲状腺ホルモンの過剰分泌が引き起こされます。甲状腺ホルモンは全身の臓器に作用して新陳代謝を促す作用があります。また、バセドウ病は自律神経の一種である交感神経のはたらきを活性化するカテコールアミンの分泌量も過剰になることが知られています。
その結果、動悸・体重減少・手の震え・過剰な発汗・下痢などの身体的症状、イライラ感・不眠・落ち着きのなさ・疲労感などといった精神的症状が見られるようになります。
また、過度に刺激されることによって甲状腺は大きく腫れ、喉の違和感を自覚することも少なくありません。さらに、目を動かす筋肉や脂肪に炎症を引き起こすことで腫れを生じ、目が内側から押し出されるように見える”眼球突出”が現れるのもバセドウ病の典型的な症状の1つです。悪化するとまぶたや結膜に充血・目の動きの異常、ドライアイなどを引き起こします。
さらに、バセドウ病は適切な治療をしないままの状態が続くと、心臓に過度な負担がかかって不整脈を引き起こしたり、心不全に至ったりするケースも少なくありません。また、骨の代謝が活発になることで骨が脆くなり、些細な刺激で骨折しやすくなる可能性があります。
検査・診断
症状や甲状腺の腫れなどからバセドウ病が疑われる場合は、次のような検査が行われます。
血液検査
バセドウ病の確定診断のためには血液検査が必要です。血液検査では、甲状腺ホルモン値、TSH値の測定、TSH受容体抗体の有無の判定が行われます。
また、一般的な血液検査項目を調べて全身の状態を評価する必要もあります。
超音波検査
超音波を出す機械を喉に当てて甲状腺の状態を調べる検査です。甲状腺の大きさ、しこり、血流などを確認することができます。
アイソトープ検査
甲状腺はヨウ素やテクネチウムを取り込みやすいという性質があります。これを利用して放射線を放出するヨウ素やテクネチウム薬剤を服用して、甲状腺にどれくらい取り込まれるかを計測します。この検査では甲状腺ホルモンの上昇が甲状腺の機能に問題がないかどうかを調べます。
治療
バセドウ病と診断された場合は、重症度などによって次のような治療が行われます。
薬物療法
基本的に、バセドウ病の治療は甲状腺ホルモンの分泌を抑える”抗甲状腺薬”を用いた薬物療法から行います。服用を続けると1~2か月ほどで甲状腺ホルモンは正常値となることが多いとされていますが、治療はTSH受容体抗体の産生がストップするまで続ける必要があるといわれています。
放射性ヨウ素内用療法
甲状腺はヨウ素が蓄積しやすい臓器です。その性質を利用したのが放射性物質を含むヨウ素を内服し、甲状腺に蓄積した放射性物質によって甲状腺組織の破壊を促す放射性ヨウ素内用療法です。甲状腺ホルモンを分泌する細胞が減少するため、バセドウ病の根本的な治療が望めます。
しかし、この治療法は実施できる施設や年齢が限られており、治療効果が高すぎると甲状腺ホルモン分泌量が過度に少なくなってしまうことがあります。
手術
バセドウ病のもっとも効果が高い治療法は、手術によって甲状腺自体を摘出することです。薬物療法などほかの治療法で十分な効果が見られない場合、副作用で薬物療法が行えない場合などに実施されます。
バセドウ病に伴う“甲状腺眼症”を知っていますか
提供:アムジェン株式会社
監修:オリンピア眼科病院 神前あい先生
目を守るためには早期に適切な治療を受けることが大切
主にバセドウ病(甲状腺機能亢進症)やまれに橋本病(慢性甲状腺炎)に合併する症状の1つに“甲状腺眼症”があります。これは目の自己免疫疾患で、目の周りにある脂肪や目を動かす筋肉に炎症が起こる病気です。これにより、瞼が腫れたり、眼が飛び出してきたり、眼が動かしにくくなり、ものが二重に見えたりするようになることがあります。
“甲状腺”という名前がついていますが、甲状腺眼症に対してはバセドウ病とは異なる治療が必要となります。バセドウ病が悪化すると甲状腺眼症も悪くなることが知られているため、まずは甲状腺機能を安定させることが重要です。一方で、甲状腺機能が安定していても、甲状腺自己抗体が陽性の症例では甲状腺眼症が悪くなる場合があることから、バセドウ病の治療中は目の症状に注意しましょう。また、バセドウ病と診断される前に甲状腺眼症が発症することもあります。
また、頻度は数%と少ないですが、重症化すると視神経障害などによる失明の恐れもあるため、早期に見つけて、適切な治療を受けることが重要です。少しでも気になることがあれば、一度チェックシートを使って確認してみましょう。



*近くではなく少し遠くを見てください(ドアの端やカレンダーなど)
作成年月:2024年11月
予防
バセドウ病ははっきりした発症メカニズムが解明されていないため、確立した予防方法はありません。しかし、バセドウ病は、薬物療法などを行っても強いストレスや疲れなどが生じると、急激に症状が悪化して甲状腺ホルモン量が激増する”甲状腺クリーゼ”を引き起こすことがあります。命に関わることも多いため、バセドウ病と診断された場合は適切な治療を続けるとともに、日ごろからリズムを整えてストレスや疲れがたまりにくい生活を心がけるようにしましょう。
大学病院が直面する危機
対談・座談会 相良 博典,大鳥 精司
2025.03.11 医学界新聞:第3571号より

2024年10月,国立大学病院長会議(NUHC)が発表した2024年度収支見込みでは,全国42の国立大学病院のうち32施設が赤字を見込み,国立大学病院全体での赤字額は250億円以上に上ることが明らかになった(図1)1)。
背景には物価高騰や人件費の上昇による支出増があり,国立大学病院の存続そのものが危ぶまれる状況にある。また大学病院全体に目を向けても同様の状況を呈しており,早急な対応策が求められている。
大学病院の経営難により生じる問題とその打開策について,NUHC会長の大鳥氏と,全国医学部長病院長会議(AJMC)の会長を務める相良氏が語った。

全体42の国立大学病院のうち,32の施設が収支マイナスの見込み(赤字は計281億円)。国立大学病院全体ではマイナス254億円の収支見込み。大学本部からの支援等は含まれていない。
相良 私は昭和大学病院の病院長を務める傍らで,全国の国立・私立大学の医学部長(医科大学長),大学病院長を会員とする全国医学部長病院長会議(AJMC)の会長を昨年から拝命しています。大鳥先生とは大学病院運営に関連するさまざまな会議でお会いしていますが,こうしてじっくりお話しできる機会はなかなかありませんでしたのでうれしいです。
大鳥 こちらこそ,このような機会は光栄です。私も昨年から千葉大学病院病院長,ならびに国立大学病院長会議(NUHC)の会長に就任しました。本日はそれぞれが院長を務める病院の個別事情はもちろん,国立と私立の違いという切り口や,おのおのが会長を務める病院長会議での情報を踏まえた,より全体的な視点での議論をできれば幸いです。
アフターコロナの大学病院
相良 国立大学病院の多くが赤字であるように(図1)1),大学病院経営の危機を語る上で,コロナ禍の影響は避けて通れません。AJMCの調査によれば,大学病院における2020年度の外来の初診患者数は対前年度比で約16%減りました2)。現在も,コロナ禍前の患者数には届いていません。入院患者数も同様に減少しており,どの大学病院も外来・病床の稼働率を上げるために試行錯誤していることと思います。
大鳥 病床稼働率の低下は深刻です。当院はもともと850床を有しているものの,全てを開放していても稼働率は低く,採算もとれないことから,現在は1フロア分の病棟を閉鎖し計805床で運営しています。
相良 外来と入院による収入が減少する一方で,外科の先生方の頑張りもあり,手術件数だけはどうにかコロナ禍前に迫る回復の兆しを見せています。しかし今後は働き方改革の影響もあり,思うように伸びていくかはわからないのが正直なところです。
大鳥 また,COVID-19の感染症法上の位置付けが5類に移行したことにより,病床確保料などの国からの補助金は一律にカットされてしまいました。経営的にダメージを受けている病院は多いはずです。
相良 5類へ移行したとはいえ,高度急性期医療を担う医療機関やその他の特定機能病院では,COVID-19感染者が出れば2類相当の感染症と同等の対応を取らねばならない現状があります。ゾーニングや患者の受け入れ制限は収益面のマイナスだけでなく医療従事者の負担増加にもつながりますので,この状況を問題視しています。
高度な医療を提供するほど赤字が膨らむいびつな構造
大鳥 ここ数年の傾向として,現場や経営層のさまざまな努力により営業収入自体はなんとか増加している大学病院は少なくありません。しかし,大半の病院は支出増加が収入増加を大きく上回るせいで,結果的に増収減益による赤字に陥っています。支出増加の根幹にあるのは諸経費の深刻な高騰です。NUHCの調査では2024年度の医療費や光熱水費,人件費などは軒並み昨年度を大きく上回りました(図2)1)。

数値は42国立大学病院の合計を示す。医療の高度化に伴い高額な医薬品,材料の使用料増により医療費が増加した。またエネルギー価格高騰により光熱水費も増加し,働き方改革,人事院勧告の影響で人件費が増加した。さらに,業務委託費や老朽化が進む施設への投資による経費も物価高騰に伴い増加している。
相良 物価の高騰により建設費や業務委託費が増加したことで,老朽化が進む施設の建て替えや設備投資も思うように進められなくなってきています。建設予定だった病院や関連施設も,想定の倍以上に予算が膨らんでしまい計画そのものが中止に追い込まれた話も耳にするようになりました。そうしたケースは今後も増えていくでしょう。
大鳥 支出の中でも大学病院にとって特に由々しき問題と感じているのは,医療費の部分です。医療の高度化に伴い,医薬品の費用や機器の維持費は増加の一途をたどっています。患者のためにハイレベルな医療を提供しようとすればするほど医療費がかさみ,マイナスが膨らんでしまう。大学病院に求められる医療水準を考えると,こうしたいびつとも言える状況には疑問を感じざるを得ません。このまま状況が改善されず赤字が続けば,倒産する大学病院が数年以内に出てきてもおかしくありません。附属病院を有する大学にとっては病院の収益が法人全体に占める割合が5割以上であることも珍しくないです。恒常的に赤字を生み出してしまう構造的な問題は,病院だけではなく,日本の大学法人経営といったさらに大きな枠で憂慮すべきテーマだと考えます。
相良 同感です。大学法人という観点では,総合大学であれば病院以外の収益源も確保できる手立てがあるものの,医科の単科大学はそうした手立てもないためにさらに厳しい状況にあると想像します。かと言って,赤字が膨らんだ大学病院が医療費を抑えるために高度医療の提供を控えてしまえば,最終的には国民の健康にとって不利益が生じることになります。高度医療の提供を健全に続けられるだけの環境整備は,日本全体にとっても喫緊の課題です。
臨床偏重により失われるアカデミアとしての魅力
相良 国立の大学病院は,運営費交付金という形で運営費の約25%近くを国からサポートしてもらっています。私立の場合は経常費補助金がこれに近いですが,こちらは運営費の約2.5%と割合が大きく下がるため,自力で収益を上げるために国立以上に努力をしなくてはならないと感じています。診療実日数を例に挙げれば,土曜日や日曜日も診療する私立の大学病院は多いです。言い換えれば,そこまでしないと立ち行かないほどにギリギリの経営状況の施設が多いのです。
大鳥 休日に稼働する流れは,実は国立の大学病院にも来ています。祝日の月曜日は休みとせずに通常どおり稼働したり,手術に限り土曜日も実施したりといったスタイルに変更する施設が出てきています。そうなれば当然休みが減るので職員から不満も生じるわけですが,国立の場合はさらに賃金の問題が絡んできます。国立の大学病院の場合は医師ではなく「教員」として雇用されていることもあり,私立や民間の病院と比較した際の給与の開きは大きいです。こうした点が,人材確保を難しくする極めて大きな一因になっていると感じます。
相良 経営難への策として前述のように診療時間を増やす策を講じた結果,研究や教育に割く時間がさらに減少しているという問題も悩ましいです。臨床,教育,研究の3本柱は本来,大学病院の役割であると同時に魅力でもあるわけですが, 現状はあまりにも臨床偏重になっています。
大鳥 そうですね。また,働き方改革による勤怠管理の徹底で超過勤務分の人件費が激増していますから,人件費を抑えるべく職員の勤務時間のどこを削るかを考えた場合に,診療よりも学生の教育に充てる時間がまず候補になる可能性があります。現在の医学教育は臨床参加型実習がトレンドになってきているものの,現場では診療業務が多忙なために,医学生を教育するための時間を確保するのがすでに難しくなっています。
相良 研究面に関しても同様の懸念があります。本来は研究に没頭しなければならない助教クラスでも,研究に対しての時間をなかなか割けない状況が浮き彫りになっていますから,研究意欲のある方にとってアカデミアとしての魅力が低下していることは事実でしょう。
大鳥 日本は20年ほど前までは世界でもトップクラスの研究力を持っていたにもかかわらず,現在は先進国で最低の部類にまで低下してしまいました3)。しかも,医学を含めた全ての研究分野を対象とした文部科学省の調査によれば,被引用数が0~3回のいわゆる「ほとんど読まれない」論文の割合は他の先進国よりも高いのです4)。研究のための十分な時間は確保できぬままに薄い内容の論文ばかりを量産している現状には,個人的にも危機感を覚えます。今の状況が続けば,日本の医学研究力は低下する一方です。
財源の確保に向け,国全体を巻き込んだ議論を
相良 今後大学病院の経営を改善していく中では,財政面の立て直しが最優先の課題です。しかし,診療による収益増には限度があり,教育・研究との兼ね合いもあります。そうすると今後は,物価高騰や社会状況なども踏まえながら診療報酬をこれまで以上に上げていく必要があるのではと思うのです。極論,大学病院が担う高度な医療機能や研究・教育機関としての使命までを踏まえた,通常とは別建ての診療報酬の設計をするくらいのことがなければ,この状況は変わらないと思います。
大鳥 国が本気になって動かなければ財源の確保は難しいですよね。診療報酬の改定はもちろんのこと,大幅な制度変更という意味では消費税に関する議論が進むことを望んでいます。保険診療には消費税の負担がないにもかかわらず,病院側の持ち出しとなる医療費や設備投資には消費税の負担がありますから,これが解消されればかなりの財源が確保できるだろうとの思いがあります。
相良 国に働きかける上では,国民全体をこの議論に巻き込むことが重要です。医療従事者がどのような働き方をしていて,医療機関の収益構造はどうなっているのかを,少しでも理解していただくことが問題意識を共有するための第一歩なのかなと。
大鳥 加えて,各自治体の理解もばらつきが大きいので是正が必要と感じています。千葉県は知事の理解を何とか得られていますが,都道府県が非協力的なために必要な支援が得られていない国立の大学病院は,驚くべきことに半数にも及んでいます。AJMCやNUHCからも継続的に働きかけて,国や自治体のサポート体制を構築していかなくてはなりませんね。
大学病院の存続は国民の健康に直結する社会課題
相良 大学病院は地域医療のインフラであり,最後の砦でもあります。ですからここまで議論してきたような経営難や大学病院の魅力低下の話を突き詰めていくと,最終的には地域医療の崩壊につながると考えています。大学病院からの医師派遣の取りやめに関するニュースも出てきているように,すでに崩壊が始まっている部分もあるのですが,世間の危機感はまだまだ低いように感じるのも正直なところです。
大鳥 もしかすると,大半の国民からすれば大学病院の問題はあくまで各施設レベルの問題に感じられてしまい,自分たちが生活する地域全体にとっての問題としてはイメージしにくいのかもしれません。
相良 大学病院の存続が国民全体の健康に直結しているということを,私たちからも発信していく機会を増やしていく必要がありますね。高度な臨床・研究機能とそれらを基盤とした教育機能,この三位一体の役割は大学病院だからこそ果たし得るものであり,日本社会にとって欠かすことはできないものです。経営の悪化によりそれらの機能が損なわれたり,大学病院自体の存続が危ぶまれたりする事態は,何としても防がなくてなりません。
大鳥 今後の日本が世界の中でどういう立ち位置をめざすかを考えた時にも,諸外国に比べて医療は最大のアドバンテージだととらえています。創薬や新たな医療技術などのイノベーションを生み出していくためにも,大学病院の存在は重要になるはずです。国民の理解を得ながら,国全体として後押しをしていただけるよう努めていきたいです。
(了)
参考文献・URL
1)国立大学病院長会議.国立大学病院収支状況調査について(報告).2024.
2)全国医学部長病院長会議.新型コロナウイルス感染症が大学病院経営に与えた影響(2020年度).
3)豊田長康.今後の医学教育の在り方に関する検討会.日本の〔医学〕研究競争力を低下させないために.2024.
4)文科省科学技術・学術政策研究所.科学研究のベンチマーキング2023.

相良 博典(さがら・ひろのり)氏昭和大学病院 病院長 / 全国医学部長病院長会議 会長
1993年獨協医大大学院医学系研究科修了。同年に英サザンプトン大留学。2009年4月より獨協医大越谷病院 呼吸器内科主任教授を務めたのち,13年に昭和大医学部内科学講座・呼吸器アレルギー内科学部門の主任教授に就任。17年より,同大病院内科学講座主任・副院長を務める。20年4月より現職。24年から全国医学部長病院長会議の会長を務める。

大鳥 精司(おおとり・せいじ)氏千葉大学病院 病院長 / 国立大学病院長会議 会長
1994年千葉大医学部卒。2001年同大大学院修了。博士(医学)。02年米カリフォルニア大サンディエゴ校に留学。03年から千葉大大学院医学研究院整形外科学にて助教を務め,16年教授に就任。18年同大大学院医学研究院副研究院長,同大病院・浦安リハビリステーション教育センター長を兼任。24年より現職および国立大学病院長会議の会長を務める。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第13回]外科の基本術式を押さえよう――腸吻合編
外科研修のトリセツ連載 2025.05.05
-
対談・座談会 2025.03.11
-
医学界新聞プラス
[第1回]PPI(プロトンポンプ阻害薬)の副作用で下痢が発現する理由は? 機序は?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.07.29
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
最新の記事
-
対談・座談会 2025.04.08
-
対談・座談会 2025.04.08
-
腹痛診療アップデート
「急性腹症診療ガイドライン2025」をひもとく対談・座談会 2025.04.08
-
野木真将氏に聞く
国際水準の医師育成をめざす認証評価
ACGME-I認証を取得した亀田総合病院の歩みインタビュー 2025.04.08
-
能登半島地震による被災者の口腔への影響と,地域で連携した「食べる」支援の継続
寄稿 2025.04.08
医学書院IDの登録設定により、 更新通知をメールで受け取れます。
結局、取手西口のローズ皮膚クリニックを受診して、内服薬のニフェジピンとサレックス軟膏で劇的に回復したのだ。
一方、源平製薬の「十味敗毒湯」は、高い割に、ほとんど効果がなかった。
当然、継続して、服用する必然性はないのだ。
ヒトの体の中には隅々まで血管が張りめぐらされています。
その中を流れているのが血液で、体重の約8%を占めます。
つまり、体重50kgの方の場合、約4Lの血液が流れていることになります。
血液の役割は主に、①栄養素や酸素などを体中に届け、二酸化炭素などを回収する「物質の運搬」、②体外から侵入した病原体・異物や体内の壊れた組織・異常な細胞を排除する「生体防御」、③傷ついた血管を修復し、血液が血管外に流れるのを防ぐ「止血」、④環境の変化に関わらず体温や血液の酸性・アルカリ性(pH)を一定に保つ「内部環境の調節」の4つがあります。
血液の4つの成分は、酸素を運ぶ 赤血球 、外敵と戦う 白血球 、出血したときに血を固める 血小板 、酸素以外の物を運ぶ 血しょう です。
「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」公開のお知らせ
一般社団法人全国がん患者団体連合会(全がん連)では、2025年1月17日午前7時から1月19日午後5時にかけて、「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート」をオンラインで実施しました。わずか3日間の募集期間であったにもかかわらず、3,623人の皆さまからご回答をお寄せいただきました。多くの皆さまのご協力に心より感謝申し上げます。
アンケートにはがんや難病その他の疾病で療養する患者や家族の皆さま、医師や看護師など医療関係者の皆さま、その他関心のある一般の皆さまよりご回答いただきました。3,623人のうちがん患者の立場の方が2,233人、がん患者や遺族の立場の方が552人で、ご回答いただいたがん患者の中には思春期・若年成人(AYA)世代のがん患者さんも含まれます。
全国がん患者団体連合会では、皆さまからのアンケートのご回答を取りまとめ、「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」を公開しましたので、お知らせいたします。アンケート冊子のページ数は500ページを超えます。アンケートで寄せられた声からは、患者や家族の皆さまの切実な声や思い、厳しい状況が伝わってくるご回答も多数ありました。政府や国会議員の皆さまをはじめ、多くの皆さまにぜひこの声をお読みいただきたいと願います。
>>「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート取りまとめ結果(第1版)~3,623人の声」はこちら(PDF)
なお、アンケートの第1次募集はこれにて終了となりますが、引き続きアンケートにご回答されたいとのご要望をいただいていることから、別途アンケートの第2次募集を行う予定です。
一般社団法人全国がん患者団体連合会(ぜんこくがんかんじゃだんたいれんごうかい、略称:全がん連)は、全国のがん患者団体の連合体組織として、がん医療の向上とがんになっても安心して暮らせる社会の構築に寄与することを目的として、2015年5月に設立された一般社団法人である。
概要
がん患者団体の連携や活動の促進を図りつつ、がん患者と家族の治療やケア、生活における課題の解決に取り組み、がん医療の向上とがんになっても安心して暮らせる社会の構築に寄与することを目的とし、以下の事業を行っている。
- がん患者と家族の治療やケア、生活における課題を解決するための政策提言に関する事業
- がん患者と家族の自助や共助を促進するために必要な事業
- がん患者団体の連携や活動を促進するために必要な事業
- この法人の活動を広報及び宣伝するために必要な事業
- この法人の財政の健全な発展及び確立のために必要な事業
- その他、この法人の目的を達成するために必要な事業
主な活動
がん対策基本法の改正に関する要望
- 2006年に議員立法により成立したがん対策基本法は、政府が総合的ながん対策として「がん対策基本計画」を策定することなどを目的に制定された。その後、がん治療が進み、治療後も社会で活躍できる人が増える一方で、通院のため退職を余儀なくされるケースも増えたり、患者数の多いがんに対策の重点が置かれたことで、小児がん・希少がん・難治性がん等が置き去りにされるなど、新たな課題が生じていた。
- 2015年6月16日、全がん連は「がん対策基本法の改正に関する要望書」を超党派議連「国会がん患者と家族の会」に提出した。また、翌17日には同要望書を、塩崎恭久・厚生労働大臣、正林督章・厚生労働省健康局がん対策健康増進課長、門田守人・厚生労働省がん対策推進協議会会長に提出した。同要望書では、小児がん・希少がん・難治がんの対策、がん患者の就労を含めた社会的な問題への支援、がん患者と家族の権利と尊厳を守るための対策を求めた。
- 2016年4月22日、超党派議連「国会がん患者と家族の会」が、がん対策基本法改正案に対するパブリックコメントの募集を開始したが、全がん連の要望が盛り込まれていなかったことから、同日、全がん連はステートメント「がん対策基本法改正案パブリックコメントの実施について」を発表した。
- 2016年5月17日、超党派議連「国会がん患者と家族の会」総会が開催され、全がん連も出席し、がん対策基本法改正案の検討が行われた。全がん連が求めていた「社会的支援」については「がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること」との条文が追記された。
- 「小児がん対策」については「国及び地方公共団体は、小児がんの患者その他のがん患者が必要な教育と適切な治療とのいずれをも継続的かつ円滑に受けることができるよう、必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする」との条文が追記された。
- 一方、「希少がん・難治がんへの対策」については、参議院法制局との検討の過程において法制上盛り込むことが難しいとされたことなどから、改正案に盛り込むことは見送られた。
- がん対策基本法改正案は、2016年の第190回国会(通常国会)への提出は見送られたが、その後の超党派議連「国会がん患者と家族の会」の検討により、希少がん・難治がんに係る研究の促進についても条文に追加された。第192回国会(臨時国会)において、2016年11月15日に参議院に議員立法として提出され、翌16日に参議院本会議において全会一致で可決、12月9日に衆議院本会議でも全会一致で可決・成立した。
患者申出療養制度に関する意見
- 患者申出療養は、未承認薬等について、患者の申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにする制度であり、2015年5月27日に成立し、同29日に公布された医療保険制度改革関連法により、2016年4月1日から施行された。
- 2015年8月20日、全がん連は「患者申出療養制度に関する意見書」を塩崎恭久・厚生労働大臣、田辺国昭・厚生労働省中央社会保険医療協議会会長、門田守人・厚生労働省がん対策推進協議会会長に提出した。同意見書では、制度の導入が国民皆保険制度のなし崩し的な空洞化につながらないようにすることや、対象となる治療薬等の有効性と安全性に十分配慮しつつ、患者が利用しやすい制度とすること等を求めた[10]。
- 2015年9月17日、全がん連と日本難病疾病団体協議会(JPA)は、参議院議員会館にて院内集会「緊急公開ラウンドテーブル〜このまま施行していいの?患者申出療養制度〜患者の立場に立った制度に向けて」を開催した。
- 2015年9月28日、全がん連とJPAは「患者申出療養制度に関する共同アピール」を厚生労働省に提出した。同アピールでは、国民皆保険制度を堅持すること、患者申出療養制度における患者の安全性の確保と負担軽減に努めること、医療政策の策定プロセスへの患者参画を進めることを求めた。
受動喫煙対策に関する要望
- 2002年に制定された健康増進法では、多数の者が利用する施設の管理者に対し、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう求める条文が定められたが、この条文に違反しても罰則はなかった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙対策を推進するため、健康増進法の改正が検討された。
- 2017年3月21日、全がん連は「受動喫煙防止対策の推進に関する要望書」を衆議院・参議院の国会議員に送付・提出した。同要望書では、政府が通常国会への提出を検討している健康増進法改正法案について、建物内禁煙を基本とした実効性のある法的措置を講じることを求めた。
- 健康増進法改正案は、2017年の第193回国会(通常国会)に、小規模飲食店を除く全ての飲食店で原則禁煙とするなどの内容が盛り込んだ改正案が提出される予定だった。しかし、自民党厚生労働部会で反対論が噴出し了承されず、塩崎恭久・厚生労働大臣も強硬姿勢を崩さなかったため、改正案を閣議決定できず、第193回国会に提出できなかった。
- 2018年1月24日、全がん連は、日本癌学会(中釜斉理事長)、日本癌治療学会(北川雄光理事長)、日本臨床腫瘍学会(南博信理事長)と連名で「受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案に関する要望書」を加藤勝信・厚生労働大臣などに送付・提出した。
- 健康増進法改正案は、原則禁煙の除外範囲を拡大するなど前回の案より後退したが、2018年の第196回国会(通常国会)に提出され、7月18日に参議院本会議で可決・成立した。
その他の要望
- 2020年11月25日、全がん連は、小児がん・AYAがん(思春期・若年がん)患者団体有志とともに「小児とAYA世代のがん患者の妊孕性温存への支援を求める要望書」を田村憲久・厚生労働大臣などに提出・手交した。同要望書では、厚生労働省に対して、小児やAYA世代のがん患者が生殖医療を受ける場合の保険適応や助成制度の創設などの経済的支援を行うことなどを求めた。
- 2020年11月27日、全がん連は「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書」を菅義偉・内閣総理大臣などに提出した。同要望書では、医療体制のひっ迫を避けるため感染対策を強化し、がんなど命に関わる疾病の患者が必要な医療を受けられる体制を守るための施策を速やかに進めることや、新型コロナウイルス診療のための病床確保のために、がん患者などが転院せざるを得ない状況を回避するための施策を実施すること、経済的な困窮を理由に治療を中止・変更する患者が出ないよう、経済支援策を継続することなどを求めた。
がん教育への取り組み
- がん教育は、がん対策基本法にも推進が盛り込まれ、中学校では2021年度より、高校では2022年度より学習指導要領に基づいて実施される。医療者やがん経験者など「外部講師」が授業を行うことがあるため、国立がん研究センターの協力のもと、授業で配慮すべきことをまとめたガイドラインを作成するとともに、外部講師のためのeラーニングを開講している。
がん患者学会、がん患者カレッジの開催
- がん患者学会 - 全国のがん患者団体が集まり交流を深めつつ、現在のがん医療やがん対策の課題について学び、患者団体が取り組むべきことについて議論することを目的として開催している。
- 025年3月7日
2025年8月の引き上げ見送りへ 高額療養費制度 石破首相が表明 これまでの経緯は?
- キーワード:

【3月7日更新】
医療費が高額になった患者の自己負担を抑える高額療養費制度について、石破総理大臣は、ことし8月の負担上限額の引き上げを見送った上で、秋までに改めて方針を検討し、決定すると表明しました。
首相「ことし8月の引き上げ見送り」表明

高額療養費制度をめぐり、石破総理大臣は3月7日夜、総理大臣官邸で、がんや難病の患者団体と面会し、要望を聞いたあと、福岡厚生労働大臣と加藤財務大臣、それに自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長らと相次いで会談しました。
このあと石破総理大臣は記者団に対し「これまでも指摘を真摯に受け止め『多数回該当』の方の負担の据え置きや、令和8年度以降の所得区分の細分化の再検討などを行い、その点については、一定の評価をもらったが、ことしの分の定率改定を含め、今回の見直しについては、なお理解を得るには至っていない」と述べました。
その上で「患者団体に理解をいただけない理由の1つとして検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘をいただいており、政府として重く受け止めなければならない。患者の皆さまに不安を与えたまま、見直しを実施することは望ましいことではない」と述べました。
そして国会審議の中で立憲民主党や日本維新の会に加え、与党の中からも意見が出たことに触れ「ことし8月に予定されている見直し全体について実施を見合わせることを決断した」と述べ、高額療養費制度のことし8月の負担上限額の引き上げを見送った上で、秋までに改めて方針を検討し、決定すると表明しました。
さらに「患者の皆さまにとって大切な制度であるからこそ、丁寧なプロセスを積み重ねることで、持続可能なものとして、次の世代に引き継がれるよう心から願い、努力をしていきたい」と強調しました。
また「新年度予算案が衆議院を通過したのちにこのようなことを申し上げるのは大変申し訳ないことだと思っているが、引き続き、予算案の年度内成立に向けて努力していく。極めて厳しい決断であることを理解いただきたい」と述べました。そして引き上げの見送りを踏まえつつ、ヨアン案の年度内成立を図るため、必要な手続きをとるよう、与党に指示したことを明らかにしました。
患者団体「決断には感謝したい 今後の議論には患者も」
「全国がん患者団体連合会」の天野慎介理事長は7日夜、会見し、「決断には感謝したい。ただ、秋までに改めて制度のあり方を検討するということだが、そのプロセスについては言及がなかった。今回は短時間の審議で引き上げ案が示されたことが一番の問題だったと思っている。再び不十分な検討の中で同様の引き上げ案が出てくることを懸念している。今後の議論には患者も関わらせてもらいたい」と話しています。
また、「日本難病・疾病団体協議会」の辻邦夫常務理事は「石破総理大臣の決断は大変評価したいが、ここまで結論を先延ばしにしてきたことには問題があったと思う。今回は患者だけではなく、学会や地方自治体などからも反対の声が上がったが、今後は拙速に結論を出さないことを期待したい」と話しています。
(これまでの議論の経緯などをこちらにまとめています↓)
高額療養費制度とは?

去年12月、2025年度予算案の決定に向けた福岡厚生労働大臣と加藤財務大臣との折衝では、医療費が高額になった患者の自己負担を抑える「高額療養費制度」を見直し、2025年8月から、ひと月あたりの負担の上限額を引き上げることが決まりました。
「高額療養費制度」とは
高額な治療を受けた場合に、患者の負担が重くならないよう年齢や年収に応じて、ひと月あたりの医療費の自己負担に上限を設けているもの。
引き上げ額は?去年12月の協議では
政府は、高齢化に加えて高額な薬の利用などによって、医療保険の財政が悪化していることから、見直しの議論を進めてきました。そして、支え手となる現役世代の保険料負担を軽減するため、去年12月、ひと月あたりの負担上限額を、段階的に引き上げる方針を決めました。詳しくは以下の通りです。
2025年8月からの負担上限額(70歳未満) |
||
---|---|---|
年収 |
ひと月当たり |
上昇幅 |
住民税非課税 |
3万6300円 | 900円↑ |
~約370万円 |
6万600円 | 3000円↑ |
約370万円~ |
8万8200円程度 | 8000円余↑ |
約770万円~ |
18万8400円程度 | 2万円余り↑ |
約1160万円~ |
29万400円程度 | 4万円近く↑ |
具体的には、▼年収370万円から770万円の場合は、負担の上限額をいまより8000円余り引き上げて8万8200円程度に、▼年収770万円から1160万円の場合は、2万円余り引き上げて18万8400円程度に、▼年収1160万円以上の場合は4万円近く引き上げて29万400円程度にするなどとしています。
2027年8月からの負担上限額(70歳未満) |
|
---|---|
年収 |
ひと月当たり |
住民税非課税 |
3万6300円 |
~約200万円 |
6万600円 |
約200万円~ |
6万9900円 |
約260万円~ |
7万9200円 |
約370万円~ |
8万8200円程度 |
約510万円~ |
11万3400円程度 |
約650万円~ |
13万8600円程度 |
約770万円~ |
18万8400円程度 |
約950万円~ |
22万500円程度 |
約1040万円~ |
25万2300円程度 |
約1160万円~ |
29万400円程度 |
約1410万円~ |
36万300円程度 |
約1650万円~ |
44万4300円程度 |
そして2026年8月からは、年収の区分をさらに細かくした上で、2026年と2027年の2段階で上限額を引き上げ、例えば▼年収650万円から770万円の場合は、最終的に13万8600円程度に、▼年収1650万円以上の場合は44万4300円程度にする予定でした。
石破首相「制度のあり方を再検討へ」(2月28日の予算委で)

「高額療養費制度」の見直しをめぐり、政府は、ひと月あたりの負担の上限額をことし8月から段階的に引き上げる方針でしたが、患者団体などからの意見を踏まえて一部を修正し、長期的に治療を続ける患者の負担は据え置くとしていました。

これついて、2月28日の衆議院予算委員会で立憲民主党の野田代表は「お金のない病人は、死を選択せざるを得ないようなことをやってはいけない。1年間、引き上げを延期するという政治判断をしてもらいたい」と述べ、引き上げの全面的な凍結を重ねて求めました。

これに対し、石破総理大臣は、制度を持続可能にするため、見直し自体は実施したいとして、経済や物価の動向を踏まえたことし8月からの引き上げは予定どおり行う一方、来年8月以降の制度のあり方については、患者団体などの意見も聴いた上で改めて検討し、ことし秋までに決定する方針を示しました。
また、今後、新たに病気になり、長期的な治療が必要になった人も、自己負担を抑える措置の対象から外れないようにする仕組みを設ける考えを示しました。
そして石破総理大臣は「今後ともセーフティーネットとして制度が機能し続けるとともに、被保険者の保険料負担の増加にも配慮した持続可能性のある制度とすべく、改めて関係者の声を丁寧に承り結論を出したい」と述べました。
患者団体「失望の声が多い」(2月28日の会見で)

2月28日の衆議院予算委員会で、石破総理大臣が、ことし8月からの引き上げは予定どおり行う方針を示したことに「全国がん患者団体連合会」の天野慎介理事長は「なぜ引き上げるのか理解ができなかったし、その後の引き上げの扱いがどうなるのか、判然としなかった。患者からは失望の声が多く寄せられている。石破総理には勇気を持って立ち止まって、1年間延期したうえで、公的医療保険のありかたをじっくり考えてほしい」と話していました。
一方で、石破総理大臣が来年8月以降の制度のあり方については患者団体などの意見も聴いた上で改めて検討すると説明したことについて、日本難病・疾病団体協議会の辻邦夫常務理事は「この問題は超党派で考えるべきで、そこに当事者や一般の人が参画して解決していくべき問題だと思っているので、その働きかけをしていきたい」と話していました。
生体電位(せいたいでんい)とは生体信号の一種で動物や植物の生命活動に伴って生じる電位。
概要
[編集]菌類や単細胞生物も含めてあらゆる生物の活動で生体電位が生じるとされる。従来は据え置き式の装置でなければ生体電位の計測、取得は困難で用途は研究や医療診断関係に限られていたが、近年ではBITalinoのように測定装置の小型軽量化により応用範囲が広がり、ウェアラブルコンピュータにセンサが接続されて生体信号の取得、蓄積、分析が行われ、多様なアプリケーションが開発され、高齢者、障害者の自立支援等、適用範囲が拡大しつつある[1][2]。
計測項目
心電図
拍動に伴う微小電流。
脳波
脳の活動に伴う微小電流。
筋電図
筋肉の活動に伴う微小電流。
皮膚電位
皮膚に生じる微小電流。
本当だよ。みんなの体の中には、いつも弱い電気が流れているんだ。
例えば野球をしている時、転がってきたボールを目で見たら、体の中で何が起こると思う?
見たことやしたいことを弱い電気の信号にして、神経(しんけい)が脳(のう)に伝えてるんだ。
例えば「ボールが来たぞ」と伝える。そして「ボールを取れ」という脳からの電気信号を神経が手や足の筋肉(きんにく)に伝えれば、ボールが取れるというわけだ。

そんな風に体を流れる電気の状態(じょうたい)で、体の具合が分かったりもするんだ。
例えば、脳波という脳の電気信号や、心臓(しんぞう)の動きでできる電気信号で心電図という図を描(えが)くことができる。そうした図を見ることで、病気を調べることができるから便利なんだ。
ヒトの体から出ている電気を測ってみよう
2012.3 vol26
岡崎市立北中学校の生徒さんが体の電気信号について学びました。
ヒトの体もデンキウナギのように電気を発生します。摩擦電気や、1円と10円硬貨でできる電気など、電気にもいろいろありますが、もともとは同じものです。電気の共通点を、みんなの心臓からの電気を測って考えてみよう。
世界ではじめてつくられた電池(ボルタの電池)をためしてみよう!
アルミと銅と塩水でできる「ボルタの電池」をつくってみました。

●キッチンペーパー
●アルミのコイン(1円玉など)
●銅のコイン(10円など)
●食塩水


■作り方
ボルタの電池は銅と亜鉛の板と薄い硫酸を使用しますが、ここでは簡単に銅とアルミニウムのコイン、食塩水を使用しました。 銅のコイン→キッチンペーパー→アルミのコイン→キッチンペーパー→銅のコイン・・・・・・と順番に重ねて固定します。そしてキッチンペーパーに食塩水をしみこませます。
自分の心臓から発生する電気(心電図)を測ってみよう!
ヒトの体は、電気や化学物質(神経伝達物質)によって信号を伝達しています。筋肉を動かす時に発生する筋電位信号ではありませんが、筋肉が興奮すると周囲に電流が流れることにより電圧の差(電位差)が発生します。
心臓は刺激が心臓の筋肉(心筋)に伝わることで拍動(収縮と弛緩)を繰り返しますので、心臓が拍動するときにも心電図と呼ばれる電気的な活動が見られます。
心電図は、1903年に、ウィレム・アントホーフェン教授(オランダ)によって測定されましたが、この業績によって1942年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

心電図の記録方法はいろいろありますが、ここでは最も一般的な心電図である双極肢誘導という電極のつけ方をしました。
電極は、右手首に赤色、左手首に黄色、右足首に黒色(アース)、左足首に緑色の電極をつけます。両手の電極間で計測した電圧の差(電位差)をⅠ誘導、右手を足の間の電位差をⅡ誘導、左手を足の間の電位差をⅢ誘導といいます。
※心臓の詳しい仕組みは、せいりけんしみん講座の項を参照してください。
『未来の研究者』に夢をたくす -岡崎市立北中学校の生徒さんの感想ー
生理学研究所で、僕は2つの実験をさせていただきました。1つは、身近なもので電気を発生させる実験で、もう1つは心電図をとりました。この心電図では、心拍数などがわかり、医療の場でも利用されていると知りました。他にも人の体にも電気が流れており、その電気はかなり小さいなど、色々な話を聞かせていただきました。その中で多くの発明家の話も聞きました。どの発明家も生活の中で感じた疑問を研究しているということが分かりました。僕も身近な疑問を調べていきたいと思いました。
(中根直哉)
人間の体から出ている電気をとらえるというのは、体にたくさん機械をつけるのかと思いました。しかし、手首と足首に電極をつけるだけで、電気がとらえられることがわかりました。体に電気が流れる仕組みはイオンの移動が関係していて、電気ウナギはこれをうまくコントロールしているのには驚きました。今回の見学はすごく貴重で楽しい体験でした。
(西 淳平)
生理学研究所で、イオンやミトコンドリアなど専門的な話を聞きました。難しい内容でしたが、新しい知識を知る良い機会でした。学んだことを、もう一度調べて理解を深めたいと思いました。これから人体にもっと興味を持って生活していきたいと思いました。
(中根詩歩子)

生理学研究所で「人体に流れる電気信号について」のお話を聞かせていただき、改めて人体のしくみはすごいと思いました。
電池は、金属がとけたイオンの+、-によって電流が流れるしくみになっていて、また似たようなしくみで、人体に電流が流れていることを知りました。そして、電気は細胞で作られ、心臓まで伝わり、心臓が動いていることも知りました。
私は、今回学んだ細胞の働きをもっと深めていき、これからは不思議と思ったことは調べていきたいと思います。
(挟土沙詠)
(86)が死亡 医師や看護師など6人が搭乗 対馬から福岡の病院に向かう途中
長崎県対馬市から福岡市の福岡和白病院に向かっていた民間の医療搬送ヘリが消息を絶ち、その後、海上で転覆しているのが見つかった事故で、1人の死亡が確認されました。
第7管区海上保安本部によりますと、事故を起こしたヘリには男性機長(66)、男性整備士、女性看護師(28)、男性医師(34)、女性患者(86)、付き添いの家族の男性(68)の6人が搭乗していて、全員が救助されました。
女性患者と男性医師、付き添いの家族の男性の3人は心肺停止状態で、このうち女性患者の死亡が6日夜、確認されました。 ほかの3人についてはいずれも意識があり福岡和白病院に運ばれ手当てを受けています。
ヘリは対馬空港を午後1時半に離陸し、福岡和白病院に午後2時15分に到着予定でした。 ヘリは午後5時すぎに壱岐島の北東の海上で転覆している状態で見つかりました。
第7管区海上保安本部によりますとヘリは6日午後9時50分時点で、長崎県壱岐市の魚釣埼灯台から北北東約60キロの海上にあるということです。 ヘリが沈まないように措置し、巡視船が監視警戒を続けています。
テレビ西日本
こころのSOSサインに気づく
毎日ゆかいで、楽しく、うきうきしながらすごしたいもの。
でも、現実にはなかなかそうはいきません。
友達とうまくいかなかったり、先生や親とケンカしてしまったり……。
そんなストレスから、気分が落ち込んで元気がなくなったり、イライラして怒りっぽくなったりするのは、ごく自然なことです。
しかし、こうしたつらさがいつまでも消えずに、こころの中にとどまって、そのために体の調子も悪くなってくることがあります。
そんなときは、「こころの病気」の始まりである可能性も考えてみましょう。
また、こころの病気であっても、体調面の不調が中心のこともあります。病院に行っても原因がわからないときは、ストレスが原因かもしれません。
こころや体の不調に気づいたとき、つらい状態が長く続くときは、こころがSOSサインを出していると考えてみましょう。
感染症その他の疾患に関する
調査・研究の実施や医療の提供を通じて
安心できる社会の実現に貢献
「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」が誕生します。「JIHS」は世界トップレベルの「感染症総合サイエンスセンター」として、感染症をはじめとする様々な疾患、健康危機から人々を守ります。
2025年4月
「JIHS」がスタートします。
【JIHSの理念】
-
MISSION
JIHSの使命
- 感染症その他の疾患に関する調査・研究の実施や医療の提供を通じて安心できる社会の実現に貢献する
-
VISION
JIHSの将来像
- 世界トップレベルの感染症対策を牽引する「感染症総合サイエンスセンター」として、基礎、臨床、疫学、公衆衛生にわたるすべての領域研究を統合的に推進し、最先端の医療と公衆衛生対策を提供する
-
CORE VALUE
JIHSの信条
-
- Global
- 常に世界的な視野で
- Resilient
- 強くしなやかに
- Innovative
- 革新的に
- Integrity
- 公正かつ誠実に
- Professional
- 高度な専門性に基づき
【国立健康危機管理研究機構の4つの機能】
- 1.情報収集・分析・リスク評価機能(Disease Intelligence)
- サーベイランスや情報収集・分析の実施、国内外の関係機関との協働・連携により、感染症インテリジェンスにおけるハブとしての役割を担います。科学的知見を政府に迅速に提供するとともに、国民にわかりやすい情報提供を行っていきます。
- 2.研究・開発機能(Research, Development and Innovation)
- 平時より世界トップレベルの研究体制を確保し、基礎研究、シーズ開発から臨床試験まで戦略的に進められる組織を目指します。感染症危機の際には、国内外の機関等と連携し、臨床試験を含め研究開発のネットワークハブとして迅速に対応します。
- 3.臨床機能(Comprehensive Medical Care)
- 感染症危機にJIHSの持つ機能を十分に発揮するためには、高度な臨床能力が不可欠です。そのため、国立国際医療研究センターが担ってきた総合病院機能を引き続き備え、さらに高めていくことにより、人々の健康を守ります。
- 4.人材育成・国際協力機能(Human Resource Development, International Cooperation)
- 産官学連携や国際的な人事交流などを通して、医療従事者・研究者・公衆衛生実務者など多様な専門家の育成・確保に努めます。また、グローバルヘルスに貢献する国際協力を進めていきます。
令和7年4月「JIHS 」がスタートします
令和7年4月、国立国際医療研究センター と 国立感染症研究所が統合し,「国立健康危機管理研究機構(JIHS:Japan Institute for Health Security)」が設立されます。JIHSは、政府に科学的知見を提供する新たな専門家組織として、感染症等の情報分析・研究・危機対応、人材育成、国際協力、医療の提供等を一体的・包括的に行います。
画像をクリックすると国立健康危機管理研究機構(JIHS)のページへジャンプします。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)の概要
JIHSの役割(4つの機能)
- 情報収集・分析・リスク評価機能: サーベイランスや情報収集・分析の実施、国内外の関係機関との協働・連携により、感染症インテリジェンスにおけるハブとしての役割を担います。科学的知見を政府に迅速に提供するとともに、国民にわかりやすい情報提供を行っていきます。
- 研究・開発機能: 平時より世界トップレベルの研究体制を確保し、基礎研究、シーズ開発から臨床試験まで戦略的に進められる組織を目指します。感染症危機の際には、国内外の機関等と連携し、臨床試験を含め研究開発のネットワークハブとして迅速に対応します。
- 臨床機能: 感染症危機にJIHSの持つ機能を十分に発揮するためには、高度な臨床能力が不可欠です。そのため、国立国際医療研究センターが担ってきた総合病院機能を引き続き備え、さらに高めていくことにより、人々の健康を守ります。
- 人材育成・国際協力機能: 産官学連携や国際的な人事交流などを通して、医療従事者・研究者・公衆衛生実務者など多様な専門家の育成・確保に努めます。また、グローバルヘルスに貢献する国際協力を進めていきます。
トピックス
- 国立健康危機管理研究機構のプレサイトがオープンしました(令和7年1月15日)
- 国立健康危機管理研究機構の副理事長となるべき者及び 理事となるべき者の指名について(令和7年1月14日)
- 第2回国立研究開発法人審議会 国立健康危機管理研究機構評価準備部会(令和6年12月19日)
- 第1回国立研究開発法人審議会 国立健康危機管理研究機構評価準備部会(令和6年11月19日)
- 国立健康危機管理研究機構の理事長となるべき者の指名について(令和6年8月27日)
- 「国立健康危機管理研究機構の創設に向けて~感染症に不安のない社会を実現するために~」(令和6年4月9日 国立健康危機管理研究機構準備委員会)
- T-VISION(令和5年12月22日)
中期目標・計画等
関連法令等
関東各地に体感型ショウルーム「ハピネスプラザ」を設置しています。プラザは電位治療器などヘルスケア製品の効果を心ゆくまで体感できる場所です。
人生100年を見据え、健康で楽しい生き方を提案する健康サロン「ハピプラ」
ハピプラでは、治療器などヘルスケア製品の効果を心ゆくまで体感できます。
足を運ぶことで楽しく健康になり、 通えば通うほどに元気になる。
お越しいただいた皆様の健康増進に貢献できる体感型健康サロンを目指しています。
人間関係が希薄になっている時代、隣り合わせた人たちが互いに雑談ができる時間帯が提供されている。
友人を去誘ってみたが、ほとんど人は来ない。
「体験」が全てである。
わが国では、1960年代にブタクサ花粉症、次いでスギ花粉症、イネ科の花粉症などの報告がされており、その後花粉症は年々増加傾向にあります。
花粉症は、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり等のアレルギー性鼻炎や目のかゆみ、流涙などのアレルギー性結膜炎が最も多く見られます。また、まれに喘息やアトピーの症状を併発することがあります。わが国で最も多い花粉症は、地域差はありますが、春先に見られるスギ花粉症です。花粉症は日常生活に与える影響などによる社会的損失も大きい疾患です。
花粉症問題の解決に向けては、さまざまな関係府省庁が協力して、スギ花粉の発生源対策や花粉観測体制の整備、治療法の開発、発症の仕組みに関する研究などを進めています。
このマニュアルは、保健師など保健指導にかかわっている方々をはじめ、多くの一般国民の方々に、花粉症に対する新しい科学的知見や関連情報をご紹介するために作成しています。今般、最新の知見を踏まえて2022年版として改訂しました。多くの方々に本マニュアルが広く活用され、花粉症対策の一助となることを期待いたします。
環境省環境保健部環境安全課
1.花粉症のメカニズム
人の鼻では侵入してきた物質(抗原)を自分以外の物質(異物)と判断すると、これを無害化しようとする反応(抗原抗体反応)がおこります。その結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が出てくる病気をアレルギー性鼻炎と言います。花粉症は体内に入った花粉に対して人間の身体が起こす抗原抗体反応です。つまり、体内に侵入した花粉を異物と認識し、この異物(抗原)に対する抗体を作り、再度侵入した花粉を排除しようとする反応です。一般的には免疫反応は身体にとって良い反応ですが、時には免疫反応が過剰になり、生活に支障が出てしまいます。このように身体にとってマイナスに働いてしまう場合がアレルギーになります。
花粉症の場合には花粉を排除しようとして、くしゃみや鼻水、涙という症状がでますが、これらの症状が強く出過ぎるために生活の質が低下してしまいます。また、花粉症では花粉によって皮膚が荒れる、咳や喘息が起きる、特定の果物や野菜を食べると口の中が腫れたり、かゆくなったりすることがあります。スギ花粉症ではトマトによる口腔アレルギーが知られています。
アレルギー性鼻炎のメカニズム(鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版)
2.花粉症を発症するまで
花粉が体内に入ってもすぐに花粉症になるわけではありませんし、アレルギーの素因を持っていない人は花粉症にはなりません。身体の中に花粉が入ると、アレルギー素因を持っている人はその花粉(抗原)に対応するための抗体を作ります。この抗体はIgE 抗体と呼ばれるもので、花粉によって異なった抗体が作られます。この状態を感作が成立したと言います。感作が成立してもすぐに全ての人が発症するわけではなく、人によって期間が違いますが数年から数十年花粉を浴びるとやがて抗体が十分な量になり、花粉が身体の中に入ってくると何かのきっかけで、くしゃみや鼻水、目のかゆみや涙目などの花粉症の症状が出現するようになります。
これが花粉症の発症です。近年は飛散する花粉量の増加や体質の変化により、感作までの期間、発症するまでの期間が短くなり、小さな子供でも花粉症にかかるようになりました。
3.花粉症増加要因と症状を悪化させるもの
花粉症患者が増加している要因として、飛散する花粉数の増加、食生活の変化、腸内細菌の変化や感染症の減少などが指摘されている他、最近の研究では花粉症の症状を悪化させる可能性があるものとして、空気中の汚染物質や喫煙、ストレスの影響、都市部における空気の乾燥などが考えられています。
また、欧米では昔から枯草熱などの類似疾患が多く報告されていたのに対し、日本では1970年代前半から急に報告が増えたこともあり、食生活など生活習慣の欧米化による人間側の変化の影響を指摘する意見もあります。*
また、花粉症の症状と関連性の強いものの一つとして喫煙を指摘する報告がある他、換気の悪い部屋でのストーブやガスレンジなどの燃焼による室内環境の汚染も花粉症の症状悪化に関係するとの指摘もあります。さらに春先の黄砂が花粉症の症状を悪化させる可能性が指摘されています。*
なお、シラカンバ花粉症を発症した人の中でリンゴやモモなどを食べると口の中がかゆくなる口腔アレルギーを併発するケースが多くなっています。スギ花粉症でもトマト、ブタクサ花粉症ではスイカなどで同じ症状を起こす人もいます。
4.花粉症の患者数
日本において花粉症を有する人の数は、正確なところは分かっていません。全国的な調査としては、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査が1998年、2008年、2019年とほぼ10年おきに3回実施されています。それによると、花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%で10年ごとにほぼ10%増加しています。スギ花粉症も同様の傾向で増加しており、2019年には38.8%でほぼ3人に1人がスギ花粉症と推定されています。スギ花粉症以外のイネ科やブタクサ花粉症も増加しており、2019年には25.1%になっていました。
スギ花粉症に関する調査では、環境省が2002年から2年間、約5000人の小学生を対象におこなった大規模調査で、スギ花粉症の有病率とスギ花粉の飛散数や両親のアレルギー歴との間に関連があることが認められています。
2019年の全国疫学調査によると、年齢層別有病率はスギ花粉症では10代から50代で45%以上と高くなっており、この年齢層ではスギ以外の花粉症の有病率も30%前後と高くなっています。
スギ以外の花粉症
同様に全国の眼科医とその家族を対象にアレルギー性結膜炎の有病率を調査した結果があります。それによるとアレルギー性結膜炎の有病率は48.7%、スギ花粉を原因とする季節性アレルギー性結膜炎では37.4%、それ以外の季節性アレルギー性結膜炎は8.0%、通年性アレルギー性結膜炎は14.0%でした。
地域的な調査としては、2016年度(11月~12月及び2017年3月)の東京都の調査で、スギ花粉症の推定有病率は、あきる野市48.5%、調布市47.7%、大田区49.1%で、調査区市間にほとんど差を認めなかったとの報告があります。東京都では昭和58年からほぼ10年ごとに同じ地域の住民に対して同様の調査を行っています。各回の調査では有病判定の基準や推計方法に一部変更点があるため、推定有病率の変化を単純に比較することはできませんが、前回2006年(10月~11月)の調査では、各地の推定有病率はあきる野市28.0%、調布市27.1%、大田区28.5%でした。
また、年齢区分別(0~14歳、15~29歳、30~44歳、45~59歳、60歳以上)
のスギ花粉症の推定有病率は、全年齢区分で前回調査と比べて上昇していました。
Ⅱ.主な花粉と花粉時期
1.日本に多い花粉症
これまでに報告された花粉症は50種以上ありますが、大半は農家の方がハウス内で受粉作業などに行う場合の特殊なもので、一般に最も多い花粉症はスギ、ヒノキの花粉を原因とする花粉症です。樹木の花粉では他にシラカンバ、ハンノキ、オオバヤシャブシ、ケヤキ、コナラ、クヌギなどがあります。また、草本ではカモガヤ、オオアワガエリなどのイネ科の他にブタクサ、オオブタクサ、ヨモギなどのキク科、アサ科のカナムグラなどがあります。自分がどんな季節に症状が出るかで、原因となる花粉を推定できますが、耳鼻咽喉科、眼科、アレルギー科などの専門の医療機で、どんな花粉に感作されているか検査を受けることをお勧めします。
地域によっては内科や小児科でも検査や治療を受けることができます。
スギ花粉の電子顕微鏡写真を見ると表面にオービクルスと呼ばれる小さな粒子がたくさん
ついています。花粉症の原因となる物資(抗原)は花粉の中だけではなく、表面のオービクル
スにも含まれています。
ハンノキ(カバノキ科)
シラカンバ(カバノキ科)
カモガヤ(イネ科)
ブタクサ(キク科)
ヨモギ(キク科)
カナムグラ(アサ科)
2.主な花粉の飛散時期
主な花粉の飛散する時期は、地域によって多少違いがありますが、スギやヒノキは春が中心で、秋にも少量の花粉が飛散することがあります。カモガヤやオオアワガエリなどのイネ科の花粉は種類が多いために春から初秋までの長い期間飛散します。ブタクサやヨモギなどのキク科とカナムグラの花粉は夏の終わりから秋にかけて飛散しています。
3.花粉量や種類の地域性
日本で花粉量が圧倒的に多いのがスギ、ヒノキ花粉です。スギは北海道の南部から九州にかけての広い地域に植林されており、その面積はおよそ450万haですが、特に東北地方と九州に多くなっています。ヒノキは北海道と沖縄を除く各地に植林されていますが、東北から北陸には比較的少なく、東海地方から西に多くなっています。関東以西の地方では年によってスギ花粉よりヒノキ花粉が多く飛散することがあります。シラカンバの花粉は北海道では平野部でも多くなりますが、他の地域では標高の高い所に限定されます。オオバヤシャブシは太平洋沿岸の暖地に見られますが、特に関西地方で問題になっています。ハンノキは湿地に、ケヤマハンノキは林道沿いなどに多く見られる植物です。コナラ、クヌギは本州一帯で飛散していま
す。
スギ花粉について
<スギについて>
スギは日本列島に広く分布していますが、現在のスギ林の多くは植林された人工林です。以前はスギ科に分類されていましたが、現在はヒノキ科スギ亜科スギ属になっています。雌雄同株で樹高は30~40mにも及び、鎌状針型の葉が螺旋状についた枝先に花粉を飛ばす雄花ができます。雄花は5~7㎜で米粒状の形態をしています。スギは樹齢が25年から30年に達する頃から多くの雄花をつけるようになります。
<花粉ができるまで>
スギやヒノキは4月以降新しい葉が伸びはじめ、5月下旬から6月にかけて雄花や雌花の細胞が分化します。そして例年6月から秋にかけて雄花を形成します。この時期の日照時間が長く、気温が高いと雄花の量が多くなります。逆に冷夏や長雨の場合は雄花が少なくなり、翌年の花粉量が減少します。スギの雄花は11月頃までに完成し、中に大量の花粉が作られます。
その後低温や昼間の時間が短くなることによって活動を休止する休眠に入ります。一定期間低温にさらされることで休眠から覚め、開花の準備期間に入り、この期間の気温が高い暖冬であれば早めに開花します。ヒノキの雄花の完成は翌年の2月から3月になります。
スギの雄花は休眠から覚醒して開花時期が近づくと、雄花が伸長して外側に亀裂が入り、花
粉を包む花粉嚢が見えるようになります。この花粉嚢のうすい膜が破れ花粉の放出が始まりま
す。スギは1つの雄花に平均しておよそ40万個もの花粉が入っています。スギの花粉量は気
象条件や前年の生産量、スギ林の樹齢など様々な条件によって毎年大きく変動します。
Ⅲ.花粉症の予防と治療
1.花粉のばく露を防ぐために
花粉症の原因が花粉であることは、はっきりわかっています。このため花粉症の症状を緩和させ、発症を遅らせるためには花粉についての知識を持ち、いかに花粉を避けるかが予防の基本になります。花粉の飛散予測情報を有効に使いましょう。花粉は昼前後と夕方に多く飛散します。外出時の服装は花粉が付着しにくいものを選び、マスク、メガネなどで花粉を防ぎ、帰宅時には花粉を払うなどして家の中に花粉を持ちこまないようにしましょう。一般的な注意事項としては、睡眠をよくとること、規則正しい生活習慣を身につけることなどは正常な免疫機能を保つために重要です。風邪をひかないこと、飲酒、喫煙を控えることなども鼻の粘膜を正常に保つために重要です。
花粉の多い日
スギ花粉は、飛散が始まって7日から10日後くらいから花粉の量が多くなってきます。
その後4週間程度が花粉の多い時期に当たり、この期間内に次のような天気になると花粉が
特に多くなります。
① 晴れて、気温が高い日
② 空気が乾燥して、風が強い日
③ 雨上がりの翌日や気温の高い日が2~3日続いたあと
• マスク
• メガネ
• 服装
• 手洗い、洗顔
• 室内の掃除、換気
• 花粉の多い時間帯の外出を避ける
<マスク>
マスクの装用は通常のマスクでもかなり花粉を減らし、鼻の症状を軽くする効果があります。
大事なことは顔にフィットするものを選ぶことで、横に隙間ができるとそこから花粉が入ってしまいます。使いやすいマスクは顔にフィットし、息がしやすいもの、衛生面からは毎日交換する使い捨てのものが推奨されます。なお、マスクの内側にガーゼを当てること(インナーマスク)でさらに鼻に入る花粉が減少することが分かっています。
ガーゼマスク 不織布マスク
<メガネやマスクの効果>
実験ではマスクをしない場合に比べて、通常のマスクでも花粉をおよそ70%削減し、花粉症用のマスクではおよそ84%の花粉を減少させる効果がありました。メガネでも、メガネを使用しない場合に比べて眼に入る花粉量は通常の眼鏡でおよそ40%減少し、防御カバーのついた花粉症用のメガネではおよそ65%も減少します。
花粉の飛散している季節にコンタクトレンズを使用すると、コンタクトレンズによる刺激が花粉によるアレルギー性結膜炎の症状を悪化させる可能性があるため、メガネに替えた方がよいと考えられています。
マスクやインナーマスクは毎日交換することが推奨されています。
インナーマスクの作成方法
材料:市販のガーゼと化粧用のコットン
① ガーゼを縦横10cm程度に切り、2枚用意
② 化粧用のコットンを丸めて、1枚のガーゼでくるむ(インナーマスク)
③ 市販の不織布のマスクにもう1枚のガーゼを4つ折りにしてあてる
④ 鼻の下にガーゼでくるんだコットン(インナーマスク)を置く
⑤ ③のガーゼをあてたマスクを装着する
⑥ 息が苦しい場合にはコットンの厚さを半分にする
<服装>
一般的にウール製の衣類などは木綿や化繊に比べて花粉が付着しやすく、花粉を屋内に持ち込みやすいので、外出の際の服装にも気をつけることが必要です。また、同じ繊維でも織り方や用途によって花粉の付着の程度が大きく異なる場合があります。花粉飛散の季節の外出時の服装では外側にウール素材の衣服を着用することは避けた方がよいでしょう。人間のからだで花粉が付着しやすいのは露出している頭、顔、手などで、頭と顔はつばの広い帽子をかぶることで、手は手袋を使うことで花粉の付着量を減らすことが可能です。
日中屋外に4時間放置した時の各種繊維に付着したスギ花粉数を見ると、繊維の種類や織り方によって、花粉の付着量が大きく異なることがわかります。
花粉を家の中に持ち込まないために、洗濯物や布団を外に干さないようにしましょう。
<うがいと洗顔>
鼻の粘膜には繊毛があり、粘膜上の異物を輸送します。うがいは喉に流れた花粉を除去する効果があります。外出から帰ったらうがいをしましょう。
また、外出から帰ってきたら洗顔をして花粉を落とすとよいでしょう。しかし、丁寧に洗顔をしないと眼や鼻の周囲についた花粉が侵入し、かえって症状が悪化することがあります。また、水道水で洗うと粘膜を傷めることがありますので、生理食塩水(食塩を0.9%の濃度に溶かした蒸留水)を鼻の場合は体温程度に温めて、目は少し冷やして使用するとよいでしょう。
また、頭髪にも花粉が付着するので毎日シャンプーをするのも効果的です。
<室内の換気と掃除>
花粉飛散シーズンに窓を全開にして換気すると大量の花粉が室内に流入します。花粉の最盛期に行った実験では3LDKのマンション一戸で、1時間の換気をした場合およそ1000万個もの花粉が屋内に流入しました。窓を開ける幅を10cm程度にし、レースのカーテンをすることで屋内への流入花粉をおよそ4分の1に減らすことができます。流入した花粉は床やカーテンなどに多数残存していますので、掃除を励行し、カーテンは定期的に洗濯してください。
<花粉症関連グッズと民間療法>
花粉症関連グッズとして様々なものがありますが、実際に花粉症の症状を改善する十分なデータは得られていません。民間療法も有効と認められたものはありません。
2.花粉の観測予測について
花粉の飛散量測定には、ダーラム法に代表される単位面積(1平方cm)あたりに落下する花粉数を計測する重力法とバーカード法や花粉自動計測器などのように単位体積(1立方m)に含まれる花粉数を計測する体積法の2種類があります。現在の花粉情報は主にダーラム法によって観測された花粉数を基準にしています。
右ダーラム型花粉捕集器で最も普及している自動花粉捕集器はKH3000型の自動花粉捕集器です。空気中の25~30ミクロンの粒子を観測しています。春先に空中を飛散する30ミクロン前後の粒子は大部分がスギやヒノキの花粉です。また、ダーラム型の花粉捕集器は、2枚の金属製の
円盤の間にワセリンを塗ったスライドガラスを置き、24時間の間にガラス上に落下した花粉を染色して光学顕微鏡で計測する方法。日本では最も一般的な花粉の観測法です。
<花粉総飛散量の予測>
スギは6月~8月にかけて雄花となる細胞が分化して成長を始めますが、この期間の日射量(日照時間)や気温などによって雄花の量が変動します。下図は東京における毎年のスギ・ヒノキの花粉量と前年7月の全天日射量との関係を示したもので、日射量が多いと翌年の花粉量が多いという関係から花粉の総飛散量の予測が可能になっています。日射量は観測していない地点もあり、その場合は日照時間や平均気温を代わりに用いています。なお、2001年度の「花粉予測のための基礎的研究」では気象条件と秋に行うスギ林での雄花生産量調査のデータを組み合わせることによって予測精度が高くなることが分かっています。
<飛散開始時期の予測>
スギ花粉がいつ頃から飛散を始めるかは、初冬期(11月~12月)の気温及び厳冬期(1月から2月)の気温によって変化します。スギの雄花は11月頃には昼間の時間が短くなることや低温の刺激で休眠に入ります。1カ月余りの期間低温にさらされると休眠から覚めて開花の準備に入ります。前述の「花粉予測のための基礎的研究」により、休眠から覚醒までの過程がかなり明らかになり、初冬期と厳冬期の気温の推移を組み合わせることによって開始時期の予測がより正確になることが分かりました。休眠中の気温が低いほど覚醒が早
くなり、その後の開花準備期間の気温が高いほど飛散開始が早くなります。
○飛散開始日とは
日本各地で2012年から2021年に観測されたスギ花粉数の10年間の平均飛散数、最大飛散数、最小飛散数を図3-12(1)~図3-12(3)に示します。スギは樹齢が25年から30年になると花粉の生産量が多くなります。多くのスギ林がすでに樹齢30年以上になっています。スギの品種は200種類以上あり、花粉の生産量は主に太平洋側で多く、日本海側で少なくなっています。スギ花粉の平均飛散数は東北から関東、東海地方で多く、近畿から西の地方では少なくなっています。しかし、飛散数が最大になった年には、西日本でも4000個から8000個と平均のほぼ2倍と非常に多くなります。一方、最小年を見るとスギ花粉の多い関東から北の地方では少ない年でも1000個から2000個になっています。
〇ヒノキ花粉飛散数
日本各地で2012年から2021年に観測されたヒノキ花粉数の10年間の平均飛散数、最大飛散数、最小飛散数を図3-13(1)~図3-13(3)に示します。スギと同様にヒノキも樹齢が25年から30年になると花粉の生産量が多くなります。多くのヒノキ林がすでに樹齢30年以上になっています。ヒノキの平均花粉数は関東北部と東海から西の地方で多く、東北や長野、北陸で少なくなっています。最大花粉数も同じような傾向で、関東北部と東海から西の地方で極めて多くなっています。ヒノキ花粉の特徴は、スギ花粉よりも変動が大きいことで最小の花粉数は西日本を含め、すべての地域で500個以下になっており、ヒノキ花粉の多い地域では最大と最小の花粉数の差が1万個以上になります。
〇スギ・ヒノキ以外の花粉数
スギ花粉症以外で多い花粉症はハンノキを含む北海道のシラカバ花粉症とイネ科花粉症、ブタクサ花粉症です。北海道ではスギやヒノキの植林は極めて少なくなっていますが、本州と違って平野部でもたくさんのシラカバが植えられています。このためスギ花粉症は少なくシラカバ花粉症の人が多くなっています。北海道の札幌や旭川ではスギ花粉の数倍ものシラカバ花粉が観測されていす。
その他の花粉で多いのは、イネ科の花粉とブタクサの花粉です。市街地の観測ではイネ科の花粉もブタクサの花粉もそれほど多くはありませんが、河川敷や手入れのされていない広場や野原ではかなり多いことが報告されていますので、注意が必要です。
5.花粉症の症状が出たら
最近は初期療法といって、花粉の飛散開始前または症状の極軽い時から薬物を予防的に服用することで、症状の発現を遅らせたり、症状を軽くしたりする方法が用いられることが多くなっています。市販薬も使われますが、花粉症の症状が重い場合には耳鼻咽喉科や眼科での受診をお勧めします。他に内科や小児科、アレルギー科などでも診療を受けられます。なお、花粉症の季節は風邪が流行する時期と重なっており、くしゃみや鼻水が出現するなど風邪の初期の症状に似ています。しかし、花粉症では眼のかゆみを伴うことが多く、風邪と違って熱が高くなることはありません。
医療機関では、薬物療法として経口薬、鼻噴霧薬、点眼薬を処方します。経口薬では第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられていますが、鼻づまりが強い場合には抗ロイコトリエン薬も使われます。鼻は噴霧用の局所ステロイド薬、結膜炎の治療には抗ヒスタミン点眼薬やステロイド点眼薬が使われます。ステロイド点眼薬は眼圧上昇などの副作用があり、放置すると緑内障にいたる危険性もあるために、ステロイド点眼薬の使用中には定期的な眼科受診が必要です。症状の度合いや鼻づまりの程度によってどのような薬物を選択するかのガイドラインもできています。現在は薬物だけでは花粉症の症状を完全におさえることは難しく、自らが原因である花粉のばく露から身を守るセルフケアと薬物を用いるメディカルケアを同時に行うことが必要になります。
花粉症が完治する可能性があるのはアレルゲン免疫療法(減感作療法)だけですが、副作用や治療に長期の時間が必要なことなどの問題がある割には完治する率があまり高くありませんでした。近年、重篤な副作用が少なく、頻繁に医療機関を受診する必要のない舌下免疫療法が実用化され、良い治療成績をあげています。
さらに細胞の中の情報伝達をコントロールする薬剤の研究や、アレルギーの原因となる蛋白に対する抗体を花粉症の治療に応用するといった、新しい治療法の開発も進められています。
舌下免疫療法は、舌の下においたスギ花粉アレルゲンが吸収され、口腔・咽頭・頸部のリンパ節が反応し、アレルゲンが認識され、これによって制御性T細胞の増加を介して制御系の免疫誘導がおきると考えられています。
Ⅳ.国や自治体の取り組み
1.国や自治体の取り組み
(1)花粉症に関する政府の取り組み
○取組の趣旨
花粉症を有する者の数が約40%であるという報告もあり、花粉症は国民的な広がりを見せており、政府として関係省庁が一丸となって積極的に取り組む必要のある疾病である。
近年、花粉症に対する国民の関心は高まっており、引き続きこれまで以上に的確かつ効果的に施策を実施する必要がある。このため、次に記載する事項について、政府として、総合的かつ一体的な花粉症対策を実施する。
この基本指針の中で、「アレルギー疾患対策は、生活の仕方や生活環境の改善、アレルギー疾患にかかる医療の質の向上及び提供体制の整備、国民がアレルギー疾患に関し適切な情報を入手できる体制の整備、生活の質の維持向上のための支援を受けることができる体制の整備、アレルギー疾患にかかる研究の推進並びに研究等の成果を普及し、活用し、発展させることを基本理念として行わなければならない。」と示され、この基本理念に基づき、アレルギー疾患を有する者が前進して生活できる社会の構築を目指し、国、地方公共団体が取り組むべき方向性を示すことにより、アレルギー疾患対策の総合的な推進を図ることとしている。
①病態解明(文部科学省・厚生労働省)
・理化学研究所生命医科学研究センターにおいては、免疫システムの基礎的・総合的な研究を実施し、ヒトのアレルギー等疾患の発症メカニズムの解明を目指した生命医科学研究を推進している。
・厚生科学研究における免疫アレルギー領域の研究は、昭和47年から開始され、現在では「免疫アレルギー疾患政策研究事業」及び「免疫アレルギー疾患実用化研究事業」として、それぞれ厚生労働省及び国立研究開発法人日本医療研究開発機構において取り組まれている。
②研究拠点の整備(厚生労働省)
・国が推進する全国的な疫学研究、臨床研究等に協力するアレルギー疾患医療の全国
的な拠点となる中心拠点病院(国立成育医療研究センター及び国立病院機構相模原
病院)及び各都道府県でアレルギー疾患対策の拠点となる都道府県アレルギー疾患
医療拠点病院の整備をすすめている。
3)花粉症の対応策
①予防・治療法の開発・普及(農林水産省・厚生労働省)
・国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構は、スギ花粉症を緩和・予防することを目的として開発した米を民間企業に研究用試料として提供し、実用化の可能性を検討している。
・厚生科学研究における免疫アレルギー領域の研究は、昭和47年から開始され、現在では「免疫アレルギー疾患政策研究事業」及び「免疫アレルギー疾患実用化研究事業」として、それぞれ厚生労働省及び国立研究開発法人日本医療研究開発機構において取り組まれている。
②花粉の少ない品種の開発・普及(農林水産省)
・花粉の少ないスギ・ヒノキの品種開発を進めるとともに、花粉の少ない苗木の供給量を増大させるための生産体制の整備を進めている。
③花粉の少ない森林への転換等の促進(農林水産省)
・花粉発生源対策として、スギ人工林等の利用を進めるとともに、花粉の少ない苗木への植替、広葉樹の導入により、花粉の少ない森林への転換を進めている。また、花粉飛散防止技術の開発を促進している。
・花粉の少ない苗木の利用拡大に向けた森林所有者等に対する普及啓発等を実施している。
④花粉症に対する適切な医療の確保(厚生労働省)
・法及び基本指針において、国立研究開発法人国立成育医療研究センターと独立行政法人国立病院機構相模原病院がアレルギー疾患医療の全国的な拠点となる医療機関とした。
・また、国は、アレルギー疾患に係る医療の提供体制について検討を行い、その検討結果に基づいた体制を整備すること等とされたことを受け、平成29年4月に「アレルギー疾患医療提供体制の在り方に関する検討会」を設置し、平成29年7月に同検討会報告書をとりまとめた。同報告書に基づき、都道府県が、住民の居住する地域にかかわらず適切な医療や相談を受けられる体制整備を進めている。
・診療ガイドライン等の周知徹底を図る。
⑤花粉及び花粉症に関する情報の提供(厚生労働省・農林水産省・環境省)
・花粉症に関する関係省庁担当者連絡会議における情報交換を踏まえ、厚生労働省・農林水産省・環境省の花粉症関係サイトを相互にリンクし、引き続き関係省庁が連携して花粉症に関する情報提供の充実に努める。
・相談窓口の設置について、都道府県等に協力をお願いするとともに、各都道府県等の保健師等職員を対象に、花粉症対策に係る必要な知識を習得させ、地域における相談体制の確立のため、相談員養成研修会を実施している。
・花粉症に関する最新の科学的知見や関連情報を紹介した花粉症環境保健マニュアルを提供し、保健師などの保健活動に関わる方の活動を支援する。
・アレルギー相談センターにおいて、電話等により日常生活における注意や専門医療機関の所在等、花粉症に関する相談に応じる。
○その他
1)花粉症対策研究の総合的な推進(内閣府・関係省庁)
総合科学技術・イノベーション会議の下、関係省庁における花粉症対策研究の総合的な推進を図る。
(2)自治体等の取組
自治体等における花粉症に対する取組を紹介します。
東京都は昭和60年から花粉の定点観測を行っており、昭和62年にはわが国で初めてスギ・ヒノキ花粉の飛散予測を開始しました。
また、スギ花粉症患者が増加している状況を踏まえ、平成17年度から総合的な花粉症対策を推進するため「東京都花粉症対策本部」を設置し以下の取組を行っています。