法令違反で解散命令が確定した宗教団体 巨額詐欺の手法とは 2025.05.27 公開 TVer Hulu 今年3月、東京地裁が世界平和統一家庭連合 “統一教会”に対し解散命令を下したことが大きな話題となった。
“統一教会”側は即時抗告するとしている。これまで法令違反を理由に解散命令が確定した宗教団体は、一つがオウム真理教。
地下鉄サリン事件をはじめとする数々の凶悪犯罪を起こしていた。
もう一つの宗教団体は、宗教法人・明覚寺だった。
明覚寺が行っていたのは、総被害額124億円と言われる巨額詐欺。不安を煽り高額な供養料を要求していたその手法を再現ドラマで紹介した。
1990年頃、ある女性は悩み事があり信者となり、多額の金を払ってはアドバイスをもらっていた。
しかし、そのお金がなくなり相談すると「あなたが信者を救うお手伝いをするんです」と言われた。
数日後、女性は茨城県・本覚寺で研修を受けていた。それは「信者を救う先生」になる研修で、読経の仕方や僧侶としての作法などを習い、朝暗いうちから真言を唱えて歩き、滝に打たれるというもの。
わずか3ヶ月後、その女性は信者の相談に乗る「入信教師」と呼ばれる先生になっていた。
あるひとりの相談者女性は、数年前に幼い子供2人を残し若くして夫に先立たれ、長男がひどいアレルギー性皮膚炎を患い、同じ症状が次男にも現れ疲れ切っていた。
そんなとき、新聞の折り込み広告で寺のチラシを見つけ「鑑定料3000円で霊能者の鑑定で悩みや不安が解決する」という文言に惹かれ電話をかけた。
鑑定料を払うと薄暗い個室に案内され、つい最近先生となった女に相談を始めた。 先生の女は寺で3ヶ月間の訓練を行った後、最も重視されていた「話術の訓練」に入っていた。
僧侶から渡されたのは「相談者に供養を勧めるため」のトーク集。これまで入信教師たちが培ってきたマニュアルを基に、ロールプレイングをしながら学んでいたのだ。
この寺では新聞の折り込みチラシで悩みや不安などの相談をしたい人を募っていた。
相談の電話を受けた寺の職員は「電話受けの手引き」というマニュアルに沿って悩みの内容、家族関係などを聞き出し、相談者リストを作成。
相談者が来る前に、このリストを参考に鑑定をしておく。
「鬼業即知法」という名前の画数などから導き出せるという悩みの原因が書かれた早見表を使う。原因とされるのは水子霊、先祖霊、変死霊など霊的なものだった。
相談に来た人たちにはとにかく話をさせ、そのなかで「入信教師」は相談者の性格や置かれた環境、経済状態まで感じ取る。相談を聞くうちに人間関係を作り、最後に「今の息子さんたちの病気を治したいわけね?」と相談者の意思を確認。
そして「それではあなた個人の霊環境を視てみましょう」と告げ、「ずいぶん悪い状況だなぁ」「このままではつらいなぁ」と相談者に言い、「先祖の守りがないな」「ご先祖が出てるね。だからご主人が亡くなったんでしょう」「あなたのご長男もご主人と同じくらい早死にするね」などと脅しをかける。
相談者から「どうしたらいいんですか」という言葉を引き出すと、「本当はあなたが出家するのが一番なんだけど、子供がいて、そこまでできないでしょう?」
「まずは来週の月、火、水、寺に来なさい」「当然供養するには、お金がかかるんだ。わかるね?」「あなたは、水子はいないね。だから105万になるよ」と、一気に畳みかける。 戸惑いを見せた相談者に対し「霊障がすでに出だしている状況で、このまま悪くなる一方の悲惨な人生を歩むなんて」と、マニュアル通りに話していく。つまり「入信教師」の役割は、決められたマニュアル通りに話し多額の金を要求する詐欺行為だった。相談した女性はすぐに105万円を支払ったという。 なぜこんな怪しげな話に高額なお金を払ってしまうのか。脳科学の専門家によると、「人の脳にはメモ帳のような機能・ワーキングメモリがあり、私たちはこのメモを使ってあれこれ考えている。しかし不安を煽られたり、ストレスをかけられたりすると、そのことで数枚のメモ帳がいっぱいになり、ちゃんと考えることが難しくなってしまう」という。相談した女性の場合、夫がいない不安や子どもの病気の悩みでワーキングメモリの容量が少なく、よく考えることができない状態のときに先祖の霊がいるなどと脅されたことで、短絡的にお金を払ってしまったと考えられる。 このマニュアルを考えた寺の代表、門主と言われる男は元々エリートサラリーマンだった。関西地方に生まれ、大阪府内の大学を卒業、大手製薬会社に就職し「有能な営業マン」として評判だった。
その後退職し30代前半で関東に移り、健康食品などを売る訪問販売会社を始めて順調だったが、10数年後に業績が悪化。そこで男が始めたのが、安く買った地蔵を近所の寺に持っていき供養だけしてもらい、その地蔵を高額で販売するというものだった。長年の訪問販売で、流産などで子供を亡くし罪の意識にさいなまれている人が多くいることに気づき思いついたと考えられる。水子地蔵を供養料込みの十数万円で販売。 しかしこの詐欺的なやり方はトラブルが絶えず、男が次に目をつけたのが宗教法人だった。ある程度財を得た男は、京都の寺院を総本山とする由緒正しい寺で修行を始め、わずか1年足らずで僧の資格である僧籍を得た。
そして翌年、茨城県大子町に京都の寺の支配下として宗教法人・本覚寺を設立し、そこの住職になった。
1988年、本覚寺は京都の寺から独立。水子地蔵の販売員だった人たちを僧侶として教育し、関東各地に寺と称する施設を建設。
この頃、供養料を取るためのマニュアルが完成し、霊視商法システムが確立していたと思われる。 このビジネスを広めるために霊能者役は必要不可欠だったため、供養料が払えない相談者に研修を受けさせ、霊能者役をさせていた。
研修が終わると、門主を名乗る男が霊能者としての免状を与える。彼らは月15万円程度の給料をもらい、修行の一環として霊能者を演じ、相談者から金を引き出させる役目を担っていた。
前述の105万円を支払ってしまった女性は、さらなる地獄に突き落とされる。後日「浄霊修法会」と言われる供養を受けるための3日間の講習会に参加した。 そこでは護摩行が始まり、導師と言われる僧侶が紙に文字を書き、水につけた時の滲み方で霊の状態を見るという儀式が行われた。
「このにじんだ赤い色、よくないね。これは先祖に守る霊がない証拠なんだよ」と、滲みやすい水性の筆ペンを使いさらなる脅しに利用していた。 3日間の会に参加すると信者とされ、供養のために週に1度、寺と称するビルに通うよう言われ、ある日から相談に住職が加わった。
そして「これを配りなさい」と、護符と呼ばれる寺のチラシを渡し、「供養にはあなた自身も修行しないといけない」と言って、相談していた女性はチラシを100枚1000円で買い取り、パートに行かず寺を広めるためのチラシを配るようになった。
その女性は次第に生活費にも困るようになったが、住職は「あなたと同じ状況で長男を亡くした人がいる。土地と家を売って、お寺に納めなさい」と言い出した。彼女は何度も断ったが恐怖にかられ、結局、家と土地を売り1000万円を支払ってしまった。 女性は、そこまでしたのに息子たちの病気は良くならず、生活はどんどん苦しくなる。
ようやく彼女は寺を疑い始め、消費者センターに連絡した。実はこの頃、各地の消費者センターには、ほとんど同じ内容の相談が相次いでいた。 本覚寺の悪名が広がると、門主と言われる男は次の一手に出る。それは和歌山県高野山を巻き込んだ手口だった。 1200年ほど前、弘法大師空海が開いた真言密教の聖地・高野山。男が行ったのは高野山近くの寺の買収。そしてすでに宗教活動をしていない、いわゆる休眠状態だった明覚寺を500万円で購入。
これで男は名前に傷がない明覚寺という新たな宗教法人を手に入れた。 さらに男は、明覚寺買収と同時に、高野山の奥の院地区にある山林を民間会社から買い取り、そこに寺院施設を建て、これを明覚寺の持ち物に。そして総本山を「高野山 奥の院 明覚寺」と打ち出し、京都の寺で修行したことで真言宗を名乗っていた。高野山の関連寺院を装うことで、お布施や供養料の増額を狙う戦略だった。 そもそも宗教法人の売買は法が想定するところではなく、行政も、法人売買に関わらぬよう、指導を繰り返している。
にもかかわらず、責任役員の交代という方法で現在も売買行為は行われているという。
宗教法人は3人以上の責任役員が必要だがこの交代を規制する法律はない。そのため、宗教法人を手に入れたい人が寺院や神社の責任役員に裏で金を渡すなどして交代し 宗教法人の代表になることで実質的に買収することがあり今でも大きな問題になっている こうして見せかけの高野山ブランドを手に入れた明覚寺は、1994年、北海道から北九州まで道場を作り、霊視商法による被害は関西を中心に拡大を続けた。
男はそれぞれの寺に集めるべき供養料を設定し、そのノルマを達成させるため、僧侶たちの給与額は供養料をいくら集めたかによって左右されていた。愛知や大阪の寺院は「戦艦」と呼ばれ、毎月1億円前後集めていたという。 そんな中、被害を重く見た愛知県警が特別捜査本部を設置し、詐欺として刑事事件にすべく内偵を始めた。供養料を取り返すことが目的の民事訴訟と違い、詐欺として立件するには紛れもない証拠が必要。警察は被害者や脱会した元僧侶などから話を聞き証拠を集め、トーク集などマニュアルの存在を突き止めた。
さらに主任検事は門主が修行した京都の寺まで話を聞きに行き、明覚寺が真言宗を名乗る資格があるかを調べた。
すると大僧正は「私はそういうことを教えておりません。人に霊がとりついてるとか霊の祟りがあるとかを鑑定するなんてことは私が知っている範囲では知らんです」と証言した。
そして1995年10月、愛知県警は明覚寺や関連施設などに強制捜査を実施し、供養料を取るためのマニュアルなど詐欺の証拠となる資料を多数押収。僧侶たちを逮捕し取り調べると、多くの僧たちが「マニュアルに沿ってやっただけで霊能力はない」と証言した。
1996年2月1日、明覚寺の門主の男は逮捕され起訴された。その後の裁判で男には詐欺罪で懲役6年の実刑判決が下った。実行役の僧侶ら8人にも有罪判決が下された。
1999年1月には約300人の被害者が起こした民事訴訟も決着し、明覚寺が約11億円を支払うことになった。
2002年1月、文化庁が裁判所に解散命令を申し立て、オウム真理教に次いで2例目、明覚寺には法令違反を理由に解散命令が確定した。
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