創発企業経営

起業13年目の会社の経営、事業報告

創発企業経営 (17)

2012年08月14日 | 経営
楽天の創業時の戦略

前回、楽天成功の要因は営業努力と書きましたが、2012年7月23日の日経新聞には以下のような記事がありました。

「三木谷流ではもの足りず」

ある月刊誌は日本の経営者の特集で、三木谷氏を三つ星とたたえた。 だが、イノベーションの力量を問われるグローバルなIT経営の物差しならどうか。 業界を代表するもう一人の経営者、ソフトバンクの孫正義社長も手法は三木谷氏に近い。 玄関サイトのヤフー、ネット決済のペイパルなどを日本に「輸入」し業容を広げてきた。 (中略)

日本のIT産業構造を強くする観点からは、三木谷氏や孫氏のような起業家だけでは、やはり物足りない。 独自の技術や製品で世界をリードする企業があってこそ、そこに深くノウハウがたまり、業界の血となり肉となる。

問題は「グローバルなIT経営の物差し」で測れる起業家を日本が輩出できるかということだと思います。

韓国企業が日本企業を凌駕したのはオペレーションの優秀さにおいてであり、独自技術やイノベーションの力量よりも、ベンチマーキングによる既存技術の模倣をもとにしたスピード経営で結果を残しています。 オペレーションでもイノベーションでも世界から見れば後れを取りつつある日本にいきなりスター経営者が現れて世界の実業界をリードするというのは、過去のバブル期の夢の再現を未だに忘れられずにいるのか、現実的ではないように思います。

ではどうすればよいでしょう?

「創発」とは元来、生物学、特に進化理論の用語です。 生物が生き残る原因は、非常に小さな要因の積み重ねです。どのような理由で新しい企業が生まれ、成長するのか、またその一方でどのような企業が消滅していくのか? その分かれ目は、楽天の創業期の月5-6件の顧客獲得が示す極くちいさな要因の積み重ねです。

数年前にスズキ社長の鈴木修氏が「俺は、中小企業のおやじ」という本を出版しました。スズキ社長は 「スズキは中小企業」という徹底した考え方で経営を進めています。  企業の大小は比較の問題です。 世界的に見れば大企業はいくらでもある。 大企業だと思えば驕りが起こる。 要は驕ることなく、無駄を省いて努力することが大切だと言っているのでしょう。

 
適者生存というダーウィンの進化論は、生き残るのは強いものではなく環境にうまく適合したものであるといいます。

考え抜いた論理に基づくイノベーションより、できるだけ些細で「つまらない(しかし重要な)」 - 例えば、「飽きずに頑張る営業努力」 とか「人に会う前には腕立てや走って汗をかいて門前払いされないようにする」 といった要因の方が長期的に見れば、強固な成功要因となり得ます。 なぜなら、そこから得られる成果はコップの中にたまる一滴一滴の水のようなものであり、やがてはコップを確実に満たすことが明らかだからです。  そこには努力という嘘のない真実があります。 そしてその時期に、小さな組織ながら継続的な顧客獲得の努力をしたことが社会の時流と相まって、多くの人がインターネットでものを購入するという、販売や流通を変革する創発現象を引き起こしたといえます。

以上、創発経営の視点から見た楽天創業期の分析です。

最近、楽天の電子書籍コボ発売時、利用者の書き込みを全て消去したという行動は残念に思います。 今後は楽天の競争環境は、グローバル市場で勝ち残った強者と競合に移りつつあります。  本格的競争以前に、既に大企業の驕りが出たということでなければよいのですが。 



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