情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

村木事件、最高検報告書を批判しよう!~そして、可視化への反論を嗤う

2010-12-28 23:18:27 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 厚生労働省元局長の村木厚子さんが無罪になった郵便不正事件の捜査・公判を検証している最高検が報告書を発表した。この報告書にはすでにメスメディアを含む多方面から批判がなされているが、このまま幕をひかせないためにも、重複してもかまわないのでさらに批判を展開させることが有効だと思う。

 最高検が発表した報告書のPDF→http://www.moj.go.jp/content/000061293.pdf

 報告書の36頁から「第8 再発防止のための方策」が書かれている。全部で7つの項目が挙げている。いかに効果のない防止策かをみていきたい。

 1)特捜部の独自事件は、高検の検事長の指揮事件とし、高検において、証拠関係の十分な検討を行うこととする。
  →特捜を高検がチェックしても、結局身内であり、まったく、意味がない。村木事件で、高検がチェックしていたら防止できたのか?できたとは思えない。

 2)身柄事件について一部可視化(録音・録画)する。
  →脅したり、利益誘導したりして、虚偽の自白をとり全てのディテイルを固めた後で、録画してもまったく意味がない。

 3)全ての証拠書類及び主要な証拠物の写しを提出し、証拠上の問題点を報告することを義務付ける。
  →証拠書類の作成過程で問題があることをチェックできない。証拠物は「全ての」ではなく、「主要な」となっており、抜け道がある。

 4)主任検察官を補佐する検察官を新設する。
  →主任2人制度として、まったく同じ情報を共有するなら少しは意味があるが、補佐では…。2人が共謀した場合には役に立たない。村木事件でも、複数の検察官が無実であることに気づいていたにもかかわらず、とまらなかった。

 5)当初の見立てに固執せず引き返すこともできるような指導・決済態勢とする。
  →あくまでも精神論。どのようにして実効あるものにするのか?

 6)公判担当検察官が捜査担当検察官とは別個の観点で証拠などを検討し、公訴取り消しなども検討するよう周知する。
  →あくまでも精神論。どのようにして実効あるものにするのか?

 7)電子データは複写を作成した上、原本を封印・保管する。
  →当たり前の話。これすらしていなかったことが信じられない。これをしたから、捜査の適正化が十分になるわけではない。

 
 …こんな再発防止策に何の意味があるのだろうか。何かをしたというアリバイでしかない。





 やはり、完全可視化、証拠の全面開示、起訴前勾留期間の短縮化、この3つを実行するほかない。このうち、完全可視化については、要望する声が大きくなってきたせいか、産経新聞のように一部可視化さえだめだなんていう反論もでてくる。しかし、それらの反論は、反論の体をなしていない。

 よく言われるのは、(1)被疑者との間に信頼関係を築いてこそ反省させることができる、とか、(2)暴力団員から組織の情報がとれなくなるとか、(3)海外では盗聴などの捜査手法が認められているが日本では認められていないため犯罪がはびこる、とかいうものだ。

 反論(1)、(2)は、録画したビデオが第三者の目に触れることを前提としている。しかし、自白が無理に(あるいは誘導して)言わされたものかどうか、ということが裁判で争いにならない限り、録画されたビデオは公判で公開されることはないし、第三者の目に触れることもない。弁護人が録画ビデオを見て自白が無理にとられたことを争うことができると考えた時だけ、外部の人が見る可能性がでてくる。

 したがって、適正な取り調べをしてさえいれば、反論(1)、(2)がいうところの弊害は現実には起きないわけだ。


 結局のところ、本音は、反論(3)なのだろう。少々違法なことをしてでも自白をさせた方が治安を守ることができるんだからごちゃごちゃいうな、ということだ。

 しかし、根本的に間違っている。違法な捜査、人権侵害捜査を前提にするのではなく、もし、本当に必要なら、必要な限りで新しい捜査方法の導入を検討すればいいだけのことだ。

 そのような分析をしないままに、反論(3)を主張されても、本音は捜査側にとってあとで問題になることを避けるためであるとしか思えない。

 ほかに、可視化をすると起きる弊害ってありますか?

 可視化への反論大募集です!

 すべて論破いたしましょう!


  


 







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裁判官は世の中を変えられるってことを共有しよう~解雇された沖縄基地従業員が復職へ

2010-12-28 07:11:16 | 有事法制関連
 このブログでも何度か書いてきた【米軍パワハラ解雇訴訟は、国が最高裁への上告を断念し原告勝訴の控訴審判決が確定したことで、原告の安里治さん(49)=北中城村=の復職に向けた日米間の協議に入った】(http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-12-27_13223/)という。福岡高裁那覇支部が踏み込んだ判決を出したことによって、日米の不平等な関係にまったをかけることができたわけで、裁判官個人個人がいかに、世の中を変えることができるか、それゆえに、もっと、裁判所の判決に対してマスメディアや市民が踏み込んだ評価をしなければならないか、ということを改めて考えさせられる。

 この事件で正面から問題となったのは、安里治さんが解雇させられるようなことをしたかどうか、ということだったが、その裏で、諸機関労務協約の及ぶ範囲も問題となった。この協約は、【在日米軍が必要とする労働力を提供するために防衛省が米軍との間で結ぶ労務提供契約の一つ。同協約では、基地従業員の解雇が「安全上の理由」と判断された場合、日本の裁判所で解雇無効の判決が確定しても米軍側が復職を拒むことができると規定されている】(上記沖縄タイムス)。

 このため、高裁が「解雇は無効である」との判断を前提に和解を勧めた段階では、国側は米軍が「安全上の理由」という建前で復職を拒むであろうとの判断のもと、和解成立に至らなかった。

 そこで、控訴審は「(司法判決に反して)米軍が復職を拒める『安全上の理由による解雇』に当たらない」と踏み込んだ判断を示し、米軍に対して、日本の司法判断を無視するかどうか、という鋭い問いを投げかけた(冒頭の画像参照)。

 さすがに、米軍も駐留先の国の司法判断を完全に無視することは困難と判断したのだろう。【24日にあった原告側と沖縄防衛局との初の協議では、復職に関して、国側が「安里さんの要望を聞きながら進めていきたい」と柔軟な姿勢だったといい、配置換えなどでの復職に展望が開けてきた】というのだ(上記沖縄タイムス)。

 もし、高裁がこのような判断を示さなかったら、たとえ、解雇無効の判決が出ても、「安全上の理由」による解雇だから、判決に従わなくてもいいという事になった可能性が大きい。その場合、米国は、今後も、日本に対して同じ様な姿勢で他の問題についても臨んでくることとなっただろう。

 一つの裁判所の判断がある日本の市民の人権侵害を回復させるとともに、将来の人権侵害を防ぐことになったわけだ。

 高裁の3人の裁判官に敬意を表したい。

 
 他方、裁判官が変な判決をした場合、社会に与える悪影響は大きい。デモなどの表現の自由に関する判決、戸別訪問などの選挙運動に関する判決の積み重ねが、日本の社会を閉そく的なものにしてしまったことは否定できないと思う。

 
 たとえば、立川ビラまき事件は、第一審は無罪と判断したが、東京高裁は、逆転有罪とした。その理由は【ビラによる政治的意見の表明が言論の自由により保障されるとしても、これを投函するために、管理権者の意思に反して邸宅、建造物等に立ち入ってよいということにはならないのである。つまり、検察官の所論が主張するように、何人も、他人が管理する場所に無断で侵入して勝手に自己の政治的意見等を発表する権利はないというべきである。したがって、本件各立入り行為について刑法一三〇条を適用してこれを処罰しても憲法二一条に違反するということにもならないと解される】などというものだった。

 つまり、法に触れたんだからアウト、ということで片づけているわけだ。そこには、形式的に触れた法が何を求めているのか、被告人らの行為を形式的な違法とすることによって、社会において何が失われるのか、という深い考察はない。


 このときに左陪席を務めた裁判官がグリーンピースの「横領」鯨肉「窃取」事件の青森地裁判決の裁判長として下した有罪判決の理由は次のようなものだった。

【いわゆる非政府組織(NGO)に属する被告人らの調査活動の自由が,表現の自由を保障する憲法21条の精神に照らして, 十分尊重に値するとしても, その調査活動に関し, 他人の権利を不当に侵害することが許されないのは当然であるから, 被告人らの行為を建造物侵入, 窃盗の罪に問うことは, 憲法21条に違反しないというべきである】

 立川事件の高裁の考え方とまったく同じ考え方に基づいている。まぁ、同じ裁判官だからある意味仕方がない。しかし、仕方がないですませてきたために、日本は閉そく的な社会、人権侵害許容国になったのではないだろうか。


 中央の新聞・テレビは、那覇支部の判決とその意義をほとんど伝えていない。まずは、これを伝えることから、「裁判への評価」報道を始めませんか?

 マスメディアがそのような報道を行わなかったことが、不当な判決をはびこらせてきた結果につながっている。批判的な報道が難しいなら、せめて、素晴らしい判決がでたときには、きちんとその意義を報道してほしい、と思うわけです。


 ちなみに、グリーンピースの事件では、【監督する立場で調査捕鯨船に乗っていた水産庁職員5人が、調査した共同船舶(東京)から鯨肉を無料で受け取り、国家公務員倫理規程に違反したとして、同庁は22日、3人を戒告、1人を訓告、1人を厳重注意処分にした。1999~2008年に調査捕鯨船に乗船した5人は調査終了後、鯨のベーコンや赤肉を1人あたり3~7.5キロ分受け取っていた。1万5千~7万円相当。鯨肉は共同船舶からそれぞれの自宅に郵送された。】という成果を現に挙げている(http://www.asahi.com/national/update/1222/TKY201012220483.html)。税金で運用されていることを考えれば…。



●「在日米軍は、日本の裁判所の解雇無効の判決を拒否できる~全国紙は無視?」(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/373ebf8fd08df4c3d9ae5747941b098f)

●「これが、諸機関労務協約だ~日本が米国の属国である証拠」(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/26deeb7db753fa221557f59e7570769d)

●「沖縄米軍基地従業員を復職させよ」高裁那覇支部が涙の出る判決!~マスメディアはどう報じるのか?(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/94cf96ae7f8335a54f22563504969430)



 

 


 
 



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