情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

裁判官は世の中を変えられるってことを共有しよう~解雇された沖縄基地従業員が復職へ

2010-12-28 07:11:16 | 有事法制関連
 このブログでも何度か書いてきた【米軍パワハラ解雇訴訟は、国が最高裁への上告を断念し原告勝訴の控訴審判決が確定したことで、原告の安里治さん(49)=北中城村=の復職に向けた日米間の協議に入った】(http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-12-27_13223/)という。福岡高裁那覇支部が踏み込んだ判決を出したことによって、日米の不平等な関係にまったをかけることができたわけで、裁判官個人個人がいかに、世の中を変えることができるか、それゆえに、もっと、裁判所の判決に対してマスメディアや市民が踏み込んだ評価をしなければならないか、ということを改めて考えさせられる。

 この事件で正面から問題となったのは、安里治さんが解雇させられるようなことをしたかどうか、ということだったが、その裏で、諸機関労務協約の及ぶ範囲も問題となった。この協約は、【在日米軍が必要とする労働力を提供するために防衛省が米軍との間で結ぶ労務提供契約の一つ。同協約では、基地従業員の解雇が「安全上の理由」と判断された場合、日本の裁判所で解雇無効の判決が確定しても米軍側が復職を拒むことができると規定されている】(上記沖縄タイムス)。

 このため、高裁が「解雇は無効である」との判断を前提に和解を勧めた段階では、国側は米軍が「安全上の理由」という建前で復職を拒むであろうとの判断のもと、和解成立に至らなかった。

 そこで、控訴審は「(司法判決に反して)米軍が復職を拒める『安全上の理由による解雇』に当たらない」と踏み込んだ判断を示し、米軍に対して、日本の司法判断を無視するかどうか、という鋭い問いを投げかけた(冒頭の画像参照)。

 さすがに、米軍も駐留先の国の司法判断を完全に無視することは困難と判断したのだろう。【24日にあった原告側と沖縄防衛局との初の協議では、復職に関して、国側が「安里さんの要望を聞きながら進めていきたい」と柔軟な姿勢だったといい、配置換えなどでの復職に展望が開けてきた】というのだ(上記沖縄タイムス)。

 もし、高裁がこのような判断を示さなかったら、たとえ、解雇無効の判決が出ても、「安全上の理由」による解雇だから、判決に従わなくてもいいという事になった可能性が大きい。その場合、米国は、今後も、日本に対して同じ様な姿勢で他の問題についても臨んでくることとなっただろう。

 一つの裁判所の判断がある日本の市民の人権侵害を回復させるとともに、将来の人権侵害を防ぐことになったわけだ。

 高裁の3人の裁判官に敬意を表したい。

 
 他方、裁判官が変な判決をした場合、社会に与える悪影響は大きい。デモなどの表現の自由に関する判決、戸別訪問などの選挙運動に関する判決の積み重ねが、日本の社会を閉そく的なものにしてしまったことは否定できないと思う。

 
 たとえば、立川ビラまき事件は、第一審は無罪と判断したが、東京高裁は、逆転有罪とした。その理由は【ビラによる政治的意見の表明が言論の自由により保障されるとしても、これを投函するために、管理権者の意思に反して邸宅、建造物等に立ち入ってよいということにはならないのである。つまり、検察官の所論が主張するように、何人も、他人が管理する場所に無断で侵入して勝手に自己の政治的意見等を発表する権利はないというべきである。したがって、本件各立入り行為について刑法一三〇条を適用してこれを処罰しても憲法二一条に違反するということにもならないと解される】などというものだった。

 つまり、法に触れたんだからアウト、ということで片づけているわけだ。そこには、形式的に触れた法が何を求めているのか、被告人らの行為を形式的な違法とすることによって、社会において何が失われるのか、という深い考察はない。


 このときに左陪席を務めた裁判官がグリーンピースの「横領」鯨肉「窃取」事件の青森地裁判決の裁判長として下した有罪判決の理由は次のようなものだった。

【いわゆる非政府組織(NGO)に属する被告人らの調査活動の自由が,表現の自由を保障する憲法21条の精神に照らして, 十分尊重に値するとしても, その調査活動に関し, 他人の権利を不当に侵害することが許されないのは当然であるから, 被告人らの行為を建造物侵入, 窃盗の罪に問うことは, 憲法21条に違反しないというべきである】

 立川事件の高裁の考え方とまったく同じ考え方に基づいている。まぁ、同じ裁判官だからある意味仕方がない。しかし、仕方がないですませてきたために、日本は閉そく的な社会、人権侵害許容国になったのではないだろうか。


 中央の新聞・テレビは、那覇支部の判決とその意義をほとんど伝えていない。まずは、これを伝えることから、「裁判への評価」報道を始めませんか?

 マスメディアがそのような報道を行わなかったことが、不当な判決をはびこらせてきた結果につながっている。批判的な報道が難しいなら、せめて、素晴らしい判決がでたときには、きちんとその意義を報道してほしい、と思うわけです。


 ちなみに、グリーンピースの事件では、【監督する立場で調査捕鯨船に乗っていた水産庁職員5人が、調査した共同船舶(東京)から鯨肉を無料で受け取り、国家公務員倫理規程に違反したとして、同庁は22日、3人を戒告、1人を訓告、1人を厳重注意処分にした。1999~2008年に調査捕鯨船に乗船した5人は調査終了後、鯨のベーコンや赤肉を1人あたり3~7.5キロ分受け取っていた。1万5千~7万円相当。鯨肉は共同船舶からそれぞれの自宅に郵送された。】という成果を現に挙げている(http://www.asahi.com/national/update/1222/TKY201012220483.html)。税金で運用されていることを考えれば…。



●「在日米軍は、日本の裁判所の解雇無効の判決を拒否できる~全国紙は無視?」(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/373ebf8fd08df4c3d9ae5747941b098f)

●「これが、諸機関労務協約だ~日本が米国の属国である証拠」(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/26deeb7db753fa221557f59e7570769d)

●「沖縄米軍基地従業員を復職させよ」高裁那覇支部が涙の出る判決!~マスメディアはどう報じるのか?(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/94cf96ae7f8335a54f22563504969430)



 

 


 
 



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Please HELP Okinawa. 75% of the American bases in JP is in the islands, only 0.6% of JP land. Relocate #Futenma base outside.

Marine in Futenma must go back to your country. There is no place where the base of Marine is acceptable in Japan.

Okinawa and a lot of Japanese oppose the transfer of the Futenma base to Henoko


At least180 MPs of ruling parties say NO to Futenma relocation within Okinawa. Check this http://bit.ly/9jQIW8





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