情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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新靖国Q12.台湾、韓国の遺族の人々は何故靖国神社合祀の取下げを求めているのでしょうか

2007-02-14 06:21:24 | 靖国問題Q&A
Q.台湾、韓国の遺族の人々は何故靖国神社合祀の取下げを求めているのでしょうか。

A.親、兄弟、祖先の霊が靖国神社に囚われていると考え、その解放を願っているのです。

    靖国神社は、軍人、軍属として亡くなった日本人だけではなく、軍人や軍属として狩り出された台湾、韓国など旧植民地の人々も、本人や遺族の意向に関わりなく勝手に祭神として祀っています(この点は日本人についても同様です)。当事者らの意思に関係なく、遺族に連絡もないままにです。中には生存しているのに祀られてしまっている人すらもいます。しかも植民地下、創氏改名、つまり日本名のままで「○○みこと命」として祀っているのです。ですから、台湾、韓国の遺族の人々が合祀の取下げを求めたならば、靖国神社はこれに応じなければならないのです。
    しかし、同神社は神道の教義として一旦合祀したものは取下げできないと遺族の要求を突っぱねています。こんな馬鹿なことがありますでしょうか。死者や遺族の意思に無関係に、天皇との「関係」だけで勝手(合祀後の連絡もなし)に祀ってしまう。こんな傲慢な「宗教」が他にあるでしょうか。かつて、日本は台湾、韓国などの植民地に神社を建立し、現地の人々にその参拝を強制しましたが、そのことについての反省がないのです。
    韓国ソウル郊外に海外で亡くなった人々のための慰霊施設「望郷の丘」があります。そこに父の墓を作ったドキュメンタリー映画「あんにょん、サヨナラ」の主人公でもある李煕子さんは、朝鮮人軍属として靖国に合祀されている父の魂を取り戻すまでは、名前を刻まないとしています。霊魂に対する考え方は、その国、地方によって異なりますが、死者に対する慰霊の気持は尊重しなければなりません。
    2006年8月11日から15日まで、「平和の灯をヤスクニの闇へ キャンドル行動」として、日本(ヤマト)、沖縄、韓国、台湾の4地域から人々が東京に集まり、集会、文化交流、デモ等連続行動を行い、8月14日には約1000名によるキャンドル人文字「YASUKUNI NO!」を作り、アッピールするなどしました。韓国から国会議員11名を含む250名、台湾から立法院議員1名を含む50名の参加があり、全日程を成功裡に終えました。
    8月12日、上記キャンドル行動に参加した韓国の国会議員ら10余名が、韓国人戦没者の合祀の取下げを求めて靖国神社に申し入れに行きましたが、その際、神社境内にいた人々の群れの中から「朝鮮人帰れ!」という罵声が飛びました。勝手に合祀をしておいて「朝鮮人帰れ!」はないでしょう。恐らくこの罵声を浴びせた人物は「神聖な」靖国神社に韓国・朝鮮人も祀られていることを知らないのではないでしょうか。
    東京新聞8月23日付朝刊コラム〈論説室から〉「靖国参拝と台湾人」は、前期キャンドル行動に参加した台湾の立法院委員高金素梅さんらについて、「日本の植民地であった台湾では、多くの台湾人が戦地に赴いた。時代の風潮に逆らえず出征した人も少しはいただろうが、多くは名誉と思い、光栄と感じていたと現地で聞いた。」「台湾で犬に噛みつく(靖国合祀に反対)のはたった二人。立法委員は台湾国内での票目当てのパフォーマンスだ。それなのに、『台湾人の遺族も反対』とは大きなミスリードだ。…」と書いております。驚くべき妄言です。

    同じ植民地支配といっても、台湾と韓国ではニュアンスの違いがあるのは事実です。台湾の場合は日本が去ったあと国共内戦に敗れた国民党が来て苛烈な弾圧政策を敷いたということもあって、その反感が強く、日本に対する反感は韓国ほどは強くないようです。
    しかし日本は、韓国と同様台湾でも「皇民化」政策を強行し、これに抵抗した人々に対して霧社事件──1930年台湾台中州霧社で発生した高砂族の抗日反乱──に見られるように容赦のない弾圧を加えた事実は消せません。「高砂義勇隊」のように日本軍が台湾原住民を「義勇隊」の名の下に陸上特攻(捨て駒としての切込隊)として使った事実も記憶されておくべきです。
また植民地出身者を軍属として捕虜収容所の看守などに使ったため、日本の敗戦後、BC級戦犯として処刑された人も少なくありません。

「蓬莱の島の若草も
ラバウルの島に散るが悲しき
今日の日を神様は
何と母に知らせていよう
     交わりし四年歳の友よ
      別れの手振りも懐かしく
     友よ泣いてくれるな
      明日の光を心に秘めよ
          天壁山(台湾人軍属)」
           (杉浦義教「ラバウル戦犯弁護人」光人社文庫)

    植民地支配と日本軍の捨て駒という二重の被害者たちを護国の英霊として、本人・遺族らの意向と関係なく、しかも加害者(日本人)側と一緒に祀っている靖国神社のデタラメさについては多言を要しないでしょう。靖国神社に祀られることが、何が「名誉」「光栄」なことでしょうか。

    今般、内閣府を通じて小泉首相宛になされた靖国参拝反対・台湾人戦没者の合祀取下げ申入書には、高金素梅さんを含め28名の立法委員が署名しています。「台湾で犬に噛みつくのはたった二人」というコラムは、歴史的事実を無視した妄言以外の何物でもありません。ヤスクニの闇、日本の闇には深いものがあります。
    なお、日本人で靖国神社に合祀されている者は、戦傷病者・戦没者遺族等援護法の対象となっていますが、台湾、韓国の人々は合祀されてはいるものの援護法の対象外となっています(台湾については、その後特別立法により一部対象)。
    靖国神社は旧植民地の人々をも合祀している(その意思を問うことなく)理由として、彼らも天皇の軍隊(赤子)として日本のために戦って亡くなったからだとしていますが、それならどうして援護法の対象とならないのでしょうか。いわゆる国籍条項による差別です。
    この点に関し、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者「同進会」会長李鶴来氏は、以下のように述べています。

    「       BC級戦犯 韓国・朝鮮人への償い未完
      『BC級戦犯』だった私がスガモプリズン(巣鴨刑務所)から釈放されて、この10月で50年になった。私が問われた罪は何だったのか。……
      私たちが日本軍の軍属として『徴用』され、朝鮮半島から南方各地に派遣されたのは42年の夏だった。捕虜収容所での監視任務に就かされたが、捕虜の取扱いを規定したジュネーブ条約も教えられず、粗悪な衣食住、医薬品の欠乏、過酷な労働環境の中で、各地の収容所で多数の犠牲者を出した。当時17歳の私にとっては厳しい任務だった。
      敗戦後、捕虜虐待などの『通例の戦争犯罪』を行ったとされ、無謀な捕虜動員計画を立案・遂行した責任者より、現場の捕虜監視員が多数、BC級戦犯として訴追された。監視員の多くは朝鮮と台湾の青年で、合計321人が有罪となり、内49人が処刑された。
      理不尽を負わされた無念もさることながら問題はその後の日本政府の対応にあった。私たちは『日本人』として収監され服役したが、釈放された時は『外国人』。その後は『国籍がないから』と補償や援護の対象から外されたのだ。先に釈放された仲間や友人の世話で生き延びてきたが、日韓のはざまで見捨てられた身分だった。…………
      韓国政府は今年6月、私たち朝鮮人元BC級戦犯は、植民地時代の日本の強制動員の被害者であると初めて認定し、11月中旬までに合計83人の名誉を回復してくれた。…………戦後61年たってようやく、韓国の国民がBC級戦犯問題を知り、理解するところとなった。………………
      この問題解決の残りの半分は日本政府が動いてくれない限り、実現しない。私たちを捕虜監視員にして派遣したのは韓国政府でなく、日本国なのだから。
      立法府は因果関係を踏まえて、『深刻かつ甚大な犠牲ないし損害』(最高裁)に対する立法措置を速やかに講じて欲しい。日本国民の道義心と良識に改めて訴えたい。」(2006年朝日新聞「私の視点」)

     靖国参拝問題とは直接は関係がありませんが、このようなことを放置しておいて『美しい国へ』と語るのは虚しいことです。まず戦後補償を実現して   『道義ある国』になることが先決です。

■■以上、内田雅敏弁護士執筆■■

日本人遺族は票田だから遺族年金を出すが…





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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