特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第458話 終着駅の女Ⅲ 東京駅・青山圭子の逃亡!

2009年01月22日 03時28分29秒 | Weblog
脚本 橋本綾、監督 北本弘
1986年3月27日放送

【あらすじ】
雨の中で出会った中年男と若い女。女をホテルに誘った中年男は、持て余していた様子の大金を女に渡す。女は札束に火をつけると、男に「一緒に死んで」と持ちかける。「いいよ、死んでも」中年男は動じることもなく、女の言葉を受け入れた・・・
悪徳サラ金業者が殺害され、現金二千万円が奪われた。使用された拳銃は警視正のものと判明。警視正は橘の警察学校以来の友人であり、昨日から行方を消していた。警視正の無実を信じつつ、捜査に乗り出す橘。
警視正の自宅を訪ねた橘は、男の射殺死体を発見。それは、数年前に罪もない通行人を殺害した通り魔で、最近、釈放されたばかりだった。別居していた警視正の妻を訪ねた橘は、二人の結婚生活が愛の無いものだったと聞かされる。貧しい生い立ちゆえに、上昇志向の強かった警視正は、大物政治家の娘だった妻を“出世のためのバックボーン”として利用していた。だが、10歳になる息子を亡くしたとき、警視正は“上だけを見つめる人生”に疲れたのかもしれない。そう妻は語った。
その後、さらに子供数名を殺しながらも無罪となった覚醒剤中毒者殺が死体で発見される。警視正の凶行の理由を解き明かす神代。「彼は、自分の気に入らない奴を、すべてあの世へ連れて行こうとしている。そして最後は・・・」
その頃、中年男、すなわち警視正は女のアパートに転がり込んでいた。「東京を離れたい」と思いながらも、過去に犯した罪ゆえに、東京から出ることを恐れる女。「東京は、私みたいな女が住むのに一番いい場所。大きくて、汚いゴミ箱みたいな街だから」「俺たち、ゴミ同士って訳だ」女の言葉に微笑む警視正。そこに、何者かが乱暴にドアを叩く音が・・・
警視正が青山圭子なる女と一緒だとつかんだ特命課だが、女の部屋に踏み込んだところ、そこに残されていたのは、女のヒモであるチンピラの死体だった。女の過去を調べたところ、かつて男を殺して服役していた過去が判明。「誰にでも、ふっと、すべてを捨ててしまいたくなるときがある。その点で、あの二人は似た者同士なんだ」警視正の気持ちを代弁する橘に、神代や桜井は危機感を募らせる。
警視正が女と泊まったホテルから、1頁だけ破られた時刻表が発見され、東京駅に網を張る特命課。二人は警官隊によって資材置き場に追い詰められる。「四人殺したなら、残った弾は二発。東京は出られなかったけど、ここで終わりにしよう」と、女は警視正とともに死ぬことを願う。女を突き飛ばし、警官隊の前に姿をさらす警視正。銃を構える警官隊に、声が飛ぶ。「撃つな!」それは橘の声だった。橘と視線を交わした警視正は、自らのコメカミに銃口を当て、引き金を引いた。
「もう一人殺せたのに、男はみんな嘘つきね」自分を殺さなかった警視正への恨み言をこぼす女に、橘は真実を語る。「警官は、実弾5発しか装填しない。あんたと一緒に死にたくても、もうその弾がなかったんだよ。生きてて欲しかったんじゃないかな?あんたに」「残酷な人ね、男だけが、勝手に一人で死んじゃって。女はゴミ箱みたいな街に、一人だけ残されて・・・」
事件は解決したが、警察上層部では警視正に自殺を許したことを問題視する。「私が警官隊を止めたせいで・・・」と謝罪する橘に、神代は「私はそうは聞いてない。橘は警官隊にではなく、警視正に叫んだと聞いている」と答え、不問に付すのだった。
その後、女の消息を知るものはない。いまも東京から出られないであろう女の行く末を案じつつ、「東京は、一人で生きるには、少し寂しすぎる街なのかもしれない」と橘は思った。

【感想など】
視聴意欲をとことん低下させる「終着駅の女シリーズ」第3弾。高橋悦史演じるところの警視正の存在感もあって、序盤は「前2話よりは良い出来ではないか?」と思っていた本編ですが、終わってみれば「うんざり」という言葉しか出てこない、前2話以上の空回りっぷりでした。
意味不明な死にたがり女などをからめずに、警視正と橘のドラマにすれば、まだしも盛り上がったのではないかと思います。あるいは、どうしても女と警視正による「行きずりの男女の逃避行ドラマ」にしたいのであれば、特命課を完全な狂言回しにして(拳銃の装弾数について橘が語るシーンにしても、神代が橘をかばうシーンにしても、付け足しとしか思えない適当な展開なんだから)、二人の心理をもっと克明に描けばよかったのはないか、など、いくつか改善策は思いつくものの、今さら何を言っても虚しいだけです。

それにしても、あの女は一体何だったのか。実際問題、稼いだ金を燃やしてしまったら生活は成り立たないと思うのですが、そのへんはどうなってたんでしょうか?この女はもちろん、(というか、この女の意味不明な繰言に時間をとったがために)警視正がなぜ死にたがったのか、まるで理解できない(想像できなくはないが、少なくとも画面上からは一切伝わってこない)ため、視聴者からすれば感情移入のしようがありません。
シリーズ3話を通して言えることですが、結局のところ、自分の不幸な境遇に酔った女の妄言を聞かされただけ、という印象しか残りません。自らの悪事への反省もなければ、罪の意識すらなく、“どん底”といえる境遇に堕ちながら、そこから這い上がろうとする意欲もない。そんな自堕落な女たちの生き様を美化するこのシリーズは、果たして何だったのか?特捜史上に残る大きな謎として、今後も語り継がれることでしょう(私はあまり語りたくありませんが・・・)。