巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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君の影響力

2017-03-08 23:35:10 | 
振り向けば君が、君の笑顔が
なんて妄想を思い描くのは
冴えない風体をした二度目の僕
僕は僕じゃない僕を生きて
君の関心を惹こうとする

今の僕は愛らしい愛玩動物ではなく
牙を折られてなお獰猛な野獣
僕は獲物を襲っては取り逃がす
君達の魂が無限である限り

発火する(鎮火せよ)
落下する(着地せよ)
直撃する(回避せよ)
突撃する(停止せよ)

ヤケになりそうな僕をなだめる声
君と暮らした頃の穏やかな僕に戻れと
神のお告げが聞こえたような気がした
僕の人生が豊かだったあの頃
僕は僕であり、僕そのものだった

すべてを失った今、薄汚れた僕は
真反対の新しい自分を目指す
牙を捥がれた虎として

君の影響力は計り知れない
僕をここまで変えてしまった
愛されて、可愛がられて
時には家族の一員にされて
君の側で毎日が煌めいていた

そう思っていた僕が
君の寵愛を失い猫から虎へ
ここまで変わるものなのか
人生なんて儚いね
虎として生きる僕には
牙もないし、餌もないよ

朝のラッシュアワー
僕は吊り革を握り、立ったまま眠る
よくあんな体勢で、と思うと
魔術師のように目的地で目を覚ます
疲れ果てた毎日はそんな暮らし
かつて牙を剥き出しにしたシャム猫の僕は
虎と化した今、牙を求めて路頭に迷う

人生なんてそんなもの、儚いね