巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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忘却の彼方に

2018-04-30 08:44:30 | 
「忘却の彼方に」

この世のありとあらゆる神々よ

私は漆黒の夜空を彩る星座
思いのままに姿形を変えて
衆人の視線を浴びていよう

夕暮れ時が迫るとき
陽光が徐々に弱まる
私は潜めた姿を現す

うっすらと
ひっそりと

私は夜空を彷徨う琥珀色の魂
万人がそれとわかる美の象徴
君達が滲ませる涙と相俟って
誰かと寄り添おうと誓うのだ

うっとりと
ゆったりと

過ぎゆく春のよう
迎えくる夏のよう
秋と冬は遠い過去になってしまった

或る大人が子を連れて
私達の夜空へ昇ってきた
私は「還れ」と一言囁いた

旅路の終着点は遥かに遠い
君達はまだ終わりを知ってはならない
はじまりを忘れてしまったのと同様に


私が私である限り

2018-04-29 21:26:23 | 
「私が私である限り」

腐臭を放つ淀みにすら疎ましがられ
私はどこに生きればよいというのだ

満足そうに空を流れる雲も
限りなく遠く駆ける閃光も
すべてを散りばめた世界に
つと緩やかに引き裂かれる

夢のまにまに
心中を歌い尽くしたから
とめどなく流れる未来も
旅立った夜空にたゆたう

地の果てから湧き上がる太陽も
すべてがすべて現実なのだから
取り合わないのは偏に私の痛み
君だけを責めることはやめよう

あの瞬間に消えかけた星々を
すべて覆い尽くした煤色の雲
あゝ、それもいいじゃないか
奇跡はきっと永遠に包まれる

零れ落ちようとする涙さえ
その揺らぎを間際で留めて
もう一度だけ繋ぎとめたい

私の居場所をつくりましょう
君の居場所をつくりましょう
この世に居場所はまだありますか?

頼りない生は不自由の結晶
私にはもう私への期待はないから
この呪縛からこの身を放つがよい


迷いなき退場

2018-04-28 18:05:39 | 
迷いなき退場

すべてが光に照らし出され
すべてが闇に覆われる現在
何物にも依存しない存在を
私達が目にすることはない

人生を過度に不安視せず
人生を適度に楽観視せよ
絶望は身を滅ぼすから

高く積み上げた丸石が
今、脆くも崩れ落ちる
あまりに不安定な均衡が
私達の肉体を、魂を構成している

人間という産物をどこまで信じるのか
「親友」という二文字をせせら笑う君
私はふと空恐ろしくなり
布団を頭から被り、現実を放棄する

今日も17時半の時報が鳴った
良い子はウチに帰るべし
いつから24時を越えても
誰にも気兼ねをしなくなったのか

こうやって年齢を重ねて
規則というものに無関心になり
そしてすべてを得たつもりで
そのすべてを喪うのだろう

黒に満ち溢れ、それでも人生
悩みも迷いも存分に塗りつぶし
道連れにこの世を退場すべく
私は孤独の風を肩で切って歩く

揺らぐ心

2018-04-22 17:30:06 | 
「揺らぐ心」

光は永遠に沈み
闇に隠れては消えるけれど
大空に着火した夕陽は
心の傷を照らし出してくれる

初夏の生ぬるい風は
本当に身に沁みるから
私は息継ぎさえできずにいる
軽やかなステップを刻む自分を
もう一度呼び起こしてみたいのに

緑は鮮やかに色付いて
今日という一日が
たまらなく愛おしくて
そんな自分が切なくて
すべてを喪いかけている毎日

やることは
やめることと同義だと
かつての師が諭した言葉を
今、私の心が滔々と自身に語る

あゝ、哀愁漂う私の人生
正しいことは何なのか
決して忘れてはならない
今この瞬間の煩悶と懊悩を

意味もなく愛し合うより
永遠の夢を追うことは罪なのか

窓外で雀がまた一羽去った
今日も終わりが近付いてきた



時の在り処

2018-04-14 18:21:35 | 
「時の在り処」

今この瞬間が常に奇跡だと
感じることが素晴らしい
信じ合い、赦し合い、
生きていくのだと諭す君
果てしなく続く未来は
人生の奥のほうにある
君の言葉は随分前のもの
私はいつまでも変わらず
時の在り処を知ろうとする
その意味が少しわかってきた近頃
ふと窓の外を見遣ると
柔らかな風が樹木を揺らす
一瞬一瞬が時を積み重ねる
君の言葉を紐解くかのよう
ごく自然にそう感じるのだ
奇跡の積み重ねが人生であると
私はいつ身を以て体感するのか

歩行者が自転車に追い越された