巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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ふたりぼっち

2018-09-22 01:38:23 | 
『ふたりぼっち』

突然に降り出した雨
僕達は行き場を失う
聳え立つビルの窓から
七色の傘の行方を追った

記憶の片隅にぶらさがった
モノクロームの残像に
癒されては、また足掻いた
成り行きに身を任せて
懸命に笑った

物陰に隠れて
ふたりで遊ぼう

何を言っても仕方ないなんて
考えるだけ無駄じゃないか
当たり前に笑おうと
天空に指を差した

君の言葉は溶けてしまった
裏腹に僕は叫ぶよ
強くありたいと願って
夜はまだ長く続く

君が眠るまで一緒さ
夜空に頬杖をついて

遠い未来を集めて

2018-09-17 13:52:40 | 
『遠い未来を集めて』

懐かしい声が聞こえてきた
柔らかで、たおやかな
南向きの夏風に乗って
もう暦の上では秋だというのに

晴れやかな空を見上げては
アンニュイな気分を遮断する

「あの日の幸せは真実ですか?」

果たせぬ約束を交わして
遠い、遠い未来に腰掛け
誰も届かぬ地の果てを見つめ
当たり前ではない人生を思うのだ

過去にすがる私ではないさ
未来の断片を集める

夢のまにまに風は流れて
ふと耳を澄ませば
また懐かしい声が聞こえてくる
春が遠いよ

「過去を追うより、先を夢見よう」

遠く、遠くを見渡せば
私の庭には薔薇が一面に広がる
さよなら、咲いて散りゆく運命
誰もが彷徨いながらも生きる
感謝もない、美しい世界で

夏の終わり

2018-09-15 23:37:36 | 
『夏の終わり』

足元には細い道
爪先で探るも心許ない
揺るがぬ体躯などないから
転落も辞さない覚悟

振り返ると長い道
セピア色した数々の記憶
仄かなアカシアの匂いと
決別して迎えたこの季節

終わらない夏

誰もがそう言って微笑んだ
僕は赦しを乞うて回った
時は人を変えると信じて
そんな一時の感情なんて
信じるほうが間違いさ
夕陽は落ちるよ

昨日打ちのめされた彼だって
今日は随分滅入った彼だって
夜は優しく包み込むから
道はいつか開けると信じた

君の空は高く、青く
否、灰色に沈着してしまって
いったい誰が残るのか
この夏に耽溺する蜻蛉

もう、夏も終わりさ

形なきもの

2018-09-09 23:48:29 | 
「形なきもの」

交錯する有形と無形
君が壊れていく
いや、君は壊れている
かろうじて形を保ちながら

整然と居並ぶ街並が
私の目には死して見える
無機質なモノクロの世界
通い合わない心と心

無関心が蔓延るこの街
すべては失われてゆく

形あるもの
みんな崩れゆく
私の心
形なきもの
均しく壊れゆく

大切とは何か
それは源流
生まれ育った幸せ
それは現在
死してゆく君と道連れ
それは未来
まだ形なき世界

死を前にしてなお壊れない
私を待たずして逝くのか
形なきもの