巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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もう還らぬと誓った空へ

2018-03-24 19:17:54 | 
「もう還らぬと誓った空へ」

もう還らぬと誓った空へ
季節を跨いで、また姿を現す

時の風が外の樹々を揺らす
少しだけ肌寒い空気が
連れてくる温かな心

目醒め
それは光
それは風
それは音であり
春の化身は少しよそ行き

眠り
それは闇
それは波
それは涙であり
魂の権化は美醜の現身

自分であって自分でない自分に
心で出会った瞬間からの長い道程

僕は時を描き、君の笑顔を誘って
言の葉を贈り、君の笑顔を奪った

失ったものは数知れず
欲深い人間がただひとり

肌で感じる街の賑わい
無邪気な子供達の笑顔と笑い声
それだけで充分なのかもしれない

木枯らしに怯え、時雨に涙したあの頃
麗らかな春の到来を快く受け容れよう

あと少しだけ歩いてみようか、未来を


無為

2018-03-18 22:17:07 | 
「無為」

過ぎ行く時が僕を嘲笑う

もうやることがないのだと
慢心でなく
諦観でなく
純粋に敗北して
すべての努力は泡沫と化した

君の血と汗と涙は
美しくも何ともないと
神に宣告されたとき
心が折れた

裏切りでも憎しみでもなく
バランスを失って
登り詰めたバベルの塔は崩壊した

生まれ変わるべきと
忠告でなく
命令でなく
人は簡単に言うけれど
すべての可能性が否定された

才気あふれる文体だ、などと
人に褒められたいのは愚の骨頂
君が書く文章は劣悪だ、最低だ
また心が折れた

何が焦りを生むのかわからぬまま
早く季節を廻らせなければならない
誰もがぼんやりと明日を待ち受ける時
僕はリアルに恐怖を感じるから
終わりを告げる鐘はあまりに残酷だ

あゝ、沈黙は恐ろしい
僕はただひとり足掻き
話し相手を探すのだ
誰もいないこの闇夜の中で

無為でいることの恐怖に
少しずつ気付き始めたとき
僕に残された時間は短いから
束の間すべてを忘れてしまおうと
投げ出しかけている自分を肯定する

今日という一日がこうして始まって
何も変わらぬまま終わっていくことに
僕は一抹の不安を感じながら
何もかもが真っ暗な世界で
ひとり立ちすくむ自分を慰める

あと数時間の猶予をくれないか
赦されては侮られる人生に
一輪の花を咲かせてみたいのだ



苦し紛れの人生に終止符を打つのは
何を隠そう自分だから
僕を追いやるすべてを赦す
そうやって自分を追い込むことは
決して得策ではないけれども
苦しみはやはり変わらないから
自分自身も変わらず歩もう

あゝ、僕はきっと明日いないだろう
形を変えて存在するのだろうか
夢の中の自分を手に入れて
僕の人生を根底から覆そう
誰も、僕さえも願わない何かの終わり
この一筆で、また心が折れた

過ぎ行く時が僕を弄ぶ

花の旅

2018-03-14 00:59:14 | 
『花の旅』

窓の外に一陣の風
ごうごうと迫る、急かす

慌てない、今飛び立つから

白銀の扉はもう開いた
季節は全自動の万華鏡

一面の蓮華畑を越えて行こう
響き合う木霊は自然の交響曲

旅立ちの日を夢想しながら
窓際で貪り眠る初春の午後

早く行こう、微笑んだまま


か弱きものへ

2018-03-11 23:39:31 | 
「か弱きものへ」

人生は勝ち負けではなくて、入れ替わりがあり、移り変わりがあって、私の立ち位置に誰か他の人が座り、私は行き場を見失って、だから何処かへ行かねばならず、彷徨い、移ろいながら、年齢を重ね、なんとなくそれらしい気分でこの世の中でひっそりと暮らしていて、そんな自分でも生きていていいのだと、誰もが自然に思うことを変に難しく考えて、自分の存在価値なんてどこにも転がっていなくても、誰かが拾い上げてくれるかもしれないし、自分で捻りだしてしまえばいいし、相容れない誰かを赦すことだって我慢することじゃないし、放置することだって、無視することだって、忘却することだって、誰かの目からすれば赦しなのかもしれないし、私が創り出す未来がたとえ美しくなかったとしても、誰もそんなことに関心を示すことなく、ひとり落ち込んだところで何も変わらず、自分だけが惨めな思いをするのかもしれないし、こんな風に疾走し、遂には失速することですら、珍しいことでなく、誰にでもあることかもしれないし、とはいえ自分がこんな木偶の坊であることを認めることはやはり不本意なことだけど、他人の目からすれば至極当然のことなのかもしれないから、無駄口を叩くこともなく、自分の駄目さ加減を早く認めれば、少しは楽に生きることができるかもしれない

そんな自意識過剰な人間存在である私は鎮魂の歌を七年経ってもやはり唄おうと思うのだ

人間という、か弱きものへ

肩の荷を少し降ろそう

生まれ変わり

2018-03-11 09:30:01 | 
「生まれ変わり」

今日がもしも始まりならば
僕に明日はあるのだろうか
辿り着きたかった未来へ
僕の手は届くのだろうか

生きてきた日々
続けたい人生

すべてが始まりに繋がるから
嘘はまかり通らない

真実を追及すればするほど壊れていく
知ってしまうことを恐れていやしないかい

僕は昨日までの自分を託し
銀河のタクシーに乗り込む
明滅する星々が混乱を招く中で
車はブレーキを踏むことなく
僕は地球へ向かう

安易に想起してはならない領域へ
意図せず近づいている自分
どうすることもできぬ虚しさ
それを拭い去るのは
ちょっとした勇気と決意なのかもしれない

躓いた今日という一日が始まりの日
今までの自分を思い返して
今、決別のときが来たと自覚し
まだ明日があると意図的に錯覚を試みる

命を繋ぐ自分
それは美しいものであってほしい
辿り着きたかった未来など
実はまだこの目に見えていないとしても