巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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或る病

2018-05-27 17:18:26 | 
「或る病」

徐々に陽が翳って
心に陰鬱な情念が巣食う

時の経過とともに自分を失う
幾たびとなくこの恐怖と戦ってきた

透き通る空に
橙色の夕闇が訪れ
あっと言う間に
漆黒の夜闇に転じる

そして人々はすべての身支度を終える

おやすみ……

ベッドに入る前に
遠い夜空を眺めて確信する
朝が来るまで夜が守ってくれる

夜闇に手をそっと伸ばし
星を手繰り寄せ
銀河の響きを
奏でる

そして決して叶わぬ夢を
ひとり待ち侘びる
浅き夢の中で
叶える

鼓動を感じる
生が脈打つ

心の中でつぶやく
おやすみ……


不安定な人間存在

2018-05-27 14:34:15 | 
「不安定な人間存在」

洋々と拡がる海原を見つめる二十年前の若輩者
彼の魂が死んだのはいつの日だったか
残った身体を支配する邪気に蝕まれ
あと何日、あと何時間
今の自分でいられるのかわからない

そもそも、今の自分とは何なのか?
死に至る病に憑りつかれ
これが最期の痛みだと何度確信したことか
薬漬けにされたこの身体は
もはや今の彼でも過去の彼でもない

何が救いになるのか天を恨みもした
このまま終わることも既に覚悟済みだ
あと一日、あと一時間がほしい
そう虚空に訴えているうちに
いつの間にか、大人になってしまった

この世の悲哀もある程度知り
自分より苦しんでいる者の存在を当然知りつつも
自らを守ることに汲々しながら
自分が生きる意義を探してみたり
安定とは程遠いところにいる人間存在

そんな出来損ないの彼はいかにも人間的だ
そう思い始めたのはいつの日だったか
友を持ち、家族に支えられ
何となく人生なるものを歩んでいる
そう素直に受け容れられる気がした

だから、いつ消えることも覚悟している
支え合いの日々ですら、
この胸の鼓動を全否定するその時まで

二十年前の若輩者に語りかけたい
洋々と広がる海原を遠くに見遣りながら



すべては時のいたずら

2018-05-26 17:09:31 | 
「すべては時のいたずら」

何も見えない世界の中で
ただもがく回遊魚たち

夢のまにまに
同じ道を歩んで
見えないものが
色褪せていった

慌てることなく
転がる石のように
散らばる雨雫のように

コトコトとハラハラと……

水平線が煌めくから
長い、長い航海に出よう
失ったものは数限りないが
これから得るものもあるのだ

すべては時のいたずら



渇望

2018-05-26 00:32:33 | 
「渇望」

あゝ、今日も
人の優しさが身に沁みる
なぜ人を愛し
なぜ人を赦し
なぜ人を排し
なぜ人を裏切る

辛いばかりの毎日は
ただの思い込みだから
少しだけ心持を変えてご覧
空の星が見えてくるだろう

星たちが瞬く夜ならば
堕ちゆく雫も飲み干して
渇きを癒していたかった
この銀河が潤っている限り

あゝ、今
星が消える瞬間を捉えた気がする



心はいつも晴れなのに

2018-05-25 23:38:40 | 
「心はいつも晴れなのに」

起き上がれない倦怠感
心はいつも晴れなのに
何か悪いことでもしたのかい?
泣きっ面した兵士たち

表層的な静寂のもとで
繰り広げられる大合戦
遂に乗り出した夢舞台
道があるから人を裏切る

いつの日も絶えない笑顔
それがまやかしであることを
誤魔化しては胸を痛める毎日
晴れることのない憂いの表情

心はいつも晴れなのに