巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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偽装品のライフ

2017-02-28 08:44:17 | 
春夏秋冬
季節は律儀に廻り
僕の膝元を通り過ぎてく

未来永劫
僕等の幼い魂は
孤独の脇をすり抜けてく

重ね合わせた
僕と君の人生
君は僕を嫌いと言った
僕は君を好きだと言った

やることはやり尽くした
なんとも言えない開放感
明日はすぐやってくるのに
時間差で僕は喜怒哀楽する
どこまでも単純な人間存在

仕事で気を紛らわせ
失った恋の失意を消す
それは、それはまるで
偽装品のライフ
作られたフシアワセ

僕は息を切らして
見えない君の跡を追う
心の傷は消えないけど
怯んでいては遠ざかるばかり

明日もまた晴れるかな
視界は良好かな
君の姿が見えるかな
僕は目を凝らして
精一杯叫ぶんだ
君が忌み嫌う愛の言葉を

覚束ない足元を確認しながら
僕は一歩ずつ足を運ぶ
君が佇むあの街並へ
大きな期待と小さな不安を抱えながら

咲く、裂く、桜

2017-02-27 23:38:07 | 
麗らかな春が目の前に訪れる
気の早い桜は薄紅の花を付ける
僕はコートを脱いで春仕様
大空へ胸一杯の呼気を吐き出す

僕の大好きな季節
君が微笑んだ季節
僕が故郷を去った季節
そして君を失った季節

今、時間をグルリと戻して
今宵君の温もりに包まれたい
誰でもない君に溺れていたい
君の思い出に浸っていたい
すべてをこの夜に
すべてをその胸に

女優だって
芸者だって
舞妓だって
巫女だって

君の魅力には叶わない
五臓六腑まで染み渡る美
誰も彼も魅了する堕天使

僕だけは知っている
君の左腕の裂けた生傷
陰も陽も知り尽くした僕だから
君を護りたい、君から、君自身から
救い出したいはずなのに

あの日僕は逃げ出した
君の心の深い闇を避けるように

時はすべてを変える
君を僕が支えることなど
僕には無理だと思っていた
何故、今になって過去を愛おしむ
人生経験など大して積んでないのに

かつて僕と君が住んだあの町に帰ろうか
一陣の風が僕と君の頬を切り裂く
君がかつて君自身に向けた刃を
僕は今こそ全身で受け止める

人生なんて儚い夢

2017-02-27 00:51:50 | 

命果てるまで燃ゆる
君は君の中で葛藤する
神の掌の上で転がる君
運命に抗うのも君次第

しかし何故君は先を急ぐ
まだ旅は始まったばかり
果てしなく続く水平線
僕達はこの大航海の主役

急がず、慌てず、抗わず
不動心の如く僕は自己陶酔
人生なんて儚い夢だね
僕は僕の心に語りかける

隣に生に執着する者がいる
僕はその者を愛している
しかし僕は生に拘らない
むしろ運命に従うばかりなり

僕達を乗せたクルーズ船は
舵を大きく右に取る
船体は大きく鳴動し
間一髪座礁を免れる

ほらご覧、人生なんて紙一重
だからしがみつくことないさ
君が見るべきは今
今この瞬間を生きること

過去に於ける君の役割は終わり
未来など、まるで不透明な存在

人生なんて儚い夢だね
時間を操れない僕達は
今という今を積み重ね
過去を吐き出していく他ない

それが人生というものだ

僕達は過去という形で溜め込んだ
無数の今に想いを馳せる
それが想い出というもの

海の彼方を見つめながら
君が言う、人生なんて儚いね
僕は優しく君の肩を抱く
そして今この瞬間を過去に送り出す

サクラ咲く

2017-02-26 22:33:49 | 
桜の花が艶やかに咲く頃
空の青が澄み渡るあの春の日
この世にやってきた君を
「桜子」と名付けた

僕達はいつも君の成長と共にいた
君が一年ずつ年を重ねるたび
僕達は君と出逢えたあの春を思い出した
あの日窓越しに眺めた桜色を忘れない

君が大人になり、一人立ちしたあの春
笑顔で我が家から送り出した僕達は
春の象徴の旅立ちに季節感を失い
君との散歩道にある桜のもとに迎った

そして僕が一人逝ったあの春に
君は新たな生命を授かった
僕の生まれ変わりだと沸き立つ周囲
君達は僕が愛でた桜にちなんで
「美桜」と名付けた

時代の変化とはまるで無関係に
一年に一度だけ巡り来る季節は
幾年経っても変わらないのに
僕達は早くも三世代を重ねた
僕は桜の花を何度愛でた?

大人の階段を昇るたびに
和の心を持ち始めた僕は
春という季節を数十回数えた
約20,000日の我が人生を
彩った桜咲く僅かな日々

桜子は美桜とともに
春の代名詞を毎年愛でるだろう
自分の名前の由来を聞くまでもなく
君達にこの季節を愛してほしい

春よ来い
桜咲け、舞い散れ

ボサノヴァを聴きながら

2017-02-26 16:44:15 | 
薄陽射す日曜の昼下がり
陽気に誘われて外に出れば
近くに小鳥の囀りが聞こえる
子供達のはしゃぎ声が聞こえる

君の咽び泣く声と僕の魂の叫びも
聞こえることは内緒にしておこう

僕は外界の空気に触れる
少し肌寒い、程よい肌心地
これくらいが丁度いいんだ
僕は襟元をキュッと正す

君を傷付けてしまったことは
常に忘れず小脇に抱えている

字、文字、活字、文学
僕は自分が放つ言葉に命を込める
小さな僕が精一杯責任を背負って
魂を吹き込む文字は君への贖罪
何処に届くか知れぬ魂の乱れ打ち

行為、無為、無作為
僕は無作為抽出した文字を
パズルのように羅列する
僕は細胞分裂を繰り返し
僕の分身を産み出し続ける

無価値、有価値
僕は人間の所作はすべて
価値あることだと思っている
こうしてボサノヴァを聴きながら
心に浮かぶ映像を文字化することも

美意識、無意識
僕はあらゆる人間活動を肯定する
それを阻むのはゼロの存在
僕達はプラスを生み出す以上
マイナスにも振れざるを得ない
集団として、それが生者の定め
喩え貴方がプラスを積み上げても
世界のどこかでバランスが保たれる

結局ゼロになる

それらすべてを理解した上で
僕達は人間として生きる

僕達は想像以上にタフな存在
この不条理の中で美や価値を見出す

僕は普段とは違う緊張感を持って
この文字の群れを産み落とそうとする
何故ならこの所作は僕にとってプラスでも
貴方にはマイナスに働く可能性もあるから

誰に届くか知らないこの文字の群れが
貴方達を素通りすることを予見しながら
僕はこの一文字一文字を丹念に読み返す
誓う、この言葉で君を傷付けることは
あってはならない、決して、決してだ

僕に対してプラスに働く
ボサノヴァを聴きながら
綴る言葉のメッセージ