内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(後編ー提言)ー

2008-02-09 | Weblog
シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(後編ー提言)ー
(3)暫定税率を含む道路特定財源の一般財源化
 日本経済は高度成長期を過ぎ、低成長の成熟期を迎えている今日、国民のニーズや関心も、安心できる年金制度の確保、介護を含む医療体制の整備・改善、出産・育児への支援、代替エコ・エネルギー開発、教育や研究開発の充実、環境対策など、少子高齢化の下での生活重視へとシフトして来ている。
 道路建設も、高度成長期を支えた有料道路建設から、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等への重点シフトが検討されなくてはならない。
 このような社会的ニーズの変化を勘案すると、本来であれば、ガソリン税など、道路特定財源も一般財源化が望ましい。有料高速道路に何時までも優先度を与える必要はなく、新たな国民的なニーズと国民の負担能力を勘案し、優先度の高い施策に財源を再配分して行くことが望ましい。
 他方、現実問題として地方を含め、財源を確保して行かなくてはならないが、「一般財源化」となるとその根拠法(「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など)を超えるものとなるので、関連法令を改廃しなくてはならない。現実問題として、「道路特定財源」の「一般財源化」するということは、国交省など道路財源を抱えている省庁の財源が減少し、一般財源として財務省の所管財源に移されることを意味するので、法令を盾に抵抗もより強くなると予想される。そうなるとかなりの議論と作業を要するので、抜本的改編は中・長期の検討に委ね、当面措置として次の諸点を踏まえ対応することを提案したい。
 1)「道路整備費の財源等の特例に関する法律」は当面維持することとするが、対象となるガソリン税などの「暫定税率」については、石油・物価高対策の一環として、上乗せ分の2分の1を減額(減税)する。 
残る半分を同法の趣旨を弾力的に解釈し、「交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善に資するため」、地方道路を含め、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いて配分する。本税部分についても同様の配慮を行う。なお、道路整備予算に関しては、農道、林道など、すべての道路を含めたものとする。
 2)日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)は、8兆円強となっているが、その60%以上が道路特定財源で賄われている(07年度道路関係予算、国交省資料)。しかし、更に「一般財源」より約22%(約1.8兆円)相当が道路投資に回されているので、この部分は「一般財源」に戻し、道路以外で優先度の高い施策に充当する。
 その他、財投・料金収入等が約15%(1.2兆円)相当となっているが、財投で有料高速道路に充当する部分については、今後極力民営化された道路会社による投融資に切り替えて行くものとする。
 料金収入他の部分については、上記1)の趣旨に沿って配分することとするが、特に交通事故死被害者家族の救済(子弟への無償奨学金など)を含め、「生活環境の改善等」に重点を置いて配分する。
 ガソリン税の暫定税率については、石油・物価高の中で継続して追加的な負担を強いるか、軽減するかの選択になる。また、道路特定財源については、これまで通りのスピードで高速道路や新規道路を建設するか、新たな社会的ニーズに優先度を置いて再配分するかの選択になる。年間8兆円強もの財源を当て道路を造り続け、歳出の簡素化、再配分を行わない一方、年金等で財源が不足することを前提として「消費税」等の国民負担を引き上げるとの思惑が見え隠れする。それでは日本国民に未来はない。この問題は、2兆6千万円の取り扱い以上に、国民生活にとっても、日本の未来予想図にも重要な意味合いを含んでおり、この問題や年金問題等の動向如何では、民意を問う必要も出てこよう。                                      (Copy Right Reserved)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(後編ー提言)ー

2008-02-09 | Weblog
シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(後編ー提言)ー
(3)暫定税率を含む道路特定財源の一般財源化
 日本経済は高度成長期を過ぎ、低成長の成熟期を迎えている今日、国民のニーズや関心も、安心できる年金制度の確保、介護を含む医療体制の整備・改善、出産・育児への支援、代替エコ・エネルギー開発、教育や研究開発の充実、環境対策など、少子高齢化の下での生活重視へとシフトして来ている。
 道路建設も、高度成長期を支えた有料道路建設から、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等への重点シフトが検討されなくてはならない。
 このような社会的ニーズの変化を勘案すると、本来であれば、ガソリン税など、道路特定財源も一般財源化が望ましい。有料高速道路に何時までも優先度を与える必要はなく、新たな国民的なニーズと国民の負担能力を勘案し、優先度の高い施策に財源を再配分して行くことが望ましい。
 他方、現実問題として地方を含め、財源を確保して行かなくてはならないが、「一般財源化」となるとその根拠法(「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など)を超えるものとなるので、関連法令を改廃しなくてはならない。現実問題として、「道路特定財源」の「一般財源化」するということは、国交省など道路財源を抱えている省庁の財源が減少し、一般財源として財務省の所管財源に移されることを意味するので、法令を盾に抵抗もより強くなると予想される。そうなるとかなりの議論と作業を要するので、抜本的改編は中・長期の検討に委ね、当面措置として次の諸点を踏まえ対応することを提案したい。
 1)「道路整備費の財源等の特例に関する法律」は当面維持することとするが、対象となるガソリン税などの「暫定税率」については、石油・物価高対策の一環として、上乗せ分の2分の1を減額(減税)する。 
残る半分を同法の趣旨を弾力的に解釈し、「交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善に資するため」、地方道路を含め、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いて配分する。本税部分についても同様の配慮を行う。なお、道路整備予算に関しては、農道、林道など、すべての道路を含めたものとする。
 2)日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)は、8兆円強となっているが、その60%以上が道路特定財源で賄われている(07年度道路関係予算、国交省資料)。しかし、更に「一般財源」より約22%(約1.8兆円)相当が道路投資に回されているので、この部分は「一般財源」に戻し、道路以外で優先度の高い施策に充当する。
 その他、財投・料金収入等が約15%(1.2兆円)相当となっているが、財投で有料高速道路に充当する部分については、今後極力民営化された道路会社による投融資に切り替えて行くものとする。
 料金収入他の部分については、上記1)の趣旨に沿って配分することとするが、特に交通事故死被害者家族の救済(子弟への無償奨学金など)を含め、「生活環境の改善等」に重点を置いて配分する。
 ガソリン税の暫定税率については、石油・物価高の中で継続して追加的な負担を強いるか、軽減するかの選択になる。また、道路特定財源については、これまで通りのスピードで高速道路や新規道路を建設するか、新たな社会的ニーズに優先度を置いて再配分するかの選択になる。年間8兆円強もの財源を当て道路を造り続け、歳出の簡素化、再配分を行わない一方、年金等で財源が不足することを前提として「消費税」等の国民負担を引き上げるとの思惑が見え隠れする。それでは日本国民に未来はない。この問題は、2兆6千万円の取り扱い以上に、国民生活にとっても、日本の未来予想図にも重要な意味合いを含んでおり、この問題や年金問題等の動向如何では、民意を問う必要も出てこよう。                                      (Copy Right Reserved)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-

2008-02-06 | Weblog
シリーズ「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)
 ガソリン税の本税を上乗せしている暫定税率問題について、あくまでも存続に固執する自公両党は、3月末の期限切れを回避するために、4月1日より2か月間延長する「つなぎ法案」の国会提出を決めた。しかし、予算審議前のつまみ食いのような「奇策」であることから、衆参両院の議長斡旋により、与野党は、「年度内に一定の結論を得る」、「各党の合意が得られれば修正する」ことで合意し、「つなぎ法案」は取り下げられ、予算審議等の場で検討されることになった。
 問題は解決したわけではないが、この過程で暫定税率問題は、(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)、(2)有料高速道路建設の継続、及び(3)暫定税率を含む道路特定財源の一般財源化の3つの問題に絞り込まれて来たと言えよう。
(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)
 揮発油税が道路特定財源になったのは、1954年で、その後地方道路税が加わり、64年までにその他の道路関係税が創設され、自動車が普及し始めたのに伴い、74年には第7次道路整備5カ年計画の財源確保のため「暫定税率」が上乗せされるようになり、33年余に亘り更新され続けたものである。自動車の普及と共に急速にニーズが高まった日本の道路網の整備に貢献してきた。
 しかし、90年代にバブル経済が崩壊し、経済成長が鈍化・停滞し、自動車の販売量も頭打ちとなって来た上、今後の少子化に伴う人口の減少などを考慮すると、高度成長期に上乗せされた「暫定税率」を自公両党が主張しているように更に「10年延長」し、これまで通り有料高速道路を中心とする道路を建設して行く必要性は低くなっていると言えよう。もし「暫定税率」部分(約2兆6千億円、内地方分9千億円相当)を全廃、或いは削減しても、本税部分の約3兆円は残り、道路などの財源は残る。都道府県の首長の多くが地方に回される財源が減るとしているが、有料高速道路の建設をスローダウンすれば良いだけであり、地方住民に直接大きな影響はないであろう。
逆に、その分ガソリン価格、流通コストなどが下がり、納税者に還元され、家計を助けることになろう。石油・物価高の中での減税効果は、直接納税者に届き、運送費などを考えると波及効果もあり、分かり易い石油・景気対策となろう。徴収し、一部の層に給付する手法は、効果が局部的・恣意的となる上、選定・給付などの事務的手続きに多大の時間と費用を掛けることになるので、その経費が無駄となり、効果も遅れ勝ちとなる。
 そもそも「暫定」税率として国民に追加的負担を求め、創設したのに、長期化、恒久化し、或いは「本税と一体」などして存続を図ることは「公正な表示」とは言えないのであろう。
 (2)有料高速道路建設の継続
 「暫定」税率が廃止されたとしても、本税部分はあるので有料高速道路は建設される。しかし、「暫定」税率を更に継続し、何故高度成長期以降に計画されたペースで有料高速道路を建設して行かなくならないのか。
 そもそも道路公団は民営化し、会社経営となっているので、新規に有料道路を建設するのであればその必要性と採算性が十分に検討され、企業としての資金調達を検討すべきであろう。もし採算性のない有料道路が建設されると、地方公共団体を含め、納税者の負担として残る恐れもある。地方もその採算性に十分注意しなくてはならない。第三セクター事業で多くの失敗例を見て来ている。有料道路以外の新規道路についても維持・補修等のため後年度負担が掛かって来る。加えて、道路建設などの大型建設事業については、十分な環境評価が行われなくてはならない。
 また、今後の有料道路建設については、用地買収は国が行うとしても、民営化した道路会社は道路建設の一部(例えば2分の1以上)を負担(投資)するべきであり、道路会社が実質的な投資の意思がない有料道路の建設は採算性が見通されるまで延期されても良い。
 更に道路を整備して行く必要はあろうが、今後のニーズは、有料道路建設に優先度が置かれるべきか、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いた道路行政、国土計画として行くべきかなどの議論と国民の理解が不可欠であろう。 (Copy Right Reserved)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-

2008-02-06 | Weblog
シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-
ガソリン税の本税に上乗せされている暫定税率問題について、あくまでも存続に固執する自公両党は、3月末の期限切れを回避するために、4月1日より2か月間延長する「つなぎ法案」の国会提出を決めた。しかし、予算審議前の「奇策」であることから、衆参両院の議長斡旋により、与野党は、「年度内に一定の結論を得る」、「各党の合意が得られれば修正する」ことで合意し、「つなぎ法案」は取り下げられ、予算審議等の場で検討されることになった。
 問題が解決したわけではないが、この過程で暫定税率問題は、(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)、(2)有料高速道路建設の継続、及び(3)暫定税率を含む道路特定財源の一般財源化の3つの問題に絞り込まれて来たと言えよう。
(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)
 揮発油税が道路特定財源になったのは、1954年で、その後地方道路税が加わり、64年までにその他の道路関係税が創設された。更に自動車が普及し始めたのに伴い、74年には第7次道路整備5カ年計画の財源確保のため「暫定税率」が上乗せされるようになり、33年余に亘り更新され続けたものである。自動車の普及と共に急速にニーズが高まった日本の道路網の整備に貢献して来た。
 しかし、90年代にバブル経済が崩壊し、経済成長が鈍化・停滞し、自動車の販売量も頭打ちとなって来た上、今後の少子化に伴う人口の減少などを考慮すると、高度成長期に上乗せされた「暫定税率」を自公両党が主張しているように更に「10年間延長」し、これまで通り有料高速道路を中心とする道路を建設して行く必要性は低くなっていると言えよう。もし「暫定税率」部分(約2兆6千億円、内地方分9千億円相当)を全廃、或いは削減しても、本税部分の約3兆円は残り、道路などの財源は残る。都道府県の首長の多くが地方に回される財源が減るとしているが、有料高速道路の建設をスローダウンすれば良いだけであり、地方住民に直接大きな影響はないであろう。
逆に、その分ガソリン価格、流通コストなどが下がり、「暫定税率」分は納税者に還元され、家計を助けることになろう。
 そもそも「暫定」税率として国民に追加的負担を求め、創設したのに、長期化、恒久化し、或いは「本税と一体」などして存続を図ることは「公正な表示」とは言えないのであろう。
 (2)有料高速道路建設の継続
 「暫定」税率が廃止されたとしても、本税部分はあるので有料高速道路は建設される。しかし、「暫定」税率を更に継続し、何故高度成長期以降に計画されたペースで有料高速道路を建設して行かなくならないのか。
 そもそも道路公団は民営化し、会社経営となっているので、新規に有料道路を建設するのであればその必要性と採算性が十分に検討され、企業としての資金調達を検討すべきであろう。もし採算性のない有料道路が建設されると、地方公共団体を含め、納税者の負担として残る恐れもある。地方もその採算性に十分注意しなくてはならない。第三セクター事業で多くの失敗例を見て来ている。
有料道路以外の新規道路についても維持・補修等のため後年度負担が掛かって来ることを認識すべきだ。加えて、道路建設などの大型建設事業については、十分な環境評価が行われなくてはならない。
 また、今後の有料道路建設については、用地買収は国が行うとしても、民営化した道路会社は道路建設の一定比率(例えば2分の1以上)を負担(投資)するべきであり、道路会社が実質的な投資の意思がない有料道路の建設は、採算性が見通されるまで延期されても良い。
 道路を更に整備して行く必要はあろうが、今後、有料道路建設に優先度が置かれるべきか、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いた道路行政、国土計画として行くべきかなどの議論と国民の理解が不可欠であろう。
(Copy Right Reserved)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-

2008-02-06 | Weblog
シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-
ガソリン税の本税に上乗せされている暫定税率問題について、あくまでも存続に固執する自公両党は、3月末の期限切れを回避するために、4月1日より2か月間延長する「つなぎ法案」の国会提出を決めた。しかし、予算審議前の「奇策」であることから、衆参両院の議長斡旋により、与野党は、「年度内に一定の結論を得る」、「各党の合意が得られれば修正する」ことで合意し、「つなぎ法案」は取り下げられ、予算審議等の場で検討されることになった。
 問題が解決したわけではないが、この過程で暫定税率問題は、(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)、(2)有料高速道路建設の継続、及び(3)暫定税率を含む道路特定財源の一般財源化の3つの問題に絞り込まれて来たと言えよう。
(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)
 揮発油税が道路特定財源になったのは、1954年で、その後地方道路税が加わり、64年までにその他の道路関係税が創設された。更に自動車が普及し始めたのに伴い、74年には第7次道路整備5カ年計画の財源確保のため「暫定税率」が上乗せされるようになり、33年余に亘り更新され続けたものである。自動車の普及と共に急速にニーズが高まった日本の道路網の整備に貢献して来た。
 しかし、90年代にバブル経済が崩壊し、経済成長が鈍化・停滞し、自動車の販売量も頭打ちとなって来た上、今後の少子化に伴う人口の減少などを考慮すると、高度成長期に上乗せされた「暫定税率」を自公両党が主張しているように更に「10年間延長」し、これまで通り有料高速道路を中心とする道路を建設して行く必要性は低くなっていると言えよう。もし「暫定税率」部分(約2兆6千億円、内地方分9千億円相当)を全廃、或いは削減しても、本税部分の約3兆円は残り、道路などの財源は残る。都道府県の首長の多くが地方に回される財源が減るとしているが、有料高速道路の建設をスローダウンすれば良いだけであり、地方住民に直接大きな影響はないであろう。
逆に、その分ガソリン価格、流通コストなどが下がり、「暫定税率」分は納税者に還元され、家計を助けることになろう。
 そもそも「暫定」税率として国民に追加的負担を求め、創設したのに、長期化、恒久化し、或いは「本税と一体」などして存続を図ることは「公正な表示」とは言えないのであろう。
 (2)有料高速道路建設の継続
 「暫定」税率が廃止されたとしても、本税部分はあるので有料高速道路は建設される。しかし、「暫定」税率を更に継続し、何故高度成長期以降に計画されたペースで有料高速道路を建設して行かなくならないのか。
 そもそも道路公団は民営化し、会社経営となっているので、新規に有料道路を建設するのであればその必要性と採算性が十分に検討され、企業としての資金調達を検討すべきであろう。もし採算性のない有料道路が建設されると、地方公共団体を含め、納税者の負担として残る恐れもある。地方もその採算性に十分注意しなくてはならない。第三セクター事業で多くの失敗例を見て来ている。
有料道路以外の新規道路についても維持・補修等のため後年度負担が掛かって来ることを認識すべきだ。加えて、道路建設などの大型建設事業については、十分な環境評価が行われなくてはならない。
 また、今後の有料道路建設については、用地買収は国が行うとしても、民営化した道路会社は道路建設の一定比率(例えば2分の1以上)を負担(投資)するべきであり、道路会社が実質的な投資の意思がない有料道路の建設は、採算性が見通されるまで延期されても良い。
 道路を更に整備して行く必要はあろうが、今後、有料道路建設に優先度が置かれるべきか、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いた道路行政、国土計画として行くべきかなどの議論と国民の理解が不可欠であろう。
(Copy Right Reserved)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-

2008-02-06 | Weblog
シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-
 ガソリン税の本税に上乗せされている暫定税率問題について、あくまでも存続に固執する自公両党は、3月末の期限切れを回避するために、4月1日より2か月間延長する「つなぎ法案」の国会提出を決めた。しかし、予算審議前の「奇策」であることから、衆参両院の議長斡旋により、与野党は、「年度内に一定の結論を得る」、「各党の合意が得られれば修正する」ことで合意し、「つなぎ法案」は取り下げられ、予算審議等の場で検討されることになった。
 問題が解決したわけではないが、この過程で暫定税率問題は、(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)、(2)有料高速道路建設の継続、及び(3)暫定税率を含む道路特定財源の一般財源化の3つの問題に絞り込まれて来たと言えよう。
(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)
 揮発油税が道路特定財源になったのは、1954年で、その後地方道路税が加わり、64年までにその他の道路関係税が創設された。更に自動車が普及し始めたのに伴い、74年には第7次道路整備5カ年計画の財源確保のため「暫定税率」が上乗せされるようになり、33年余に亘り更新され続けたものである。自動車の普及と共に急速にニーズが高まった日本の道路網の整備に貢献して来た。
 しかし、90年代にバブル経済が崩壊し、経済成長が鈍化・停滞し、自動車の販売量も頭打ちとなって来た上、今後の少子化に伴う人口の減少などを考慮すると、高度成長期に上乗せされた「暫定税率」を自公両党が主張しているように更に「10年間延長」し、これまで通り有料高速道路を中心とする道路を建設して行く必要性は低くなっていると言えよう。もし「暫定税率」部分(約2兆6千億円、内地方分9千億円相当)を全廃、或いは削減しても、本税部分の約3兆円は残り、道路などの財源は残る。都道府県の首長の多くが地方に回される財源が減るとしているが、有料高速道路の建設をスローダウンすれば良いだけであり、地方住民に直接大きな影響はないであろう。
逆に、その分ガソリン価格、流通コストなどが下がり、「暫定税率」分は納税者に還元され、家計を助けることになろう。
 そもそも「暫定」税率として国民に追加的負担を求め、創設したのに、長期化、恒久化し、或いは「本税と一体」などして存続を図ることは「公正な表示」とは言えないのであろう。
 (2)有料高速道路建設の継続
 「暫定」税率が廃止されたとしても、本税部分はあるので有料高速道路は建設される。しかし、「暫定」税率を更に継続し、何故高度成長期以降に計画されたペースで有料高速道路を建設して行かなくならないのか。
 そもそも道路公団は民営化し、会社経営となっているので、新規に有料道路を建設するのであればその必要性と採算性が十分に検討され、企業としての資金調達を検討すべきであろう。もし採算性のない有料道路が建設されると、地方公共団体を含め、納税者の負担として残る恐れもある。地方もその採算性に十分注意しなくてはならない。第三セクター事業で多くの失敗例を見て来ている。
有料道路以外の新規道路についても維持・補修等のため後年度負担が掛かって来ることを認識すべきだ。加えて、道路建設などの大型建設事業については、十分な環境評価が行われなくてはならない。
 また、今後の有料道路建設については、用地買収は国が行うとしても、民営化した道路会社は道路建設の一定比率(例えば2分の1以上)を負担(投資)するべきであり、道路会社が実質的な投資の意思がない有料道路の建設は、採算性が見通されるまで延期されても良い。
 道路を更に整備して行く必要はあろうが、今後、有料道路建設に優先度が置かれるべきか、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いた道路行政、国土計画として行くべきかなどの議論と国民の理解が不可欠であろう。
(Copy Right Reserved)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-

2008-02-06 | Weblog
シリーズ平成の空騒ぎー「続」ガソリン税暫定税率存廃問題の場合(前編)-
 ガソリン税の本税に上乗せされている暫定税率問題について、あくまでも存続に固執する自公両党は、3月末の期限切れを回避するために、4月1日より2か月間延長する「つなぎ法案」の国会提出を決めた。しかし、予算審議前の「奇策」であることから、衆参両院の議長斡旋により、与野党は、「年度内に一定の結論を得る」、「各党の合意が得られれば修正する」ことで合意し、「つなぎ法案」は取り下げられ、予算審議等の場で検討されることになった。
 問題が解決したわけではないが、この過程で暫定税率問題は、(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)、(2)有料高速道路建設の継続、及び(3)暫定税率を含む道路特定財源の一般財源化の3つの問題に絞り込まれて来たと言えよう。
(1)「暫定税率」の恒久化(財源確保の問題)
 揮発油税が道路特定財源になったのは、1954年で、その後地方道路税が加わり、64年までにその他の道路関係税が創設された。更に自動車が普及し始めたのに伴い、74年には第7次道路整備5カ年計画の財源確保のため「暫定税率」が上乗せされるようになり、33年余に亘り更新され続けたものである。自動車の普及と共に急速にニーズが高まった日本の道路網の整備に貢献して来た。
 しかし、90年代にバブル経済が崩壊し、経済成長が鈍化・停滞し、自動車の販売量も頭打ちとなって来た上、今後の少子化に伴う人口の減少などを考慮すると、高度成長期に上乗せされた「暫定税率」を自公両党が主張しているように更に「10年間延長」し、これまで通り有料高速道路を中心とする道路を建設して行く必要性は低くなっていると言えよう。もし「暫定税率」部分(約2兆6千億円、内地方分9千億円相当)を全廃、或いは削減しても、本税部分の約3兆円は残り、道路などの財源は残る。都道府県の首長の多くが地方に回される財源が減るとしているが、有料高速道路の建設をスローダウンすれば良いだけであり、地方住民に直接大きな影響はないであろう。
逆に、その分ガソリン価格、流通コストなどが下がり、「暫定税率」分は納税者に還元され、家計を助けることになろう。
 そもそも「暫定」税率として国民に追加的負担を求め、創設したのに、長期化、恒久化し、或いは「本税と一体」などして存続を図ることは「公正な表示」とは言えないのであろう。
 (2)有料高速道路建設の継続
 「暫定」税率が廃止されたとしても、本税部分はあるので有料高速道路は建設される。しかし、「暫定」税率を更に継続し、何故高度成長期以降に計画されたペースで有料高速道路を建設して行かなくならないのか。
 そもそも道路公団は民営化し、会社経営となっているので、新規に有料道路を建設するのであればその必要性と採算性が十分に検討され、企業としての資金調達を検討すべきであろう。もし採算性のない有料道路が建設されると、地方公共団体を含め、納税者の負担として残る恐れもある。地方もその採算性に十分注意しなくてはならない。第三セクター事業で多くの失敗例を見て来ている。
有料道路以外の新規道路についても維持・補修等のため後年度負担が掛かって来ることを認識すべきだ。加えて、道路建設などの大型建設事業については、十分な環境評価が行われなくてはならない。
 また、今後の有料道路建設については、用地買収は国が行うとしても、民営化した道路会社は道路建設の一定比率(例えば2分の1以上)を負担(投資)するべきであり、道路会社が実質的な投資の意思がない有料道路の建設は、採算性が見通されるまで延期されても良い。
 道路を更に整備して行く必要はあろうが、今後、有料道路建設に優先度が置かれるべきか、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いた道路行政、国土計画として行くべきかなどの議論と国民の理解が不可欠であろう。
(Copy Right Reserved)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする