内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

公共放送NHKのあり方と受信料問題

2007-11-29 | Weblog
公共放送NHKのあり方と受信料問題
 11月15日、民間テレビ放送キー局5社の2007年中間決算が発表された。テレビ放送事業を中心とする売上高は、フジテレビ2,816億円、日本テレビ1,655億円、TBS1,588億円、テレビ朝日1,246億円、テレビ東京591億円で、民放5社全体では7,896億円に達する。後半期は若干業績が下がる見通しとされているが、年間では約1兆5千億円規模となる。
 他方、視聴料を徴収しているNHKの07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、前年度より若干削減されてはいるが、事業規模でどの民放よりも大きく、民放5社の年間売上高の4割程度にも達する。受信料徴収に要する費用は約760億円であるが、これだけでもテレビ東京の年間売上高の7割近くにも達する。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ・ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くと共に、公共放送としてふさわしい報道、教育、地域情報など、情報提供型の放送事業に特化して行くべきであったのであろう。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、テレビ受信者は現在の契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれているので、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして始めて生ずるものである。NHKとの契約・支払いを一般的、包括的に義務化すると言うのであれば、国家事業とし、国家予算により行なわれることになるが、「報道の自由」との問題がある上、国民の望むところではないであろう。
 戦後直後には客観的な情報だけではなく、娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の芸能、趣味などについても、選択が限られていた。しかし、今日では、視聴者がこれらを「選ぶ」時代であり、「与えられる」時代ではなくなっている。
このような考え方から、NHKは新たな時代に沿った「公共放送」として、次のように改善、改編することを提案したい。
1.視聴希望者との「有料個別契約化」、「有線放送契約化」
NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。BS放送を別料金とし、また何故3チャンネルも必要かなども疑問だ。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供するか有線放送契約とすることが望ましい。
「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組を情報提供型の内容に特化し、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。情報通信分野の参入も可能になろう。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2.報道、教育、地域情報など、情報提供型事業への特化
NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報
も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっているので、緊急情報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3.海外への発信事業の促進―海外向け「日本情報発信基地局」(仮称)の新設-
海外放送については、在留邦人向けの日本語の他、英語(当面英語に特化し、字幕表示や吹き替え放送を必要に応じ実施)による報道中心の海外放送事業(原則24時間放送)とし、NHKの他、民放各社及び情報関連各社の参加も得て、世界に向けての日本の発信事業を新設することが強く望まれる。特に、日本を含むアジアの情勢を中心としつつ、日本の情報力を結集し、米欧やロシアの報道についても充実させて行くなど、民営の「日本情報発信基地局」を構築して行く。
4.受信料の引き下げ
「公共放送」部分の受信料(有料個別契約)については、大幅に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。いずれにしても、別料金となっているBS受信料金については、速やかに任意の個別契約とし、希望者は、受像機購入段階で暗号電波読取装置の取り付け、有線放送等の契約を行えるようにするなど改善が望まれる。
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2007-11-29 | Weblog
公共放送NHKのあり方と受信料問題
 11月15日、民間テレビ放送キー局5社の2007年中間決算が発表された。テレビ放送事業を中心とする売上高は、フジテレビ2,816億円、日本テレビ1,655億円、TBS1,588億円、テレビ朝日1,246億円、テレビ東京591億円で、民放5社全体では7,896億円に達する。後半期は若干業績が下がる見通しとされているが、年間では約1兆5千億円規模となる。
 他方、視聴料を徴収しているNHKの07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、前年度より若干削減されてはいるが、事業規模でどの民放よりも大きく、民放5社の年間売上高の4割程度にも達する。受信料徴収に要する費用は約760億円であるが、これだけでもテレビ東京の年間売上高の7割近くにも達する。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ・ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くと共に、公共放送としてふさわしい報道、教育、地域情報など、情報提供型の放送事業に特化して行くべきであったのであろう。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、テレビ受信者は現在の契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれているので、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして始めて生ずるものである。NHKとの契約・支払いを一般的、包括的に義務化すると言うのであれば、国家事業とし、国家予算により行なわれることになるが、「報道の自由」との問題がある上、国民の望むところではないであろう。
 戦後直後には客観的な情報だけではなく、娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の芸能、趣味などについても、選択が限られていた。しかし、今日では、視聴者がこれらを「選ぶ」時代であり、「与えられる」時代ではなくなっている。
このような考え方から、NHKは新たな時代に沿った「公共放送」として、次のように改善、改編することを提案したい。
1.視聴希望者との「有料個別契約化」、「有線放送契約化」
NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。BS放送を別料金とし、また何故3チャンネルも必要かなども疑問だ。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供するか有線放送契約とすることが望ましい。
「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組を情報提供型の内容に特化し、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。情報通信分野の参入も可能になろう。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2.報道、教育、地域情報など、情報提供型事業への特化
NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報
も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっているので、緊急情報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3.海外への発信事業の促進―海外向け「日本情報発信基地局」(仮称)の新設-
海外放送については、在留邦人向けの日本語の他、英語(当面英語に特化し、字幕表示や吹き替え放送を必要に応じ実施)による報道中心の海外放送事業(原則24時間放送)とし、NHKの他、民放各社及び情報関連各社の参加も得て、世界に向けての日本の発信事業を新設することが強く望まれる。特に、日本を含むアジアの情勢を中心としつつ、日本の情報力を結集し、米欧やロシアの報道についても充実させて行くなど、民営の「日本情報発信基地局」を構築して行く。
4.受信料の引き下げ
「公共放送」部分の受信料(有料個別契約)については、大幅に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。いずれにしても、別料金となっているBS受信料金については、速やかに任意の個別契約とし、希望者は、受像機購入段階で暗号電波読取装置の取り付け、有線放送等の契約を行えるようにするなど改善が望まれる。
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 11月15日、民間テレビ放送キー局5社の2007年中間決算が発表された。テレビ放送事業を中心とする売上高は、フジテレビ2,816億円、日本テレビ1,655億円、TBS1,588億円、テレビ朝日1,246億円、テレビ東京591億円で、民放5社全体では7,896億円に達する。後半期は若干業績が下がる見通しとされているが、年間では約1兆5千億円規模となる。
 他方、視聴料を徴収しているNHKの07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、前年度より若干削減されてはいるが、事業規模でどの民放よりも大きく、民放5社の年間売上高の4割程度にも達する。受信料徴収に要する費用は約760億円であるが、これだけでもテレビ東京の年間売上高の7割近くにも達する。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ・ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くと共に、公共放送としてふさわしい報道、教育、地域情報など、情報提供型の放送事業に特化して行くべきであったのであろう。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、テレビ受信者は現在の契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれているので、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして始めて生ずるものである。NHKとの契約・支払いを一般的、包括的に義務化すると言うのであれば、国家事業とし、国家予算により行なわれることになるが、「報道の自由」との問題がある上、国民の望むところではないであろう。
 戦後直後には客観的な情報だけではなく、娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の芸能、趣味などについても、選択が限られていた。しかし、今日では、視聴者がこれらを「選ぶ」時代であり、「与えられる」時代ではなくなっている。
このような考え方から、NHKは新たな時代に沿った「公共放送」として、次のように改善、改編することを提案したい。
1.視聴希望者との「有料個別契約化」、「有線放送契約化」
NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。BS放送を別料金とし、また何故3チャンネルも必要かなども疑問だ。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供するか有線放送契約とすることが望ましい。
「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組を情報提供型の内容に特化し、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。情報通信分野の参入も可能になろう。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2.報道、教育、地域情報など、情報提供型事業への特化
NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報
も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっているので、緊急情報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3.海外への発信事業の促進―海外向け「日本情報発信基地局」(仮称)の新設-
海外放送については、在留邦人向けの日本語の他、英語(当面英語に特化し、字幕表示や吹き替え放送を必要に応じ実施)による報道中心の海外放送事業(原則24時間放送)とし、NHKの他、民放各社及び情報関連各社の参加も得て、世界に向けての日本の発信事業を新設することが強く望まれる。特に、日本を含むアジアの情勢を中心としつつ、日本の情報力を結集し、米欧やロシアの報道についても充実させて行くなど、民営の「日本情報発信基地局」を構築して行く。
4.受信料の引き下げ
「公共放送」部分の受信料(有料個別契約)については、大幅に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。いずれにしても、別料金となっているBS受信料金については、速やかに任意の個別契約とし、希望者は、受像機購入段階で暗号電波読取装置の取り付け、有線放送等の契約を行えるようにするなど改善が望まれる。
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 11月15日、民間テレビ放送キー局5社の2007年中間決算が発表された。テレビ放送事業を中心とする売上高は、フジテレビ2,816億円、日本テレビ1,655億円、TBS1,588億円、テレビ朝日1,246億円、テレビ東京591億円で、民放5社全体では7,896億円に達する。後半期は若干業績が下がる見通しとされているが、年間では約1兆5千億円規模となる。
 他方、視聴料を徴収しているNHKの07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、前年度より若干削減されてはいるが、事業規模でどの民放よりも大きく、民放5社の年間売上高の4割程度にも達する。受信料徴収に要する費用は約760億円であるが、これだけでもテレビ東京の年間売上高の7割近くにも達する。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ・ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くと共に、公共放送としてふさわしい報道、教育、地域情報など、情報提供型の放送事業に特化して行くべきであったのであろう。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、テレビ受信者は現在の契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれているので、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして始めて生ずるものである。NHKとの契約・支払いを一般的、包括的に義務化すると言うのであれば、国家事業とし、国家予算により行なわれることになるが、「報道の自由」との問題がある上、国民の望むところではないであろう。
 戦後直後には客観的な情報だけではなく、娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の芸能、趣味などについても、選択が限られていた。しかし、今日では、視聴者がこれらを「選ぶ」時代であり、「与えられる」時代ではなくなっている。
このような考え方から、NHKは新たな時代に沿った「公共放送」として、次のように改善、改編することを提案したい。
1.視聴希望者との「有料個別契約化」、「有線放送契約化」
NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。BS放送を別料金とし、また何故3チャンネルも必要かなども疑問だ。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供するか有線放送契約とすることが望ましい。
「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組を情報提供型の内容に特化し、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。情報通信分野の参入も可能になろう。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2.報道、教育、地域情報など、情報提供型事業への特化
NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報
も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっているので、緊急情報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3.海外への発信事業の促進―海外向け「日本情報発信基地局」(仮称)の新設-
海外放送については、在留邦人向けの日本語の他、英語(当面英語に特化し、字幕表示や吹き替え放送を必要に応じ実施)による報道中心の海外放送事業(原則24時間放送)とし、NHKの他、民放各社及び情報関連各社の参加も得て、世界に向けての日本の発信事業を新設することが強く望まれる。特に、日本を含むアジアの情勢を中心としつつ、日本の情報力を結集し、米欧やロシアの報道についても充実させて行くなど、民営の「日本情報発信基地局」を構築して行く。
4.受信料の引き下げ
「公共放送」部分の受信料(有料個別契約)については、大幅に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。いずれにしても、別料金となっているBS受信料金については、速やかに任意の個別契約とし、希望者は、受像機購入段階で暗号電波読取装置の取り付け、有線放送等の契約を行えるようにするなど改善が望まれる。
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2007-11-27 | Weblog
公共放送NHKのあり方と受信料問題
 11月15日、民間テレビ放送キー局5社の2007年中間決算が発表された。テレビ放送事業を中心とする売上高は、フジテレビ2,816億円、日本テレビ1,655億円、TBS1,588億円、テレビ朝日1,246億円、テレビ東京591億円で、民放5社全体では7,896億円に達する。後半期は若干業績が下がる見通しとされているが、年間では約1兆5千億円規模となる。
 他方、視聴料を徴収しているNHKの07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、前年度より若干削減されてはいるが、事業規模でどの民放よりも大きく、民放5社の年間売上高の4割程度にも達する。受信料徴収に要する費用は約760億円であるが、これだけでもテレビ東京の年間売上高の7割近くにも達する。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ・ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くと共に、公共放送としてふさわしい報道、教育、地域情報など、情報提供型の放送事業に特化して行くべきであったのであろう。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、テレビ受信者は現在の契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれているので、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして始めて生ずるものである。NHKとの契約・支払いを一般的、包括的に義務化すると言うのであれば、国家事業とし、国家予算により行なわれることになるが、「報道の自由」との問題がある上、国民の望むところではないであろう。
 戦後直後には客観的な情報だけではなく、娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の芸能、趣味などについても、選択が限られていた。しかし、今日では、視聴者がこれらを「選ぶ」時代であり、「与えられる」時代ではなくなっている。
このような考え方から、NHKは新たな時代に沿った「公共放送」として、次のように改善、改編することを提案したい。
1.視聴希望者との「有料個別契約化」、「有線放送契約化」
NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。BS放送を別料金とし、また何故3チャンネルも必要かなども疑問だ。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供するか有線放送契約とすることが望ましい。
「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組を情報提供型の内容に特化し、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。情報通信分野の参入も可能になろう。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2.報道、教育、地域情報など、情報提供型事業への特化
NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報
も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっているので、緊急情報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3.海外への発信事業の促進―海外向け「日本情報発信基地局」(仮称)の新設-
海外放送については、在留邦人向けの日本語の他、英語(当面英語に特化し、字幕表示や吹き替え放送を必要に応じ実施)による報道中心の海外放送事業(原則24時間放送)とし、NHKの他、民放各社及び情報関連各社の参加も得て、世界に向けての日本の発信事業を新設することが強く望まれる。特に、日本を含むアジアの情勢を中心としつつ、日本の情報力を結集し、米欧やロシアの報道についても充実させて行くなど、民営の「日本情報発信基地局」を構築して行く。
4.受信料の引き下げ
「公共放送」部分の受信料(有料個別契約)については、大幅に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。いずれにしても、別料金となっているBS受信料金については、速やかに任意の個別契約とし、希望者は、受像機購入段階で暗号電波読取装置の取り付け、有線放送等の契約を行えるようにするなど改善が望まれる。
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公共放送NHKのあり方と受信料問題

2007-11-27 | Weblog
公共放送NHKのあり方と受信料問題
 11月15日、民間テレビ放送キー局5社の2007年中間決算が発表された。テレビ放送事業を中心とする売上高は、フジテレビ2,816億円、日本テレビ1,655億円、TBS1,588億円、テレビ朝日1,246億円、テレビ東京591億円で、民放5社全体では7,896億円に達する。後半期は若干業績が下がる見通しとされているが、年間では約1兆5千億円規模となる。
 他方、視聴料を徴収しているNHKの07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、前年度より若干削減されてはいるが、事業規模でどの民放よりも大きく、民放5社の年間売上高の4割程度にも達する。受信料徴収に要する費用は約760億円であるが、これだけでもテレビ東京の年間売上高の7割近くにも達する。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ・ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くと共に、公共放送としてふさわしい報道、教育、地域情報など、情報提供型の放送事業に特化して行くべきであったのであろう。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、テレビ受信者は現在の契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれているので、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして始めて生ずるものである。NHKとの契約・支払いを一般的、包括的に義務化すると言うのであれば、国家事業とし、国家予算により行なわれることになるが、「報道の自由」との問題がある上、国民の望むところではないであろう。
 戦後直後には客観的な情報だけではなく、娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の芸能、趣味などについても、選択が限られていた。しかし、今日では、視聴者がこれらを「選ぶ」時代であり、「与えられる」時代ではなくなっている。
このような考え方から、NHKは新たな時代に沿った「公共放送」として、次のように改善、改編することを提案したい。
1.視聴希望者との「有料個別契約化」、「有線放送契約化」
NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。BS放送を別料金とし、また何故3チャンネルも必要かなども疑問だ。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供するか有線放送契約とすることが望ましい。
「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組を情報提供型の内容に特化し、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。情報通信分野の参入も可能になろう。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2.報道、教育、地域情報など、情報提供型事業への特化
NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報
も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっているので、緊急情報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3.海外への発信事業の促進―海外向け「日本情報発信基地局」(仮称)の新設-
海外放送については、在留邦人向けの日本語の他、英語(当面英語に特化し、字幕表示や吹き替え放送を必要に応じ実施)による報道中心の海外放送事業(原則24時間放送)とし、NHKの他、民放各社及び情報関連各社の参加も得て、世界に向けての日本の発信事業を新設することが強く望まれる。特に、日本を含むアジアの情勢を中心としつつ、日本の情報力を結集し、米欧やロシアの報道についても充実させて行くなど、民営の「日本情報発信基地局」を構築して行く。
4.受信料の引き下げ
「公共放送」部分の受信料(有料個別契約)については、大幅に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。いずれにしても、別料金となっているBS受信料金については、速やかに任意の個別契約とし、希望者は、受像機購入段階で暗号電波読取装置の取り付け、有線放送等の契約を行えるようにするなど改善が望まれる。
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2007-11-27 | Weblog
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 11月15日、民間テレビ放送キー局5社の2007年中間決算が発表された。テレビ放送事業を中心とする売上高は、フジテレビ2,816億円、日本テレビ1,655億円、TBS1,588億円、テレビ朝日1,246億円、テレビ東京591億円で、民放5社全体では7,896億円に達する。後半期は若干業績が下がる見通しとされているが、年間では約1兆5千億円規模となる。
 他方、視聴料を徴収しているNHKの07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、前年度より若干削減されてはいるが、事業規模でどの民放よりも大きく、民放5社の年間売上高の4割程度にも達する。受信料徴収に要する費用は約760億円であるが、これだけでもテレビ東京の年間売上高の7割近くにも達する。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ・ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くと共に、公共放送としてふさわしい報道、教育、地域情報など、情報提供型の放送事業に特化して行くべきであったのであろう。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、テレビ受信者は現在の契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれているので、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。どのチャンネルを見るかは、個々人の自由が原則であり、個々人の選択に委ねられるべきであろう。支払いの義務が生じるのは、その個人が契約を取り交わして始めて生ずるものである。NHKとの契約・支払いを一般的、包括的に義務化すると言うのであれば、国家事業とし、国家予算により行なわれることになるが、「報道の自由」との問題がある上、国民の望むところではないであろう。
 戦後直後には客観的な情報だけではなく、娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の芸能、趣味などについても、選択が限られていた。しかし、今日では、視聴者がこれらを「選ぶ」時代であり、「与えられる」時代ではなくなっている。
このような考え方から、NHKは新たな時代に沿った「公共放送」として、次のように改善、改編することを提案したい。
1.視聴希望者との「有料個別契約化」、「有線放送契約化」
NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。BS放送を別料金とし、また何故3チャンネルも必要かなども疑問だ。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供するか有線放送契約とすることが望ましい。
「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組を情報提供型の内容に特化し、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。情報通信分野の参入も可能になろう。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2.報道、教育、地域情報など、情報提供型事業への特化
NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報
も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯電話での配信がより重要になっているので、緊急情報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3.海外への発信事業の促進―海外向け「日本情報発信基地局」(仮称)の新設-
海外放送については、在留邦人向けの日本語の他、英語(当面英語に特化し、字幕表示や吹き替え放送を必要に応じ実施)による報道中心の海外放送事業(原則24時間放送)とし、NHKの他、民放各社及び情報関連各社の参加も得て、世界に向けての日本の発信事業を新設することが強く望まれる。特に、日本を含むアジアの情勢を中心としつつ、日本の情報力を結集し、米欧やロシアの報道についても充実させて行くなど、民営の「日本情報発信基地局」を構築して行く。
4.受信料の引き下げ
「公共放送」部分の受信料(有料個別契約)については、大幅に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。いずれにしても、別料金となっているBS受信料金については、速やかに任意の個別契約とし、希望者は、受像機購入段階で暗号電波読取装置の取り付け、有線放送等の契約を行えるようにするなど改善が望まれる。
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 再出発の民主党- 2政党制は確立出来るか -

2007-11-08 | Weblog
     再出発の民主党
 - 2政党制は確立出来るか -
 11月4日、民主党小沢代表は党代表を辞任する意向を表明したが、7日、民主党の両院議員懇談会で、党員、支持者の強い期待を踏まえて代表に止まり、政治生命を掛けて来るべき衆議院総選挙に臨み、政権交代を前提とする2大政党制を確立したい旨表明した。
 辞任の意向は、2度に亘る福田総理との党首会談において、総理側から、日本の国際貢献、安全保障問題での柔軟姿勢の下での自民・民主両党の政策協議と大連立構想が提案されたが、民主党役員会で拒否されたことを受けて表明されたものだ。
小沢代表は、4日の記者会見で、「党首会談を呼び掛けたとか、自民、民主両党の連立を持ち掛けたとか」いずれもまったくの事実無根だとして明確に否定すると共に、多くの保守系報道機関がそのような一方的な報道をしたことに強く抗議する姿勢を示した。
他方、福田総理は、5日、首相官邸での記者団の質問に答え、いろいろな話をしたが、「阿(あ)吽(うん)の呼吸」であるなどとして、明確に答えていない。7日の記者団の質問に対しても、終わったことであり言わないほうがよいなどとしている。
また、インド洋での給油問題、安全保障問題に関連し、小沢代表は、国際平和協力のための自衛隊の海外派遣は、国連安保理、総会での決議に基づいて決定された活動への参加に限るとしている。これに対し、福田総理は、新テロ特措法案については、できれば通して欲しいが、「両党が連立し、新しい協力態勢を確立することを最優先と考えている」、「連立が成立するならば、敢えてこの法案の成立にこだわることはしない」との点を確約した旨明らかにされている。
この点に関する記者団の質問に対しても、福田総理は、いろいろな話の中でそのようなことは出たが、具体的には政策協議次第であり、また、新テロ特措法案については一貫して成立を希望している旨述べ、明確な説明を避けている。7日の国会での質疑応答でも、同じような答弁に終始した。
インド洋での自衛隊の米国艦船などへの給油活動については、日本の補給船などの航海日誌が特定期間処分さていたり、給油がどのような活動に使われているかも実体上米国他の艦船任せの状況に近く、政府当局は十分把握していないように見える。効果についても、具体的なことについては軍事上の活動であり、公開していないとしつつ、「海上阻止行動」を通じ抑止的効果もあるとしている。他方、米国当局は、アフガニスタンにおける治安状況は悪化しており、国際テロ活動は拡大しているとしており、6年間の効果などについて説明が分かれているようにも見える。
与党系、保守系識者の中にも、インド洋での自衛隊の給油活動が日本のタンカーの海路の安全を確保しているなどとして、国益としている。そのような面はあるであろう。しかし、日本の貢献は、200億円強の小額であり、米国内でも「政治的意義」しかなく、実質的な軍事作戦上の意義は小さいとする見方もある。確かに、ブッシュ政権は、2008会計年度(07年10月~08年9月)のイラク、アフガニスタンでの軍事費として423億ドル(約4兆8千億円)を議会に追加提案しており、200億円強程度の日本の給油支援は、軍事的には小さな額でしかない。また、インド洋での米国艦船等の活動は、タンカーの安全確保などは副次的な効果でしかなく、「テロとの戦争」の一環としての軍事行動(「不朽の自由作戦」)であり、この点を曖昧にすべきではない。だからこそ給油活動は「良い案だ」とする声も無いではない。米国政府・国民、そして国際社会は、これをどの程度評価しているか問うて見る必要がある。また、日本として、現行憲法の曖昧な解釈を含めこれで良いのか、国際貢献として何処まで踏み込めるかなど、正面から問い、議論する必要があるのではなかろうか。
更に、日本の防衛活動について国民に正しい情報が開示されることが、新の文民統制(シビリアン・コントロール)の確保にとって不可欠なことだ。数値を誤ることなどは誰にでもあることであり、それ自体を云々するものではない。適切な情報を開示しない上、資料を隠したり、操作等するようなことがあれば、国民はその安全を安心して託せなくなる。それは、防衛当局に対する管理、監督の問題でもある。年金問題にしても、Ⅽ型肝炎被害問題にしても、各省庁の談合や各種の不祥事にしても、同様だ。
国民への責任ある説明が政権側からも必要なのであろう。大連合を両党だけで決めるのではなく、国民の審判を受けるのが先決ではないか。両党が、国民に対してきちんと政策を提示し、国民がその政策を基に政党を選ぶのが民主主義の原点だ。
同時に、それまでは、明年度予算を含め、国民生活に直結する事項については自民、民主の2大政党間の政策協議に努めるべきであろう。前政権時代に、衆参両院での多数を利して、教育基本法や国民投票法など、国民全体にとっての重要法案については、強行採決が多用されていたが、本来であれば政党を超えて協議する努力が望ましく、普段から、国民の利益に沿った国会運営が行なわれていることが望ましい。
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指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -

2007-11-03 | Weblog
第三者委員会に指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任
― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -
1、10月31日、5千万件に及ぶ年金記録漏れ問題の原因等を追及するために7月に総務省も下に設置された「年金記録問題検証委員会」(座長松尾邦弘前検事総長)は、最終報告書をまとめ総務大臣に提出した。同報告書では、厚労省(旧厚生省)、社保庁に「使命感、責任感が決定的に欠如していた」とし、歴代の社会保険庁長官をはじめとする幹部職員の責任が最も重いとすると共に、監督する立場にあった歴代の厚生相、厚労相も「責任は免れない」としている。
責任問題については、一般的な指摘で当然のことであろうが、今回のサンプル調査では、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、入力ミスや結婚による氏名変更など、該当者の特定が難かしい記録が38.5%に上ることが明らかになった。その内、524万件は既に「氏名なし」であることが分っている。その上、死亡、年金受給の対象外など(約28%)を除くと、救済が比較的容易とされる者は34%弱でしかなく、08年3月までに是正するとしているが、救済されるのはせいぜいその程度に止まるか、それ以下の可能性が強い。事実、救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し9月末で190人しか記録救済できておらず、救済率は低い。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。
2、膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがす問題であるのに、年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にある。
それはそうだ。社保庁だって52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあっただろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
3、こんなにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品、そしてビールなどの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。それでも消費税増税論が出る。そうすれば消費は更に抑制か、ポイント還元などで価格を圧縮することになるだろう。多くの国民はバブル経済崩壊後、生活防衛するしかない。どうして経済の空気が読めないのだろうか。
4、健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、国民「福祉」ではなく、国民「酷祉」と言われても仕方がないのではないだろうか。
厚生労働省への監督責任の欠如は、前防衛事務次官の過剰接待問題や政府関係事業の談合体質などを見ると、程度の差はあろうが、地方公共団体を含め「氷山の一角」でなければよいのだが。「官僚をうまく使う、仲良くやろう」ということ自体は誰しもそう思うが、それが政・官の仲間内の甘えなどであれば、国民全体の利益に損なう恐れがある。行政が内閣や地方公共団体の長を支えるのは当然の本務なのであろう。同時に、政治も社会通念に沿って襟を正さないと信頼は得れない。
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指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -

2007-11-03 | Weblog
第三者委員会に指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任
― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -
1、 10月31日、5千万件に及ぶ年金記録漏れ問題の原因等を追及するために7月に総務
省も下に設置された「年金記録問題検証委員会」(座長松尾邦弘前検事総長)は、最終報告書をまとめ総務大臣に提出した。同報告書では、厚労省(旧厚生省)、社保庁に「使命感、責任感が決定的に欠如していた」とし、歴代の社会保険庁長官をはじめとする幹部職員の責任が最も重いとすると共に、監督する立場にあった歴代の厚生相、厚労相も「責任は免れない」としている。
責任問題については、一般的な指摘で当然のことであろうが、今回のサンプル調査では、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、入力ミスや結婚による氏名変更など、該当者の特定が難かしい記録が38.5%に上ることが明らかになった。その内、524万件は既に「氏名なし」であることが分っている。その上、死亡、年金受給の対象外など(約28%)を除くと、救済が比較的容易とされる者は34%弱でしかなく、08年3月までに是正するとしているが、救済されるのはせいぜいその程度に止まるか、それ以下の可能性が強い。事実、救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し9月末で190人しか記録救済できておらず、救済率は低い。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。
2、 膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがす問題であ
るのに、年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にある。
それはそうだ。社保庁だって52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあっただろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
3、こんなにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品、そしてビールなどの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。それでも消費税増税論が出る。そうすれば消費は更に抑制か、ポイント還元などで価格を圧縮することになるだろう。多くの国民はバブル経済崩壊後、生活防衛するしかない。どうして経済の空気が読めないのだろうか。
4、 健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすこ
とは仕方がないが、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、国民「福祉」ではなく、国民「酷祉」と言われても仕方がないのではないだろうか。
厚生労働省への監督責任の欠如は、前防衛事務次官の過剰接待問題や政府関係事業の談合体質などを見ると、程度の差はあろうが、地方公共団体を含め「氷山の一角」でなければよいのだが。「官僚をうまく使う、仲良くやろう」ということ自体は誰しもそう思うが、それが政・官の仲間内の甘えなどであれば、国民全体の利益に損なう恐れがある。行政が内閣や地方公共団体の長を支えるのは当然の本務なのであろう。同時に、政治も社会通念に沿って襟を正さないと信頼は得れない。
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指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -

2007-11-03 | Weblog
第三者委員会に指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任
― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -
1、 10月31日、5千万件に及ぶ年金記録漏れ問題の原因等を追及するために7月に総務
省も下に設置された「年金記録問題検証委員会」(座長松尾邦弘前検事総長)は、最終報告書をまとめ総務大臣に提出した。同報告書では、厚労省(旧厚生省)、社保庁に「使命感、責任感が決定的に欠如していた」とし、歴代の社会保険庁長官をはじめとする幹部職員の責任が最も重いとすると共に、監督する立場にあった歴代の厚生相、厚労相も「責任は免れない」としている。
責任問題については、一般的な指摘で当然のことであろうが、今回のサンプル調査では、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、入力ミスや結婚による氏名変更など、該当者の特定が難かしい記録が38.5%に上ることが明らかになった。その内、524万件は既に「氏名なし」であることが分っている。その上、死亡、年金受給の対象外など(約28%)を除くと、救済が比較的容易とされる者は34%弱でしかなく、08年3月までに是正するとしているが、救済されるのはせいぜいその程度に止まるか、それ以下の可能性が強い。事実、救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し9月末で190人しか記録救済できておらず、救済率は低い。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。
2、 膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがす問題であ
るのに、年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にある。
それはそうだ。社保庁だって52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあっただろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
3、こんなにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品、そしてビールなどの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。それでも消費税増税論が出る。そうすれば消費は更に抑制か、ポイント還元などで価格を圧縮することになるだろう。多くの国民はバブル経済崩壊後、生活防衛するしかない。どうして経済の空気が読めないのだろうか。
4、 健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすこ
とは仕方がないが、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、国民「福祉」ではなく、国民「酷祉」と言われても仕方がないのではないだろうか。
厚生労働省への監督責任の欠如は、前防衛事務次官の過剰接待問題や政府関係事業の談合体質などを見ると、程度の差はあろうが、地方公共団体を含め「氷山の一角」でなければよいのだが。「官僚をうまく使う、仲良くやろう」ということ自体は誰しもそう思うが、それが政・官の仲間内の甘えなどであれば、国民全体の利益に損なう恐れがある。行政が内閣や地方公共団体の長を支えるのは当然の本務なのであろう。同時に、政治も社会通念に沿って襟を正さないと信頼は得れない。
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指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -

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第三者委員会に指摘された歴代の厚生相・厚労相、社保庁長官の責任
― 追い討ちを掛ける消費税増税論 -
1、 10月31日、5千万件に及ぶ年金記録漏れ問題の原因等を追及するために7月に総務
省も下に設置された「年金記録問題検証委員会」(座長松尾邦弘前検事総長)は、最終報告書をまとめ総務大臣に提出した。同報告書では、厚労省(旧厚生省)、社保庁に「使命感、責任感が決定的に欠如していた」とし、歴代の社会保険庁長官をはじめとする幹部職員の責任が最も重いとすると共に、監督する立場にあった歴代の厚生相、厚労相も「責任は免れない」としている。
責任問題については、一般的な指摘で当然のことであろうが、今回のサンプル調査では、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、入力ミスや結婚による氏名変更など、該当者の特定が難かしい記録が38.5%に上ることが明らかになった。その内、524万件は既に「氏名なし」であることが分っている。その上、死亡、年金受給の対象外など(約28%)を除くと、救済が比較的容易とされる者は34%弱でしかなく、08年3月までに是正するとしているが、救済されるのはせいぜいその程度に止まるか、それ以下の可能性が強い。事実、救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し9月末で190人しか記録救済できておらず、救済率は低い。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。
2、 膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがす問題であ
るのに、年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にある。
それはそうだ。社保庁だって52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあっただろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
3、こんなにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品、そしてビールなどの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。それでも消費税増税論が出る。そうすれば消費は更に抑制か、ポイント還元などで価格を圧縮することになるだろう。多くの国民はバブル経済崩壊後、生活防衛するしかない。どうして経済の空気が読めないのだろうか。
4、 健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすこ
とは仕方がないが、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、国民「福祉」ではなく、国民「酷祉」と言われても仕方がないのではないだろうか。
厚生労働省への監督責任の欠如は、前防衛事務次官の過剰接待問題や政府関係事業の談合体質などを見ると、程度の差はあろうが、地方公共団体を含め「氷山の一角」でなければよいのだが。「官僚をうまく使う、仲良くやろう」ということ自体は誰しもそう思うが、それが政・官の仲間内の甘えなどであれば、国民全体の利益に損なう恐れがある。行政が内閣や地方公共団体の長を支えるのは当然の本務なのであろう。同時に、政治も社会通念に沿って襟を正さないと信頼は得れない。
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