内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

台湾の独立実現に転換すべき時   (再掲)

2021-11-29 | Weblog

台湾の独立実現に転換すべき時   (再掲)


 1月末以来、中国武漢から世界に拡大したコロナウイルスは、既に680万人以上の感染者、40万人近くの死者を出し、世界レベルでの感染は未だに収まっていない。
 このような中、5月18日、世界保健機関(WHO)の年次総会を開かれ、焦点に1つであった非加盟の台湾のオブザーバー参加について、中国が「1つに中国」を主張して反対したため、見送りとなり、年内にも開かれる次回総会で協議されることになった。
 米国は、台湾のオブザーバー参加を支持する一方、WHOは中国寄りであり、改革を求めると共に、改革されなければ脱退も辞さないとした。
1、コロナウイルス問題は世界77億人の健康、存続に関する問題
コロナウイルス問題は、単に2,700万人の台湾の人々の健康、安全の問題ではなく、世界の77億人の健康、安全の問題であると共に、世界の健全な経済・社会・文化活動の回復、維持に影響する問題であり、いわば人類全体の健全な存続に関する問題である。
 武漢型コロナウイルスは、その発生源については別として、武漢から世界に拡散し、40万人を超える死者を出す拡散源となったことは確かである。習近平中国主席は、武漢を中心とする中国国内で感染が拡大したことを詫びたが、世界に対してはそのようなお詫びをしていない。確かに中国も新型コロナウイルスの被害者であるが、世界に拡散させた責任の一端はあり、世界に何らかの言葉があっても良いのではなかろうか。それどころか、世界が密接に協力してコロナウイルスを克服していかなくてはならない時期にWHO年次総会への台湾のオブザーバー参加を阻み、コロナウイルス克服へ向けての世界的努力から除外し、空白地帯を造っているに等しい。世界のどこかに空白地帯があれば、この問題の中・長期的な解決は難しい。
 2、台湾の独立を推進する時
 次のWHO総会でも、中国はかたくなに台湾が中国に帰属するとの原則を主張し、台湾の参加に反対するか、厳しい条件を課すであろう。台湾について中国が何かできるわけでもなく、台湾は国際的なコロナウイルス撲滅努力の外に置かれる。
 領土問題については、香港の問題がある。1997年6月に英国の99年間香港租借が終了し、50年間は香港の「高度の自治」が認められる1国2制度に移った。領土としては中国であり、香港での民主化運動の激化に対し、中国は香港に「国家安全法」を適用することを2020年5月の全人代で決めた。
米国等は香港の自由と民主主義を抑圧するものとして強く反発している。しかし中国は、香港は中国の一部であり、内政干渉として取り合う姿勢を示していない。中国は「領土」という原則は曲げないであろう。現在の国境を前提とする国家関係ではやむを得ないことだろう。そのことは香港を去った英国が一番よく知っている。
台湾については、戦後中華民国として中国共産党下の中華人民共和国とそれぞれが中国を代表するものとして対峙していたが、東西冷戦下の1971年に、アメリカ合衆国をはじめとする西側諸国と、ソビエト連邦(当時)をはじめとする東側諸国との間で政治的妥協が計られた結果、国際連合における「中国代表権」が中華人民共和国に移され、中華民国(台湾)は国連とその関連機関から脱退を余儀なくされ、「地域」として扱われてきた。
 台湾と外交関係を有する国も現在中南米、カリブ諸国を中心として15カ国に減少している。日本も外交関係を持っていない。
 台湾が国連を脱退して50年ほどになるが、中国は「1つの中国」を主張し、台湾をその1地域としている。台湾においては、台湾独立派と中国大陸派とが存在するが、自由と民主主義は根付いており、同じ中華系も多いが、高雄系などの台湾独自の人口も多いので、中国共産党とは相容れない社会経済体制となっている。双方とも、それぞれが中心となって中国統一を願っているようであり、それが双方国民の選択であれば良いが、差が縮まるどころか広がっている。
 これ以上待っても物事は動かないし、武漢型コロナウイルス問題など地球規模の問題への対応、健全な人類の存続を考えると、台湾を国連の外に置いておくことは望ましくない。今や東西冷戦はなくなっており、その時の東西両陣営の妥協の産物である中国の代表権問題はその役割を終えたと考えられるので、今や台湾の独立を推進すべき時代になっていると言えよう。台湾独立後、双方の国民が統一中国を希望するのであれば、それは双方の国民の選択に委ねれば良いことであろう。
(2020.6.8.All Rights Reserved.)


 1月末以来、中国武漢から世界に拡大したコロナウイルスは、既に680万人以上の感染者、40万人近くの死者を出し、世界レベルでの感染は未だに収まっていない。
 このような中、5月18日、世界保健機関(WHO)の年次総会を開かれ、焦点に1つであった非加盟の台湾のオブザーバー参加について、中国が「1つに中国」を主張して反対したため、見送りとなり、年内にも開かれる次回総会で協議されることになった。
 米国は、台湾のオブザーバー参加を支持する一方、WHOは中国寄りであり、改革を求めると共に、改革されなければ脱退も辞さないとした。
1、コロナウイルス問題は世界77億人の健康、存続に関する問題
コロナウイルス問題は、単に2,700万人の台湾の人々の健康、安全の問題ではなく、世界の77億人の健康、安全の問題であると共に、世界の健全な経済・社会・文化活動の回復、維持に影響する問題であり、いわば人類全体の健全な存続に関する問題である。
 武漢型コロナウイルスは、その発生源については別として、武漢から世界に拡散し、40万人を超える死者を出す拡散源となったことは確かである。習近平中国主席は、武漢を中心とする中国国内で感染が拡大したことを詫びたが、世界に対してはそのようなお詫びをしていない。確かに中国も新型コロナウイルスの被害者であるが、世界に拡散させた責任の一端はあり、世界に何らかの言葉があっても良いのではなかろうか。それどころか、世界が密接に協力してコロナウイルスを克服していかなくてはならない時期にWHO年次総会への台湾のオブザーバー参加を阻み、コロナウイルス克服へ向けての世界的努力から除外し、空白地帯を造っているに等しい。世界のどこかに空白地帯があれば、この問題の中・長期的な解決は難しい。
 2、台湾の独立を推進する時
 次のWHO総会でも、中国はかたくなに台湾が中国に帰属するとの原則を主張し、台湾の参加に反対するか、厳しい条件を課すであろう。台湾について中国が何かできるわけでもなく、台湾は国際的なコロナウイルス撲滅努力の外に置かれる。
 領土問題については、香港の問題がある。1997年6月に英国の99年間香港租借が終了し、50年間は香港の「高度の自治」が認められる1国2制度に移った。領土としては中国であり、香港での民主化運動の激化に対し、中国は香港に「国家安全法」を適用することを2020年5月の全人代で決めた。
米国等は香港の自由と民主主義を抑圧するものとして強く反発している。しかし中国は、香港は中国の一部であり、内政干渉として取り合う姿勢を示していない。中国は「領土」という原則は曲げないであろう。現在の国境を前提とする国家関係ではやむを得ないことだろう。そのことは香港を去った英国が一番よく知っている。
台湾については、戦後中華民国として中国共産党下の中華人民共和国とそれぞれが中国を代表するものとして対峙していたが、東西冷戦下の1971年に、アメリカ合衆国をはじめとする西側諸国と、ソビエト連邦(当時)をはじめとする東側諸国との間で政治的妥協が計られた結果、国際連合における「中国代表権」が中華人民共和国に移され、中華民国(台湾)は国連とその関連機関から脱退を余儀なくされ、「地域」として扱われてきた。
 台湾と外交関係を有する国も現在中南米、カリブ諸国を中心として15カ国に減少している。日本も外交関係を持っていない。
 台湾が国連を脱退して50年ほどになるが、中国は「1つの中国」を主張し、台湾をその1地域としている。台湾においては、台湾独立派と中国大陸派とが存在するが、自由と民主主義は根付いており、同じ中華系も多いが、高雄系などの台湾独自の人口も多いので、中国共産党とは相容れない社会経済体制となっている。双方とも、それぞれが中心となって中国統一を願っているようであり、それが双方国民の選択であれば良いが、差が縮まるどころか広がっている。
 これ以上待っても物事は動かないし、武漢型コロナウイルス問題など地球規模の問題への対応、健全な人類の存続を考えると、台湾を国連の外に置いておくことは望ましくない。今や東西冷戦はなくなっており、その時の東西両陣営の妥協の産物である中国の代表権問題はその役割を終えたと考えられるので、今や台湾の独立を推進すべき時代になっていると言えよう。台湾独立後、双方の国民が統一中国を希望するのであれば、それは双方の国民の選択に委ねれば良いことであろう。
(2020.6.8.All Rights Reserved.)


 1月末以来、中国武漢から世界に拡大したコロナウイルスは、既に680万人以上の感染者、40万人近くの死者を出し、世界レベルでの感染は未だに収まっていない。
 このような中、5月18日、世界保健機関(WHO)の年次総会を開かれ、焦点に1つであった非加盟の台湾のオブザーバー参加について、中国が「1つに中国」を主張して反対したため、見送りとなり、年内にも開かれる次回総会で協議されることになった。
 米国は、台湾のオブザーバー参加を支持する一方、WHOは中国寄りであり、改革を求めると共に、改革されなければ脱退も辞さないとした。
1、コロナウイルス問題は世界77億人の健康、存続に関する問題
コロナウイルス問題は、単に2,700万人の台湾の人々の健康、安全の問題ではなく、世界の77億人の健康、安全の問題であると共に、世界の健全な経済・社会・文化活動の回復、維持に影響する問題であり、いわば人類全体の健全な存続に関する問題である。
 武漢型コロナウイルスは、その発生源については別として、武漢から世界に拡散し、40万人を超える死者を出す拡散源となったことは確かである。習近平中国主席は、武漢を中心とする中国国内で感染が拡大したことを詫びたが、世界に対してはそのようなお詫びをしていない。確かに中国も新型コロナウイルスの被害者であるが、世界に拡散させた責任の一端はあり、世界に何らかの言葉があっても良いのではなかろうか。それどころか、世界が密接に協力してコロナウイルスを克服していかなくてはならない時期にWHO年次総会への台湾のオブザーバー参加を阻み、コロナウイルス克服へ向けての世界的努力から除外し、空白地帯を造っているに等しい。世界のどこかに空白地帯があれば、この問題の中・長期的な解決は難しい。
 2、台湾の独立を推進する時
 次のWHO総会でも、中国はかたくなに台湾が中国に帰属するとの原則を主張し、台湾の参加に反対するか、厳しい条件を課すであろう。台湾について中国が何かできるわけでもなく、台湾は国際的なコロナウイルス撲滅努力の外に置かれる。
 領土問題については、香港の問題がある。1997年6月に英国の99年間香港租借が終了し、50年間は香港の「高度の自治」が認められる1国2制度に移った。領土としては中国であり、香港での民主化運動の激化に対し、中国は香港に「国家安全法」を適用することを2020年5月の全人代で決めた。
米国等は香港の自由と民主主義を抑圧するものとして強く反発している。しかし中国は、香港は中国の一部であり、内政干渉として取り合う姿勢を示していない。中国は「領土」という原則は曲げないであろう。現在の国境を前提とする国家関係ではやむを得ないことだろう。そのことは香港を去った英国が一番よく知っている。
台湾については、戦後中華民国として中国共産党下の中華人民共和国とそれぞれが中国を代表するものとして対峙していたが、東西冷戦下の1971年に、アメリカ合衆国をはじめとする西側諸国と、ソビエト連邦(当時)をはじめとする東側諸国との間で政治的妥協が計られた結果、国際連合における「中国代表権」が中華人民共和国に移され、中華民国(台湾)は国連とその関連機関から脱退を余儀なくされ、「地域」として扱われてきた。
 台湾と外交関係を有する国も現在中南米、カリブ諸国を中心として15カ国に減少している。日本も外交関係を持っていない。
 台湾が国連を脱退して50年ほどになるが、中国は「1つの中国」を主張し、台湾をその1地域としている。台湾においては、台湾独立派と中国大陸派とが存在するが、自由と民主主義は根付いており、同じ中華系も多いが、高雄系などの台湾独自の人口も多いので、中国共産党とは相容れない社会経済体制となっている。双方とも、それぞれが中心となって中国統一を願っているようであり、それが双方国民の選択であれば良いが、差が縮まるどころか広がっている。
 これ以上待っても物事は動かないし、武漢型コロナウイルス問題など地球規模の問題への対応、健全な人類の存続を考えると、台湾を国連の外に置いておくことは望ましくない。今や東西冷戦はなくなっており、その時の東西両陣営の妥協の産物である中国の代表権問題はその役割を終えたと考えられるので、今や台湾の独立を推進すべき時代になっていると言えよう。台湾独立後、双方の国民が統一中国を希望するのであれば、それは双方の国民の選択に委ねれば良いことであろう。
(2020.6.8.All Rights Reserved.)

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新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる (再掲)

2021-11-29 | Weblog

新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる (再掲)

                                                                  2021年1月15日

 中国武漢を発生源とするコロナウイルス伝染病が世界に拡大する中、国連保健機関(WHO)は、発生源である武漢への調査団を中国政府に再三に亘り求めていたところ、1月11日になってやっと中国国家衛生健康委員会が、「WHOのコロナウイルス発生源専門家チームが同月14日に訪中して調査を行う」旨公表した。調査団は同日武漢に到着し、やっと武漢での調査が中国側と協力して進められるようだ。

 WHO調査団は、その前の週にも武漢入りする予定だったが、中国側がメンバーへのビザを交付しなかったため延期された。調査団にはオーストラリアの専門家など各国専門家が入っている。オーストラリアと中国の関係は、アフガニスタンにおいて多国籍軍に参加している豪州兵がアフガニスタンの少年をナイフで威嚇している写真を中国側がツイッターに載せたことから、豪州側が激怒し、相互の貿易制限にも発展し、悪化しているなど、政治外交的理由とみられている。

 1、国際協力を阻む中国

 新型コロナウイルスは、2019年12月に武漢で発生し、翌1月に武漢市で感染拡大が始まった。中国政府が市民への情報公表が遅れたことが対応の遅れとなった。新華社通信によると、同年2月3日、習主席は、感染拡大への対応について共産党政治局常務委員会を開き、患者やその家族に対しお見舞の言葉を述べる一方、政府の対応の欠陥や至らなかった点を教訓として、党、政府ともに国を挙げて予防対策に取り組む考えを示した。

 中国の国内的対応の遅れが、世界への情報提供、公表の遅れとなった。世界が無防備の中で、武漢に滞在していて外国人や中国人が同地を去りそれぞれ本国に戻ることを黙認したことが、コロナウイルスの世界的拡大の要因となった。1月15日現在、世界全体の感染者数 9,243万人、 死者198万人以上となっている。更に増え続けており、世界経済への影響も甚大で、職を失い、困窮する者も多い。中国はこの現実を他人事のように発言しているが、中国は情報の遅れを世界に謝罪すべきであろう。

 しかも中国は、WHO調査団による発生地武漢での調査を1年以上遅らせ、コロナウイルス対策の上で重要な発生源や伝染経路などの調査を遅らせた。感染源は、コウモリ又はこれから伝染した動物とされており、武漢の生鮮市場が媒体とされている。また武漢にはウイルスを研究する中国科学院武漢病毒研究所があり、ここで長年に亘りコウモリを研究している専門家がおり、コウモリを媒体とするウイルス等については可なりの研究がなされているとみられている。従って、生鮮市場や武漢病毒研究所の研究状況、及び現在の伝染状況や変異種の存在と中国側の対応などを調査し、その結果を速やかに世界が共有することが、コロナウイルスへの効果的な対応には不可欠だ。

 その調査を1年以上引き延ばし、更に調査団の武漢入りを遅らせることは、パンデミックに取り組む世界への協力の意志の欠如としか言いようがない。これは単に中国だけの問題では無く、世界の人々の健康の問題であるので、中国の真摯な協力と情報の速やかな公開を望みたい。

 中国政府は、コロナウイルスが世界的に拡大し始めた際、一方で途上国に対しマスクの供給など支援するとし、また最近では中国でワクチン開発を行い、ワクチン供給などにより‘健康のシルクロード’を作るとしているが、他方でコロナウイルス撲滅への鍵となる発生源の国際調査を1年以上も遅らせ、国際協力を阻んでいる。

 中国はまた、2020年5月に開催された国連保健機関(WHO)の年次総会に際し、台湾のオブザーバー参加を「1つの中国」政策に反するとして反対し、更に同年11月の総会においても台湾の参加を阻止した。コロナウイルスは台湾だけで無く、国境を越えて世界70億人の健康に関するものであり、台湾のオブザーバー参加に反対することは世界の健康、国際協力を軽視する姿勢と言えよう。中国はコロナウイルスの発生源であり、国、地域を問わず世界70億人の健康に責任がある。

 


 2、問われる国際社会での中国の姿勢と情報公開

 中国は、香港において民主化運動が活発になっている情勢を受けて、反政府活動や香港独立活動などの取り締まりを強化するため、香港に対し香港国家安全維持法を導入することを決定し、2020年6月30日、交付された。

 同法に基づき、2020年7月以降30人程度が逮捕され、その他多数が拘束などされたが、2021年1月6日には、国家や政権転覆をねらった同法違反の疑いがあるとして、香港立法会の民主派の前議員や区議会議員など53人が警察に逮捕された。

 香港は、1997年6月30日に99年間の英国の租借期限を迎え、翌7月1日より中国の領土、主権となった。その際香港住民の要請を背景として、英国と中国との交渉の結果、同年より50年間、香港特別行政区として「高度の自治」を許され、1国2制度となった。その後香港はある程度の自治を許され、一定の政治的自由、民主的制度を得ていたが、徐々に中国化が進み、中国本土より多数の中国人が流入し、また香港人の自由や民主主義に制約が課されるようになった。多くの富裕層等は、事業は香港に残し、自らは英国、豪州、米国などに移住する一方、若い世代を中心として民主活動が活発に行われるようになった。

 自由で民主的だった香港が中国の主権下に戻り、中国化が進み、中国的な制約や仕組みが課され、自由が失われて行くことは非常に残念なことだ。しかし、現在の国家制度においては、香港は中国の領土、主権の下に服せざるを得ない。

 中国に対し香港の自治権、自由と民主主義を維持せよと言っても、中国にとってそれは「内政問題」であり、応じることはないであろう。中国は、将来の国家転覆、反政府活動を防ぐために「香港国家安全維持法」を施行したのだ。香港の返還時に高度の自治を認める英国との国際約束についても、中国としては、安全維持法は香港行政府も承認したものであり、いずれにしても内政干渉などと反論するであろう。

 中国自体が変わらない限り香港の状況を改善することは困難と思われるが、香港は中国の本質を世界の前に映し出しており、正に中国本土内では香港で行われているような政治的抑圧・強制が行われていることを示している。新疆ウイグルやチベットでも同じようなことが行われているのだろう。それは世界の誰の目でも分かることである。

 中国はまた、南シナ海にある南沙諸島などについて領有権を主張しているが、ベトナムやフィリピンなど6か国が領有権を主張しているにも拘わらず、軍事転用できる施設などを構築している。ベトナムなどの訴えに対し、2016年7月、ハーグの常設仲裁裁判所は、中国が南シナ海のほぼ全域で領有権を主張し独自に設定した境界線(いわゆる「九段線」)には、国際法上「歴史的権利を主張する法的根拠はない」と認定した。しかし中国はこれに応じず、逆に南沙諸島に人工島や滑走路など、軍事使用出来る施設等を増設し、南シナ海及びその周辺海域での軍事活動を強化している。

 中国は、香港の自由は認めない、台湾の国際活動は認めない、国際仲裁裁判には従わない。それで多国間主義や国際協力などと言えるのだろうか。中国至上主義、拡張主義としか映らない。

 


 3、中国が真に国際社会の良き構成員となることを期待

 しかし中国を外部から変えようとしても無理があろう。今日の国際秩序は、領土、領海で区切られた国家群、地域群で構成され、各国家には主権が付与されており、内政への干渉は行わないこととされ、それで秩序が保たれている。

  それを破れば戦争に発展する恐れがあるが、戦争は避けなくてはならない。

 中国が自ら変わることを期待したいが、それまでは各国は、中国の各種の規制・制約、国営企業等への優遇措置、国際協調拒否などに応じ、中国の国外の活動を規制・制限等する権利を留保すると共に、国際場裏の場で粘り強く訴えることが必要であろう。中国が国際社会の良き構成員となることが望ましい。

 また軍事面では、北東アジア地域における軍備拡充競争のこれ以上の激化を抑えるため、軍備縮小交渉と信頼醸成措置の協議を早急に開始することが望ましい。対象国は、中国、南・北朝鮮及び米国、ロシアが中心となろう。

(2021.1.15. All Rights Reserved.)

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コロナウイルス感染縮小、評価するもPCR検査数も削減!

2021-11-29 | Weblog

 コロナウイルス感染縮小、評価するもPCR検査数も削減!

 コロナウイルスの感染者数が東京でも全国規模でも顕著に縮小しており、大変喜ばしい。

 これは6月20日より3か月間緊急事態宣言が継続された結果、各種活動が抑制され、マスク着用などの国民レベルでの感染予防努力があったことと、ワクチン接種の促進によるところが大きい。

 国、地方自治体の関係部局、医療関係者のご努力に感謝すると共に、国民の皆様、飲食・観光関係者のご努力や我慢等に対し心から敬意を表したい。

  1、PCR検査数が減れば新規感染者の数も減る

 他方、コロナウイルス感染が縮小し、感染率も大幅に低下しているが、9月に入りPCR検査の数も大幅に減少している。PCR検査の数は、曜日によって異なるが、東京都では8月中・下旬の1日当たりの平均的検査数が1万5千人から1万6千人前後であったのに対し、10月初旬から中旬には6千人から7千人前後と1/3以下に削減されている。

 全国規模では、更に顕著で、8月中・下旬には14~15万人前後であったが、10月初旬から中旬には5万人から6万人前後とほぼ1/3に激減している。

  2、 8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は約3倍!

 感染率が減れば検査対象者が減り、検査数が減るのは道理だが、大まかに言って8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は公表されている数の約3倍となる。10月9日の東京都の新規感染者は89人と公表され100人を切ったと言われているが、単純計算ではあるが、8月レベルの検査が行われていれば267人と3桁となる。全国レベルでは774人と1,000人を切ったが、8月レベルの検査が行われていれば2,322人と2,000人を上回ることになる。

 政府当局が政府の政策に有利な情報や数値を公表する場合がある。今回は、国民の健康と命にかかわることであり、統計数値の操作は国民や関係活動に影響を与えるだけに、そのようなことがないことを期待したい。しかし現在公表されている数値については、8月との比較では、その約3倍前後と考えた方が良さそうだ。自分自身や家族等の健康と命にかかわる問題であるので、油断は禁物だ。

 現在でもコロナウイルスで自宅療養している方や病院には入れない調整中が多数おり、また無症状や軽症者も多数存在し、自由に外出し、旅行もしている。コロナウイルスが無くなったわけではない。また多くの人が後遺症に苦しんでいることを忘れてはいけないだろう。後遺症に対しても救済が必要だ。

 このような中で、旅行代理店や観光関連団体がGo To トラベル再開への促進活動を活発に行っており、支持する向きもある。関係業者のご苦労は十分に理解出来るところであり、現在検証実験的に試行されているが、観光客を含め国民の健康と命にかかわることであるので、慎重な対応が望まれる。2020年7月の拙速を繰り返してはならない。多くの国民は旅行や飲食を渇望しているので、現在は、旅行や飲食を一定の条件で解禁さえすれば十分だろう。行うなら、まず各自治体内で判断して行うことが望ましい。

 また、このような感染力の強い国際的な感染症(パンデミック)については、関係分野毎に一定の予防措置を執ることを義務付けた上で営業を許可し、感染者が出たら1か月前後の営業停止を求め、消毒や予防措置の改善を図ることにするのも、各分野の自主的努力を促進し、賛同も得やすく効果的であろう。(2021.10.17.)

 コロナウイルスの感染者数が東京でも全国規模でも顕著に縮小しており、大変喜ばしい。

 これは6月20日より3か月間緊急事態宣言が継続された結果、各種活動が抑制され、マスク着用などの国民レベルでの感染予防努力があったことと、ワクチン接種の促進によるところが大きい。

 国、地方自治体の関係部局、医療関係者のご努力に感謝すると共に、国民の皆様、飲食・観光関係者のご努力や我慢等に対し心から敬意を表したい。

  1、PCR検査数が減れば新規感染者の数も減る

 他方、コロナウイルス感染が縮小し、感染率も大幅に低下しているが、9月に入りPCR検査の数も大幅に減少している。PCR検査の数は、曜日によって異なるが、東京都では8月中・下旬の1日当たりの平均的検査数が1万5千人から1万6千人前後であったのに対し、10月初旬から中旬には6千人から7千人前後と1/3以下に削減されている。

 全国規模では、更に顕著で、8月中・下旬には14~15万人前後であったが、10月初旬から中旬には5万人から6万人前後とほぼ1/3に激減している。

  2、 8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は約3倍!

 感染率が減れば検査対象者が減り、検査数が減るのは道理だが、大まかに言って8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は公表されている数の約3倍となる。10月9日の東京都の新規感染者は89人と公表され100人を切ったと言われているが、単純計算ではあるが、8月レベルの検査が行われていれば267人と3桁となる。全国レベルでは774人と1,000人を切ったが、8月レベルの検査が行われていれば2,322人と2,000人を上回ることになる。

 政府当局が政府の政策に有利な情報や数値を公表する場合がある。今回は、国民の健康と命にかかわることであり、統計数値の操作は国民や関係活動に影響を与えるだけに、そのようなことがないことを期待したい。しかし現在公表されている数値については、8月との比較では、その約3倍前後と考えた方が良さそうだ。自分自身や家族等の健康と命にかかわる問題であるので、油断は禁物だ。

 現在でもコロナウイルスで自宅療養している方や病院には入れない調整中が多数おり、また無症状や軽症者も多数存在し、自由に外出し、旅行もしている。コロナウイルスが無くなったわけではない。また多くの人が後遺症に苦しんでいることを忘れてはいけないだろう。後遺症に対しても救済が必要だ。

 このような中で、旅行代理店や観光関連団体がGo To トラベル再開への促進活動を活発に行っており、支持する向きもある。関係業者のご苦労は十分に理解出来るところであり、現在検証実験的に試行されているが、観光客を含め国民の健康と命にかかわることであるので、慎重な対応が望まれる。2020年7月の拙速を繰り返してはならない。多くの国民は旅行や飲食を渇望しているので、現在は、旅行や飲食を一定の条件で解禁さえすれば十分だろう。行うなら、まず各自治体内で判断して行うことが望ましい。

 また、このような感染力の強い国際的な感染症(パンデミック)については、関係分野毎に一定の予防措置を執ることを義務付けた上で営業を許可し、感染者が出たら1か月前後の営業停止を求め、消毒や予防措置の改善を図ることにするのも、各分野の自主的努力を促進し、賛同も得やすく効果的であろう。(2021.10.17.)

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新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本(追補版)

2021-11-29 | Weblog

新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本(追補版)

<はじめに> 日本の新規感染者は、2021年8月12日現在、全国で約1万9千人、東京都は4,989人に拡大し、重症者も全国で1,400人強、東京都では218人と最多となっている。更に子供を含め家庭内感染拡大が懸念される自宅療養者が2万人を超え、加えて入院を待つ調整者が1万1千人強にも達している。死者こそ少ないが、重症化した患者は回復しても肺機能が元に戻ることはほとんどなく、息苦しい生涯を強いられ、また味覚障害等の後遺症も残る恐れがあり、軽く見ることは出来ない。

 政府与党、東京都、財界は、オリンピック開催をシンボリックな契機として経済社会活動の回復に舵を切ったが、急速な感染拡大により経済回復を更に遅らせる恐れが強い。

 政府は家庭療養を促す一方、尾身政府分科会会長は、東京の人流を7月前半に比し半減させるよう提案している。感染防止は個々人の健康と命のためであるので、自分自身の問題として協力すべきであろう。誰の健康でも、命でもない。自分自身の健康であり、命である。

 しかし当面の課題はそれだけでなく、(1)家庭内療養者をできる限り減らし、隔離、治療すること、(2)人流は、7月20日頃以降減っている。学校が夏休みに入ったからだ。学生達は、休みで規制の少ない地方や郷里、或いは遊び場に行き、東京を離れたいのは当然だ。緊急事態宣言の中で世界最大のスポーツの祭典オリンピックが行われているのだから、少しくらいは良いのだろうという心理を無意識に起こさせているのかもしれない。

 (1)家庭内療養者については、日本の一般的な住宅事情では、感染者を家庭内で隔離し、感染力の強い伝染病を適切に治療することは難しい。家庭から隔離し、最低限の治療を行える場所を作ることが不可欠だろう。

(2)人流については、お盆期間を含め学生などの地方への人流と就労者・サラリーマンの都市圏での人流をどの程度抑えられるかだ。また学校の再開を通常通りに行うのかなど、8月末以降の対応も必要と思われる。(2021.8.12.補足)

 

 そして9月下旬以来新規感染者が急速に減少を続けたが、2021年11月下旬に南アで新たな変異株としてオミクロンが確認され、アフリカ、欧州地域を中心としてアメリカ、アジア地域にも拡大している。これを受けて、関係各国が入国制限等を発表し、日本政府も暫定措置として、11月30日零時より全世界からの入国を原則として停止し、日本人についても新規予約を停止した。正体の分からない変異株の出現への緊急な対応として評価される。

 これに対し、海外在留の日本人より、年末年始を前にして帰国出来ないなどの批判を受けて、国交省は日本人の予約停止を解除した。観光目的等の日本人については良いが、年末年始等のための一時帰国希望者については、気持ちは十分に分かるが、オミクロン株の詳細が明らかになるまでの間、日本国民全体の健康のために予約を控えて頂いて良いのではないだろうか。

 またWHOは、「コロナウイルスは人種を選ばない」などとして、日本の対応を批判しているが、この國際感染症は海外で発生、変異しているものであり、その国内感染を防止する検疫権限は各国にある上、領土内での自国民の行動様式や法令等の適用と外国人とでは異なる場合が多々あるので、自国民と外国人を適正に区別することは各国の判断であり、WHOの批判は当たらない。国際交流、国際協調、及びグローバリゼーションの方向性は維持すべきであるが、将来は別として、現在の世界は領土内の国家主権を基礎としているので、國際感染症や無秩序な國際難民、国際テロ・犯罪等への対応として国毎の対応が尊重されて良いのであろう。国連やその専門機関が「世界連邦」的な発想で対応しがちだが、現実はまだそこまで達していない上、残念ながら、これらの国際機関も加盟諸国の寄せ集めの体制であり、新型コロナウイルスへの初期の対応や発生源の特定を含め適切な対応をしているとも言えないのであろう。多くの問題があるのが現実だ。

 このような観点を含め、本稿を再掲したい。

 

 現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス肺炎は、感染力と致死率が高く、発生から3ヶ月後の2020年4月には、世界の感染者総数は215万人超、死亡者は14万人超(4月17日現在)に達している。日本も、国内感染者9,297人、死亡者136人(同日現在)となっている。

更にインドのデルタ型など、感染力の強い変異種への対応が必要になっている。

 このような国際的伝染病(パンデミック)を克服するためには、基本的に2つの対応が必要だ。

 1つは、伝染病の罹患者(陽性者)を早期に特定した上、隔離し、治療することが基本であろう。

 第2は、伝染病が急速に広がり、罹患者が急増し、死者が増えることにより、社会活動、経済活動全般が停滞し、国民生活に大きな影響を与えるので、そのための救済、救援処置が必要となることである。

  1、   新型コロナウイルス肺炎の封じ込めに何が必要か

(1)早期発見と情報の迅速な伝達、共有

 新型コロナウイルス肺炎は、中国武漢市で発生が確認され伝染が拡大したが、武漢市を初めとする中国の対応と情報の内外への発信の遅れが、中国国内での対応ばかりではなく、世界への伝染拡大を招いたと言えよう。

 また国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の世界的伝染病(パンデミック)とする宣言が遅かったと言えよう。

 今回のコロナウイルス肺炎は、「新型」であったので未知なことも多く、対応が遅れたとしても誰の責任でもなく、仕方が無いことと思われる。しかし中国の地方組織を含め、情報統制を行っていることが遅れの一因であり、遺憾であるが、中国が猛省し、今後発生源の特定や何故対応が遅れたかの検証、病原菌の特性などにつき、国連はじめ関係各国への迅速な情報や資料の提供を望みたい。

 (2)検査の充実と罹患者(陽性者)の特定、隔離、治療が対応の基本

 このような感染力の強い伝染病への対応については、速やかに罹患者を特定し、隔離、治療するのが基本中の基本であろう。

 今回の場合、新型であったため、検査キットの準備がなく、1月下旬の初期段階では1日800件程度しか検査できない状況であったので、武漢等への渡航経験者などを除き、検査は受けられず、‘自宅療養’の状態となったことは仕方なかったとしても、その後迅速に検査体制の拡充・整備、陽性者を症状を選別した上で隔離・治療体制の拡充、整備を優先的に進めるべきであった。そのために予備費などを含め予算を優先的に充てるべきであったと思われる。

 一部に、検査して陽性患者が増えると病院が受け入れられないようになり、イタリアなどのように「医療崩壊」を起こすとの意見があった。何もしなければそうであろう。検査を前提として、陽性者の症状に応じ、症状がないか軽微な者の隔離場所(第1次隔離)、重度でないが治療を要する患者(第2次隔離)、及び重度者(第3次隔離)などに分けて、収容場所を新・増設する。場所は、廃校となった学校や施設や場合により適当場所に簡易施設を建設するなど対応は出来るはずだ。また医療用マスク、防護着衣や人工呼吸器類を拡充・整備すると共に、検査キットやワクチン、治療薬等の開発を図る。そのために予算を優先的に使用すべきだ。

 医師、看護師等の人材については、まず医療従事者が感染しないよう配慮する一方、OBの再リクルート、研修医の動員や、必要に応じ医大生をボランテイアー・ベースで募り、緊急・危険手当を含め然るべく報酬を支給して手当てするなど、対応は可能であろう。予備費を当てると共に予算手当を優先的に行うべきであろう。

 現在のように、無症状の保菌者が自由に行動できる状態ではコロナウイルスの伝染を克服することは出来ない。コロナウイルス禍は長期に残存する可能性が高いが、将来、緊急事態宣言を解除、緩和する時には、無症状の保菌者への対応が必要となろう。そのためにも検査の充実は不可欠だ。

 2、経済社会活動、国民生活への影響をどう緩和、救済するか

 経済的被害については、個人にせよ企業・団体にせよ、誰もが被害者であるので、まずはそれぞれの経済的能力に従って耐え、対応し克服する努力が必要だろう。そのような個々の意識と努力がなければ克服は難しい。財源が限られている以上、政府や地方自治体が行えることには限度がある。

 公的な経済的支援を必要とするのは、職業が安定していない人や解雇される人であり、企業・団体では中小零細企業・団体や観光・飲食・娯楽・サービス業などの分野で、コロナウイルス禍で著しく影響、被害を受けるところが中心となろう。仕事を失った者に対しては、雇用保険によるセーフテイーネットがあるものの、その対象となっていない人々や地域、分野によって被害は一律ではない。重要なことは、経済・社会活動が制限、縮小され、生活が困窮し、被害を受けている人々に支援が迅速に届くような措置が望まれる。(2020.4.17.初稿、2021年8月12日補足)

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激動の時代を経て生まれたブッダの基本思想(その2) ―ブッダのルーツの真実―

2021-11-26 | Weblog

激動の時代を経て生まれたブッダの基本思想(その2)
―ブッダのルーツの真実―        2018年2月19日
 日本の国勢調査では、総人口の約74%が仏教系統。ところが一般には、ブッダが誕生した時代背景やルーツ、基本思想などについては余り知られていない。ブッダの誕生地は「北インド」と習った人が多く、未だに多くの教科書にはそのように記載。
また国際的にも、ブッダが青年期を過ごしたシャキア王国の城‘カピラヴァスツ’がインド側とネパール側にあるなど、未解明であり、不思議。ブッダ誕生の歴史的、社会的な背景やルーツを知ることは日本の文化や思想をよりよく知る上で必要。
このような観点や疑問から2011年に著書「お釈迦様のルーツの謎」(東京図書出版)を出版。また2015年、英文著書「The Mystery over Lord Buddha’s Roots」がニューデリーのNirala Publicationsから国際出版。特に英文ではブッダの基本思想やその歴史的な意味合いに注目。
Ⅰ.ブッダのルーツの真実と歴史的背景
 1、ブッダの生誕地ルンビニ(ネパール)                  (その1で掲載)
  2、城都カピラヴァスツ(シャキア部族王国―ブッダ青年期の居城)と周辺の遺跡群 (その1で掲載)

 3、もう一つのカピラバスツは何か?ーインドのピプラワとガンワリア(その2に掲載)
北インド(ウッタル・プラデッシュ州)のピプラワ(Piprahwa)村にカピラバスツとされる遺跡がある。その南東1キロほどのところに「パレス」と表示されている遺跡。
(1)ピプラワのカピラバスツーブッダの骨壷が発見された大きなストウーパ跡の周囲に煉瓦造りの建物の遺跡。僧院群。     
(2)ガンワリアの「パレス」遺跡―ピプラワの遺跡から南東に1キロほどのところに「パレス」と表示されたガンワリアの遺跡。城壁なども無い僧院作りの重厚な建物。

4、歴史の証人―決め手となる法顕と玄奘の記録 (その2に掲載)
ー>歴史的にルンビニはブッダ教の巡礼地。
中国の僧侶法顕は5世紀初頭、玄奘はその200年ほど後の7世紀にルンビニ始め、ブッダゆかりの地を訪問、それぞれ「仏国記」(「法顕伝」)、「大唐西域記」として記録。
―>6世紀以降日本に入って来た仏典等は漢字で書かれた経典や伝承。(サンスクリットが漢字の音で表記され、難解。)
(1)「法顕伝」が伝えるカピラヴァストウ
法顕は、シャキヤ族の城都「カピラヴァストウ城」の項の中で、「城の東50里に王園がある。王園の名は論民(ルンビニのこと)と言う。」と記述。
従って、カピラ城は「ルンビニの西50里」=西20~25キロ」のところになる。
 ネパールのテイラウラコット村の城址と一致。
(2)異なる記述の玄奘の「大唐西域記」
 玄奘も、コーサラ国の首都シュラバステイや僧院などを経てカピラヴァストウを訪問しており、「カピラヴァストウ国」の項で異なる記述。「城」でなくて、「国」と記述。


 Ⅱ、激動の時代を経て、相対的な安定期に生まれたブッダ思想 (その3に掲載)
インド亜大陸へのアーリアンの長期にわたる大量の人口流入とドラビダ族等との支配を巡る紛争と融合を経て、16大国時代という相対的な安定期の中でブッダは誕生。大国間の支配を巡る潜在的な対立が存在する一方、各部族地域内では人口融合が進展。インド亜大陸統一は、その後約200年を経て、マガダ国の マウリア王朝時アショカ王により実現。
このようなブッダ誕生の歴史的、社会的背景から次のようなことが読み取れる。
1、根底にバラモンの思想と先代ブッダの存在―知的文化(古代ブッダ文化)の存在
2、王子の地位を捨て悟りの道を決断した基本思想―人類平等と人類共通の課題
3、生きることに立脚した悟り
4、不殺生、非暴力の思想

5、ヨーロッパ、アジアを大陸横断的に見た思想の流れ (その4に掲載)

(All Rights Reserved.)        2018年2月19日
 日本の国勢調査では、総人口の約74%が仏教系統。ところが一般には、ブッダが誕生した時代背景やルーツ、基本思想などについては余り知られていない。ブッダの誕生地は「北インド」と習った人が多く、未だに多くの教科書にはそのように記載。
また国際的にも、ブッダが青年期を過ごしたシャキア王国の城‘カピラヴァスツ’がインド側とネパール側にあるなど、未解明であり、不思議。ブッダ誕生の歴史的、社会的な背景やルーツを知ることは日本の文化や思想をよりよく知る上で必要。
このような観点や疑問から2011年に著書「お釈迦様のルーツの謎」(東京図書出版)を出版。また2015年、英文著書「The Mystery over Lord Buddha’s Roots」がニューデリーのNirala Publicationsから国際出版。特に英文ではブッダの基本思想やその歴史的な意味合いに注目。
Ⅰ.ブッダのルーツの真実と歴史的背景
 1、ブッダの生誕地ルンビニ(ネパール)                  (その1で掲載)
  2、城都カピラヴァスツ(シャキア部族王国―ブッダ青年期の居城)と周辺の遺跡群 (その1で掲載)

 3、もう一つのカピラバスツは何か?ーインドのピプラワとガンワリア(その2に掲載)
北インド(ウッタル・プラデッシュ州)のピプラワ(Piprahwa)村にカピラバスツとされる遺跡がある。その南東1キロほどのところに「パレス」と表示されている遺跡。
(1)ピプラワのカピラバスツーブッダの骨壷が発見された大きなストウーパ跡の周囲に煉瓦造りの建物の遺跡。僧院群。     
(2)ガンワリアの「パレス」遺跡―ピプラワの遺跡から南東に1キロほどのところに「パレス」と表示されたガンワリアの遺跡。城壁なども無い僧院作りの重厚な建物。

4、歴史の証人―決め手となる法顕と玄奘の記録 (その2に掲載)
ー>歴史的にルンビニはブッダ教の巡礼地。
中国の僧侶法顕は5世紀初頭、玄奘はその200年ほど後の7世紀にルンビニ始め、ブッダゆかりの地を訪問、それぞれ「仏国記」(「法顕伝」)、「大唐西域記」として記録。
―>6世紀以降日本に入って来た仏典等は漢字で書かれた経典や伝承。(サンスクリットが漢字の音で表記され、難解。)
(1)「法顕伝」が伝えるカピラヴァストウ
法顕は、シャキヤ族の城都「カピラヴァストウ城」の項の中で、「城の東50里に王園がある。王園の名は論民(ルンビニのこと)と言う。」と記述。
従って、カピラ城は「ルンビニの西50里」=西20~25キロ」のところになる。
 ネパールのテイラウラコット村の城址と一致。
(2)異なる記述の玄奘の「大唐西域記」
 玄奘も、コーサラ国の首都シュラバステイや僧院などを経てカピラヴァストウを訪問しており、「カピラヴァストウ国」の項で異なる記述。「城」でなくて、「国」と記述。


 Ⅱ、激動の時代を経て、相対的な安定期に生まれたブッダ思想 (その3に掲載)
インド亜大陸へのアーリアンの長期にわたる大量の人口流入とドラビダ族等との支配を巡る紛争と融合を経て、16大国時代という相対的な安定期の中でブッダは誕生。大国間の支配を巡る潜在的な対立が存在する一方、各部族地域内では人口融合が進展。インド亜大陸統一は、その後約200年を経て、マガダ国の マウリア王朝時アショカ王により実現。
このようなブッダ誕生の歴史的、社会的背景から次のようなことが読み取れる。
1、根底にバラモンの思想と先代ブッダの存在―知的文化(古代ブッダ文化)の存在
2、王子の地位を捨て悟りの道を決断した基本思想―人類平等と人類共通の課題
3、生きることに立脚した悟り
4、不殺生、非暴力の思想

5、ヨーロッパ、アジアを大陸横断的に見た思想の流れ (その4に掲載)

(All Rights Reserved.)

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‎激動の時代を経て生まれたブッダの基本思想(その1)‎ ‎―ブッダのルーツの真実―

2021-11-26 | Weblog

‎激動の時代を経て生まれたブッダの基本思想(その1)‎
‎―ブッダのルーツの真実― 2018年2月19日‎
‎ 日本の国勢調査では、総人口の約74%が仏教系統。 ところが一般には、ブッダが誕生した時代背景やルーツ、基本思想などについては余り知られていない。 ブッダの誕生地は「北インド」と習った人が多く、未だに多くの教科書にはそのように記載。 ‎
‎また国際的にも、ブッダが青年期を過ごしたシャキア王国の城‘カピラヴァスツ’がインド側とネパール側にあるなど、未解明であり、不思議。 ブッダ誕生の歴史的、社会的な背景やルーツを知ることは日本の文化や思想をよりよく知る上で必要。 ‎
‎このような観点や疑問から2011年に著書「お釈迦様のルーツの謎」(東京図書出版)を出版。 また2015年、英文著書「The Mystery over Lord Buddha’s Roots」がニューデリーのNirala Publicationsから国際出版。 特に英文ではブッダの基本思想やその歴史的な意味合いに注目。 ‎
‎Ⅰ. ブッダのルーツの真実と歴史的背景‎
‎1、ブッダの生誕地ルンビニ(ネパール)‎
‎ ブッダは、紀元前6世紀から5世紀にかけて現在のネパール南部ルンビニでシャキア王国(釈迦族の部族王国)の王子(シッダールタ)として誕生、29歳までカピラバスツ城で生活。 ‎
‎ブッダの生誕地がルンビニとされる根拠は、アショカ王の石柱(アショカ・ピラー)の存在。 1896年12月、英国の植民地下インド北西州の考古学調査官フュラー博士は、ネパール政府の許可を得て、南部のルンビニにおいて「アショカ・ピラー」を発掘、碑文を解読。 碑文には「シャキヤの賢者ブッダがここに誕生したこと」が記載。 ‎
‎マヤデヴィ寺院遺跡は、長いこと埋められていたが、ルンビニ園は1997年にUNESCOの世界遺産に登録。 ブッダの生誕地として世界的に認識されるように。 ‎
‎ブッダの生誕地ルンビニは、カピラバスツ城の位置を特定する上で基点となるので重要。 ‎

‎2、城都カピラヴァスツ(シャキア部族王国―ブッダ青年期の居城)と周辺の遺跡群‎
‎(1)ルンビニの西約25キロのテイラウラコット村に城都カピラヴァスツとされる城址が。 ‎
‎(背景:シッダールタ王子の青年期のルーツ‎
‎ブッダが属するシャキア(釈迦)族は、北西インドを中心に勢力を広げていたコーサラ族の流れを汲んでいる。 インド北西地域には、紀元前2000年頃からアーリア人がイラン高原を経由して長い年月を掛けて流入し、人口圧力の中で先住民との抗争を続けながら南東方向に浸透した。 そして紀元前10世紀頃から先住民のトラヴィダ族等との融合が始まるが、アーリアンの支配と種族の保全の観点から、バラモン(司祭・聖職者階級)、クシャトリア(騎士・支配階級)、ヴァイシャ(農業・生産者階級)及びスードラ(従属者階級)というカースト制度が発達したと見られる。 ‎
‎紀元前6世紀頃から紀元前5世紀頃にかけては、インド北西部を中心として16大国が割拠し競い合っていたが、コーサラ国がブッダが修行に向かったマガダ国などと並んで最も有力な国の一つ。 コーサラ国は、現在のインドのウッタル・プラデッシュ州に位置。 そして時の国王が、故あって第一王妃の王子、王女に森に行き、国を作るよう指示した。 王子、王女たちは「ヒマラヤ南麓」に辿り着き、シャキア王国を築いたと言われている。 )‎

‎(2)テイラウラコットのカピラ城址の周辺に多くの遺跡。 ネパールのカピラ城址がシャキア王国の城跡であることを裏付け。 ‎
‎ⅰ)寄り添って並ぶ2つの仏塔 (トウウイン・ストウーパ)‎
‎ⅱ)歴史を刻む2つのアショカ・ピラー。 アショカ王が何度もブッダの郷里に足を運んだ証拠。 ‎
‎・ゴテイハワのアショカ・ピラー‎
‎・ニグリハワのアショカ・ピラー上部には、次の趣旨の4行の碑文が刻まれている。 ‎
‎ ピヤダシ王(アショカ王の別称)は「・・・即位[20年]を経て 国王自ら訪れ‎
‎[そして]国王は[この石柱を建立することを]指示した」)‎
‎ⅲ)シッダールタ王子、覚醒後ブッダとして父王と再会した場所クダンー4つの僧院遺跡やマウンドが。 ‎
‎ (背景:ブッダは、ラージグリハ(現在のインドのビハール州)で富豪より寄進された竹林の僧院(日本語表記 竹林精舎)からカピラバスツまで約770キロ、2ヶ月ほどの道。 )‎
‎ⅳ)サガルハワのストウーパ(仏塔)遺跡‎
‎法顕伝は、「大城の西北に数百千のストウーパがある。 」等と記述。 ‎
‎このような歴史的な遺跡の存在は、ここにシャキア王国の城都カピラバスツがあったことを如実に物語っていると共に、カピラ城址周辺には古代ブッダ文化地帯とも言える知的文化があったこと示している。 ‎


‎3、もう一つのカピラバスツは何か? ーインドのピプラワとガンワリア(その2に掲載)‎
‎4、歴史の証人―決め手となる法顕と玄奘の記録 (その2に掲載)‎

‎ Ⅱ、激動の時代を経て、相対的な安定期に生まれたブッダ思想 (その3に掲載)‎
‎インド亜大陸へのアーリアンの長期にわたる大量の人口流入とドラビダ族等との支配を巡る紛争と融合を経て、16大国時代という相対的な安定期の中でブッダは誕生。 大国間の支配を巡る潜在的な対立が存在する一方、各部族地域内では人口融合が進展。 インド亜大陸統一は、その後約200年を経て、マガダ国の マウリア王朝時アショカ王により実現。 ‎
‎このようなブッダ誕生の歴史的、社会的背景から次のようなことが読み取れる。 ‎
‎1、根底にバラモンの思想と先代ブッダの存在―知的文化(古代ブッダ文化)の存在‎
‎2、王子の地位を捨て悟りの道を決断した基本思想―人類平等と人類共通の課題‎
‎3、生きることに立脚した悟り‎
‎4、不殺生、非暴力の思想‎

‎5、ヨーロッパ、アジアを大陸横断的に見た思想の流れ (その4に掲載)‎

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日・ロ平和条約締結への交渉加速を期待する (再掲)

2021-11-26 | Weblog

日・ロ平和条約締結への交渉加速を期待する (再掲)
                             2018年11月26日
 日・ロ平和条約締結に向け、シンガポールで開催されたASEAN関連首脳会議に際し、2018年11月14日、安倍首相はロシアのプーチン大統領と会談した。この会談は2016年に持たれた両首脳の日本での会談において、「新しいアプローチで問題を解決する」との方針の下で、北方4島での共同経済活動を促進することで合意したことを受けて行われたものである。
 日本外務省が公表した会談概要では、事務当局を含めた全体会合(45分)の他、通訳のみでの両首脳の個別会談(40分)が行われた。全体会合では、平和条約問題の他、2国間経済関係の促進、国際的な安全保障分野での協力、北朝鮮非核化問題など幅広い分野で意見交換が行われている。
 日・ロ平和条約締結問題については、全体会合においては、北方4島における共同経済活動の促進につき協議されると共に、日本側より元島民の問題について提起されたが、北方4島返還問題を含む平和条約締結問題については突っ込んだ話し合いは行われず、両首脳による個別会談で行われた。
 首脳間個別会談の後、安倍首相は記者団に対し、「1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる。そのことをプーチン大統領と合意した。」と述べ、これが公表された会談概要にも記載されている。1956年に調印された日・ソ共同宣言においては、外交関係を回復し、平和条約締結交渉を継続することとし,‘条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡しする’旨記されている。
 日本は従来、4島一括返還を主張し、領土問題解決が平和条約締結の前提条件としていた。しかし1956年の共同宣言から62年、歴代政権が交渉を重ねてきたものの見通しが立っていない今日、長年の膠着状態を打破するため平和条約締結に向け1956年の共同宣言を基礎として条約交渉を実質的且つ具体的に加速することを支持する。
 日本としては、老齢化する旧島民や地権者の精神的負担を軽減すると共に、急速に存在感を増す中国との関係においても海を隔てた隣国ロシアとの平和条約を締結することがタイムリーと言えよう。他方ロシアにとっては、強大化する中国との関係において、クリミア半島併合以来米・欧との関係が悪化し、制裁を科され、G8(主要先進8カ国)からも外され、孤立感を深めているので、政治的にも経済的にも日本との平和条約締結は望ましいものと言えよう。
 1、ロシアは北方領土返還により日本の信頼を回復出来る
 プーチン大統領は、今回の首脳会談後、‘同宣言には、ソ連が2つの島を引き渡す用意があるということだけ述べられ、それらがどのような根拠により、どちらの主権に基づくかなどは述べられていない。慎重な議論が必要だ’と述べたと伝えられている。しかしロシア側は、北方4島を奪取した経緯と旧島民のみならず日本国民にとっての北方領土返還の意味を理解すべきであろう。それは北方領土の権益等の経済的な価値などではなく、日本のロシアに対する信頼性回復の問題なのである。
 プーチン大統領は、日本の北方領土は‘戦争の結果得たものである’と述べていたところであり、日本の領土であることは認識していると思われる。従って、‘日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡しする’ということは、2島を日本の主権下に‘引き渡す’と言うことに他ならない。無論、ロシア、その前身であるソ連がこれらの島に投じた資金や現実にロシア人が生活をしているので、それらに対する代償については、プーチン大統領が示唆している通り‘議論が必要’であろう。
日本人にとっては、北方領土は‘経済的代償’以上の意味合いがある。
 日本は、第2次世界大戦前の1941年4月、ソ連と中立条約を締結している。しかしソ連は、中立条約の破棄通告もなく(1年前の事前通告が規定)、1945年8月8日、突如日本に対し宣戦布告し、北方4島を奪取、占領した。
 ソ連は日本との重要な国際約束を破ったのである。従って、ロシアが平和条約を締結しても、北方4島をどのような形であろうと日本に返還しないということは、ソ連、従ってそれを継承しているロシアは、国際約束を遵守しない、都合により一方的に破棄することがあるということを意味し、日本人は、また世界は‘ロシアは信頼できない’という認識を持つであろう。平和条約を締結しても、‘信用できないロシア’との貿易・投資が積極的に進められるとも思えない。
 プーチン大統領は、北方領土問題は‘経済的代償’の問題以上に‘信頼性’の問題であることを十分に理解すべきであろう。他方‘経済的代償’については、日本側は可能な限り知恵を出すべきであろう。

 2、北方領土問題につき1956年の共同宣言を越えられるかが鍵
 今後平和条約交渉が実質的に加速し、条約締結の段階に至っても、北方領土に
ついては歯舞、色丹の2島返還だけに終わると、1956年の日・ソ共同宣言以来の62年間に亘る歴代政権の交渉努力は何だったのかとの批判に晒される恐れがある。
 従って今後の最大の鍵は、残る択捉、国後2諸島の取り扱いとなろう。同時に、歯舞、色丹の2島が返還されることになれば、この両島の地権者の問題は解決するが、択捉、国後2諸島において‘共同経済活動’が継続するとしても、この両島の地権者の地権回復が問題となろう。
 (1)残る択捉、国後2諸島の取り扱い
 択捉、国後2諸島については、‘1956年日・ソ共同宣言’の外になるので、今回の交渉で結論を出すことは困難と予想され、何らかの形で継続協議となる可能性がある。そのような可能性があるとしても、歯舞、色丹2島の返還を前提とした条約締結交渉を支持する。
 しかし択捉、国後について一定の方向性を出すことが望まれる。例えば次のような選択肢が考えられる。
 イ)現状のまま‘共同経済活動’を継続し、帰属につき代償を含め協議する。
 ロ)領有権は日本側に引き渡すが、ロシア側に一部を実質上無償で無期限租借する。
 ハ)択捉、国後2諸島については、‘日・ロ自由貿易地域’(仮称)として日・ロ両国の共同管理 
  する、など。
 いずれにしても両国が、両国国民の理解と信頼が得られるよう知恵を出すことが不可欠であろう。

 3、地権者の権利を認め、帰還を認めるか、補償が支払われるべき
 ソ連による北方4島占領当時、島民は3,124世帯、17,291人ほど(独法北方領土問題対策協会資料)であり、その生活や権利は回復しない。両国による領有権問題は別として、日・ロ共同経済活動と並行して、或いはその一環として、それら島民が故郷に住む権利を回復すべきであろう。また住むことを希望しないものに対し補償がなされるべきであろう。国家の領土権問題は、国家と国家の間の問題であり、シビリアンである個人の地権、所有権は個人の土地・財産所有権の問題であるので、責任ある国家としてはそれを尊重する義務がある。国家間の戦争において、戦闘に関与していない一般市民の生まれ育った故郷に平穏に住む権利を奪うことは、今日の国際通念において人道上も、人権の上でも容認されて良いものではない。
 旧島民による墓参活動が進展しているが、ロシア側、或いはロシア人在住者が日本人の墓地や鳥居などの旧跡を破壊、撤去せず、維持していることは日本人のルーツ、心情を認識、理解しているものとして評価できる。プーチン大統領も、ロシア人の生活だけでなく、日本の旧島民の気持ちは十分に分かるであろう。
 日・ロ間には‘平和条約’こそないが、事実上の平和が維持されている今日、4島に住んでいた日本の旧島民及びその家族が故郷に住む権利、そして地権の回復か代替地の提供、或いは補償が早期に行われることが強く期待される。多くの家族が土地登記をしている。
(2018.11.26.)(Copy Rights Reserved.)

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求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その2)(再掲)

2021-11-26 | Weblog

  求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その2)(再掲)
 総務省は、2013年2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 
また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。
被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 2014年には37.4%に達し、若干の上下動はあるものの、その後も37%台の高水準にある。
雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになる。日本の雇用慣行においては、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制がなお一般的であるため、中間的な本採用は少数であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があるため、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。
このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、非正規就労者は、自由な生活スタイルが可能となる一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。
 その上、環太平洋経済連携(TPP)やEU等との経済連携により物・サービスの自由化が進み、労働力交流や対日投資も増加する中で、日本の労働生産性は先進工業国中最下位の状態が続いており、今後外国企業や外国人就業者に市場機会を奪われ、日本の産業が停滞して行くことが財界自身により危惧され始めている。日本の終身雇用制とそれに付随する新卒至上主義や定年制という雇用制度は、戦後の産業保護と円安為替レートにも支えられ、産業の安定的発展には寄与してきたものの、労働生産性は低迷しており、複雑多岐に亘る規制、規則、通達や労働慣行などによる労働生産性抑制要因と共に、「非正規就労者」が全体の平均賃金レベルを下げる結果を招いているのではないかとみられる。国際的競争がますます熾烈になると予想される今日、深刻な課題となっている。
1、望まれる職種・技能・技術を基準とした職階制雇用形態の普及 (その1 で掲載)
(1)閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態
(2)職種・技能を基準とした職能制雇用形態への転換、普及が不可欠
(3)定年制は各種の弊害を生んでいる
 2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 
 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象とし、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。
 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わることを希望する国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。
 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提し、年功序列に基づく「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置く、「国民参加型」行政組織とすることが望ましい。
(1) 幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」
 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。
 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、官職の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。しかし「職階制」は、日本において旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正で職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。
(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)
(職階制の確立) 
第29条  職階制は、法律でこれを定める。 
2  人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、
分類整理しなければならない。 
3  職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に
ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者
に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ
ばならない。 
4  前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。 
5  一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定
による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であって、かつ、
この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧
告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。 
(職階制の実施) 
第30条  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。 
2  職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事
院規則でこれを定める。 
(官職の格付) 
第31条  職階制を実施するに当たっては、人事院は、人事院規則の定めるところに
より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。 
2  人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再
審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。 
(職階制によらない官職の分類の禁止) 
第32条  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること
はできない。 
 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は‘国民に開かれた公務’を遂行する上でデメリットも多い。
(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」
 雇用者は、民間であれば私企業であり団体であるが、公務員の雇用者は国民から選ばれて政権に就いた内閣や地方の首長となるが、民主制においては内閣や首長は国民の選択により変わる。従って選挙によって雇用者である内閣や首長が変わり、政策や方針、施策が変わるが、被雇用者である公務員の閉鎖性、硬直性が円滑な政策転換のブレーキや障害となる可能性がある。特に課長(室長等を含む)以上の管理職がそうである。
 政策レベルの問題以外でも、公務員の雇用形態の閉鎖性は、一旦社会人となった国民が行政に携わる道を実態的に閉ざすという弊害となっている。就労人口の35%強を占める「非正規労働者」にしても「正規労働者」にしても、一定年齢以上になると公務員になれる可能性はほとんどない。「職階制」とすれば、政権交代等に際し、政党間の政権交代にしても、与党内での首班交代にしても、新体制の政策や方針に共鳴できない公務員は他の分野や民間等に転職し易くなる。そのためにも、民間でも職階制が普及することが望まれる。逆に、公務員だけが「職階制」でも、民間で職階制が普及しない場合は、公務員が辞めたくても行き場がないので、「職階制」は維持できなくなる。恐らく、過去に公務員の職階制がいつの間にか排除されたのも、民間での「職階制」導入が進まなかったからではなかろうか。また米欧からの人材が日本の労働市場に参入しにくくするとの意図もあったのかもしれない。いずれにせよ、公務員を職種・技能に基づく「職階制」とすれば、配転はより容易かつ円滑に行われるであろう。国家公務員については日本国民であることが原則になっている。
 このような観点から、公務員の雇用体制も、政権交代をより円滑に行えるよ
う閉鎖的で硬直的な終身雇用の等級制から国民に開かれた職階制にすべく、政府が率先して実施努力をすべき時期なのであろう。
 また企業、団体も二流の就労者とも見られている「非正規雇用」形態をなくすため、また低迷する労働生産性を高め、世界の多国籍企業との競争力を回復するためにも、職階制に転換、普及することが望まれる。
(2020.1.7.)(不許無断転載)(All Rights Reserved)
 総務省は、2013年2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 
また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。
被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 2014年には37.4%に達し、若干の上下動はあるものの、その後も37%台の高水準にある。
雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになる。日本の雇用慣行においては、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制がなお一般的であるため、中間的な本採用は少数であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があるため、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。
このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、非正規就労者は、自由な生活スタイルが可能となる一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。
 その上、環太平洋経済連携(TPP)やEU等との経済連携により物・サービスの自由化が進み、労働力交流や対日投資も増加する中で、日本の労働生産性は先進工業国中最下位の状態が続いており、今後外国企業や外国人就業者に市場機会を奪われ、日本の産業が停滞して行くことが財界自身により危惧され始めている。日本の終身雇用制とそれに付随する新卒至上主義や定年制という雇用制度は、戦後の産業保護と円安為替レートにも支えられ、産業の安定的発展には寄与してきたものの、労働生産性は低迷しており、複雑多岐に亘る規制、規則、通達や労働慣行などによる労働生産性抑制要因と共に、「非正規就労者」が全体の平均賃金レベルを下げる結果を招いているのではないかとみられる。国際的競争がますます熾烈になると予想される今日、深刻な課題となっている。
1、望まれる職種・技能・技術を基準とした職階制雇用形態の普及 (その1 で掲載)
(1)閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態
(2)職種・技能を基準とした職能制雇用形態への転換、普及が不可欠
(3)定年制は各種の弊害を生んでいる
 2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 
 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象とし、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。
 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わることを希望する国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。
 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提し、年功序列に基づく「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置く、「国民参加型」行政組織とすることが望ましい。
(1) 幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」
 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。
 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、官職の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。しかし「職階制」は、日本において旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正で職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。
(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)
(職階制の確立) 
第29条  職階制は、法律でこれを定める。 
2  人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、
分類整理しなければならない。 
3  職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に
ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者
に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ
ばならない。 
4  前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。 
5  一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定
による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であって、かつ、
この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧
告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。 
(職階制の実施) 
第30条  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。 
2  職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事
院規則でこれを定める。 
(官職の格付) 
第31条  職階制を実施するに当たっては、人事院は、人事院規則の定めるところに
より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。 
2  人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再
審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。 
(職階制によらない官職の分類の禁止) 
第32条  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること
はできない。 
 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は‘国民に開かれた公務’を遂行する上でデメリットも多い。
(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」
 雇用者は、民間であれば私企業であり団体であるが、公務員の雇用者は国民から選ばれて政権に就いた内閣や地方の首長となるが、民主制においては内閣や首長は国民の選択により変わる。従って選挙によって雇用者である内閣や首長が変わり、政策や方針、施策が変わるが、被雇用者である公務員の閉鎖性、硬直性が円滑な政策転換のブレーキや障害となる可能性がある。特に課長(室長等を含む)以上の管理職がそうである。
 政策レベルの問題以外でも、公務員の雇用形態の閉鎖性は、一旦社会人となった国民が行政に携わる道を実態的に閉ざすという弊害となっている。就労人口の35%強を占める「非正規労働者」にしても「正規労働者」にしても、一定年齢以上になると公務員になれる可能性はほとんどない。「職階制」とすれば、政権交代等に際し、政党間の政権交代にしても、与党内での首班交代にしても、新体制の政策や方針に共鳴できない公務員は他の分野や民間等に転職し易くなる。そのためにも、民間でも職階制が普及することが望まれる。逆に、公務員だけが「職階制」でも、民間で職階制が普及しない場合は、公務員が辞めたくても行き場がないので、「職階制」は維持できなくなる。恐らく、過去に公務員の職階制がいつの間にか排除されたのも、民間での「職階制」導入が進まなかったからではなかろうか。また米欧からの人材が日本の労働市場に参入しにくくするとの意図もあったのかもしれない。いずれにせよ、公務員を職種・技能に基づく「職階制」とすれば、配転はより容易かつ円滑に行われるであろう。国家公務員については日本国民であることが原則になっている。
 このような観点から、公務員の雇用体制も、政権交代をより円滑に行えるよ
う閉鎖的で硬直的な終身雇用の等級制から国民に開かれた職階制にすべく、政府が率先して実施努力をすべき時期なのであろう。
 また企業、団体も二流の就労者とも見られている「非正規雇用」形態をなくすため、また低迷する労働生産性を高め、世界の多国籍企業との競争力を回復するためにも、職階制に転換、普及することが望まれる。
(2020.1.7.)(不許無断転載)(All Rights Reserved)

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求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その1)<再掲>

2021-11-26 | Weblog

 求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その1)<再掲>

 2020年1月下旬より武漢発のコロナウイルス禍の拡大、継続により、解雇者や雇い止め、新規卒業者の就職難や内定取り消しなど、就労市場はまさに冬の時代となっている。2008年のリーマン・ショックにより解雇された正規就労者も、新卒優先の定年制に基づく「正規社員」としての再就職の機会はなく、多くは契約社員やアルバイトなどの「非正規社員」の地位を強いられている。今日、コロナウイルス禍の影響はリーマン・ショックを上回る状況となっており、これらの失職者を受け入れる就労市場の転換が迫られている。他方、65歳以上の年長者は人口の28.7%を占め、100歳以上が8万人を超えており、もはや新卒優先の終身雇用制、これに基づく等級・職階制は過去のものとなっており、これらの就労者を公正に受け入れることは困難になっている。

 本稿は、このような新たな状況に鑑み、再掲するものである。


 総務省は、2013年2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 
また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。
被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 2014年には37.4%に達し、若干の上下動はあるものの、その後も37%台の高水準にある。
雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになる。日本の雇用慣行においては、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制がなお一般的であるため、中間的な本採用は少数であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があるため、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。
このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、非正規就労者は、自由な生活スタイルが可能となる一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。
 その上、環太平洋経済連携(TPP)やEU等との経済連携により物・サービスの自由化が進み、労働力交流や対日投資も増加する中で、日本の労働生産性は先進工業国中最下位の状態が続いており、今後外国企業や外国人就業者に市場機会を奪われ、日本の産業が停滞して行くことが財界自身により危惧され始めている。日本の終身雇用制とそれに付随する新卒至上主義や定年制という雇用制度は、戦後の産業保護と円安為替レートにも支えられ、産業の安定的発展には寄与してきたものの、労働生産性は低迷しており、複雑多岐に亘る規制、規則、通達や労働慣行などによる労働生産性抑制要因と共に、「非正規就労者」が全体の平均賃金レベルを下げる結果を招いているのではないかとみられる。国際的競争がますます熾烈になると予想される今日、深刻な課題となっている。
1、望まれる職種・技能・技術を基準とした職階制雇用形態の普及
3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」
に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、労働市場を「正規」と「非正規」に2分することは好ましくない。これらの就労者はいずれも日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。
 その解決策の1つが職種・技能・技術を基準とした職能制雇用形態への転換、普及である。
(1)閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態
現在日本の「正規雇用」は、多くの場合新卒者採用を原則として定年まで同じ企業、組織で就労する終身雇用の形態となっており中間採用は多くはない。
 終身雇用は、企業経営側にとっては、組織、従って経営陣への忠誠心を維持し易く、組織の安定性を確保し易いと言えよう。また中小企業など、創業家を中心とする家族経営においては家族主義的な組織管理を行い易いメリットがある。雇用されている側も定年まで定職に就けるという安定性を享受できる。しかし家族主義的な雇用形態は、新規の人材を外部から導入することを阻み、内外の経済環境やグローバルに拡大、激化する競争関係に迅速、的確に対応できず、競争力を失うなどのデメリットも多い。雇用されている側も、組織内で希望の職種や仕事に就けるのはわずかである。その上景気の後退期には人員整理が困難であるため、迅速な対応が出来ず、企業の存続を脅かすことにもなる。
 職種によっては新卒採用に拘泥する必要はなく、必要な職種、技能を補充するために中間採用を機動的に活用する方が急速に変化する内外市場へのダイナミックな対応が可能となろう。
(2)職種・技能を基準とした職能制雇用形態への転換、普及が不可欠
 職種・技能を基準とした職階制雇用においては、新卒か否かや年齢にとらわれず、職種ごとの技能や経験年数により採用することになるので、採用した人材が即戦力となる。新卒採用者を除き、研修費やリードタイムでの諸経費の節約にもなる。一方就労者側も一定期間の就労の後、より良い労働環境を求めて企業や地域を変更することが出来るので、双方にとって弾力的な雇用形態となる。「正規」「非正規」の区別も不要となる。欧米諸国で広く採用されている。
 現在就労者の35%以上を占める「非正規就労者」にとっては、たまたま学校卒業時期に不況であったため「非正規雇用」となり、日本の終身雇用制の下では今後長期にその状態が続くことになると予想される。これらの人達にチャンスを与え、より多くの人が安定した職が得られるように雇用形態を多様化、弾力化すると共に、正規の雇用形態とすることが望ましい。これは、ほとんどの就労者が健康保険や年金などの社会保険の恩恵を受けられる体制にする上でも重要である。呼称も「正規雇用」「非正規雇用」とすることは適当でなく、「一般職」「職能技術職」とすれば足りることであろう。
 無論、どのような雇用形態とするかは企業の経営管理方針、選択によるが、職種・技能を基準とした職能制雇用形態の普及により、「正規」「非正規」の区別をなくし、「一般職」と「職能技術職」に移行させることが望ましい。
(3)定年制は各種の弊害を生んでいる
正規雇用形態は、多くの場合、入口の新卒者採用と共に出口である定年制とセットになっており、その上で年功序列の体系となっているので、年齢が決定的な要因になっている。しかし長寿化により、退職後余命が顕著に長くなっており、退職後の過ごし方が大きな問題になると共に、年金財源を圧迫する主要因にもなっている。
平均寿命は、日本の戦後復興が本格化し始め、諸制度が整備し始めた1960年で男性65.3歳、女性で70.2 歳であったが、2010年には男性79.6 歳、女性86.4歳と顕著に伸びている。1960年代の定年年齢を55歳とすると、定年後余命は10年程度となる。2010年には定年が60歳として、定年後余命は19.6年と2倍に伸びており、女性についてはもっと長くなっている。従って現在、定年後の過ごし方と年金財源の不足が社会問題となるのは当然と言えよう。最大の問題は、経験や技能・技術を持ち、働く意欲がある者を、寿命が延びているにも拘らず、年齢により一律に労働市場から排除してしまう上、年金への依存を高めることであろう。長寿化を前提とすると、定年後の期間が従来よりも著しく長くなっているので、現在では「定年制度」は事実上の‘年限解雇’の制度となっているとも言える。
このような状況に対応し、現在年金支給年齢を65歳とし、その穴埋めとして60歳定年の延長や再雇用、或いは定年の撤廃が選択肢として検討されており、当面の対策としてはして良いのであるが、寿命はさらに伸びる可能性があり、定年制を維持する限りイタチごっことなり、抜本的な対策とはならない。顕著な寿命の伸長に対し、雇用制度や諸慣行、社会保障制度などへの対応が追いついていないと言えよう。基本的に年齢に過度に執着しない雇用モデルが必要になっていると言えよう。
「正規就労者」もいずれは定年となるが、職能職階制を導入すれば、一定年齢以降についても、働く意欲があり健康であれば、自らが選択する職種、技能で組織に留まることが出来るようにすることが可能となろう。定年制を維持すれば、寿命が延びたことにより定年年齢となっても働けるが職のない人口が多くなる一方、年金支給年齢を65歳に引き上げても年金給付期間は以前よりも長期間となるため、年金の財源を圧迫し続けることになる。恣意的に定められている定年が各種の社会的な障害となっていると言えよう。
女性の社会進出の促進にしても、いろいろな問題が議論されているが、終身雇用の下での年功序列的な等級制度が続く限り、現実問題としてはなかなか進まないと見られている。多くの場合、出産や子育などで、一定期間年功序列のエスカレーターから外れてしまうからだ。女性の社会進出の促進のためにも、職種・技能に基づく職階制への転換が望まれる。
 2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 (その2に掲載)
(1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」
(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」
(2020.1.7.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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コロナウイルス感染縮小、評価するもPCR検査数も削減!

2021-11-26 | Weblog

 コロナウイルス感染縮小、評価するもPCR検査数も削減!

 コロナウイルスの感染者数が東京でも全国規模でも顕著に縮小しており、大変喜ばしい。

 これは6月20日より3か月間緊急事態宣言が継続された結果、各種活動が抑制され、マスク着用などの国民レベルでの感染予防努力があったことと、ワクチン接種の促進によるところが大きい。

 国、地方自治体の関係部局、医療関係者のご努力に感謝すると共に、国民の皆様、飲食・観光関係者のご努力や我慢等に対し心から敬意を表したい。

  1、PCR検査数が減れば新規感染者の数も減る

 他方、コロナウイルス感染が縮小し、感染率も大幅に低下しているが、9月に入りPCR検査の数も大幅に減少している。PCR検査の数は、曜日によって異なるが、東京都では8月中・下旬の1日当たりの平均的検査数が1万5千人から1万6千人前後であったのに対し、10月初旬から中旬には6千人から7千人前後と1/3以下に削減されている。

 全国規模では、更に顕著で、8月中・下旬には14~15万人前後であったが、10月初旬から中旬には5万人から6万人前後とほぼ1/3に激減している。

  2、 8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は約3倍!

 感染率が減れば検査対象者が減り、検査数が減るのは道理だが、大まかに言って8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は公表されている数の約3倍となる。10月9日の東京都の新規感染者は89人と公表され100人を切ったと言われているが、単純計算ではあるが、8月レベルの検査が行われていれば267人と3桁となる。全国レベルでは774人と1,000人を切ったが、8月レベルの検査が行われていれば2,322人と2,000人を上回ることになる。

 政府当局が政府の政策に有利な情報や数値を公表する場合がある。今回は、国民の健康と命にかかわることであり、統計数値の操作は国民や関係活動に影響を与えるだけに、そのようなことがないことを期待したい。しかし現在公表されている数値については、8月との比較では、その約3倍前後と考えた方が良さそうだ。自分自身や家族等の健康と命にかかわる問題であるので、油断は禁物だ。

 現在でもコロナウイルスで自宅療養している方や病院には入れない調整中が多数おり、また無症状や軽症者も多数存在し、自由に外出し、旅行もしている。コロナウイルスが無くなったわけではない。また多くの人が後遺症に苦しんでいることを忘れてはいけないだろう。後遺症に対しても救済が必要だ。

 このような中で、旅行代理店や観光関連団体がGo To トラベル再開への促進活動を活発に行っており、支持する向きもある。関係業者のご苦労は十分に理解出来るところであり、現在検証実験的に試行されているが、観光客を含め国民の健康と命にかかわることであるので、慎重な対応が望まれる。2020年7月の拙速を繰り返してはならない。多くの国民は旅行や飲食を渇望しているので、現在は、旅行や飲食を一定の条件で解禁さえすれば十分だろう。行うなら、まず各自治体内で判断して行うことが望ましい。

 また、このような感染力の強い国際的な感染症(パンデミック)については、関係分野毎に一定の予防措置を執ることを義務付けた上で営業を許可し、感染者が出たら1か月前後の営業停止を求め、消毒や予防措置の改善を図ることにするのも、各分野の自主的努力を促進し、賛同も得やすく効果的であろう。(2021.10.17.)

 コロナウイルスの感染者数が東京でも全国規模でも顕著に縮小しており、大変喜ばしい。

 これは6月20日より3か月間緊急事態宣言が継続された結果、各種活動が抑制され、マスク着用などの国民レベルでの感染予防努力があったことと、ワクチン接種の促進によるところが大きい。

 国、地方自治体の関係部局、医療関係者のご努力に感謝すると共に、国民の皆様、飲食・観光関係者のご努力や我慢等に対し心から敬意を表したい。

  1、PCR検査数が減れば新規感染者の数も減る

 他方、コロナウイルス感染が縮小し、感染率も大幅に低下しているが、9月に入りPCR検査の数も大幅に減少している。PCR検査の数は、曜日によって異なるが、東京都では8月中・下旬の1日当たりの平均的検査数が1万5千人から1万6千人前後であったのに対し、10月初旬から中旬には6千人から7千人前後と1/3以下に削減されている。

 全国規模では、更に顕著で、8月中・下旬には14~15万人前後であったが、10月初旬から中旬には5万人から6万人前後とほぼ1/3に激減している。

  2、 8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は約3倍!

 感染率が減れば検査対象者が減り、検査数が減るのは道理だが、大まかに言って8月レベルの検査が行われていれば、新規感染者数は公表されている数の約3倍となる。10月9日の東京都の新規感染者は89人と公表され100人を切ったと言われているが、単純計算ではあるが、8月レベルの検査が行われていれば267人と3桁となる。全国レベルでは774人と1,000人を切ったが、8月レベルの検査が行われていれば2,322人と2,000人を上回ることになる。

 政府当局が政府の政策に有利な情報や数値を公表する場合がある。今回は、国民の健康と命にかかわることであり、統計数値の操作は国民や関係活動に影響を与えるだけに、そのようなことがないことを期待したい。しかし現在公表されている数値については、8月との比較では、その約3倍前後と考えた方が良さそうだ。自分自身や家族等の健康と命にかかわる問題であるので、油断は禁物だ。

 現在でもコロナウイルスで自宅療養している方や病院には入れない調整中が多数おり、また無症状や軽症者も多数存在し、自由に外出し、旅行もしている。コロナウイルスが無くなったわけではない。また多くの人が後遺症に苦しんでいることを忘れてはいけないだろう。後遺症に対しても救済が必要だ。

 このような中で、旅行代理店や観光関連団体がGo To トラベル再開への促進活動を活発に行っており、支持する向きもある。関係業者のご苦労は十分に理解出来るところであり、現在検証実験的に試行されているが、観光客を含め国民の健康と命にかかわることであるので、慎重な対応が望まれる。2020年7月の拙速を繰り返してはならない。多くの国民は旅行や飲食を渇望しているので、現在は、旅行や飲食を一定の条件で解禁さえすれば十分だろう。行うなら、まず各自治体内で判断して行うことが望ましい。

 また、このような感染力の強い国際的な感染症(パンデミック)については、関係分野毎に一定の予防措置を執ることを義務付けた上で営業を許可し、感染者が出たら1か月前後の営業停止を求め、消毒や予防措置の改善を図ることにするのも、各分野の自主的努力を促進し、賛同も得やすく効果的であろう。(2021.10.17.)

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膨らむ企業の内部留保、求められるコロナ禍での使い道

2021-11-26 | Weblog

 膨らむ企業の内部留保、求められるコロナ禍での使い道

 2021年9月1日に公表された法人企業統計(財務省)によると、企業の利益剰余金(内部留保、金融・保険業を除く)は、2020年度末時点で前年度に比べ2.%増の484兆円強となった。増加率は低下したものの、2012年度以来、9年連続で増加し、過去最高を更新している。

 利益剰余金は、総売上額から人件費や原材料費など必要経費を引き、株主への配当金や税金を差し引いたもので、企業が将来の設備投資や事務所拡大など自由に使える。業種により余剰金額は異なり、コロナ禍では、製造業やIT関連企業を中心として業績を伸ばした一方、観光関連業種や対面サービスを行う業種などは大幅減となっている。

 コロナ禍でも利益剰余金を積み上げられる企業が存在することは大変心強いところであり、その努力に敬意を払いたい。

 1、企業の利益剰余金(内部留保)の国民経済への還流が望まれる

 しかしコロナ禍で多くの企業が経営難にあえいでいる中で、日本の国民総生産(GNP)にほぼ匹敵する484兆円強もの利益剰余金を企業が抱え込んでいることが経済全体にとって適切か否かが問われる。

 一部に、内部留保積み上げはコロナ禍で設備投資を手控えたためとされるが、設備投資の手控えはそれだけで民間投資の減少、従ってそれだけ総生産(GNP)を引き下げる結果となっている。

 一定の内部留保は、将来の設備投資と安定した経営基盤を維持する上で必要である。しかし個人の貯蓄同様、好調な時期には積み上げ、停滞期には放出することが必要だろう。コロナ禍で経済停滞する現在、GNPの縮小に繋がる484兆円強にものぼる企業の内部留保のなるべく多くの額を国民経済に還流することが望まれる。

 基本的には平常時において、賃金や契約社員等への報酬、役員報酬、及び株式配当金への分配をもう少し引き上げる努力が望まれるが、今回のような緊急時においても、例えば、契約社員等の雇い止めを極力回避すると共に、報酬・賃金の引き上げ、株式配当の増加、社員研修の強化、研究開発の促進や関連下請け企業製品の価格引き上げなどの他、企業内での感染防止措置の拡充、授業員家庭支援など、企業にとっては負担となるが、内部留保を経済に還流し、経済全体の底上げ努力が望まれる。

 2、「異次元」の金融緩和は家計所得や消費増には繋がらなかった

 企業の内部留保は、阿倍自・公政権が2013年1月に発足し、「異次元」の金融緩和が開始された頃より顕著に増加している。「異次元」の金融緩和により、輸出産業や観光関連産業など一部の産業が業績を伸ばしたことを背景として、株価が上昇したため、多くの企業は株式評価益等が出たことにより、利益剰余金を積み上げて行ったと見られる。他方、このような局部的な産業の好調と内部留保の積み上げとは裏腹に、実質家計所得は減少しており、消費は低迷した。日銀は、「異次元」の金融緩和とマイナス金利を長期に継続しているが、産業への局部的効果はあるが、家計所得や個人消費の増加には繋がっていないことが明らかになった。金融政策依存の限界と言えよう。

 逆に、2008年9月のリーマンショック以来の切れ目のない恒常的な金融緩和策とゼロ金利政策が、2013年1月以来の「異次元」の更なる金融緩和とマイナス金利政策により更に助長され、金融緩和により恩恵を受ける分野とその恩恵がほとんど及ばない分野との間で著しい経済格差を生む結果となっている。

 それに追い打ちを掛けたのが、2020年1月以来の武漢発の新型コロナウイルスの国際的な感染拡大である。これが各国の航空・観光産業や飲食産業、娯楽産業とこれらを支える関連産業を直撃し、人の動きを制限し、経済社会活動を減速させた。その対策として、各国政府は、感染拡大を抑制するための検査やワクチンを含む医療体制の拡充をする一方、職や所得を失った人々などへの財政支出を拡大すると共に、無利子の融資を含む金融支援策を実施したことにより、金融緩和が加速し、経済社会の格差を更に拡大する結果となっている。

 米国のバイデン政権の下で、連邦準備理事会(FRB)が、雇用の維持促進とインフレ率を睨みながら、金利の引き上げを含め、金融緩和の抑制時期を検討しているのは、金融緩和策による副作用を除去し、金融正常化に道を開くためである。

 日本銀行も米国の金融正常化に向けての政策転換を参考にしつつ、金融緩和幅の縮小を通じた株価の沈静化を図っているようだが、それは経済の抑制に繋がる可能性がある。このような中で、企業がそれぞれの企業経営に資する形で内部留保を積極的に活用し、経済に還元することが望まれる。また政策当局としても、企業の巨額の内部留保を景気の局面に応じて誘導することが経済対策に繋がることに注目する必要があろう。(2021.9.6.)(All Rights Reserved.)

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首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓!

2021-11-24 | Weblog

首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓!

 2021年3月11日、東日本大地震・津波災害から10年を迎えた。東京電力福島原発事故への対応を含め、政府関連予算は2020年度までの10年間で約38兆円にのぼり、また日本各地からの応援や寄付等を受け、地元の人々により懸命に復興活動がなされた結果、地区差があるものの、復興はかなりの進展を見せている。地元の方々や支援活動をされた各方面の方々のご苦労に心から感謝し、称えたい。またこの災害により、命を失った方15,899人、行方不明者2,528人となっており、心からのご冥福と行方不明者が1日も早く家族の元に返ることをお祈りしたい。

 復興は進んでいるものの、10年経っても42,685人が避難者にのぼり、当時の巨大地震と津波、そして福島原発の炉心メルトダウンなどの状況を振り返ると、改めてその被害の甚大さを痛感する。

 政府の関連行事やメデイアの報道は、どうしても追悼と被災地の復興活動の継続に焦点が当てられる。しかし大震災は、東日本だけでなく、関東でも首都直下地震や東海、近畿、四国地方では南海トラフ地震による被害が今後30年前後に発生する可能性が高いと伝えられている。日本列島を巻き込む大災害は、その他火山の噴火や異常気象による大洪水などの恐れがあるので、東日本の復興継続と共に、その他の地域、特に諸機能が集中し、人口密度の高い首都東京の震災への備えがこれで良いのかに注目しなくてはならない。

 1、教訓が未だ活かされていない首都東京

 東京を中心とする首都圏については、東日本大地震の教訓を受けて、道路・歩道の渋滞、帰宅難民などへの対策として、一時避難所や備蓄、耐震補強のほか、緊急対応のための道路規制、ハザード・マップの作成など、一定の対応が行われている。しかしこれらの措置は、多くの努力を要しているものの、東日本大地震規模の巨大災害にはほとんど無力とも予想される。

 東京には、1,300万の人々が生活し、近隣から数百万の人々が東京に往来している。また日本経済の中枢部門をはじめ、学校、文化・スポーツなど多くの民間機能が集中している。更に、国会、裁判所の中枢機能に加え、緊急時には東京都などと共にその対応に当たるべき全ての中央官庁が集中している。また国民統合の象徴として皇居があり、その安全を確保しなくてはならない。

 大災害が発生した際には、行政はこれら全ての安全を確保するために膨大な救援、救出活動を集中的、同時並行的にしなくてはならない。シュミレーションなどするまでもなく、とても手が回らないと予想される。何かを守り、何かを座視するしかない。相手は、「経験したことがない大災害」であるので、旧来の常識や既成概念では対応し切れないことを、福島原発事故を含む東日本大災害から学ぶべきであろう。

 政府による『東京一極集中解消』2020年目標は断念された。ある意味で東日本大地震の教訓の風化の象徴とも言えないだろうか。

 2、政府委員会が大規模災害に警鐘

 2014年、政府の地震調査委員会は首都直下地震が「今後30年で70%」との予測を公表している。その後この予測は繰り返し述べられる毎に発生確率は高くなっており、首都直下地震はもはや過去のものや遠い将来のものではなく、今生活している国民の生涯において起こりうる現実となっていることを示している。

 首都圏を中心としたマグニチュード7相当以上の過去の地震は、1703年の「元禄関東地震」(M8.28)と1923年の「関東大震災(大正関東地震)」(M7.9)を挟んで次のように発生している。

1703年12月   「元禄関東地震」(M8.28)

1855年11月 安政江戸地震      (M6.9)

1894年 6月 明治東京地震       (M7.0)

同年10月   東京湾付近の地震   (M6.7)

1895年 1 月茨城県南部の地震   (M7.2)

1921年12月茨城県南部の地震   (M7.0)

1922年 4月 浦賀水道付近の地震(M6.8)

1923年9月  「関東大震災」  (M7.9)

  関東地方は、東西に太平洋プレートとユーラシア・プレート、これを挟んで南北に北米大陸プレートとフィリピン海プレートがあり、元禄関東地震と関東大震災はフィリピン海プレートの境目の相模トラフで発生した大地震とされている。首都圏に関係する地震、津波の誘因としては、この他に東日本大震災に関係する日本海溝や東海地方から四国沖に伸びる南海トラフなどがある。

 関東、東海地方については火山爆発も注意を要する。

 3、政府組織・制度においてシンボリックな抜本的措置が必要

 民間組織・団体や東京都及び市区町村において、それぞれ対策を検討し備えることは不可欠であろう。それは誰のためでも無い、自分達や家族、関係者の安全、安寧のためだ。

 しかし東日本大震災レベルの直下地震等が首都圏で発生し、大型津波が発生すると、1995年1月の阪神・淡路地震を上回る被害、混乱が起こるものと予想されている。2011年3月の東日本大地震の際にも首都圏で震度6を超える揺れを経験したが、道路は車道、歩道共に渋滞し、公共交通は止まり、電話・携帯による通信は繋がらず、多数の帰宅難民が発生し、その状況は翌朝まで続いた。電気、ガス、水道などのライフラインが被害を受けていれば被害は更に拡大し、回復には更に時間を要することになる。

 最大の問題はライフラインの確保であるが、大災害に対応し、司令塔となるべき中央官庁の機能をどの程度確保出来るかである。物理的被害は予想もつかないが、災害が深夜や早朝、祝祭日に発生した場合、必要な人的資源の確保は困難で時間を要することになっても仕方が無いであろう。‘経験したことがない大災害’に遭遇し、‘経験したことがない混乱等’が起こったとしても、自然のなせること、誰も責めることは出来ない。それぞれの立場で被害に備え、耐え、命を守る努力が求められるであろう。それも相当期間に及ぶ可能性がある。

 (1)そうなると危険の分散を図ることが最も効果的となる。政府はこれまで幾度となく、東京一極集中を避けるため、中央省庁や大学の地方移転を試みてきたが、部分的な専門部局の分散に留まり、一極集中解消にはほど遠い。

 米国の他、ブラジルや豪州などのように、政治・行政機能を密集地域から切り離し、新たに政治・行政都市を造ることも考えられるが、日本にはそれにふさわしい安全な地域を確保することは難しそうだ。しかし1つの有効な選択肢ではある。

 もう1つの選択肢としては、日本独特の国民統合の象徴機能である皇居を宮内庁と共に京都など近畿地方に戻すことであろうか。天皇の象徴機能については憲法に明記され定着しており、皇居を移転しても機能自体に何ら影響しない一方、ご公務については憲法上国会の召集など10項目に限定されているので、移転は相対的に容易と見られる。更に、京都等に戻ることは歴史的に理解されやすく、また地方に新たな息吹をもたらし、地方活性化にも繋がる可能性がある。

 憲法上公務とされる10の業務については、現在では交通・運輸、通信が飛躍的に便利になっており、国会召集時など限られた折りに東京に行幸されることは可能であろう。宿泊が必要な場合には、年数回しか使用されていない迎賓館(赤坂離宮)に所要の宿泊施設をご用意するなど、対応は可能のようだ。また外国使節(各国大使等)の接受等については、京都の御所にて行うこととすれば、京都や近畿地方の歴史や文化等を外国使節に紹介する機会ともなろう。

 また考えたくはないが、もし将来首都圏がミサイル等で攻撃されると、政治・行政機能と象徴機能が同時に被害を受ける恐れがあるので、これを分離しておくことが安全保障上も意味があろう。

 無論どの選択肢にしても、現状を変更することには困難があろう。しかし、政府地震調査委員会が東京直下地震など経験したことがない大災害が現実に起こりうると考えているのであれば、これまでのような対応では不十分と見られるので、これまで実施されたこともないような措置を本気で検討、実施する必要があるのではないだろうか。

 (2)江戸城趾の活用方法については、城趾内の「江戸の自然」の保護を図りつつ、可能な範囲で復元を行い、歴史観光施設として整備し、また一部を国民の憩いの場として開放すると共に、大災害時や緊急時の避難場所となるよう整備するなどが考えられよう。特に江戸城趾には四方に門があるので、災害時、緊急時には門を開放し、四方から城趾内に避難が出来る。また緊急車両が災害時、緊急時に通行できるよう、城趾内の通路等を整備しておけば、渋滞が予想される一般道を通らずに迅速に移動できるなど、災害時、緊急時への活用も期待できる。

(2021.3.31. All Rights Reserved.)

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地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか        (その2)再掲

2021-11-24 | Weblog

地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか        (その2)再掲

はじめに  厳戒態勢下のパリで開催されていた地球温暖化への対応に関する国連会議(COP21)は、12月12日、新たな枠組みを規定する「パリ協定」を採択した。温暖化の原因とされる炭酸ガス排出大国である米国や中国始め、先進工業国及び発展途上国を含む全ての国連加盟国が温室効果ガスの削減に取り組むことに同意した初めての枠組みなる歴史的な合意と言えよう。パリ協定は、米国等の不支持により形骸化した京都議定書を18年振りで塗り替えるもので、‘気温上昇を産業革命前に比べて摂氏1.5度の上昇に抑えるよう努力するとし、世界全体の温室効果ガスの排出量を減少させ、今世紀後半には実質的にゼロにするよう削減に取り組む’こととすると共に、‘途上国も含めた全ての国が5年毎に温室効果ガスの削減目標を国連に提出し、対策を進めることが義務付けている。’

 しかしこの協定は、今後世界が温室効果ガス削減、温暖化抑制に向けての出発点でしかなく、炭酸ガス排出大国である米・中両国やEU、日本などの先進工業国、インド、ロシア、ブラジルなどの新興工業国などの主要炭酸ガス排出国がどのような削減計画を策定し、現実に実施するかに掛かっている。その観点からは、G20諸国が具体的にどのようにこの協定を具体化して行くかが注目される。その上で炭酸ガス排出大国である米国や中国が重要な役割を果たすことが期待されるが、今後の動向を見る参考として、今回の合意前から掲載している本稿を引き続き掲載したい。

 現在、世界の気候は不安定な動きをする共に荒々しさと破壊力を強めている。温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。このブログでも述べてきたが、北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。北極海で起きていることは、南極大陸でも同様に大陸を覆う氷原や氷河が急速に融けている。それが海流の動きを変化させると共に、水温が上がり、上昇気流となり、気流に大きな変化とエネルギーを与えるのだろう。現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、巨大なエネルギーとなって東アジアでの台風やカリブ沿岸でのハリケーン、そして南太平洋のサイクロンとして猛威を振るっている。また局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。そして国連の専門家グループ(気象変動に関する政府間パネルーIPCC)により、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止など、温暖化が進むリスクが指摘されている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。

 オバマ大統領は、就任以来地球温暖化問題に積極的に取り組む姿勢を示しているが、7月30日、“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”を発表し、発電所から排出される“二酸化炭素を2030年までに2005年を水準として32%削減”することを表明した。オバマ大統領は、この削減目標を設定する一方、“きれいな発電計画”の枠組みの下で各州が独自の実施計画を進めることが可能であるとしつつ、これまで進められている太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギー、エネルギー効率の促進をベースとして、‘きれいなエネルギー’を更に進めるための長期的な投資などの諸措置を掲げ、米国の気候変動への対応におけるリーダーシップを継続するとしている。

 米国はブッシュ共和党政権以降、温暖化ガス削減に向けての数値目標設定に消極的であったことから、“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する数値目標を掲げた“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”は野心的で歴史的であるが、米国がこの計画を達成出来るのか、そして地球温暖化に対する国際的な取り組みにリーダーシップを発揮できるのかが注目されるところである。

 2015年12月、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)がパリで開催予定であり、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みにつき審議されることになっている。温暖化ガス削減に向けての数値目標に合意している米・中両国、そして環境先進国とも言える欧州連合(EU)が中心となって新たな枠組みに合意点を見出せるのか。地球の将来は、米国をはじめとする各国のこの問題の重大性への理解と解決努力に掛かっていると言っても過言ではない。

 1、米国は“きれいな発電計画”を実施に移せるか               (その1で掲載)

 2、二酸化炭素削減に関する米・中合意の行方  

 これに先立ち米国は、2014年11月11日、訪米した中国の習近平主席との記者会見において、地球温暖化危機に対応するため、二酸化炭素削減について米・中間で合意した旨発表した。

 両国は世界の温暖化効果ガスの約44%(2012年ベース)を排出しているが、この合意により、米国は、2020年までに設定されている年1.2%の二酸化炭素削減目標を2020年以降倍増し年2.3%から2.8%削減、温室効果ガスを全体として2005年比で2025年までに26~28%削減することが必要となる。そして米国は今回、“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する目標を発表し、米・中合意を上回る温室効果ガス削減に努める方針を示し、この問題で主導権を発揮しようとしている。

 他方、中国は2030年から二酸化炭素の排出が増加しないようにすることを初めて約束した。これにより中国は、2030年までに総エネルギー消費の20%を温室効果ガス排出ゼロのエネルギー源から確保することを目標として、風力、太陽エネルギー及び原子力から1,000ギガワットに相当する発電を実現することが求められる。これは現在の中国の全ての石炭火力による発電量に相当する。これが現実に実施されれば、北京を含む中国の主要都市において深刻になっているPM2.5などの大気汚染問題に大きな効果が期待され、中国国民の健康被害だけでなく越境公害の縮小に繋がるものと期待される。

 世界の温室効果ガス排出比率は、米(約16%)、中(約28%)に加え、インド(5%)、ロシア(5%強)及び日本(4%弱)を加えると、5か国で60%近くになるので、米・中両国の削減比率合意により、今後国際社会が温室効果ガス、炭酸ガス排出削減、気候変動改善に向けて協議し、国別削減目標に国際的合意されることが現実的なものになって来たと言えよう。

 3、注目される日本の環境対策             (その3に掲載)

(2015.8.27.)(All Rights Reserved.)

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地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか       (その1)再掲

2021-11-24 | Weblog

 地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか       (その1)再掲

 はじめに  厳戒態勢下のパリで開催されていた地球温暖化への対応に関する国連会議(COP21)は、12月12日、新たな枠組みを規定する「パリ協定」を採択した。温暖化の原因とされる炭酸ガス排出大国である米国や中国始め、先進工業国及び発展途上国を含む全ての国連加盟国が温室効果ガスの削減に取り組むことに同意した初めての枠組みなる歴史的な合意と言えよう。パリ協定は、米国等の不支持により形骸化した京都議定書を18年振りで塗り替えるもので、‘気温上昇を産業革命前に比べて摂氏1.5度の上昇に抑えるよう努力するとし、世界全体の温室効果ガスの排出量を減少させ、今世紀後半には実質的にゼロにするよう削減に取り組む’こととすると共に、‘途上国も含めた全ての国が5年毎に温室効果ガスの削減目標を国連に提出し、対策を進めることが義務付けている。’

 しかしこの協定は、今後世界が温室効果ガス削減、温暖化抑制に向けての出発点でしかなく、炭酸ガス排出大国である米・中両国やEU、日本などの先進工業国、インド、ロシア、ブラジルなどの新興工業国などの主要炭酸ガス排出国がどのような削減計画を策定し、現実に実施するかに掛かっている。その観点からは、G20諸国が具体的にどのようにこの協定を具体化して行くかが注目される。その上で炭酸ガス排出大国である米国や中国が重要な役割を果たすことが期待されるが、今後の動向を見る参考として、今回の合意前から掲載している本稿を引き続き掲載したい。

 

 現在、世界の気候は不安定な動きをする共に荒々しさと破壊力を強めている。温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。このブログでも述べてきたが、北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。北極海で起きていることは、南極大陸でも同様に大陸を覆う氷原や氷河が急速に融けている。それが海流の動きを変化させると共に、水温が上がり、上昇気流となり、気流に大きな変化とエネルギーを与えるのだろう。現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、巨大なエネルギーとなって東アジアでの台風やカリブ沿岸でのハリケーン、そして南太平洋のサイクロンとして猛威を振るっている。また局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。そして国連の専門家グループ(気象変動に関する政府間パネルーIPCC)により、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止など、温暖化が進むリスクが指摘されている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。

 

 オバマ大統領は、就任以来地球温暖化問題に積極的に取り組む姿勢を示しているが、7月30日、“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”を発表し、発電所から排出される“二酸化炭素を2030年までに2005年を水準として32%削減”することを表明した。オバマ大統領は、この削減目標を設定する一方、“きれいな発電計画”の枠組みの下で各州が独自の実施計画を進めることが可能であるとしつつ、これまで進められている太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギー、エネルギー効率の促進をベースとして、‘きれいなエネルギー’を更に進めるための長期的な投資などの諸措置を掲げ、米国の気候変動への対応におけるリーダーシップを継続するとしている。

 

 米国はブッシュ共和党政権以降、温暖化ガス削減に向けての数値目標設定に消極的であったことから、“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する数値目標を掲げた“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”は野心的で歴史的であるが、米国がこの計画を達成出来るのか、そして地球温暖化に対する国際的な取り組みにリーダーシップを発揮できるのかが注目されるところである。

 

 2015年12月、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)がパリで開催予定であり、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みにつき審議されることになっている。温暖化ガス削減に向けての数値目標に合意している米・中両国、そして環境先進国とも言える欧州連合(EU)が中心となって新たな枠組みに合意点を見出せるのか。地球の将来は、米国をはじめとする各国のこの問題の重大性への理解と解決努力に掛かっていると言っても過言ではない。

 

 1、米国は“きれいな発電計画”を実施に移せるか

 

 オバマ政権のこのような二酸化炭素削減目標に対し、主として電力・石炭業界や共和党を中心として根強い反対がある。オバマ大統領の本件目標が発表された直後に、共和党系のウエスト・ヴァージニア州の検事総長から強い異議が唱えられており、共和党系の15州は共同して反対する姿勢が示されている。またブッシュ政権において米国環境保護庁の法律顧問を務めたR. マーテラ・グループなども活動を開始している。

 

 既に2014年には、30余りの関係企業法律顧問やロビイスト、共和党戦略担当がワシントンにある米国商工会議所で定期的に会合し、オバマ政権から提案されるであろう温暖化防止規制の廃止に向けて法的戦略を検討して来ているようだ。オバマ政権は、2016年11月の大統領選挙まで残すところ1年数か月となっており、新たな法案を実現する期間が限られている上、米国議会は上下両院とも共和党が多数を占めているので“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する数値目標を具体化するのは容易ではない。

 

 もっとも、環太平洋経済連携協定(TPP)の大統領への交渉権限付与につき、民主党内で労働組合支持勢力が反対の姿勢を示していたのに対し、オバマ政権は共和党の支持勢力を取り込んで実現しているので、同大統領がリーダーシップを発揮する余地はある。この点は日本の国会運営においても、両院協議会などの弾力的な活用によって与野党間の協議を通じ対立点を調整することが望まれるところであり、学ぶべき点がありそうだ。

 

 明年の米国の大統領選挙で共和党候補が勝利し、共和党政権が誕生することになれば地球温暖化問題への取り組みは振り出しに戻る可能性が強いので、オバマ大統領が残る1年強の任期において、どこまでリーダーシップを発揮できるか注目されるところである。

 

 他方、温暖化防止規制に反対する業界や共和党グループとしても、激甚化する気候変動やその原因とされる地球温暖化への対応策を示す社会的責任があると共に、恐らく2016年11月の米国の大統領選挙の現実的な争点の一つとなって行くと見られるので、共和党としても対応が迫られることになろう。

 

 2、二酸化炭素削減に関する米・中合意の行方      (その2に掲載)

 

 3、注目される日本の環境対策             (その3に掲載)

 

(2015.8.27.)(All Rights Reserved.)

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地球環境保護、日本の真価が問われる (再掲)

2021-11-24 | Weblog

地球環境保護、日本の真価が問われる (再掲)

‎ 10月26日開催された臨時国会において、菅義偉首相は就任後初めての所信表明を行い、「温室効果ガスの排出量を2050年までに全体としてゼロにする」との目標を表明した。 そして「グリーン社会の実現」を成長戦略の柱と位置付けた。‎

 「温室効果ガス排出量の2050年までの実質ゼロ」目標は、前政権当時の「50年までに80%削減」を一歩進めたもので、管政権の温室効果ガス削減の促進を期待したい。

 しかし、その目標は30年も先のものである上、EUな主要各国が2030年までの目標を設定しており、これに比して削減速度が遅い。

 1、温室効果ガス実質ゼロ目標に向け2030年、2040年の中間目標設定が必要

(1)不可欠な温室効果ガス削減と激甚化する気候変動への対応

‎ 地球温暖化により、北極圏の氷海や南極を覆う氷原・氷河、ヒマラヤやアルプスなどの氷河が融け、海温と共に大気温が上がり、大量の水蒸気を空中に巻き上げ、地球温暖化が進み、世界各地で今までにはないような荒々しい気候変動に見舞われている。 更にこのまま温暖化が進み臨界点に達すれば、止めることの出来ない極限的な激しい気候に見舞われる恐れがある。 これは理論でも学説でもなく、現実に体験している現実なのである。‎

 それを止めるためには、産業革命以来増え続けている温室効果ガスを削減し、地球温暖化を止めなくてはならない。

‎ 30年先は長すぎる。 加速努力が必要のようだ。 地球が壊れてからでは遅い。‎

 (2)具体的な中間目標設定とそれぞれの指針が不可欠

‎ 温暖化効果ガスについては、世界の主要国が2030年までの削減目標を設定している。 EUは40%削減(1990年比)、インド33~35%削減(GDP当たりのCo2排出、2005年比)、中国60~65%削減(同、2005年比)と具体的な目標を設定している。 特にEUは1990年比での削減目標であり、今日に比べて炭酸ガスなどの排出量の少ない時代との比較であり、問題意識の高さを示している。 中国についても目標達成を期待したい。‎

‎ これに対し日本は、これまで2030年までの削減目標を26%としており、その上2013年比と問題が深刻化し始めてからの基準で、基準年自体を甘くしており、2005年比では25.4%削減となる。 この目標も断念されている。 因みに、米国はオバマ政権時代に2025年までに26~28%削減(2005年比)として行政府の目標を設定しており、バイデン候補が新大統領となり民主党政権となれば、このラインで推進されるであろう。 またロシアは同年までに70~75%抑制(25~30%削減、1990年比)としている。‎

 日本は2050年までの実質ゼロが表明され、その実現に期待したいが、2030年、2040年の中間目標が具体的に示されると共に、どの分野でどのように進めるかの指針が示されることが期待される。

 2、福島原発解体処理による放射能汚染水の海洋放流は望ましくない

‎ 2011年3月に発生した東北大地震の津波により炉心融解を含む爆発事故を起こした福島原発の解体処理が長期化する中、放射能汚染水が貯水槽に大量に貯蔵され、限界を迎えていることから、その放出が検討されている。 放射能はほぼ取り除かれ、濃度の薄いトリウム残っているものの放射線レベルは低いので、海洋への放水が検討されている。 放射能は「飲んでも健康に影響はない」とされているが、福島の漁業関係者は風評被害などを懸念し、海洋投棄反対を表明している。‎

‎ これに対し行政当局は、賠償等を検討するなどとしているが、この問題は賠償や風評被害だけの問題ではない。 国際的信頼、国家としての信用の問題となろう。‎

‎ 日本は、国際環境グループに毎年のように「化石賞」を受けている。 発電等に石炭、石油などの化石燃料が使われているからだ。 失礼な話ではあるが、不名誉なことだ。 韓国が、福島産の野菜や魚類を放射能汚染の恐れありとの風評を流し続けたが、今回は国全体に関わることになる。‎

 もしこの放射線汚染水が処理をされ「飲んでも大丈夫」なレベルとなっているのであれば、日本国内で処理できるし、そうすべきであろう。

‎ 確かに海洋は広い。 だから海洋投棄も良いということにはならない。 領海内でも海は続いており外洋に広がる。 現在、海洋のプラステイックごみの問題が深刻化している。 世界中で投棄されてきたプラステイックごみは、毎年増えると共に、風化し微粒子化し世界の海洋を漂い、海底に蓄積し続けており、それを魚類が食べ、人間の口にも入るようになる。 十分希釈されたとしても放射線汚染水が放流され、これが世界で常態化する恐れもあり、その悪影響は計り知れない。‎

‎ 放射線汚染水の処分は、日本国内で行うことを前提として真剣に検討されるべきであろう。 例えば、国立公園内の人里離れた場所や硫黄島などの離島に貯水池を作り、適正に管理するなどを検討してはどうだろうか。 それが国家としての責任ではなかろうか。 (2020. 11. 4. )‎

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